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『勇者ヨシヒコ』のパロディ表現はどこまで攻める? テレ東深夜ドラマの可能性

Real Sound のロゴ Real Sound 2016/11/10 株式会社サイゾー
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 金曜深夜に放送されている『勇者ヨシヒコと導かれし七人』(テレビ東京系)が毎週攻めた内容で話題となっている。 参考:『勇者ヨシヒコ』『刑事ダンス』『家政夫のミタゾノ』……秋の深夜ドラマは“変化球”ばかり!?  『勇者ヨシヒコ』は、今回で3作目となる人気シリーズ。某国民的RPGのパロディとなっている本作は毎回、世界を滅ぼさんとする魔王を倒すために旅立った勇者ヨシヒコ(山田孝之)が、もみあげが印象的な戦士ダンジョ-(宅麻伸)、父の敵と勘違いして命を狙う内にヨシヒコと同行するようになったムラサキ(木南晴夏)、くだらない魔法しか使えない魔法使いのメレブ(ムロツヨシ)の三人と冒険し、行く先々の村々で毎回おかしな事件に巻き込まれるという展開となっている。  脚本・監督を担当する福田雄一は、『笑っていいとも!』(フジテレビ系)などのバラエティ番組の構成や、映画監督やドラマの脚本家、演出家として活躍。近年は深夜ドラマを拠点に作品を多数発表しており『勇者ヨシヒコ』シリーズ等の作品では、全話の脚本と演出を担当している。映像で“笑い”を見せることは、脚本の意図を役者と演出にしっかり伝わらないと難しいものだが、福田は全話の演出と脚本を担当することで完成度の高い濃い作品を生み出している。  ファンタジーRPGの世界を本気で映像化したら、予算がいくらあっても足りないが、本作は低予算を逆手にとって、ハリボテで作ったモンスターをチープなビジュアルで見せている。そのギャップ自体が優れたギャグなのだが、結果的にファミコンやスーパーファミコンの頃のドット絵のキャラクターが動いている時の感触を実写で追体験しているように感じるのが面白いところだ。  当時のゲームは今のようなフルCGではなかったが、簡略化されたキャラクターがちょこちょこと動いている姿の向こう側に壮大な物語を見ていて、プレイヤーが脳内で補完していた。『勇者ヨシヒコ』を見ていて思い出すのは、ファミコンをやっていた時の懐かしい感覚で、これは予算をかけてリアルに作り込んでいたら逆に味わえなかった喜びではないかと思う。また、低予算を謳っているが、役者は深夜ドラマにしては豪華。毎回、襲いかかってくる盗賊役も今回の第一話では菅田将暉が登場しており、毎回、意外な俳優が登場するのも隠れたみどころだ。  過去作でもドリフやAKB48がネタにされており、RPGのお約束を借りて様々なパロディを展開している本作だが、今回は特に攻めている。第三話ではエフエフの村をヨシヒコが尋ねるのだが、そこで出会うヴァリー(城田優)が、派手な服装でカッコいいポーズを決めている。これはもちろん国民的RPGと双璧をなす『ファイナルファンタジー』シリーズのパロディである。他にも『モンスターハンター』等の世界が登場し、違うゲームの世界にヨシヒコたちが紛れ込むギャップがギャグとなっているのだが、一番笑ったのが、ある世界から戻ってきたヨシヒコが、あるゲームの主人公を模した赤い服を着ていたため、モザイクがかかっていて姿が見えなくなる場面。ここでは、ゲームのパロディであると同時に、ドラマにおける版権処理の問題がギャグにされているのだ。  さらに驚いたのは先週放送された第五話である。ダッシュウ村を訪れたヨシヒコ一行は五人組の若者たちと知り合う。若者たちはバンドがやりたいのだが、ニッテレ―という魔物の呪いによって農作業に従事するようにされていた。ニッテレ―を退治するためにヨシヒコ一行は、四人の神々に助けを請おうとするのだが、神様はそれぞれシエクスン(CX,フジテレビ)、テレアーサ(テレ朝)、テブエス(TBS)テレート(テレ東)となっており、各テレビ局を象徴する姿となっている。  ヨシヒコたちはその中で一番弱そうなテレートを連れてニッテレン(日本テレビ)に戦いを挑むのだが、これが面白いのは、ただ名前をいじるだけのパロディではなく、視聴率三冠王の日本テレビと他のテレビ局との視聴率争いの戯画化になっていることだ。特にシエクスンの神様が会いに行ったら“すでに死んでいた”というのが一番笑ったのだが、このギャグ自体、それこそフジテレビ的で、全盛期のとんねるずがやるようなギャグだなぁと思った。  福田雄一のドラマを見ている時に感じるある種の懐かしさは、80年代のフジテレビがやっていたコント・バラエティを、テレビドラマという形式を借りて今の時代に蘇らせている側面があるからだろう。80年代と今ではテレビ局の表現に対する規制は何倍も厳しいものとなっている。そのため、バラエティにおけるパロディ自体が年々難しくなっているのだが、福田雄一は深夜ドラマという枠組の中で作り続けることで、作り込んだコント・バラエティが持っていた面白さを発展させ続けている。  根本にあるのが脱力的な笑いのために、あまり深読みしてもしょうがないとは思いながら油断して見ていると、今回の第五話みたいにびっくりするようなネタをガンガンぶち込んでくる。まったくもって油断できないドラマである。(成馬零一)

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