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なぜAndroid? 約2万5000円という安さの秘密は? 「VAIO Phone A」インタビュー

ITmedia Mobile のロゴ ITmedia Mobile 2017/04/25
なぜAndroid? 約2万5000円という安さの秘密は? 「VAIO Phone A」インタビュー: Androidを採用した「VAIO Phone A」 © ITmedia Mobile 提供 Androidを採用した「VAIO Phone A」

 OSにWindows 10 Mobileを採用した「VAIO Phone Biz」の発売から約1年、VAIOが、Androidを搭載した「VAIO Phone A」を4月に発売した。同社のフラグシップモデルであるVAIO Zをモチーフにしたデザインやスペックはそのままに、OSだけをAndroidに切り替えたのがVAIO Phone Aの特徴だ。Androidを採用したことで、もともとハードウェアとして備えていた3GとLTEの「デュアルSIM/デュアルスタンバイ(DSDS)」や、ドコモのVoLTEなどにも対応。コンシューマー向けの端末として、購入のハードルが下がった格好だ。

 VAIOがAndroidを採用したというだけでもニュースといえそうだが、この機種は、その価格にもインパクトがあった。プロセッサにSnapdragon 617を採用し、メモリ(RAM)は3GB、5GHz帯のWi-Fiにも対応とミッドレンジ上位並みのスペックを備えながら、実勢価格は2万5000円前後と、抜群のコストパフォーマンスを誇る。中には、SIMカードとセットで2万円を下回る価格をつけているMVNOも存在する。

 ただ、VAIOといえば、やはりWindowsを搭載したPCというイメージが強い。実際、VAIO Phone Bizが登場した際には、“これぞVAIO Phone”という意味も込め、日本通信が発売した「VAIO Phone」と比較する形で、“真VAIO Phone”などとも呼ばれていた。そのVAIOの名を冠したスマートフォンのOSに、再びAndroidを採用した狙いはどこにあるのか。また、ここまでの低価格を実現できた背景も、気になるポイントだ。VAIO Phone Aを今、発売する狙いとは。VAIOで同モデルの企画、開発に携わった商品企画部 商品企画担当の岩井剛氏と、ビジネスユニット2 ダイレクターの林文祥氏に聞いた。

●このタイミングでAndroid版を販売する理由

―― VAIOといえば、やはりWindowsだと思っていたので、Android版は出ないと思っていました。なぜ、Androidを採用したのでしょうか。

岩井氏 前回のインタビューでもお話しましたが、もともと、企画としてAndroidかWindowsのどちらかで出すということが決まっていました。企画としては、ビジネス向け、法人市場向けのスマホを出すということが決まっていただけで、ハードウェアとしては、どちらにも対応できる形で作っていました。その後、Continuumやセキュリティ、MDMなどを考えると、Windowsの方が当初ターゲットとしている市場には適していると判断しています。

 ただ、法人向けスマートフォンのWindowsが、当初の想定より(普及に)時間がかかっています。もう少しスピード感を上げてスマートフォンを広げていきたいという思いもあり、このタイミングでAndroid版を販売することになりました。

―― Androidを採用したことで、ターゲットとなるユーザー層も変わるのでしょうか。

岩井氏 とはいいつつも、一般的な格安スマホに対抗して、大々的に売りたいというよりは、ターゲットをビジネスパーソンに明確化しています。Bizとある程度似ているところはありますが、法人向けの「Biz」に対し、個人で買って仕事で使う「A」という違いがあります。

―― すでに発売されていますが、初速はいかがでしたか。

岩井氏 当初の想定よりは、かなりいいですね。特にいいのがMVNOの販路ですが、自社(VAIOストア)に関しても、想定よりいい感じで立ち上がっています。

―― やはり、価格でしょうか。あの質感、スペックで2万円台半ばは、正直インパクトがあったと思います。

岩井氏 その辺のバランスは、すごくいいと見ていただいていますね。とにかく安い端末がほしいというより、ある程度商品を選べるリテラシーがあり、バランスがいいと思っていただける層に買っていただけているようです。

―― 計画より、販売台数を増やす可能性もありますか。

岩井氏 まだ初速ですからね。この勢いが下がるかもしれませんが、今のまま続いていけば、ありうる話ではあります。

●2万5000円前後の価格を実現できた秘密

―― それにしても、あの価格はどうやって実現したのでしょうか。

岩井氏 Bizとハードウェアを共通にしていることで、抑えられるコストがかなりあります。今回は、新規にハードウェアを作ったわけではなく、金型も基板も新規に起こしていません。ドコモさんのIOT(ネットワークの接続試験)も取得していないので、そこに関わる認証、テストのコストも発生していません。また、Bizの方も価格は改定していますが、これも全体としてコストを下げた結果です。

―― ハードウェアの調達も、効率的にできているということですか。

岩井氏 チップセットも当初からAndroidは視野に入れて選んだものです。結果を見れば、Androidも一緒に出すことができ、効率よく運用できました。

―― とはいえ、2万円台後半ぐらいにはなるかなと思っていました。

岩井氏 いくらだったら売れるのかは、慎重に検討してきたつもりです。正直なところ、2万9800円、3万4800円という案もありました。ただ、このタイミングでAndroidのSIMフリースマートフォンを出す際には、何かしらのインパクトがないと注目されませんから。

―― VAIO Phone Biz用に余ったハードウェアを使っているということはありますか。

岩井氏 直球を投げますね(笑)。そこの切り分けはしにくいのですが、ベースのユニットは海外の協力メーカー(ODM)から一括で送ってきたものです。それを安曇野で、これをWindows、それをAndroidにと分けています。考え方次第ですが、市場のニーズに応じて、Aにするのか、Bにするのかの作業をしています。

●Android 7.0ではなく6.0を採用した理由

―― 企画の検討は、いつ頃からスタートしたのでしょうか。

林氏 検討自体は、去年(2016年)の夏ごろからですね。

岩井氏 あとは、ビジネス的な判断で、いつ出せるかを模索していました。

―― VoLTEやDSDSは、OSがAndroidだからサポートできたということでしょうか。

岩井氏 OSというより、ミドルウェアの方ですね。その機能をサポートする、しないのポリシーによって決まっています。VoLTEやDSDS、キャリアアグリゲーションなどは、今年(2017年)のSIMフリースマートフォンでトレンドになる機能です。この価格で、いち早く搭載できたのは大きいのではないでしょうか。

―― 対応バンドも増えています。

岩井氏 当初は国内バンドを中心に開発してきましたが、やはり海外仕様への対応を求める声が強く、その中で3GのBand 5を使えるようにしました。これは、主に国内ユーザーが海外渡航することを想定しています。

―― 海外での販売も検討されているのでしょうか。

岩井氏 海外での販売ではなく、法人で海外赴任者が出る場合の問い合わせが多いですね。

―― 一方で、このタイミングでAndroidが6.0なのが、少々不思議に思いました。アップデートの予定も含め、なぜこのバージョンなのかを教えてください。

岩井氏 今のところ、具体的に、いつ、どういう形でアップデートするのか、そもそもしないのかも含めて、申し上げることができません。OSのバージョンについては、6.0である程度まとまったと思っています。

 7.0に上げるメリットは細かいところではありますが、大きいのはマルチウィンドウぐらいで、5.5型、フルHDの端末で恩恵を受けられるかどうかは、正直微妙なラインです。ターゲットがビジネスパーソンということもあって、ある程度仕事で信頼して使えることに主眼を置きました。今まで使っていたアプリが使えなくなるより、慣れた環境で安心して使えることを重視しています。

林氏 重視したのは安定性です。6.0で出しましたが、ご存じのように、Android OSは毎月のようにセキュリティパッチが配信されています。その辺をしっかりサポートした方がいいというのが、内部で検討した際の結論です。今急いで7.0にアップデートするよりも、バグ出しがされている6.0を継続的に提供した方が、安定した環境で使えていいと判断しました。

●VAIO Phone BizのCreators Updateも準備中

―― ユーザーインタフェースですが、Androidそのもので、VAIOの手が入っていません。もう少し、VAIOらしさのようなものがあるといいなと思ったのですが、いかがでしょうか。

岩井氏 PCで長年培ってきたVAIOのイメージがあるとは思いますが、今のVAIO株式会社として発売しているVAIOは、ほとんど素に近いOSが搭載されています。昔はプリインアプリがてんこ盛りで、まずアンインストールから始めるというのはありましたが(苦笑)。デフォルト環境の軽さに価値を感じていただけるお客さまも、多くなっています。

―― PCとの連携についてはいかがですか。

岩井氏 その辺に新しいものを入れているわけでもありません。ただ、AndroidにはGoogleのソリューションがあり、Microsoftのクラウドサービスも一通り出ています。そのどちらかを使えば、連携も快適にできます。もちろん、スマホを操作しなくてもテザリングができるようなことはAndroidでもあるといいですが、やはりそういうものはWindowsならではです。

―― そのWindowsを搭載したVAIO Phone Bizについてですが、PCではCreators Updateの提供が開始されました。これについては、どうされていくのでしょうか。

岩井氏 Creators Updateも、今、準備しているところです。

林氏 事前にインサイダープログラムは配布済みで、弊社の中で問題がないか、検証をしています。Windowsは、Creators Updateで、さらにパワーアップします。想定よりちょっとペースが遅いのは事実ですが、スマホはやはり売った後が大事です。どうすればお客さまが安心して使えるのか。売り切りのスタイルになってはいけません。

―― Android版を開発する際に、何か苦労はありましたか。

林氏 特にこれというハードルはありませんでした。OSの大部分が安定していたので、あとは弊社のプラットフォームとファームウェアのマッチングだけでした。

岩井氏 Windowsを作ったときの苦労に比べれば(笑)。

―― そこまでスムーズだと、Androidを自分で入れたいという人も出てきそうですが。

林氏 いったん出荷して購入されたものは、お客さまの資産になります。それを100%保証しなければいけないのは、やはり難しい。そういうことを考えると、OSは分けて販売した方がいいかなと思っています。

―― ちなみに、auのネットワークへの対応はいかがでしょうか。

岩井氏 弊社から言えるのは、auのSIMカードはサポートできないということです。仮にSIMを認識しても、LTEの対応バンドが1だけなので、実用的に難があります。ですから、そこは保証対象外にしています。

林氏 「使えた」という声も聞こえてきますが、そこはあくまで自己責任でお願いしています。

●防水やおサイフはあえて搭載せず

―― 目標はどこに置いているのでしょうか。

岩井氏 直接このビジネスを担当している私たちからすると、次のモデルを出していいと判断できる結果を出すことが、1つの目標です。

―― 今回は価格などである程度差別化できましたが、AndroidだとWindows以上にそこが難しい印象はあります。

林氏 販売店さん、エンドユーザーさんからは、既にいくつかのフィードバックをもらっています。その中で、われわれが強みを出せるのは、安心して使っていただけることです。今回、VAIO Phone Aも「安曇野フィニッシュ」で弊社がしっかりサポートしている。お客さまの安心を第一に、それを続けていけば受け入れられるのではないでしょうか。

岩井氏 差別化という意味では、出したときの反響として、「防水がない」「おサイフケータイ」がないという声が出ていましたが、そこはある程度分かってやっていました。防水、おサイフは日本のスマホの最大の特徴ではありますが、そこであえて同じ土俵に立つより、通信やスペックが高めのところで戦っている海外メーカーさんと同じ路線に行きました。スペックはいいが、海外メーカーだとちょっと不安という人に、安心感や堅牢(けんろう)性を評価していただければ、それは差異化になります。その点では、ちょうどどこもやっていないポジションが作れつつあります。

 ただ、今後、(後継機を出すとした場合)防水がどのくらいニーズがあるのかは議論の余地があるかもしれませんが、おサイフや指紋センサーはまず考えなければいけないとは思っています。

―― 最後に1点、VAIO Zで話題になった、コーポレートカラーの「勝色」を出すのは、やはり難しいのでしょうか。

岩井氏 ある程度の数を出さないと難しいところがあり、色を出すのも大変です。VAIO Zの勝色も、相当苦労したので(苦笑)。また、VAIO Zは全部アルミパーツでしたが、VAIO Phone Aは素材がいくつかに分かれています。素材が違うと、角度によって全然違う色に見えてしまう。こればかりは、デザインを変えないと、難しいかもしれません。

●取材を終えて:PCとの連携が欲しい

 AndroidにOSを載せ替えたVAIO Phone Aは、そのコストパフォーマンスが大きな話題を呼んだ。MVNOの採用も多く、初動は順調なことがインタビューからはうかがえた。ドコモのVoLTEが利用できるSIMロックフリースマートフォンも、まだ種類が少ない。音声通話を重視するビジネスユーザーにとっても、悪くない選択肢といえるだろう。

 一方で、インタビュー中も指摘した通り、やはり主要事業であるPCとの連携機能は、もう少し重視してほしかったのが本音だ。MicrosoftのOfficeをプリインストールしたり、VAIO独自のWindows風ホームアプリを配布したりするなど、何らかの方法はあったはずだ。次のモデルが出るようであれば、世界観の面での“深化”にも期待したい。

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