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なぜSAPはPaaSの名称から「HANA」を外したのか

ITmedia エンタープライズ のロゴ ITmedia エンタープライズ 2017/04/24
なぜSAPはPaaSの名称から「HANA」を外したのか: 会見に臨むSAPプラットフォーム&イノベーション担当シニアバイスプレジデント兼グローバル・ゼネラルマネージャのロルフ・シューマン氏とSAPジャパン バイスプレジデント プラットフォーム事業本部長の鈴木正敏氏 © ITmedia エンタープライズ 提供 会見に臨むSAPプラットフォーム&イノベーション担当シニアバイスプレジデント兼グローバル・ゼネラルマネージャのロルフ・シューマン氏とSAPジャパン バイスプレジデント プラットフォーム事業本部長の鈴木正敏氏

 「SAPはこれから、従来のERPをはじめとしたアプリケーションだけでなく、アプリケーションを熟知した当社ならではのプラットフォームにも一層注力していきたい」――。SAPプラットフォーム&イノベーション担当シニアバイスプレジデント兼グローバル・ゼネラルマネージャのロルフ・シューマン氏は先頃、SAPジャパンが開いた記者会見でこう強調した。

 会見の内容はクラウドプラットフォームの強化について。これまで「SAP HANA Cloud Platform」と呼んでいたPaaSを「SAP Cloud Platform」に改称したのをはじめ、新サービスの提供、日本でのデータセンターの開設、パートナー企業との協業などが発表された。シューマン氏の冒頭の発言は、SAP Cloud Platformへの力の入れようを示したものである。

 改称前のSAP HANA Cloud Platformは2013年5月に発表され、継続的に改良されてきた。日本では2016年6月にSAPジャパンが会見を行い、本格的な事業展開を図ってきた。当時のSAPの動きやサービスの内容については、2016年6月13日掲載の本コラム「SAPがHANA Cloud Platformに込めた大いなる野望」を参照いただきたい。

 ちなみに上記コラムでは、グローバルな導入実績として昨年5月末時点で2610社と記しているが、今回の会見でシューマン氏は現在6500社の顧客ベースがあることを明らかにした。とすると、1年足らずの間に顧客数は2.5倍に膨らんだことになる。

 また、今回の会見では、Appleとの提携に基づいた「SAP Cloud Platform SDK for iOS」やIoT(Internet of Things)活用の基盤となる「SAP Cloud Platform IoTサービス」などの新サービスや、東京データセンターの稼働と大阪データセンターの2017年下期開設予定も発表している(図1)。

 さらにパートナー企業との協業では、グローバルで600社から1000種類を超えるSAP Cloud Platform対応アプリケーションが既に提供されているほか、日本でもおよそ50社のパートナーが今回の発表に賛同を表明した(図2)。

 このほか、SAP Cloud Platformの認定資格を3月から開始しており、対象となるトレーニング受講者は国内で3000人を超えているという。

●HANAだけでなく他のデータベースも選択できるPaaSに

 ここまで、まずは今回の発表内容を紹介してきたが、あらためて、なぜSAPはこれまでHANAを前面に出していたPaaSの名称をSAP Cloud Platformに変えたのか。シューマン氏はその意図を次のように説明した。

 「これからのPaaSは、企業における既存システムのクラウドへの移行とともに、IoTやビッグデータの活用といった新たなIT環境への対応が求められる。そのためには、HANAだけでなく、さまざまなオープンソースやAI(人工知能)に関連する技術を利用できるようにして、顧客に最適なソリューションを提供できるようにすることが重要だ。顧客が望んでいるのは、オープンでアジャイルな開発が可能なPaaSである」(図3参照)

 さらに、会見の質疑応答で、「HANAには先進的なイメージがあるのに、なぜ外したのか」と少々しつこく聞いたところ、同氏はこう答えた。

 「SAP Cloud Platformはさまざまなデータベースを利用できるよう設計しているが、これまでのHANA Cloud Platformだと、データベースはHANAしか使えないと受け止められてしまう。HANAはもちろん、SAP Cloud Platformにおいても中核となるが、顧客にとっては選択肢が非常に重要だ。そうした考え方から、改称に踏み切った」

 これは、今まで「HANAのためのPaaS」を打ち出してきたSAPが、端的にいえば「HANAも要素の1つにしたPaaS」に戦略転換したということだろう。とすると、単なる改称ではなく、SAPがクラウド事業で何を目指しているかという根幹にも関わる話だと受け止めるべきである。

 今回のPaaS改称の発表を聞いて、Microsoftが2014年4月にIaaS/PaaSの「Windows Azure」を「Microsoft Azure」に改称したことを思い出した。同社の改称もWindowsをはじめとした自社のプラットフォームだけでなく、さまざまなOSや言語、ミドルウェアに対応したクラウドプラットフォームにしたいという意図があった。結果、今では例えばLinuxベースの利用が全体の3割を超えるほどになっている。

 その意味でいえば、SAPの意図もMicrosoftと同じだろう。さらに、SAPはこれから巨大なERPの顧客ベースをSAP Cloud Platformに移行もしくは連携させる戦略に打って出るだろう。シューマン氏の冒頭の発言にあるように、「アプリケーションを熟知したSAPならではのプラットフォーム」がどのようなものになるのか、注目しておきたい。

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