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これから、クラウドビジネスでどう戦っていくのか

ITmedia エンタープライズ のロゴ ITmedia エンタープライズ 2017/04/27
これから、クラウドビジネスでどう戦っていくのか: 画像:ITmedia © ITmedia エンタープライズ 提供 画像:ITmedia

 先日、「2019までに、パブリッククラウドIaaS事業者の90%が、AWSとMicrosoftの市場独占によって市場から撤退を余儀なくされる」という記事を書いたところ、多くの反響がありました。

 私は、日本のクラウドベンダーという立場上、いろいろな方から「AWSやAzureなどの海外勢が市場を大きくリードする中、あなたの会社は今後、どのようにクラウド事業を展開する戦略ですか?」という問いを頻繁にいただきます。

 そこで今後、AWSやAzureに追随するクラウド事業者が、クラウドビジネスでどう戦っていくのか、個人的な意見をまとめてみたいと思います。

●サービスポートフォリオの再構築

 IaaSレイヤーのクラウドサービスは、AWSに代表されるように、規模の経済(スケールメリット)を生かして、事業を拡大しています。AWSなどの海外勢により、サービスの豊富さ、価格競争の面で、非常に厳しい状況が生み出されていくといえます。恐らくIaaSを事業の柱にしている事業者は、市場淘汰の波に飲まれていくことになるでしょう。

 このように、IaaS自体はコモディティ化していることから、AWSやAzureなどのパブリッククラウドサービスも加え、ユーザー企業のニーズに合わせたサービスポートフォリオを構築し、提供していくことが重要となっています。

 例えば、マネージドサービスやセキュリティサービス、ネットワークサービス、コロケーション、ERPといったエンタープライズアプリケーションをサービスポートフォリオに加えて、クラウドだけではなく、トータルかつハイブリッドなICT環境を導入することによる全体最適化のアプローチが考えられます。

 クラウドの導入のフェーズは、イノベーター理論で整理すると、「イノベーター(Innovators:革新者)」や「アーリーアダプター(Early Adopters:初期採用者)」のフェーズを超える、いわゆるキャズムを超えた段階にきており、次のターゲットは「アーリーマジョリティー(Early Majority:前期追随者)」と「レイトマジョリティー(Late Majority:後期追随者)」の段階になっています。

 「イノベーター」はユーザー自身が、自社でノウハウを蓄積し、迅速に導入することができますが、「アーリーマジョリティー」のユーザー企業の場合は、提供する側にとっては、時間をかけて、段階的にクラウドへの導入を推進するアプローチが重要になります。

 「アーリーマジョリティー」は、個々のIaaSを導入するというよりは、クラウドに移行することによるコストの削減に加えて、全体最適化やガバナンスの向上、セキュリティの強化、デジタル化など、攻めの経営にシフトするという視点が重要になり、これらをできるだけワンストップで提供できる事業者のニーズが高まっていくでしょう。

●ポストオンプレミスシステムへの提案力

 今後、ユーザー企業は、オンプレミスシステムからの更改を機に、さまざまな選択肢を得ることになります。

 例えば、そのままオンプレミスとして残す場合もあるでしょうが、今後はオンプレミスでもハイパーコンバージドインフラを選択肢に入れるユーザー企業が増加していくでしょう。ハイパーコンバージドインフラをコロケーション経由で提供するというアプローチも出てきています。また、パブリッククラウドから、より専用型でクラウド環境を構築できるホステッドプライベートクラウドへという選択肢もあります。

 市場予測などを見ると、パブリッククラウドよりもプライベートクラウドの方が市場が大きく、成長率が高いという予測が見受けられます。

 AWSなどが大きく市場をリードするパブリッククラウドよりも、むしろ、価格競争に陥らず、一定の収益が確保できるホステッドプライベートクラウドの提供を強化する事業者も増えていくでしょう。

●クラウドを中心とした運用効率化、ガバナンス強化のためのサービスやソリューションの提供

 クラウドサービスの導入が進むにつれて、AWSやAzureなどを含めた複数のクラウドサービスの効率的な運用管理に関するニーズが高まっています。

 マネージドクラウドサービスやクラウドマネジメントプラットフォームなどを含め、自社でトータルソリューション的に提供できるクラウド事業者や、AWSやAzureなどのクラウドサービスをベースとしてソリューションを提供するクラウドインテグレーターという位置けは、ますます重要になっていくでしょう。

●パートナーアライアンスモデルが鍵に

 企業の基幹系のシステム基盤から、IoTやビッグデータに代表されるデジタルサービスの基盤まで、ユーザー企業のクラウドの活用は多岐にわたっています。

 その中で、パートナーセールス中心のエコシステムから、サービスやソリューションの連携性を高め、共同投資や共同開発も枠組みに入れたパートナーアライアンスの構築が重要となっていくでしょう。

 クラウドビジネスは、戦国時代に例えれば、“戦国武将による勢力(陣地)争い”になりますので、“どれだけ有力武将と組んで陣地を拡大できるか”が重要なポイントになります。

 特に国産のクラウド事業者は、国内市場を中心としたアライアンスが多くの比率を占めているため、グローバルファーストのアライアンスモデルの構築を進めていくことが、この先、日本市場が縮小する中、規模の経済が左右する世界であるグローバルクラウド市場で生き残るための大きな鍵となるでしょう。

●どこまでイノベーターを取り込むか?

 サーバレスコンピューティングやコンテナなどをはじめとする先進的な技術は常に進化を遂げています。海外のクラウド事業者は、イノベーターに位置付けられる先進的なユーザーを取り込んでいくため、これまで想像しなかったようなサービスも展開しています。

 イノベーターを取り込むためのサービス展開は、市場を大きくリードするための大きな武器にはなりますが、この流れにキャッチアップし、リードしていくためには、相当の投資と労力が必要となります。どこまで、イノベーターを取り込み、収益の柱に育てていくかは、意見が分かれるところでしょう。

●多くの事業者にとっては難しい局面に

 クラウド市場は、パブリッククラウドとプライベートクラウドがともに成長し、デジタル化の進展とともに成長率がさらに伸びていくと予測されています。

 しかしながら、市場の寡占化が進み、事業の撤退を余儀なくされる事業者もこれまで以上に出てくる可能性は否定できません。

 クラウド事業者は今後、どのように生き残りをかけて事業を展開していくのか、撤退を選択するのか、サービス強化などを図っていくのか。大きな踊り場にきているといえるでしょう。

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