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ついに日本上陸 Apple Payのこだわりと強みとは?――Apple Pay担当バイスプレジデント ジェニファー・ベイリー氏に聞く

ITmedia Mobile のロゴ ITmedia Mobile 2016/10/26
ついに日本上陸 Apple Payのこだわりと強みとは?――Apple Pay担当バイスプレジデント ジェニファー・ベイリー氏に聞く: Apple Payの設定を行うと、ウォレットアプリに登録済みカードが表示される。登録作業やメインカードの切り替えなどは直感的で分かりやすく、おサイフケータイの時のような難しさはない © ITmedia Mobile 提供 Apple Payの設定を行うと、ウォレットアプリに登録済みカードが表示される。登録作業やメインカードの切り替えなどは直感的で分かりやすく、おサイフケータイの時のような難しさはない

 10月25日、Appleの決済サービス「Apple Pay」が日本でも始まった。これはiPhone 7やApple Watch Series 2で利用できる総合的な決済サービスであり、JR東日本の「Suica」やNTTドコモの「iD」、JCBの「QUICPay」など店頭での非接触IC決済が利用できるほか、アプリやWebサイトを通じて複数のeコマースサービスでネット決済を行う機能も持つ。

 今回、筆者はApple Payのサービス開始にあたり、Apple Pay担当バイスプレジデントを務めるジェニファー・ベイリー氏に話を聞くことができた。Apple Payはどのような思いで作られているのかについてレポートしたい。

●カードより便利で、他の決済サービスより簡単

 「簡単かつ便利に、そして安全に決済することができる。Apple Payではそこにこだわりました」

 インタビューの冒頭、ジェニファー・ベイリー氏がアピールしたのはそこだ。

 現金に代わる決済サービスを作る。その歴史の始まりは20世紀半ばのクレジットカード誕生と、その後20年にわたる世界規模の決済ネットワーク構築が発端だが、21世紀に入ってからはこの分野は一気に“スマートペイメント”として長足の進化を遂げた。日本では電子マネーやおサイフケータイなどがその代表例だが、海外市場でも非接触ICやネット決済を用いたスマートな決済サービスに多くの企業がチャレンジし、今に至っている。

 そのような中で、Apple Payに大きな優位性があるとすれば、多機能さや性能の部分ではなく、「簡単に誰でも使える」ことと、「普通に使っていて安全・安心できる」ということだ。

 とりわけ注目なのは、初期設定や操作がシンプルで分かりやすく、簡単なことだろう。

 例えば日本版Apple Payの目玉機能であるJR東日本のSuica対応では、iPhone 7を手持ちのSuicaカードにかざすだけでカード情報を読み取り、それまで入金されていたSuica残額や定期券情報などを自動的に引き継ぐ。

 一方、クレジットカードの登録では、初期設定画面で登録したいカードの券面をカメラで読み取ると、自動的にカード番号が認識されて、あとは契約期間やセキュリティコードなどを入力するだけという簡単さだ。おサイフケータイの初期設定と比較すると、格段にシンプルで分かりやすい。これならばスマートフォンやアプリの設定に苦手意識を持つ人でも、簡単に使い始めることができるだろう。

 さらにApple Payでは、iOSのさまざまなアプリと連携して“かゆいところに手が届く”使い勝手のよさも実現している。その代表例ともいえるのが、マップとの連携だ。

 「今回のiOSではマップ上で公共交通機関の乗り換え案内ができるようになりましたが、ここで電車の運賃が自動的に計算され、(インストールされている)Suicaの残額が不足していればユーザーに通知してくれます」(ベイリー氏)

 またApple Payを通じてEコマースサービスを利用する際には、単純にネット決済が行われるだけでなく、必要に応じて登録されている住所データが自動的に引き渡されるようになっている。そのためいちいちクレジットカード番号や住所を入力する必要がないのだ。Amazoneでワンクリック購入する感覚で、さまざまなEコマースサービスや宅配サービスが利用できるというのは、とても便利だろう。

 そしてもう1つ。将来的にiPhone 7から次のiPhoneに買い換えた時の対応だが、こちらはSuicaに関してはiCloudを通じたデータ移行でApple Pay内のSuica残額は引き継がれる模様だ。しかし、クレジットカード部分に関しては、iPhoneのTouch IDとひも付いた形でセキュア領域に保管してあるため、基本的には新しいiPhoneで登録し直す形になるという。

●セキュリティだけでなくプライバシーにも配慮

 利便性だけでなく、使いやすさにも配慮したApple Pay。しかし、それら以上にAppleが重要視しているのが、セキュリティとプライバシーだ。

 ベイリー氏は、Apple Payにとって最も大切なのが安全と安心であると強調する。

 「安全性と個人情報の保護はApple Payの基礎となる重要な要素です。iPhoneやiPad、Apple Watchを紛失した場合でも、iPhoneを探す機能で紛失モードに設定していただくことで、簡単にApple Payのご利用を一時停止することができます。リモートワイプ(遠隔消去)を実行していただくことで、端末に保管されるApple Payを含む個人情報を全て消去することもできます。iCloudにログインし、Apple Payの支払いを停止することもできます」(ベイリー氏)

 紛失・盗難時に対する不安の声は、実はおサイフケータイの開始当初から存在した。後発であるApple Payもまた遠隔ロックや遠隔削除など、幾重ものセキュリティ機能で守られている。実際の安全性でいえば、クレジットカードやSuicaカードそのものを持ち歩くよりもはるかに安全だ。

 そしてAppleがもう1つ留意しているのが、プライバシー保護についてである。

 「Apple PayをiPhoneに設定した場合も、クレジットカード番号はiPhone自体やAppleのサーバに保管されることはありません。iPhoneには、各デバイス固有のアカウント番号が発行され、暗号化された状態で安全にデバイス内のセキュアエレメントに保管されます。Apple Payをご利用いただく際、お客さまのクレジットカード番号が加盟店に通知されることはありません。もちろん、Apple自身がiPhoneユーザーの購買履歴を収集したり、分析して利用するといったこともしません」(ベイリー氏)

 Appleは以前からユーザーのプライバシー保護の活動に積極的な姿勢をとっていたが、それはApple Payでも同様なのだ。そこがApple Payが安全なだけでなく、安心であるゆえんともいえる。

●当初のカバー率は80%。今後の対応拡大に期待

 このようにApple Payはとてもよく考えられたサービスだが、他方で、その利用にはクレジットカード側の対応が欠かせない。現時点でApple Payに対応しているのは、イオンカード、オリコカード、クレディセゾン、JCBカード、トヨタファイナンスのTS CUBIC CARD、ビューカード、三井住友カード、楽天カード、NTTドコモのdカード、KDDIのau WALLETクレジットカード、ソフトバンクカードなど。

 また近々「三菱UFJニコスのクレジットカードも対応する予定」(ベイリー氏)だという。

 他方で、アメリカンエキスプレスカードやダイナースなど老舗クレジットカード会社のプロパーカードが対応しておらず、Apple Payのネット決済全般でVISAブランド発行のカードは使えないといった課題もある。

 「確かにまだ完璧とはいえませんが、(Apple Pay開始初期で)日本で発行されているクレジットカードの80%程度は何らかの形でApple Payに対応しています。これはアメリカ本国でのApple Pay対応初期よりも大きい数字です。

 日本はApple Pay対応としては12番目の国となりますが、Appleにとって、とても重要で大切な市場です。だからこそJR東日本のSuicaに当初から対応し、多くのクレジットカードに対応しました。そして今後も積極的に対応拡大を進めていきたいと思います」(ベイリー氏)

 日本は非接触ICを用いた決済サービスにおいて世界に先行し、先行しすぎたがゆえに「ガラパゴス市場だ」とやゆされたこともあった。しかし実際は、JR東日本やNTTドコモ、JCBなどが不断の努力でインフラを整備したおかげで、どの国よりも広い範囲・高い密度で、非接触ICの決済サービスが利用できる土壌ができている。

 そしてAppleは、Apple Payを日本市場に合わせて最適化することにより、街中にあるこれらの決済インフラを、おサイフケータイよりも使いやすくスマートに利用できるようにした。iPhoneユーザーはもちろん、古くからのおサイフケータイユーザーにとっても、Apple Payは注目のサービスといえるだろう。

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