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『沈黙ーサイレンスー』塚本晋也インタビュー「幸運にも『野火』と基本的なテーマが同じだった」

Real Sound のロゴ Real Sound 2017/01/17 株式会社サイゾー
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 『タクシードライバー』『ディパーテッド』のマーティン・スコセッシ監督が、遠藤周作の歴史小説を映画化した『沈黙ーサイレンスー』が1月21日に公開される。1988年にスコセッシ監督が原作と出会ってから28年、様々な困難を乗り越えながら実現した本作では、幕府による激しいキリシタン弾圧下にある17世紀の江戸初期を舞台に、棄教したとされる師フェレイラの真相を確かめるため長崎へやってきた、若き宣教師のロドリゴとガルペの苦難に満ちた葛藤が描かれる。アンドリュー・ガーフィールド、アダム・ドライバー、リーアム・ニーソンといったハリウッド俳優に加え、日本からは窪塚洋介、浅野忠信、イッセー尾形、小松菜奈、加瀬亮らが参加していることも話題に。リアルサウンド映画部では、敬虔なカトリック信徒・モキチ役を演じた塚本晋也にインタビュー。『鉄男』や『野火』などの監督作で世界的な評価を受ける塚本は、スコセッシ監督の現場で何を感じたのかーー。取材数日前に作品を観たばかりの塚本に、出演の経緯やスコセッシ監督への思い、そして本作と『野火』との関係性についてまで話を訊いた。 参考:EXILE AKIRAが語る、スコセッシ監督との出会いと目指す役者像「現場で新しい自分を引き出していきたい」 ■「現役の映画監督で最も尊敬しているのがスコセッシ監督」 ーー完成した作品をご覧になっていかがでしたか? 塚本晋也(以下、塚本):関わっていた期間が長かったので、観終わってどっと息をつく感じでした。感想が浮かぶというよりは、「はー、終わったのかなぁ……」というような。 ーースコセッシ監督とはもともと交流があったのでしょうか? 塚本:直接の交流はなかったものの、スコセッシ監督は本当に映画をたくさん観ていて、もう随分前ですが、こんな映画があるんだよと紹介するために、ご自身が持っていた『鉄男』のポスターをニューヨークの近代美術館かどこかに寄付してくれたという話を聞いたことがあって。そのエピソードが本当かどうかは僕も分からなかったので裏を取ってみたら、本当だということが分かって、かなり嬉しい思いをさせてくれたことがあったんです。なので、オーディションで初めてお会いしたときも「『鉄男』と『六月の蛇』が大好きなんだよ!」と喜んでくれて、それがまた非常に嬉しかったですね。 ーースコセッシ監督とのオーディションはどのような雰囲気だったのでしょうか。 塚本:素晴らしい体験でした。スコセッシ監督は役者としても本当に優れているんです。自然な演技を引き出してくれるような演技をスコセッシ監督自らやってくれるんですね。そのときに「これすごいぞ、現場でもやりたいな」と思ったのですが、オーディションに落ちてしまってもその思い出は一生の宝にできるなと。そしたらなんと受かってしまって、自分でも本当に驚きました。 ーースコセッシ監督への思い入れも強かった? 塚本:高校生の頃に『タクシードライバー』を観たときから大ファンで、出演しようと思ったのもスコセッシ監督の存在が一番大きかったんです。現役の監督で最も尊敬する監督なので、最初の段階では、オーディションでスコセッシ監督と会うことや同じ空気を吸うことが目的でした(笑)。 ーー監督の立場としてもスコセッシ監督から受けた影響は大きかった? 塚本:大きいですね。『タクシードライバー』は数え切れないほど観ていますが、観るたびに新しい発見があるんですよね。トラヴィスという正しいとはいえない人が主人公で、人間の暗部を掘り下げつつも、不思議な光明を感じる映画でとても魅力的。麻薬的にやめられない映画で、僕も非常に大きな影響を受けています。 ーー今回は役者としての参加でしたが、スコセッシ監督の現場から監督目線で何か感じることはありましたか? 塚本:役者として参加しているので、いわゆる“監督目線”はないんです。ただやはり大好きな監督の姿を目の前で見るわけなので、参考になることはたくさんありました。最も勉強になったのは、俳優への配慮の仕方ですね。スコセッシ監督は俳優に対して尊敬の心を強く持って接するんです。自分が監督するときは、自分が「OK!」と言えばもうすべてがOKで、その「OK!」を力強く言うことが大事だと思っていたんですが、もしかしたらそれでは足りないのかな……と。あとで俳優に「あの演技よかったよ!」などの声をかけるべきなのかなとか、いろいろと気づかされることがありました。『タクシードライバー』などの素晴らしい映画ができあがったのも、デ・ニーロさんとの絆によるものが大きいんだなと思いましたね。 ーー撮影ではスコセッシ監督の現場ならではのこともあったのでは? 塚本:それがですね、意外にないんですよ。あんなスペシャルな映画を撮る監督ですから、僕もその正体は何なんだろう、何かスペシャルな方法があるはずだと思っていたんですが、いわゆる普通の映画の作り方と同じだったんです。実を言うと、それが不思議と励みになりました。もちろん規模は大きいですが、晴れの舞台のハリウッドでも同じなんだなと。周りがデカいだけで、日本に置き換えた場合の作り方と同じ。だから日本の撮影現場の人たちにも「同じだよ!」と伝えたくなりました。 ■「“監督の奴隷になる”ことしか考えていない」 ーー11月に行われた記者会見では、「スコセッシ監督からは演技指導はあまり受けなかったけど、とにかく何度も何度もテイクを重ねる」という発言をされていましたね。 塚本:僕はほとんどスコセッシ監督から演技指導を受けませんでしたが、アンドリューは悩みながら監督とよく話していました。モキチの演出も、物語を牽引するアンドリューに何かを言うことによって、僕からまた何かを引き出そうとしていたんじゃないかなと。 ーーハリウッドを代表する若手実力派俳優のアンドリュー・ガーフィールドとの共演はいかがでしたか? 塚本:アダム(・ドライバー)もそうですが、とても自然でニュートラル。僕もそういう俳優が好きなので、自分が映画を作るときもそこを重視しています。なので、この2人と演技をしているときは、自分自身も本当に自然な演技をすることができました。監督目線で言えば、アダムは僕の好きなタイプの俳優だったので、共演するのも非常に嬉しかったのですが、モキチ役でいうと、ロドリゴ役のアンドリューに集中しないと崩れてしまうので、アダム好きは置いておいて(笑)、アンドリューとの関係性に集中しましたね。カメラに映っていないところでも、常にアンドリューに気を向けるようにきっちりと関係性を築き上げていきました。 ーー撮影以外のところでもコミュニケーションを取りましたか? 塚本:お互いかしこまらないように、無邪気に柔らかく打ち解け合うような雰囲気になるように心がけていました。モキチがロドリゴから木彫りの十字架を受け取るシーンがあるんですが、そのシーンを撮影する際に、小道具さんではなくてアンドリューが直接その十字架を僕に手渡してくれたんです。そのときは「ははー!かしこまりました!」という感じで受け取って、なるべくいい形で役に繋がるようにしていました。カメラが回っているときはとにかくどの瞬間も全霊を注いだのですが、特に全霊を注いだのは、自分の顔が映っているときよりも、逆にアンドリューの顔が映っているときなんです。アンドリューがいい芝居をしやすいように、自分の顔が映っているときの3倍ぐらいの力を込めてやりました。 ーーメインビジュアルでもロドリゴとモキチが額を合わせているシーンが使用されていましたね。 塚本:あのシーンは本当に大事で。実はあのシーンの撮影がいきなり2日目にきてしまったんです。なので、「これは大変だ」ということでさらに気合いを入れて撮影に挑みました。アンドリューもあのシーンには相当力を入れて現場に来たので、それに見合うようにモキチを演じるために、僕も思いっきり力を注ぎました。ほかにも大事なシーンはたくさんありますが、あのシーンですべてが決まると思っていましたね。 ーー今回の『沈黙ーサイレンスー』は、塚本さんの2015年の監督作『野火』と通じるものがあると感じました。 塚本:僕もそれは強く感じました。伝えるべきことが共通していようがしていまいが、スコセッシ監督の映画だったらどんな作品でも喜んで参加するつもりでいましたが、幸運にも、ある権力の暴力によって自分にとって大事なものが曲げさせられることへの葛藤という、基本的なテーマが同じだった。『沈黙ーサイレンスー』は大きく捉えると宗教の話ですが、実は宗教を通してもっと大きなことを描いている作品で、そのような脅かしてくる力に対しての警告のような側面もあります。『野火』もそうですが、たまにはこのような重い映画を観て、静かに沈思する時間は必要だと思うので、ぜひご覧になっていろいろと考えていただきたいですね。自分にとって大事な監督作である『野火』と、大事な出演作である『沈黙ーサイレンスー』が同時期に生み出されていくのは、本当に大事な瞬間でした。 ーー昨年は『シン・ゴジラ』や『SCOOP!』などの出演作が公開され、役者としても大活躍されていますが、演技をする上で何か心がけていることはありますか? 塚本:“監督の奴隷になる”ことしか考えていないです。ある一定の自分のやり方を持っていくのではなく、岩清水のようなピュアな気持ちで現場に行って、監督が自分のやりたいことをできるように、出っ張りも引っ込みもしない“部品”になりに行くということで。 ーーなるべく監督の言うことを受け止めて。 塚本:そうですね。なので監督に何かハッキリとやりたいことがあると嬉しいですね。例えば、テレビドラマなどで監督さんの姿があまり見えないようなときは不安に苛まれてしまうんです。自分なんかが好きにやったところで、ろくなことにはならないと思っているので(笑)。だから俳優が恐くて、監督が萎縮してしまうのが1番よくない状況じゃないですかね。「こうしたいからこうしてくれ」と監督に言われて、それに対して腕によりをかけて応えるのが演技の醍醐味だと思っています。だからこれをきっかけに、役者として羽ばたきたいみたいなこともないんです。今回はスコセッシ監督だから行ったわけで、いい場があるときに、ひとつひとつその場を大事にするだけですので。いまは何かまた声がかかることは期待せずに、自分の次の映画を地道に考えているところです。でも万が一またそういうお話があって、その作品に命からがらできるような遊び道具があれば、もちろん喜んで行かせていただくと思います。(宮川翔)

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