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まるで“現場に瞬間移動”したような感覚 “HoloLens×建設”がもたらすインパクト

ITmedia エンタープライズ のロゴ ITmedia エンタープライズ 2017/04/21
まるで“現場に瞬間移動”したような感覚 “HoloLens×建設”がもたらすインパクト: 日本マイクロソフト社長の平野拓也氏(画面=左)と小柳建設社長の小柳卓蔵氏 © ITmedia エンタープライズ 提供 日本マイクロソフト社長の平野拓也氏(画面=左)と小柳建設社長の小柳卓蔵氏

 「まさに現場にテレポーテーションしたような感覚に陥る。いつでもどこでも、現場の状況を確認できる」――。これは建築分野でMicrosoftのMR(Mixed Reality)デバイス「HoloLens」の活用を始めた小柳建設の社長、小柳卓蔵氏の言葉だ。

 新潟県三条市に本社を置く総合建設業の小柳建設は、HoloLensで建築業界をどのように変えようとしているのか。4月20日の発表会で、同社と日本マイクロソフトのトップが説明した。

 両社が開始したのは、「HoloStruction(ホロストラクション)」と名付けられた協業プロジェクト。日本マイクロソフトは2017年1月から、日本の開発者や法人向けにHoloLensの提供を開始しているが、今回のプロジェクトは米本社と小柳建設が直接契約を行い、米本社内の支援チームと密な連携を図りながら開発を行っている。こうした米本社との連動プロジェクトは、日本航空に次いで2社目の事例。地方都市の中堅建設会社が、米本社と連携するのは異例で、大きな注目を集めている。

 日本マイクロソフトの社長を務める平野拓也氏は常々、HoloLensを「(誰もが使える)みんなのMR(Mixed Reality=複合現実)」にしたいと話しており、小柳建設の取り組みは、それを推進する大きな一歩になる。

●建築×HoloLensで何が変わるのか

 今回、小柳建設が取り組んでいるのは、「業務トレーサビリティ向上の推進」「BIM(Building Information Modeling)/CIM(Construction Information Modeling)データの活用試行」「新しいコミュニケーションアイデアの試行」という、3つのコンセプトモデルだ。

 「業務トレーサビリティ向上の推進」では、計画、工事、検査、アフターメンテナンスの全ての業務を可視化。業務のトレーサビリティを確保し、事業や業務の透明性を図る。小柳氏は、「この取り組みは、政府が推進するi-Construction(建設現場へのICT導入による生産性向上の取り組み)の後押しにもつながる」とみている。

 2つ目の「BIM/CIMデータの活用試行」では、HoloLensで表示できるよう設計図を3D化。検査に必要なデータや文書も同時に表示して、設計図をベースとした立体のイメージを見ながら検査や議論を行えるようにする。

 「建設現場における工事の検査における検査員不足や負担増を解消できるほか、BIM/CIMデータを活用した新たな検査基準の検討や、検査文書の作成負担軽減などに取り組みたい」(小柳氏)

 3つ目の「新しいコミュニケーションアイデアの試行」では、3Dグラフィックの活用により、HoloLensに映し出される図面や、現場の視界を共有する機能のほか、実物大のスケールによる映像で、その場にいるかのような映像体験を実現する。

 実際にHoloLensで小柳建設の利用環境を体験した平野氏は、「まさに現場にいるような雰囲気を体験できた」と驚く。小柳氏も、「実際に使ってみると、まさに現場にテレポーテーションしたような感覚に陥る。いつでもどこでも、現場の状況を確認できる。それを見ながら、経営者や現場代理人が意思決定を行える」と自信を見せた。

 建設現場のなかには、物理的に行き来が難しい場所や危険な場所もあり、そうした場所の確認作業などにもHoloLensを利用できるという。

●3Kといわれる建設業界のイメージを変えたい

 小柳建設がHoloLensの採用に乗り出した背景には、社長を務める小柳氏の「建設業界を変えたい」という強い思いがある。同氏は2014年に社長に就任し、以降、建設業界の課題解決に積極的に取り組んでいる。

 「ただでさえ少子高齢化の進展で人材確保が難しいのに、建設業界は、“きつい、汚い、危険”といわれる3Kの職場でなかなか人が集まらない。また、“古い業態のまま”というマイナスイメージがそれに拍車を掛けている。さらに、データの改ざんや耐震偽装の事件によって、“不透明な業界”というレッテルも貼られている。業界を変えるために一石を投じないといけない」(小柳氏)

 さらに、社内の改革にも乗り出す姿勢を見せている。

 「社員は現場で一所懸命に仕事をして、さらに書類づくりで夜遅くまで仕事をしている。そんな社員たちを、“どうしたらもっと楽にできるか”を考えている。今はデジタルトランスフォーメーションによって建設業を再編しなくてはいけない時代。HoloLensを活用することで、これまで仕方なくやってきたことや、変わらない仕組み、人の意識を一気に壊せるのではないかと直感的に感じた」(小柳氏)

 同社Webページの中で小柳社長は、建設業界の現状について、いろいろなITの取り組みが始まってはいるものの、いまだ人の手や昔ながらの考え方や風習に縛られているとし、「すさまじいスピードで進む社会環境の変化に“ついていく”のではなく、“時代を引っ張る存在”となり、先端技術を地域の人々に提供する使命がある」としている。実際、ドローンを活用した測量などにもいち早く取り組むなど、その言葉に偽りはない。

●建設業を、“子供があこがれる仕事”に

 建設業界が抱える課題を、最新技術を使ったデジタルトランスフォーメーションに取り組むことで改革し、子供たちが憧れる「カッコイイ仕事」にする――。これが小柳氏のビジョンだ。

 「壮大な仕事をしている建設業界から3Kのイメージを払拭して誇りをもって取り組める仕事にしたい。魅力ある業界にしていくためにマイクロソフトの力を借りたい」(小柳氏)

 その意気込みは、日本の発売前に米国でHoloLensを購入し、自社の業務にどう生かせるかを検討してきたことからもうかがえる。

 「HoloLensがあれば、計画から施工中、検査の段階でも、発注者が善しあしを判断でき、タイムスライダーを使えば未来を見ることもできる。これは大きな強みになる。さらに、こうした過程がガラス張りになり、紙自体もいらなくなる。建設業で働く人たちの働き方が変わると思っている。社員の働き方もカッコよく、効率よくなっていく。新潟の企業でも、世界の最先端を走ることができるということを示し、この業界を引っ張る存在でありたい。マイクロソフトとともに、新潟から世界を変え、世界の大きな力になれる企業になりたい」

 米本社の開発プログラムは誰でも参加できるものではなく、そこには明確なビジョンや熱い思いが欠かせない。今回のプロジェクトは、小柳建設の描くビジョンと小柳社長の熱意が米本社に届いた結果といえるだろう。そして、この取り組みは、建設業界の働き方改革にもつながるはずだ。

 「このメリットを自社で活用するだけでなく、業界全体に知ってもらいたい。HoloStructionはきっと、i-Constructionの広がりをバックアップする取り組みになる」(小柳氏)

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