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アングル:よどむ韓国社会、北朝鮮懸念を上回る「生活ストレス」

Reuters のロゴ Reuters 2017/09/24

Christine Kim

[ソウル 22日 ロイター] - 北朝鮮が今月、過去最大規模となる6回目の核実験を実施したが、会社員のYou Jae-younさん(32)はもっと身近な心配事で頭がいっぱいで、そのニュースのことなどすぐに忘れてしまったという。

アングル:よどむ韓国社会、北朝鮮懸念上回る「生活ストレス」 © REUTERS アングル:よどむ韓国社会、北朝鮮懸念上回る「生活ストレス」

「日常生活のなかで、心配しなければならないことは山ほどある。個人的には、食費がどれくらいかかるのかということの方が(北朝鮮よりも)心配だ」と、韓国中部の世宗特別自治市に住むYouさんは話す。

「正直言って、北朝鮮は私には遠い話だ」

敵対的で今や核武装している隣国との戦争の脅威にさらされて何十年も暮らしている韓国の一般市民の大半にとって、夜も眠れないほどの心配事と言えば、仕事や経済、そして1953年の朝鮮戦争休戦後の急速な発展に伴うプレッシャーなど、より日常的な懸案だ。

実際に、韓国の国民が戦争の脅威にますます無関心になっていることを示す証拠もある。市民防衛訓練はほとんど無視され、世論調査では、軍事衝突が起きると考えている人は四半世紀前と比べて減少している。

今月に公表されたギャラップ・コリアの調査によると、韓国人の58%が朝鮮半島で再び戦争が起きるとは思わないと回答している。同調査が1992年に開始されて以来、2番目に高い割合だ。

また戦争が起きると予想する韓国人の割合は、調査開始以降減少し続けており、北朝鮮の金正恩・朝鮮労働党委員長の下でミサイル発射実験が急増しているにもかかわらず、最新の調査では37%にまで落ち込んでいる。

韓国と北朝鮮は厳密に言えば、今でも戦争状態にある。朝鮮戦争(1950─53年)では平和条約は結ばれておらず、休戦協定で終わりを迎えたからだ。

アングル:よどむ韓国社会、北朝鮮懸念上回る「生活ストレス」 © REUTERS アングル:よどむ韓国社会、北朝鮮懸念上回る「生活ストレス」

「朝鮮戦争は厳密には終わっていないと人々は言うが、私の世代は戦争を見たことがない。私には曖昧な現実としか映らない」と、27歳のグラフィックデザイナーKim Hye-jiさんは言う。「だから、危険だと言われても、私には実感がない。友人たちも皆、それよりも仕事のことを心配している」

<ストレスと自殺>

ハイテクで輸出主導の韓国経済は、成長の回復が遅れ、減速が長期的な傾向となることが心配されている。

雇用の安定も懸念されている。韓国の非正規雇用者数は、経済協力開発機構(OECD)加盟国平均の2倍に上り、若者の失業率は2013─16年にかけて4年連続で上昇している。

雇用状況の悪化は、競争の非常に激しい韓国の学校や職場の環境をいっそう悪くするだけだ。こうした環境が、同国でストレスと自殺率が高い要因とみられている。

韓国の自殺率は2015年、OECD加盟国のなかで最も高かった。米国の2倍以上、英国のほぼ4倍だった。

韓国自殺予防学会によると、自殺につながるうつ病を引き起こす主な原因は、金銭問題、病気、孤独、人間関係である。北朝鮮についてはまったく言及がない。

「ストレス管理のためにやって来る人たちのほとんどは、就職のような人生の現実的な問題のために訪れる。仕事に就いている人も、職場に慣れようとして生じる問題のためにここに来るのだ」と、韓国精神保健センターの精神科医であるSim Min-young氏は説明。

「北朝鮮について話すためにここに来る人はいない」

韓国人が、米国のハリケーン「イルマ」のような脅威に直面したならば、避難計画を立てたり避難場所を調べたりするなど積極的な行動を起こすだろうが、「核攻撃」は人々を無力にさせ、実際に何ができるか考えるのをやめさせてしまうと、Sim氏は指摘する。

「核爆弾が私たちのいる数キロ先で爆発した場合を考えても、実際に自分の身を守るために何ができるのか、私たちには分からない」とSim氏は言う。

アングル:よどむ韓国社会、北朝鮮懸念上回る「生活ストレス」 © REUTERS アングル:よどむ韓国社会、北朝鮮懸念上回る「生活ストレス」 アングル:よどむ韓国社会、北朝鮮懸念上回る「生活ストレス」 © REUTERS アングル:よどむ韓国社会、北朝鮮懸念上回る「生活ストレス」

<精神的な慰め>

戦争を懸念する少数派にとって、選択肢は限られている。

北朝鮮の砲撃が届かない地域に避難する危機管理計画を立てた人もいる。発火具や笛、食料などが入った「戦争袋」を含む非常用品の売り上げは好調だ。

また、精神的な慰めを求める人もいる。

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教会では、説教や祈りのなかで北朝鮮に触れる回数が増えたと、ソウルにあるメソジスト教会のChoi Ei-woo牧師は語る。

「戦争が起きるとは思っていないが、予期せぬ行動が起きて戦争になる可能性はある。神が私たちをお導きくださることを祈っている」

Lee Chul-hyeeさん(63)は6年前に韓国軍を退役してから、祈りをささげることが多くなり、軍に所属していた経験に基づく知識を共有するため、市役所や教会でレクチャーも行っているという。

アングル:よどむ韓国社会、北朝鮮懸念上回る「生活ストレス」 © REUTERS アングル:よどむ韓国社会、北朝鮮懸念上回る「生活ストレス」

一方、ソウル中心部の仏教寺院では、59歳のMun Myung-haさんも、戦争が勃発しないことを願って、以前より足を運んでいると話す。

「北朝鮮はより頻繁に核実験を実施している。そのニュースを見るたびに、動悸が激しくなる」

未来を知りたくてたまらない人のなかには、占い師を訪れる人もいる。韓国の伝統的な霊媒師の1人は、10人中6人の客が、恋愛や結婚といった通常の質問に加えて、戦争が起きるかどうか聞いてくるとロイターに語った。「1月、2月ごろには戦争について聞く人など誰もいなかったが、今は違う」

「食料や水を備蓄しているかと聞くと、皆が備えはないと答える。それから、戦争は起きないという神のお告げを彼らに伝える」と、木製の数珠を手に霊媒師はこう述べた。

(翻訳:伊藤典子 編集:山口香子)

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