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なぜDMPは必要か、そしてなぜDMPで失敗するのか

ITmedia エンタープライズ のロゴ ITmedia エンタープライズ 2016/11/10
なぜDMPは必要か、そしてなぜDMPで失敗するのか: 画像:ITmedia © ITmedia エンタープライズ 提供 画像:ITmedia

 企業のビッグデータ活用という文脈で、昨今よく耳にするようになったDMP(Data Management Platform)。企業が持つ顧客データやマーケティングデータ、Web上だけではなくリアル店舗などのオフラインのデータも含めた、さまざまなデータを統合的に管理することにより、マーケティング活動全体を最適化するためのプラットフォームです。

 さて、読者の皆さんは「DMP」と聞いてどのようなイメージを浮かべますか?

 「成功事例を聞かないからよく分からない」「導入がうまくいっていない企業が多いと聞く」

 このように、皆さんが抱く印象はあまり良くないかもしれません。一時期DMPが話題になり、さまざまな企業が導入に挑戦しましたが、失敗するケースが多かったのは事実です。本連載では、DMP導入に失敗してしまう原因とその解決策を紹介しながら、皆さんのDMPに対するイメージをポジティブなものに変えていければと思っています。

●2016年、DMPをあらためて定義する

 データ提供企業が保有しているオーディエンスデータ(属性情報など)を蓄積・管理するプラットフォームを指す「オープンDMP」。自社で保有する顧客や潜在顧客の行動を一元管理するデータベースを指す「プライベートDMP」。DMPは大きくこの2種類に分かれます。昨今は、オープンDMPはプライベートDMPを運用するためのツールという位置付けに変わりつつあることもあり、この連載ではプライベートDMPのことをDMPと呼びます。

 さて、あらためて「DMP」とは何でしょうか。記事冒頭でも説明していますが、私なら「インサイトとアクション、そしてそのために必要な全て」と言います。

 DMPといえば、今まではオーディエンスデータに基づく広告やメールの配信といった施策、“アクション”の部分にばかり注目が集まっていました。その一方で「オーディエンスを構成するセグメントをどう発見するか?」「なぜそのオーディエンスと判断したのか?」という洞察、“インサイト”についてはあまり語られなかったように思います。

 では、そもそもインサイトとは何でしょう。

 インサイトリサーチのトップランナーであるデコム代表の大松孝弘氏は、インサイトを「顧客を動かす“隠れた”心理」と表現しています。アクションは、発見した課題に対する仮説を立てた結果、起こす行動というわけです。

 ならば、その課題をどうやって見つけるか、課題を発見したとして、良い仮説をどう立てるのかが重要になります。この課題発見と仮説構築の役割を「インサイト」が担っているのです。インサイトは“心理”という人間の感情を扱うので、裏付けとしてファクトが欠かせません。そうでなければ「単なる思い付きになる」と大松氏は警告しています。

 DMPとは、まさに人間の隠れた心理の根拠、裏付けとなる数字を担う存在なのです。

●「未知の未知」からインサイトを発見するためにDMPを活用する

 「Lean Analytics」(著者:アリステア・クロール、ベンジャミン・ヨスコビッツ)という本の中で、ドナルド・ラムズフェルド元国防長官の「unknown unknowns」(未知の未知)という発言が分析に関する名言として紹介されています。以下のマトリクス図を見てください。

 多くのマーケターが日々向き合っているのは「既知の未知」の部分でしょう。昨日のCV件数、先週のCTR、先月の訪問者数。知るためのリポートが山のように届くようになっているはずです。一方でDMPは「未知の未知」を脱するためにあります。

 例えば、コンビニのおでんが秋に一番売れるのは、今になっては常識ですが、実際に誰かが始めるまでは「未知の未知」だったはず。気温が下がり始める時期と商品の売れ行きの相関関係に注目した人は、インサイトを発見する持ち主だったといえるでしょう。

 つまりマーケターが(恐らく顧客自身も)気付いていない「未知の未知」から、データに基づき課題を発見し、筋の良い仮説を立てる役割をDMPが担っています。

 そう考えると、DMPの成功事例があまり出回らない理由も分かります。データドリブンな組織に成長した企業にとって、DMPは今やマーケティングの根幹を成すものです。成功した理由を聞こうにも、継ぎ足しの秘伝のタレが自慢の鰻屋さんに「タレの成分を解析させてくれ」と言っているようなもので、口が重くなるのは当たり前の話でしょう。

●それは失敗ではない。成功する途中で歩みを止めたにすぎない

 では、どうすればDMPをうまく導入できるのでしょうか。以下の図は、私がDMPについて取材する過程で発見した「3×3の落とし穴」です。DMPに関する問題は、大抵この3×3のマス目にマッピングできます。広告主をユーザー企業、代理店をSIerと読み替えると分かりやすいかもしれません。

 「経営陣を説得できない」「情報収集だけで終わってしまう」「情シスとマーケの仲が悪い」「インサイトが発見できない」「目的がデータを集めることに変わってしまった」――。こんな言葉を見てドキっとした方はいませんか?

 個人的にもったいないと思っているのは、トラブルが起きると自然と“撤退”の選択肢が取られることです。かの松下幸之助は「失敗したところでやめてしまうから失敗になる」と言ったそうです。取材で知った失敗事例も、そこで止めてしまったからこそ“失敗”となったのであり、攻略の方法を変えれば、成功につながった可能性は大いにあります。

 あと1センチ手を伸ばせれば――。この連載タイトル「DMP成功まで、あと1センチ」にはそんな意味を込めています。次回は、DMPの計画段階にありがちな話で「DMPを導入しようと声を掛けても“面倒くさそう”という反応ばかりで、なかなか話が前に進まない」という事例をご紹介します。

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