古いバージョンのブラウザーを使用しています。MSN を最適にご利用いただくために、サポートされているバージョンをご使用ください。

あなたの会社の人手不足を救うロボット、「RPA」って何ですか?

ITmedia エンタープライズ のロゴ ITmedia エンタープライズ 2017/03/23 08:00
あなたの会社の人手不足を救うロボット、「RPA」って何ですか?: デロイト トーマツ コンサルティングの信國 泰執行役員 © ITmedia エンタープライズ 提供 デロイト トーマツ コンサルティングの信國 泰執行役員

 「こんな雑用、やってられるか!」

 職場でこう言いたくなった経験がある人は少なくないだろう。人手不足や残業削減の要請などから「より短い時間で、より多くの成果を出せ」というプレッシャーにさらされる人は増えている。

 しかし、「生産性を上げましょう」と言われても、職場にはさまざまな雑務があるのも事実。「どうして自分が……」とモヤモヤしながらも手放せない、そんなタスクを誰しも抱えているのではないだろうか。

 近い将来、そんなモヤモヤをロボットが解決するのが当たり前になるかもしれない。ロボットと言っても、Pepperのような物理的なロボットではなく、RPA(ロボティック・プロセス・オートメーション)と呼ばれるソフトウェア。夢物語ではなく、導入する企業が増えつつある、まぎれもない“現実”の話だ。

 2016年後半には業界団体が立ち上がったり、業務支援サービスを出てきた。2017年は「RPA」がITのトレンドワードになるかもしれない。近年はAIをはじめとするITが、人間の仕事を奪うと語られることも多いが、デロイト トーマツ コンサルティングの信國泰氏によると、RPAは仕事を奪う――というよりも肩代わりしてくれる存在になるのだという。

●営業事務にロボットを導入し、2割超のコスト削減が実現

 デロイト トーマツ コンサルティングでは、自社でもRPAを導入している。ロボットが行うのは営業事務の一部で、特定のメールを受け取ると、その本文や添付ファイルの内容を識別し、ExcelやSAPといった複数の業務システムを利用してデータを処理し、最後に完了報告のメールを送るという一連のステップを自動で行ってくれる。

 実際にロボットが操作しているPCの映像を見せてもらったが、一般的なWindows PCのデスクトップ画面上で、メール、Excel、SAPなどの画面を切り替えながら処理が進んでいった。ロボットというよりも、透明人間が操作をしているイメージだ。

 一連の作業は3分程度で終了したが、人間が行うと30分くらいかかる作業なのだという。使用している各種アプリケーションのレスポンスタイムは変わらないが、次の作業を考えたり、入力欄を探したりといったアイドルタイムや、入力ミスによるやり直し、集中力の持続性など、人間ではどうしても発生してしまうムダな時間が、ロボットの場合は一切なくなる。その結果として、作業スピードが上がるのだ。

 同社では、この仕事に関わっていた10人のうち、約2人分の仕事が1台のRPAで代替できた。「今回のケースでは、導入コストは1年でペイする程度」(信國氏)だという。しかもRPAの稼働率は5%未満。まだまだ働いてもらう余地があるというから驚きだ。

●人間がコンピュータに向かってする仕事を「ほぼ代替可能」

 信國氏によれば、人間がコンピュータに向かって行う作業であれば、ほとんどがRPAで代替できる可能性があるという。経理、人事、総務といったバックオフィス系の業務はもちろん、SNSへの投稿やWebでのデータ収集、レポート作成といったことにもよく使われるそうだ。特に人間がPCを使い、複数の機能やアプリケーションをまたいで行う定型業務を自動化するのに向く。

 「例えばレポーティング作業において、必要な情報が1つのデータウェアハウスに統合されているなら手間も少ないでしょうが、残念ながら日本企業ではさまざまなところに情報が分散していることがほとんどですね。それを人間が集め、品番や部門名などでマージして整形し、PowerPointに貼り付けて提出する……といったことを限られた時間内でやっているわけです。そういうことは、ロボットにやらせれば非常に速くできます」

 為替レートや原油価格などを毎日調べ、注目すべき変化があったらアラートを出す、といった“定点観測”的な業務も、ロボットの作業に向いている。

 「人間が朝出勤してからやっていたことを、ロボットならば出勤前に行ってメールで共有できてしまいます。これも弊社の例ですが、以前は昼に数字の読み合わせから始めていた会議を朝一でスタートできるようになり、数字は各自が確認済みという前提で、考えるところから始めるようにしました。会議の質が変わり、意思決定のタイミングも早くなります」(信國氏)

●人間のような心身のケアが不要な「ロボット」

 RPAの“正体”はソフトウェアではあるものの、「ロボット人材」や「デジタルレイバー(Digital Labor=仮想知的労働者)」などと呼ぶケースが多く、信國氏は「仕事のソーシング先の1つだと考えて欲しい」と語る。

 従来、大企業が業務を効率化するための手法としては「SSC(シェアド・サービス・センター:グループ内の間接業務を1カ所に集めた事業部や別会社)」や「BPO(ビジネス・プロセス・アウトソーシング:間接業務の外注化)」が多かったが、3つ目の選択肢としてRPAが浮上してきたわけだ。

 “人材”といっても人間ではないということから、彼らが人間と比べて圧倒的に有利なのは、「24時間365日働けて、モチベーション管理が必要ない」という点だろう。冒頭に挙げた「こんな雑用やってられるか!」という気持ちを、ロボットは持つことがない。ストレスチェックの実施や長時間労働の削減など、社員の心身のケアに大きな責任を負わされつつある企業にとって、魅力的な働き手なのは間違いない。グローバルで事業を展開する企業にとっては、時差の問題をクリアしやすい点もメリットになる。

 コスト削減という観点では、作業の正確性、業務の多寡に合わせたリソース増減の柔軟性といった点もポイントだ。その上、セキュリティやガバナンスの向上も期待できる。RPAは人間に比べ、勝手に不正を行うリスクが低く、必要であれば全てログを残せるため、何かあったときに情報を開示することもできるためだ。

 このように、RPAのメリットは多岐にわたるため、導入を検討するときには、期待する効果を明確にすることが重要だと信國氏は言う。国によってもその傾向は異なり、米国では「人員削減」、東南アジアであれば「セキュリティの向上」を目的とするケースが多いのに対し、日本の場合は「人手不足の解消」を目指すケースがほとんどだそうだ。

●官公庁や金融機関で100台単位の導入も

 日本では、業種の偏りなく、さまざまな企業でRPAの導入を検討あるいは実装し始めているが、大規模導入につながりやすいのは、金融機関だという。同社では、金融機関や電力やガス、行政機関など、国内向けにサービスを提供してきた組織は業務改善の余地が大きく、RPAの導入先として可能性を感じているそうだ。

 「銀行であれ、保険会社であれ、金融機関には膨大な事務手続きがあります。人海戦術で行っている業務に適用しようとなると、100台単位での導入になることも多いのです。逆に製造業では、良くも悪くも既に血のにじむようなコスト削減努力を重ねているので、まずはお試しで数台入れてみて、徐々に適用範囲を広げていくパターンが多いですね」(信國氏)

 RPAを動かすにはPCのデスクトップ環境が必要だが、導入する分だけPCを用意する――というわけではなく、導入が大規模になれば、サーバに仮想デスクトップ環境を用意して動かせばよい。管理コストやリソースの柔軟性といった面でも有利になる。

●試験導入まで1〜2カ月、現場発で手軽に始められるコスト感

 RPAに実行させる作業を設定するには、まずは一連の作業を人間が行って記憶させ、細かな条件分岐や、繰り返しといった細かなロジックを追加していく。作業の“標準化”に似たイメージだ。

 プログラミング作業自体は高度な技術を要するものではなく、大規模なシステムを開発するのに比べると、RPAの導入費用は非常に安価で、試験導入までにかかる期間も1〜2カ月と短い。そのため、まずはユーザー部門で試験導入してみて、全社的に展開するとなった際に情報システム部門も巻き込むというケースが多いようだ。

 「RPAを導入しても、ロボットの作業結果を、人間が頻繁に確認する必要があるようなプロセスでは非効率です。もともと行っていた作業をそのままロボットに適用するのではなく、より効果が出るように、プロセスの順序を多少入れ替えたり、方法を変えたりするなど、自動化できる範囲を広げられるよう、BPR(Business Process Re-engineering)のような手法を採ることもあります」(信國氏)

 ロボットが仕事を代替するというと、どうしても「人間の仕事がなくなってしまう」というようなネガティブな捉え方をしがちだ。しかし、前述の通り、少なくとも日本においては、人手不足の窮状を救う“救世主”となる可能性が高い。信國氏は、自社におけるRPA導入の結果を社長に報告したときのことをこう振り返る。

 「先ほどのデモを社長に見せたとき、最初の感想は『すごいね』とかではなく、『こんな地味な仕事をみんなよくやってくれていた』だったんです(笑)。人材リソースを、ロボットができるような仕事に使っていたのかと。日本の会社の場合、やはり事業の将来を考えて動くといった、より付加価値が高く、人間が本来すべきことをする時間を創出するために、RPAを使うのがよいと思います」

ITmedia エンタープライズの関連記事

image beaconimage beaconimage beacon