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『ミュージアム』大友啓史監督が明かす、“主演・小栗旬”の必然性「親心を知ったタイミングは重要」

Real Sound のロゴ Real Sound 2016/11/13 株式会社サイゾー
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 『週刊ヤングマガジン』で2013年から2014年にかけて連載された巴亮介による原作コミックを、『るろうに剣心』シリーズや『秘密 THE TOP SECRET』の大友啓史監督が実写映画化した『ミュージアム』が、11月12日に全国公開される。本作は、自らを“アーティスト”と名乗る猟奇殺人犯“カエル男”(妻夫木聡)を追う刑事・沢村久志(小栗旬)が、捜査を行っていくなかでカエル男の罠にはまり、絶望へと追い込まれていく模様を描いたスリラーだ。リアルサウンド映画部では、メガホンを取った大友監督にインタビューを行い、主演に小栗旬を迎えようとした理由や、原作ものを映画化する際のポイントなどについて話を訊いた。 参考:高梨臨、Huluドラマ『代償』のハードな撮影現場で得たもの「演技は役を愛するところから始める」 ■「最後まで“胸糞の悪い結末”にこだわった」 ーー原作には出てこない新たな人物が登場したり、結末が大きく変わったりはしていますが、基本的に原作をかなり忠実に再現していましたね。 大友啓史(以下、大友):そうですね。原作のプロットがよくできていたので、必要なところ以外、無理矢理手を加える必要はないかなと。特にカエル男が最初に登場するあたりや物語が動き始めるところはよくできていると思いました。ただ、物語が進んでいくに連れて、二次元を三次元に創り上げていく上での根本的な違いは当然出てきますから、そのような部分やディテールなどにはしっかり手を入れましたね。根本的に胸糞が悪いというか、決して気分のいい物語ではないので、脚本を創る過程で最後ぐらいはハッピーエンドにという意見も出ました。でもこの作品は、ただ胸糞が悪いだけではない。2011年の震災以降、自分とは遠いと思っていた出来事がふと襲いかかってきて、自分自身や大事な人を奪っていくーーそういう不安が、現実的に身近になってしまった。それは自然災害だけではありませんよね。思いがけない誹謗中傷に突然晒されてしまう様なことは、今のネット社会においては誰にとっても他人事ではありません。この物語に描かれているような、そこに意思があるのかもわからないような漠とした恐怖が、いまの日本には確実に存在します。それをきちんと意識しながら作ろうと。原作とは違うエンディングを用意してますが、最後まで「胸糞の悪い結末」にはこだわりましたね(笑)。 ーーそもそも原作が非常に映画的な印象でした。 大友:原作の巴さんとはあまり話してませんが、きっと映画を観て育った人が書いた作品だろうなとは思ったんですね。それこそ僕も好きな『セブン』や『ソウ』や『オールドボーイ』のような映画を観た人が、それらを咀嚼して、いまの日本を舞台にストーリーを紡いだんじゃないかと感じるぐらい背景が見えたというか。それでも、ただの真似事だったり、なんかいいなってだけで気楽に書いたものだったら、きっと何も響かなかったと思うんですけど。何しろ原作者が持っている生理的なものが結構伝わってきたんですよね。映画化のオファーをいただいたときは、映像から始まって漫画になったものをまた映像化するわけなので、ちゃんと必然性を感じられる、地に足のついた嘘のない映画にすることを心がけようと。僕たちが現実に生きている社会での実感をベースに、それを武器にして作っていこうと、そう思いましたね。 ーー原作からの改変部分に関して、巴さんはどのような反応だったんですか? 大友:特に話してないです。巴さんとは会ってはいるんですが、あまりちゃんと話せる時間がなくて。映画に関しても「どうでしたか?」と聞いたら、「よかったです」みたいな感じで(笑)。どこかでもっとお話をしたいなとは思っているんですけどね。実写化に対してのおかしなこだわりを押し付けてくるようなことはまったくなかったので、僕としてはすごくやりやすかったですね。変なことを言われると、こっちはこっちで「意地でも変えてやる!」ってなっちゃいますから(笑)。 ーー刑事が猟奇殺人鬼の犯行に巻き込まれていくという設定は、まさしく先ほど挙げていただいた、デヴィッド・フィンチャー監督の『セブン』が思い起こされますが、映画を制作するにあたって同作を意識をすることはありましたか? 大友:シェイクスピアの時代から物語の類型は36種類しかないと言われているものを、延々と手を替え品を替えやっているわけですから。過去に自分が観た映画、触れた作品とかに感化されていないこと自体が、まずありえないですよね。『るろうに剣心』を作ったときも、無意識に自分の好きないろいろなものに影響されていると思いますし。ただ、『セブン』はキリスト教の世界観のもとで成り立っていますが、日本ではキリスト教はもちろん、一般的に宗教がベースとして浸透していないので、構造的には似たものがあったとしても、そもそも全然違うものだという認識で始まっています。そういう意味では、この仕事をお引き受けすると決めてからはまったく意識していませんね。ディテールとしてはまったく別物ですから。むしろ、実際にこの映画を観た人がカエルのマスクをかぶって同じような類の事件を起こさないだろうかとか、現実との接点をいろいろ考えましたね。小栗くんが主演なのでメジャーな映画にもなっていくだろうけど、そういう考え得る悪影響も、フィクションのなかのものとして割り切っていいのだろうかと。胸糞の悪いものを観終わった後に、お客さんが何を持ち帰るのか、それぞれが持ち帰るものをどう想定して作ったらいいのかを、必死で探り当てようとしていた記憶があります。 ■「沢村を演じられるのは今現在の小栗くんしかいないと思った」 ーーカエル男が雨の日にしか犯行を起こさないという設定は、撮影的にもかなり制約があったのでは? 大友:ほぼ全編雨が降っていますから、撮影自体はかなり大変なものになるだろうと覚悟してはいました。自然に雨が降ってくれるとラクなんですけど、量の問題があるので、いずれにしても給水タンクを呼んで、給水車を準備して、こちら側で雨を降らせる段取りを整えておかなければいけないわけです。だから雨のシーンが多いと、時間も費用も労力も相当かかる。しかも撮影時期があまり雨が降らない11月から12月ですから。そんなこんなで相当覚悟していたんですけど、蓋を開けてみれば思ったほど大変ではなくて。せめて日照時間の少ない日本海側でやりましょうということで、新潟を選んだのが功を奏しましたね。その間、撮影が中止になったのは1回とか2回。西野刑事(野村周平)がビルの屋上から落とされるシーンで快晴になっちゃって、撮影が中止になりました。僕の監督人生のなかで初めてですよ、ピーカン(快晴)で撮影中止になったのなんて(笑)。 ーー確かに普通は逆ですもんね(笑)。 大友:だからみんな喜んじゃって。天候の面では当初予想していたよりは全然スムーズにいきましたし、さらに大変だろうと思っていた夜の公道でカーチェイスをしながら雨を降らすシーンも、ベテランカメラマンの山本英夫さんやスタッフのおかげですごくうまくいきました。照明を入れつつ、給水車と給水トラックを何列か並走させながら撮ったんですけど、数々の現場を経験してきた山本さんは、雨の見え方とかも含めてフレーミングをきっちりコントロールしてくれたので、僕もほとんどストレスなく乗り越えられましたね。 ーー今回、小栗さんを主演に迎えることが監督を引き受ける条件だったそうですね。 大友:もちろん役者としての小栗旬にも興味はあったんですけど、話をいただいた当時、ちょうど小栗くんに子どもが生まれていたんですよね。で、今回の沢村刑事という役を演じるにあたっては、子どもが「かわいい」ことを知っているのはかなり大事な要素だと思ったんです。子どもができて家族の大切さを知り始めた時期の男って、相当変わりますから。小栗くんみたいなやんちゃ者は特にね(笑)。そういう時期を逃さずに捕まえておかないといけないなと。俳優にも家庭やバックグラウンドがあるから、フィクションに活かす“タイミング”がすごく重要だということですよね。作品のなかでは、刑事としての仕事の延長線上に自分の家族が現れる瞬間が用意されてますし、芝居としてもただ単に追い込まれていくだけではなく、家族や仕事とどう向き合っていくか、自分はどこから来てどこに行こうとしているのかというような自分のルーツまで、深く突っ込んでいく内容になってます。そのあたりも含めて、いったい誰がこの人物表現をしきれるんだろうと考えたときに、直感的に今現在の小栗くんしかいないと思ったんですよね。実際にやってみてもドンピシャでしたし、達成感がある仕事でしたね。 ーー『るろうに剣心』もそうですが、今年は『秘密 THE TOP SECRET』があり、今回の『ミュージアム』があり、来年は『3月のライオン』が公開を控えています。人気コミックの実写映画化が続きますが、監督のなかでは原作を映画化する際の基準みたいなものがあるのでしょうか? 大友:そんなに明確にあるわけではないんですけど、単純に原作を読んで心が震えたり感動したりする“なにか”があるかどうかですね。それはマンガだけじゃなくて、小説であってもオリジナルであってもそうで、自分の感情が動かされて、シンプルに撮りたいと思えるかどうか。それに加えて、僕はもともとテレビ出身のドラマ屋なので、『るろうに剣心』だったらアクション、『秘密 THE TOP SECRET』だったら近未来的な世界観で脳の中を見る行為をどう可視化していくか、そういうチャレンジすべきお題がひとつあるかどうかですかね。今回の『ミュージアム』も、全編雨ということや、造形的な面でチャレンジすべきポイントがありましたし。来年の『3月のライオン』に関しては、今までこだわってきたアクションやガジェットが一切ないので、まるっきりむき出しのドラマをどうやるかという、原点での新たなチャレンジがある。それが僕のなかでの基準です。(宮川翔)

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