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『地味スゴ!』石原さとみを支える“打率10割”の脇役コンビ 江口のりこと和田正人の演技がスゴイ!

Real Sound のロゴ Real Sound 2016/11/15 株式会社サイゾー
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 『地味にスゴイ!校閲ガール・河野悦子』(日本テレビ系)が好調だ。視聴率は全話2ケタを超え、11月9日放送の第6話では13.2%の自己最高を更新。タイムシフト(録画)やツイッターなどの数値も含め、大きな反響を呼んでいる。 参考:『ドクターX』圧倒的な人気誇る理由 “無敵の大門未知子”のマンガ的おもしろさを探る  けん引役は、もちろんヒロイン・河野悦子を演じる石原さとみ。美容系CMに引っ張りダコのビジュアルを押し出した演技と、それを生かすファッショナブルな演出で、男女を問わず支持を集めている。  しかし、“旬の女優・石原さとみ”をベースにした演技と演出は、連ドラにとって諸刃の剣。ヒロインの個性にばかり注目が集まると、リアリティやドラマ性が薄くなってしまうからだ。実際、初回放送を見たときは、「石原さとみのプロモ集」という印象を持ったが、2話以降は決してそのようなことはなかった。  石原の脇を固める2人が、リアリティとドラマ性を担保していたのだ。  「編集や作家に口を出す」などの越権行為が目立ち、ファッションも派手な悦子は、言わば超異端児。校閲という仕事は、視聴者にとってなじみが少ないだけにしっかり見せる必要性があるのだが、2人の校閲部員がその役割を担っている。  1人目は、悦子の校閲部の先輩・藤岩りおん役の江口のりこ。りおんは、クソ真面目で服装がダサく、「鉄のパンツを履いていそう」だから“鉄パン”と呼ばれるなど、悦子と対極のキャラとして描かれている。しかし、その仕事ぶりは完璧であり、「校閲者=地味にスゴイ!」という作品の世界観を体現する“隠れヒロイン”と言ってもいいだろう。  りおんは、悦子が重大なミスを犯したときに休日返上で駆けつけて対応し、大ファンの作家とは一線を引いて職務を守ろうとしたほか、実は結婚していて夫との記念日をささやかに祝おうとするなど、その姿にリアリティと共感を抱く視聴者は少なくない。悦子のキャラが“ポジティブ”で一本調子になりがちな分、りおんが人間臭さを漂わせることで補足しているのだ。  江口のりこは、柄本明やベンガルが立ち上げた劇団東京乾電池の所属の36歳。名立たる性格俳優の中でもまれた演技力は、業界内で評価が高い。実際、ドラマは2001年から出演作が途切れないほか、日本映画界の名監督たちからも愛されている。  一般的な知名度がグッと高まったのは、2013年の『名もなき毒』(TBS系)。主人公・杉村三郎(小泉孝太郎)を陥れるモンスター社員・原田いずみを鬼気迫る表情で演じて視聴者の度肝を抜いた。さらに、2014年には朝ドラ『マッサン』(NHK)で、主人公・亀山政春(玉山鉄二)の務める酒造メーカーの事務員・安藤好子を好演。昨年も大河ドラマ『花燃ゆ』(NHK)、『コウノドリ』(TBS系)などメジャー作への出演を重ね、日本中のドラマファンにその顔が知られることとなった。  江口の魅力と言えば、セリフに頼らない存在感。何も話さなくても、あるいは、ひと言話しただけで、視聴者の心をざわつかせるような訴求力がずば抜けて高い。なかでも十八番は、冷めた表情での暴言。『時効警察』(テレビ朝日系)で演じた警察官・サネイエのように笑いを誘うことも、『名もなき毒』のように怖さを抱かせることもできる。  ここ数年、『明日、ママがいない』(日本テレビ系)で演じた養子を求める薄幸の既婚女性や、『恋愛時代』(日本テレビ系)で演じた後輩思いの元レスリング日本代表選手など、江口へのオファーは幅が広くなる一方。しかし、1つとしてハズレなしという事実が、「地味にスゴイ!」。  2人目は、同じく校閲部の先輩・米岡光男役の和田正人。米岡は、物腰が柔らかく、女性的な繊細さを持つなど、こちらも悦子と対極のキャラとして描かれている。悦子の言動が男性的なだけに、「米岡をオネエキャラのように描くことで、視聴者に男女の関係を邪推されない」という意味もあるだろう。「悦子よりも女性的な感性の持ち主」という意味では、米岡も“隠れヒロイン”と言えるかもしれない。  悦子に校閲の基本を教えたほか、その後も悩み、怒り、グチをこぼすとき、隣にいるのは米岡。これまで悦子のたかぶる感情をスポンジのように吸収して、落ち着きを取り戻させる姿が何度となく描かれてきた。言わば米岡は、悦子の落ち着ける場所であり、視聴者に悦子への親近感を抱かせるためのキーパーソンとなっているのだ。  和田正人は、若手俳優集団D-BOYSの最年長メンバーとして知られる37歳。日大時代に箱根駅伝を走り、卒業後も実業団に所属していたため、俳優としては遅いデビューとなった。最初に脚光を浴びたのは、2007年の初主演作『死化粧師 エンバーマー 間宮心十郎』(テレビ東京系)。遺体を生前の姿に修復するエンバーマーをハートフルに演じた。  その後は、出演数が増える反面なかなか代表作に恵まれない中、転機になったのは2013年の朝ドラ『ごちそうさん』(NHK)。ヒロイン・め以子(杏)への好意を隠して優しく見守る幼なじみの「源ちゃん」を好演し、相手役であり後の夫となる東出昌大に劣らぬ人気を集めた。その直後には、ヒット作『ルーズヴェルト・ゲーム』(TBS系)で、ムードメーカーの野球部員・北大路犬彦を演じて、“ヤンチャで男っぽい”キャラクターとして認知度を上げていく。  また、『ゼロの真実~監察医・松本真央~』(テレビ朝日系)、『最強のふたり~京都府警 特別捜査班~』(テレビ朝日系)、『スペシャリスト』(テレビ朝日系)など、刑事役のオファーも多い。特に、刑事役ながら殺人に手を染めるなど、最終回で主役級の活躍を見せた『スペシャリスト』の演技は大きな反響を呼んだ。  和田の魅力は、男気あふれる佇まいと身体能力の高さ。刑事ドラマへの特性も、女性の好感度も高いだけに、連ドラ出演が途絶えることは考えにくいが、ここにきて江口と同様にオファーの幅が広がってきている。その象徴が、一切の男気を消した米岡という役であり、今作で役者としての評価をワンランク上げたのではないか。  江口のりこと和田正人の共通点は、「強烈なキャラでも抑えた演技ができる」こと。2人の演技には、むやみやたらな誇張も、感情の押しつけがましさもない。つまり、ウソのない自然体の芝居ができるから、視聴者はそのキャラを信用して、物語に没頭できるのだ。それは2人が、あくまで脇役として陰となり、ヒロインに光を当てているからだろう。  そもそも、りおんと米岡は、演技のさじ加減を間違えると、視聴者から愛されないキャラと言える。たとえば、破天荒なヒロイン・悦子を冷ややかな目で見たり、そっけない態度を取ったりしていたら、「ヒロインも、りおんと米岡も視聴者から愛されない」という悲しい状態に陥るリスクがあった。  しかし2人は、“先輩校閲者”としての立場から“新人の校閲ガール・河野悦子”を淡々と見つめている。そこには「校閲という仕事に誇りを持っている」という鼻息の荒さはなく、「ただ校閲の仕事が好き」という脱力した姿があるだけ。だから、「間違いだらけだが、校閲の仕事にまっすぐな悦子を尊重できる」上に、「困っていたらごく自然に助けられる」し、そんなやり取りを見た視聴者はホッとさせられるのだろう。  ヒロインの脇にそっと佇んで、物語を引き締め、ゆるめる、りおんと米岡。その存在が、連ドラとしての品質を担保しているのは間違いないが、この数年間、脇役として「凡打なしの打率10割」だった江口のりこと和田正人の活躍を考えると、当然のような気もする。(リアルサウンド編集部)

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