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『A LIFE』木村拓哉、“受け”の演技で新境地 相田冬二がドクター役を読み解く

Real Sound のロゴ Real Sound 2017/02/18 株式会社サイゾー
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 木村拓哉主演ドラマ『A LIFE~愛しき人~』が先行きの分からない展開でますます面白くなっている。2月12日放送の第5話では、平均視聴率13.9%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)を記録し、V字回復を見せた。主演の木村拓哉をはじめ、浅野忠信、竹内結子、松山ケンイチ、木村文乃、及川光博、菜々緒ら錚々たる俳優陣が織りなす演技アンサンブルは、回を重ねるごとに見応えが増していると言える。 参考:木村拓哉 × 浅野忠信 × 及川光博、三つ巴の演技合戦! 『A LIFE』で浮き彫りになる名優たちの個性  先週放送の第5話では、壇上深冬(竹内結子)の脳腫瘍が悪化し、ついに自身の症状を知ることとなった。元恋人であり、深冬の父・壇上虎之助(柄本明)を救うためにアメリカから日本に戻ってきた超一流外科医・沖田一光(木村拓哉)と、副院長兼脳外科医で深冬の夫であり、沖田のかつての親友・壇上壮大(浅野忠信)。愛する者のために何ができるのか、人を救うこととは何なのか、登場人物それぞれが葛藤を抱えながら、物語はこれから後半を迎える。  数々のドラマ・映画で“ヒーロー”を演じてきた木村拓哉だが、本作の演技はこれまでとは違う味わいがある。『無限の住人』のオフィシャルライターでもあり、俳優・木村拓哉を見続けてきたライター/ノベライザーの相田冬二氏は、『A LIFE』での木村拓哉の演技を次のように語る。 「2013年の『安堂ロイド〜A.I. knows LOVE?〜』、2015年の『アイムホーム』と(その間に『HERO』第2シリーズもありましたが)、近年の木村拓哉は典型的な“ヒーロー”ではなく、どこか影と光が織りなす役柄を演じてきました。特にこの2作品では性格の異なる“一人二役”ーー『安堂ロイド』では安堂ロイドと沫嶋黎士、『アイムホーム』では記憶喪失前と喪失後の家路久ーーを演じており、これまでとは違う木村拓哉像を見せるという作り手側からの明確な狙いに応えていたと思います。『木村拓哉は何をやっても木村拓哉』という言われ方をよくされてしまいますが、彼の芝居の在り方は作品ごとに変化しています。

 本作で演じる沖田一光は、設定だけみれば、病院に現れたスーパードクターという従来の“ヒーロー”的主人公と捉えることができますが、このドラマにおいてはまったく“ヒーロー”としては描かれていません。むしろ、壮大からみれば沖田は“悪役”と言ってもいいほどです。木村の芝居も、いい意味で、どこか“浮遊”している印象を受けます。これは『安堂ロイド』『アイムホーム』でも感じたところなのですが、彼が主体となって芝居を進めるというわけではなく、共演者の芝居に対して、それに応える受けの芝居を基本に置いている。つまり、主人公でありながら主人公に見えない。『安堂ロイド』は安堂麻陽(柴咲コウ)、『アイムホーム』家路恵(上戸彩)、彼女たちが木村をどう見て、捉えているかが物語の大きな軸になっていました。それは本作にも通ずるところで、壮大や井川颯太(松山ケンイチ)が沖田をどういう人間として見ているか、つまり他の登場人物に“見られる”演技に徹しています」

 そもそも、木村拓哉の芝居の魅力は“含意”にあるという。 「木村拓哉は物語や台詞が表すもの以外を表現できる役者と僕は捉えています。今起きていることとは別のことを予感させる、あるいは今語られていること以外を醸し出せる。本作において、沖田の過去に何があったのかはまだ語られていませんが、彼の演技の何気ない所作で沖田の背景が想像できるんです。それは彼が役に対して、作品に対して、彼独自の真摯なアプローチを続けているからだと言えるでしょう。それは“木村拓哉的リアリティ”と呼ぶしかないオリジナルな何かです」  相田氏は今作に似ているドラマとして意外なドラマの名前を挙げた。 「スーパードクターが現れたことによって、病院の問題点が明らかになったり、人間関係が改善されたり……というのが病院ものドラマの定番のストーリーでした。『A LIFE』もその枠組みはとっているんですが、オーソドックスな物語とは微妙に異なる不思議な違和感がある。本作にはある種の密閉感というか圧迫感があるんです。なぜそう感じたかというと、「病院の中」でしか物語が展開しないからです。「屋外」がほとんど出てこない。そこから感じたのは、このドラマは“幽閉”された人々の話なのじゃないかと。登場人物全員が、病院、医療という行為、自分自身の過去といった何かに囚われている。救出にやって来たはずの沖田もまた閉じ込められた存在に映ります。これがルールと言わんばかりに、毎話、屋上から病院を捉えた俯瞰ショットが映し出されますが、彼らがこの場所に閉じ込められている象徴のよう思えました。壮大の副院長室にある水槽にも同じことが言えるでしょう。そういった意味では、1967年に放映されたイギリスのカルトドラマ『プリズナーNo.6』をふと思い浮かべました。とある村に幽閉された主人公「ナンバー6」が、村のリーダー「ナンバー2」とやり合いながらどうやって脱出するかという話。『A LIFE』は、サスペンスドラマではありませんし、演出もストーリーもまったく違います。しかし、囚われた心は、はたして解放されるのかどうか。このポイントは共通しています。今後、沖田、深冬、壮大、彼らがどんな結末に向かうのか非常に楽しみです」  相田氏が語るようにドラマに内包されたテーマを読み解いていくのも楽しみ方のひとつ。これまでの医療ドラマとは一線を画す『A LIFE』の後半は、どんな展開が待ち受けているのだろうか。(石井達也)

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