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まさに大人の寓話! 破天荒なロードムービー『僕とカミンスキーの旅』が問いかけるもの

Real Sound のロゴ Real Sound 2017/05/09 株式会社サイゾー
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 ドイツ歴代興行記録を更新し、日本でも多くの笑いと感動を誘った名作『グッバイ、レーニン!』(03)のヴォルフガング・ベッカー監督と主演俳優・ダニエル・ブリュールのコンビが12年ぶりに再タッグ組んだ映画『僕とカミンスキーの旅』。盲目の天才画家と一攫千金を狙う美術評論家の青年による、奇想天外な旅を描く。 参考:実写版『美女と野獣』が描く“愛の試練” 現代に問いかけるメッセージとは   スイスの山奥で隠遁生活を送る天才画家マヌエル・カミンスキー(イェスパー・クリステンセン)。彼は、マティス最後の弟子でピカソの友人。そして、アンディ・ウォーホルなどポップアート隆盛の60年代NYで、“盲目の画家”として脚光を浴びた。しかし、突如表舞台から姿を消したため、伝説的な人物となっている。  そんな中、31歳の無名の美術評論家であるゼバスティアン・ツェルナー(ダニエル・ブリュール)が、金と名声ほしさに、カミンスキーの謎に満ちた人生の真実を暴こうとする。彼にインタビューし、センセーショナルな伝記を発表して一山当てようと企んでいたのだ。そこで85歳の年老いたカミンスキーを訪ね、彼が若き日に愛した女性テレーゼ・レッシング(ジェラルディン・チャップリン)のもとへ連れて行くことをネタに自宅から誘い出す。様々な出逢いやトラブルが続くにつれ、ゼバスティアンはミステリアスな老画家に親しみを覚え始めるのだった。そこから2人の旅は奇妙な方向へと展開し、思いがけない終着点に向かっていく。予定調和にならない老人と青年が織りなす破天荒なロードムービーは、物語の展開だけでも充分面白い。加えて、アート好きやアート業界を精通している人ならニヤリとさせられる風刺も利いているから痛快だ。  ヴォルフガング・ベッカー監督の代表作である『グッバイ、レーニン!』は、母親にやさしい嘘をつき真実をいかに隠していくかをコメディ調で描いていた。さらに、そこから見える東西ドイツの体制や、統一に向けて当時ドイツ国民にもたらされた生活、彼らが理想とした社会なども映し出されている。一方、『僕とカミンスキーの旅』では、天才画家という偏屈な爺さんのどこまでが嘘なのか分からない真実を追求していく。騙し騙されの関係が変わっても、ひとつの理想を構築するために振り回されるダニエル・ブリュールというスタイルは変わらない。また、盲目の画家という話題性でメディアが祭り上げたカミンスキーという人物像には、アート界への皮肉もたっぷりと表現されている。監督は本作でも変わらずコメディとして“問題”をオブラートに包みつつ、その人にとって何が正しいのか、真実よりも大事なものは何かを観客に問いかけているのだ。  原作者であるダニエル・ケールマンが「『僕とカミンスキーの旅』は、様々な意味で“見えない”ことについて、野心と芸術について、嘘と真実とメディアについて、また若者と老人の永遠の対立について語る映画だ」(引用:本国オフィシャルプレス)とコメントしていることからも、この物語が一筋縄ではいかないロードムービーであることが伺える。  また、本作では監督の遊び心満載の演出が多数用意されていた。まずは冒頭のピカソ、ザ・ビートルズ、ウォーホル、ヒッチコック、ウディ・アレンらのポートレートを挿入したカミンスキーの半生を綴るフェイクドキュメンタリー映像で観客の心をグッと掴む。さらに、全8章構成の幕間での実写から絵画へモーフィングするヴィジュアル、エンドロールでのどこかで見たことのあるような様々な絵画の映像だけでもアート作品として一見の価値あり。この虚実が変幻自在に入り乱れる映像演出が、アート界やカミンスキーのフェイク感を色濃くしている。ほかにもブリュールはじめ、物語と同様にまるでおとぎ話のような出演者たちも、この作品の魅力のひとつだ。  伝記は無事に完成するのか? 失われた愛を取り戻すことはできるのか? 本当にカミンスキーは盲目だったのか? そしてこの旅でゼバスティアンは人生の意味を見いだすことはできるのか。最後にカミンスキーがゼバスティアンに与える謎めいた人生訓は、観るものそれぞれに答えがきっとあるはず。謎解きの物語、アートなヴィジュアル、そして魅力的なキャストが見事に混ざりあう『僕とカミンスキーの旅』はまさに大人の寓話である。(本 手)

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