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【中外製薬】新薬期待で時価総額は武田超え、ロシュ傘下“外資モデル”の死角

ダイヤモンド・オンライン のロゴ ダイヤモンド・オンライン 2018/11/09 06:00 週刊ダイヤモンド編集部,土本匡孝
【中外製薬】新薬期待で時価総額は武田超え、ロシュ傘下“外資モデル”の死角 © 画像提供元 【中外製薬】新薬期待で時価総額は武田超え、ロシュ傘下“外資モデル”の死角

メガファーマ(巨大製薬会社)であるスイス・ロシュ傘下入りして17年目の製薬大手、中外製薬。独特のビジネスモデルで業績はうなぎ上り。ついに国内業界で時価総額1位となったが死角はないのか。 (「週刊ダイヤモンド」編集部 土本匡孝)

 武田薬品工業がアイルランドのシャイアーを約6.8兆円で買収してメガファーマ(巨大製薬会社)入りする意向を示してから1カ月後。6月に開催された中外製薬の新製品説明会には、武田薬品の買収会見に見劣りしないくらいの大勢の記者やアナリストが詰め掛けた。

 新製品は中外の血友病治療薬「ヘムライブラ」(一般名エミシズマブ)。投与回数を既存薬より大幅に減らせることなどから、ブロックバスター(年間売上高1000億円以上)入りが確実視されている。記者らの関心は、それが武田薬品・シャイアー連合の主力製品の世界シェアを奪えるのかどうかを見極めることにあった。

 そうした競合事情を差し引いても、武田薬品とは別のスイス・ロシュとの提携というアプローチで既にメガファーマ入りを果たしている“先輩格”で、業績好調の中外に、今再び注目が集まっているのは間違いない(図1、2)。

 中外といえばいまだに、栄養ドリンク「グロンサン」「新グロモント」や殺虫剤「バルサン」を思い浮かべる読者がいるかもしれない。だが、中堅にすぎなかった中外が2002年、ロシュ傘下入りという大決断をしてから、中外の経営方針は大きく転換された。

 現在ロシュの保有株式は議決権ベースで61.3%。新薬開発に集中するため、グロンサンなどは提携直後に売却した。また、ロシュは日本市場で販売力を強化でき、中外はロシュの海外ネットワークを使って自社製品を展開することが可能になった。

 特筆すべきは資本を握られながらも、研究体制も上場も自主経営も維持という、外資買収ではあり得ない特異なビジネスモデルを貫く点だ。ロシュと交渉した永山治会長は、「当時は社内外で懐疑的な意見が支配的だった」と言う。だが結果は吉と出た。傘下入り後の15年で、売上高は2.5倍(17年12月期5341億円)、純利益は5倍(同727億円)となった。

 特異なビジネスモデルであるが故に、「特殊なコストストラクチャー(構造)をマネージしている」と板垣利明CFO(最高財務責任者)は表現する。一例は、売上高原価率だ(図3)。ロシュの世界屈指の研究開発費(図4)から生み出される製品を優先的に日本で販売して安定収入を得られる代わりに、それらロシュからの輸入品は粗利率が低いため、結果として全体の原価率は高い。また国内他社がM&A(企業の合併・買収)で会社ごと製品や開発品を買ってきてのれん代が膨らむ中、中外はその必要がなく、ゼロ。減損リスクにおびえることはない。

 一方、両社の取り決めでロシュが主導権を握る海外の多くの地域では、中外創製品のグローバル開発を委ねられ、業界では「20%が目安」の売上高に占める研究開発費率は17年12月期で17.4%に抑えられている。ロシュ製品による安定収入が見込めるからこそ、自社研究ではチャレンジングなプロジェクトに挑め、競争力のある製品を生む好循環ができている。高い営業利益率(同期18.5%)を維持できるのはそのためだ。

 業績好調とヘムライブラへの期待感から、中外の株価は上昇。ついに9月下旬に、時価総額で国内首位に躍り出た。武田薬品がシャイアー買収検討後の3月以降に20%も株価が下落するという“棚からぼた餅”の要素があったとはいえ、当面、アステラス製薬も抑えて首位をキープしそうだ。

ロシュによる完全子会社化のプレッシャー

 では、中外に死角はないのか。常にささやかれてきたのが、ロシュによる完全子会社化の可能性だ。

 ロシュは中外の上場維持に協力することで合意はしている。だが、UBS証券の関篤史アナリストは「日本では現状維持とみられているが、欧州ではいつでもあり得るとみられている」と話す。つまりロシュがEPS(1株当たり純利益)を上げるための手段が他になく、また中外株が割安で放置されていればあり得るという見立てだ。

 もっとも、中外の17年12月期のPER(株価収益率)は31.9倍と割高な状態で、最近はさらに株価が堅調。故に現状は、「ロシュが追加取得するメリットは小さい」と関アナリストは否定的だ。

 これまでは関節リウマチ治療薬「アクテムラ」、抗がん剤「アレセンサ」、冒頭のヘムライブラと、高い創薬力で業績を拡大し、株価も引き上げてきた。

 だが、開発パイプラインを見ると、それ以降に大型製品になりそうな芽が見当たらない。逆に世界で年2000億円超売れているアクテムラのバイオシミラー(バイオ後続品)開発が他社で進んでおり、数年後には一気にシェアを奪われる恐れもある。ヘムライブラの売上高貢献がそれを補うだろうが、懸念材料だ。

 業界関係者は、「ロシュから常にナイフを突き付けられている。大型製品を出さねばならぬ運命にある」と言ってはばからない。新薬メーカーの王道であるイノベーションで結果を出し続けるしかない。

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