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『逃げ恥』プロデューサーが語る、最終回に込めた想い 峠田P「どの生き方も否定しない」

Real Sound のロゴ Real Sound 2016/12/20 株式会社サイゾー
© Real Sound 提供

 スペースシャワーTVの高根順次プロデューサーによる連載「映画業界のキーマン直撃!!」第9回は、番外編として現在大ヒット中のドラマ『逃げるは恥だが役に立つ』(TBS)のプロデュースを手がける那須田淳氏と峠田浩氏にインタビュー。制作現場の雰囲気や伝えたいメッセージ、本日放送の最終回のポイントまで、じっくりと語ってもらった。(編集部) 参考:『逃げ恥』過去最大級のヤキモキの渦! ■那須田P「生き方の多様性を肯定するのは、ひとつのテーマ」 ーー世間的にも大きな話題になった『逃げ恥』が、いよいよ最終回を迎えます。ドラマの大ヒットを受けて、現場の雰囲気も変わったのでは? 峠田:新垣さんや星野さんともよく話しているんですけれど、正直なところ、僕らにはいまだヒットしている実感があまりなくて(笑)。「視聴率が上がった」というときでも、「やった! 良かったね!」と一瞬はなりますが、そのとき以外は、マイペースというか、みんながそんな雰囲気だったので地に足が着いた状態だったと思います。ロケに行くと子どもたちが“恋ダンス”を踊っていてくれたりして、「本当に流行っているんだ」って実感したくらいです。あくまで自分たちのペースでやりたいことをやっていける環境が『逃げ恥』にはあったのかなと思います。 ーー“恋ダンス”は、ドラマが大ヒットした一因だと思います。企画の当初からアイデアはあったのですか? 那須田:はい。火曜日の枠だったため、視聴者の方が1日頑張ったご褒美として楽しく観ることができるドラマにしたいという考えは、当初よりありました。また明日から学校や仕事、あるいは家事を頑張ろうと思ってもらえるような作品にしたくて、最後にダンスを入れるというアイデアがあったんです。また、改めて連続ドラマならではの面白さをアピールする上でも、タイトルバックとしてダンスを入れるのは効果的だと考えました。

 ちょうど企画を練っていた頃に、『コウノドリ』に出演してもらった星野くんのライブを観て、「SUN」みたいな明るくて楽しい楽曲を提供してもらえたら、すごくハマるんじゃないかなって。ライブではELEVENPLAYがバックダンサーを務めていて、それがすごく可愛かったのもあって、ドラマでもうまく連動していきたいなと。実際、“恋ダンス”の振り付けと、星野くんのPVでのELEVENPLAYの振り付けは、基本的に一緒なんですよ。

峠田:ただ、思っていたよりずっと反響は大きかったですね。“恋ダンス”っていう呼び名は、あまりにも評判が良かったので、改めて付けたものでした。最初は“逃げ恥ダンス”って呼んでいたんですけれど、番組から離れたところでも、もっと浸透してもらいたいという思いもあり、より親しみやすいものにしました。 ーーたしかに『逃げ恥』には、多くの人が親しみやすさを感じていると思います。ただ一方で、社会派ドラマとしての側面も持っている作品です。那須田さんは前期で好評を博した『重版出来!』のプロデューサーも務めていますが、テレビドラマに社会性のあるテーマを盛り込むことを、どれくらい意識しているのでしょう? 那須田:社会性のあるテーマは大事ですね。テーマがあるからこそ、笑いの部分だったり、恋愛の部分が際立って、作品の中にいろいろな楽しみを盛り込むことができる。ただ、ひとつの重厚なテーマに向かって突き進むのではなく、多くの方にとって身近なテーマを選択しつつ、さまざまな解釈ができる余白を残すことは意識しました。もちろん、ひとつのテーマに徹底的に向き合う作品もあって良いと思うのですが、連続ドラマの良いところは、いろいろな楽しみ方ができるところだと思うんです。『重版出来!』にしても『逃げ恥』にしても、就職、仕事、家庭、恋愛、結婚など、いろんな世代の方が自分に置き換えて観ることができる、身近なテーマをたくさん盛り込んでいます。10代の方が観たら、将来の理想像を考えるかもしれないし、20代の方が観たら、自分の恋愛と重ねるのかもしれない。あるいは40〜50代の方が観たら、新婚時代を思い出すのかもしれない。誰もが通る道を、主人公たちを通して描くことで、幅広い方々に興味を示してもらえるように意識しました。楽しみながら観てもらって、そのうえで「自分ならこうする」って部分を見つけてもらって、翌日からの生活に還元してもらえたら、すごく嬉しいなと。 ーー『逃げ恥』の登場人物は、性別も年代も様々で、生き方もそれぞれです。 那須田:みくりみたいな生き方、津崎みたいな生き方、百合ちゃんみたいな生き方、みんなちょっと変わっているけれど、どの選択も正しいんだっていうことは、ひとつのテーマです。生き方の多様性を肯定するというか。実際に仕事をしていても、会社やチームの中にはいろんなキャラクターの人がいて、それぞれ違う方向を向いているのだけれど、その掛け算によってこそ奇跡って生まれるんですよね。 ーー『重版出来!』と『逃げ恥』はどちらも漫画原作で、野木亜紀子さんが脚本を務めています。原作を読んだうえでドラマを観ると、そのさじ加減も絶妙だなと感じます。 那須田:僕は最初、映画の『図書館戦争』で野木さんとご一緒したのですが、恋愛未満の状態にある男女間の会話を、とても楽しく描くことに秀でた方ですよね。クスッと笑えるのだけれど、その中にちゃんとテーマ性を見つけられるというか。『重版出来!』でお願いしたときから、こうした作品にはぴったりの方だと感じていて、今回はあまり細かい打ち合わせはせず、野木さんにお任せしています。 峠田:野木さんがすごいのは、マイノリティの方を含めて、とてもフラットな視点で人々を捉えているんですよね。よく「『逃げ恥』には悪人が出てこない」って言われるのですが、彼女は人間描写を大切にしていて、それぞれの考え方や言い分をきちんと消化したうえでセリフを描いているので、どの立場のキャラクターにも人情が滲んでいるんです。また、漫画をドラマ脚本に書き換えていくのも非常に巧くて、たとえば登場人物のあるセリフを、原作とは別のシーンで言わせたりするのですが、効果的に登場人物の心情を表していることも多くて。物語を組み替えても、伝えるべき本質はズレていない。それができるのは原作への理解度がとてつもなく深いからで、新たに紡ぎ出されたドラマを観て、僕自身も感銘を受けることは多かったです。 那須田:原作者の海野つなみさんと、早い段階から同じ方向を向くことができたのも良かったです。原作モノを手がける際は、最初にどんなドラマにしたいか、しっかりとビジョンを伝えるのですが、今回はとくにスムーズで、台本も楽しく読んでいただけたみたいです。 ■峠田P「二人が関係を作り上げる“過程”に注目してほしい」 ーー本作ではパロディネタのほか、様々な小ネタが仕込まれていることも話題となっています。みくりさんが妄想の中で『ファンタシースターオンライン2』をプレイしているとき、そのレベルが上限まで上げられていたり、彼女のスリッパがバブーシュの革製スリッパで、百合ちゃんのモロッコ旅行と関係しているんじゃないかとか。こうした小ネタはどんな風に考案しているのですか? 峠田:台本の世界観を作り上げるために、ひとつひとつのモノにちゃんと意味があるようにしたいとは心がけていました。百合ちゃんがモロッコ旅行に行ったときのお土産なのかとか、あるいは影響を受けて日本で買ったのかと、視聴者が想像できるように。それは台本の行間にあたる部分で、僕らだけのアイデアではなくて、美術や衣装の方がみんなで楽しんでやってくれています。エプロンに「I'M BEST PARTNER」って書いてあったのは、スタイリストの方のアイデアで。スタッフみんながこのドラマを楽しむために提案しあって、成り立っているんです。 那須田:ディティールへのこだわりがあると、もう一度観てみようと思ってもらえるし、それも先ほど言った“いろいろな楽しみ方”につながるんですよね。 峠田:今回のドラマでは、制作側が楽しんで作っているということも伝えたいと思っていて。ちょっとした小物についてもそうですし、恋ダンスやSNS、クックパッドの連携などもそう。僕たち自身が楽しんでアイデアを持ち寄ることで、『逃げ恥』はうまく回っていったと思います。自分たちが楽しんでいることを伝えるのが本筋ではないけれど、楽しんでいるんだろうなと思ってもらえることで、親近感を持ってもらえたらいいなと。 那須田:TBSのドラマチームは、わりとみんな長く一緒にやっているから、言わずとも一生懸命楽しんでやってくれるんですよ。津崎さんが家にロボホンを飾っているのもスタッフのアイデアですし、それが面白ければ脚本にも入れてしまう。みくりも契約で家に来ているわけだけれど、職場を楽しくするために、少しずつクマのグッズを増やしていったり。そういう遊び心は、現場が楽しいからできていることなので、ぜひ観て欲しいですね。 ーー今回、監督をTBS社員の金子文紀さん、土井裕泰さん、石井康晴さんの三名が担当していますが、作品ごとに演出が変わることによって、トーンにバラつきが出たりすることはないのですか? 那須田:もちろん、あまりにトーンが違うようでしたら指摘しますが、連続ドラマはそれも楽しみのひとつになると思うんですよね。与えられた題材の中でいろんな楽しみを作るのが演出でもあるし、コメディは特にそう。それに、三人とも長年やっているベテランだから、継続すべきところはわかっているはず。だから、統一感を求めてなにか口出ししたりすることはありませんでした。それよりむしろ、どんどんアイデアを出してくれと。 峠田:根本の世界観はチーフの金子監督が作りますけど、その上で土井さんや石井さんがいろいろと遊んでいて、作品に幅が出たと思います。ちょっとした間の取り方も違っていたりして、それが楽しさに繋がっているんじゃないかと。 ーー最後に、今夜放送の最終回に向けて、見どころを教えてください。 峠田:やっぱり、二人の関係がどうなるか、そしてその関係を作り上げる過程に注目してほしいですね。僕らは決して新しい夫婦の形を提示したいとか、大それたことを伝えるつもりはなくて。でも、10話かけて関係性を築き上げた二人が、どういう結論を出すのか、その過程はしっかりと描いているつもりです。どの生き方も否定しないドラマで、きっと様々な登場人物の生き方のどこかに共感できる部分があると思いますので、そういう目線でも楽しんでいただきたいですね。ちょうど原作も最終回を迎えるタイミングですが、原作は原作なりの、ドラマはドラマなりの終わり方をするので、その違いを楽しんでいただくのもいいかもしれません。続編や映画化についてもよく聞かれますけれど、いまのところは何も予定はなく、今夜の放送ですべてを出し切るつもりです。パロディも「そうきたか!」と思ってもらえると嬉しいです。 那須田:逃げ恥らしさが全開になった最終回だと思います。最後までむずむずキュンキュンがいっぱい詰まっているので、結果だけではなく、その過程も楽しんでください。(高根順次)

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