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アングル:偽オンラインストアの「闇決済」、賭けサイトで横行

Reuters のロゴ Reuters 2017/06/25

[ロンドン 22日 ロイター] - 日用品を取り扱う7つのオンラインストアのネットワークが、実際はダミーで、ギャンブルサイト上の支払いを偽装するために使われていたことが、ロイターの調査で分かった。

これらのサイトは欧州から運営されており、 生地やDVDケース、地図、ギフト包装紙、機械工作用のテープ、ピンバッジや旗などを販売しているとうたっている。しかし、実際にはこれらは偽の店舗で、市場規模400億ドル(4兆4500億円)のオンラインギャンブル産業でやり取りされる支払いを偽装するための、多国籍システムの一部だ。オンライン上のギャンブルは、多くの国や米国の一部の州で違法となっている。

これは、「トランザクション・ロンダリング」と呼ばれる新たな資金洗浄の手段であり、不正取引の専門家によると、規制官庁やクレジットカード会社、銀行などは、まだ正面から対応策を講じていないと言う。この資金洗浄方法は、オンラインストアがカード決済を代行することで、支払いの本質を偽装できるという。

ビザとマスターカードを含むクレジットカード会社は、全てのオンライン上の売買をコード化しており、それにより決済中の売買の内容を把握し、当該国で違法な取引については、ブロックする仕組みになっている。これは、加盟店業種コード(MCC)と呼ばれる。例えば、ギャンブル決済のMCCは7995で、より厳しい調査が行われる。

問題のオンラインストアで、ロイターの記者が日用品を購入すると、カード決済はできたが、品物は届かなかった。ヘルプデスクに電話を掛けると、スタッフが、サイトにある品物を売っているわけではなく、ギャンブルの支払いに利用されていると回答した。ほとんどが、米国人向けだという。

ビザやマスターカードは、ロイターの取材に対し、ギャンブル向けの決済を、他の品物の取引として分類することは規約に反すると回答した。

アングル:偽オンラインストアの「闇決済」、賭けサイトで横行 © REUTERS アングル:偽オンラインストアの「闇決済」、賭けサイトで横行

「トランザクション・ロンダリングは、深刻な不正行為であり、犯罪行為にあたることもある」と、米国に拠点を置く、金融コンプライス会社G2ウェブ・サービシズのダン・フレヒトリンク氏は言う。「購入者との合意を破り、禁止された物品やサービスが支払いシステムに入ることを可能にする。また、マネーロンダリングの取締法にも違反する可能性がある」

ほかの専門家3人も、ロイターに対し、トランザクション・ロンダリングにより、ゲームやポルノ、禁止薬物など、銀行やカード会社が「高リスク」として禁止するような種類の取引でも可能になると指摘する。数千ものオンライン事業者が、こうした技術を悪用して、通常ならカード会社がブロックする決済で数十億ドルもの資金を動かしていると指摘する専門家もいる。

「マネー・ロンダリングのデジタル的進化だ」と、サイバー情報会社エバーコンプライアントのロン・テイチャー氏は言う。「違いは、方法がずっと簡単になり、ずっと捕まりにくくなったことだ」

<ギャンブラーの入り口>

ロイターが最初にダミーのオンラインストアに関心を持ったのは、2016年後半だった。同年12月、記者がそうしたサイトの1つで、英国に本社を置く会社サーフォンが運営するmyfabricfactory.comで生地を購入したものの、商品は届かなかった。数週間後にメールが届き、商品は品切れだとして、代金が返還された。

記者が、サイトにあった問い合わせ番号に電話をすると、アナ・リチャードソンと名乗る女性が応答。アゴラ・オンライン・サービスという決済代行サービス会社に勤務していると話した。

彼女によると、アゴラは、ポーカーの支払手続を行っており、「数百の」ギャンブルサイトと契約している。記者が、カード会社から届いた明細のどの部分にギャンブルサイトと表記されているかを尋ねると、リチャードソン氏は、「もし賭け事のサイトを利用したなら、大体の場合、私どもが手続をやっている」と答えた。

リチャードソン氏の身元を確認することはできなかった。アゴラは、アイスランドに拠点を置き、企業データベースのオービスによると、モーリシャスに本社があるDueXXという会社が所有している。DueXXのサイトで、唯一連絡先として記載があったアンドレイ・ブラント氏は、アゴラの経営者の一人。ロイターが接触すると、「関心をお持ちいただきありがとうございます。ですが、見解を共有することは好みません。ご理解下さい」との返信が、テキストメッセージで送られてきた。

ロイターは、他の6つのサイトで日用品の購入を試みたが、いずれも商品は届かず、代金は説明なく返還された。6つのサイトは、いずれも英国の会社が所有。連絡に使われたメールのサーバーは、いずれもアゴラのウェブアドレスを利用していた。

これらのサイトの問い合わせ窓口に電話すると、3人が応答。いずれも、ギャンブルの代金支払いを手続するアゴラに勤務し、ドイツに住んでいると答えた。1人はアンナ・リチャードソン、もう1人はルーシーと名乗った。もう1人の男性は名乗らなかったが、「ギャンブルをして、われわれから請求を受ける人のほとんどは、米国人だ。アメリカではギャンブルは違法だ」と話した。

7つのサイトで記者が支払った「代金」は、すべてベルリンを拠点とする「ドイツ・ペイメント」が手続きしていた。同社のサイトには、クレジットカードの国際セキュリティ基準を定める審査会「PCISSC」の認証を受けているとあったが、同社はコメントの求めに応じなかった。

ビザの広報担当者はロイターの取材に対し、「すべてのゲームサイトに、適当なMCCを使って決済することを義務付けている。われわれの規約はすべて当該国の国内法に従っており、犯罪行為は許容していない」と回答した。

マスターカードの広報担当者は、「われわれの規則や法律に反している可能性がある活動について連絡を受けた際は、その業者の銀行に確認したり、調査を行う」と回答した。

ロイターが支払い代行業者に接触した後、7つのサイトは支払の受付を停止した。

<エコシステム>

ロイターが発見した種類のサイトは、複雑な国際的システムの中の小さな歯車に過ぎない。

「不正金融は、驚くほど独創的だ」と、米財務省の金融犯罪対策部門に勤務した経験のあるグレゴリー・ライザ弁護士は指摘する。「これは、政府と不正業者、そして資金源のあいだの、極めて難しい軍備競争だ」

不正取引の専門家は、こうしたダミーのオンラインストアは、一般人の閲覧を想定していないと話す。見つけにくいように設計され、支払いを偽装するための店頭としての役割しかないという。

エバーコンプライアントによると、ギャンブルが違法な国で運営されているギャンブルサイトは、自身のサイト上で支払いを受け付け、記録上はダミーのオンラインストアを利用したように登録するよう、プログラムされているという。

ギャンブルサイト利用者から見ると、支払いはサイトに振り込まれるが、カードの利用明細には支払先としてダミーのオンラインストアが記載される。利用者がこのオンラインサイトを開いて問い合わせ番号に電話すると、アゴラのスタッフがロイター記者にしたように、決済はギャンブルについて行われたものだと説明する仕組みとなっている。

金融機関に取引先のサイトをチェックするサービスを提供しているエバーコンプライアントは、ロイターの要請で、問題の7サイトを分析した。

すると、これらは50程度の相互にリンクしたサイトの「エコシステム」の一部で、所有する会社の所在地はジョージアからラトビアまで幅広かった。仮に銀行の顧客にこうしたネットワークが発見された場合は、トランザクション・ロンダリングが疑われるという。

<抜け穴>

G2のフレヒトリンク氏によると、こうしたサイトは、システムの抜け穴を悪用してクレジットカード会社の審査をすり抜けている。

銀行の中には、オンライストアの調査を決済代行業者に頼っているものもある。代行業者のほとんどは適法だが、チェックがおざなりな場合もあるという。

「決済代行サービスの中には、例えば制裁対象になっているかどうかだけ調べて、マネーロンダリングの基本的なチェックとしているところもある」と、フレヒトリンク氏は言う。「実際に決済が行われるまでは徹底調査をしないことがある。それが、弱点だ。チェックが厳しい銀行を通じてトランザクション・ロンダリングをするのは比較的難しいが、銀行の依頼を受けた代行サービスを通じてなら、比較的容易なことが多い」

ロイターは、どの銀行がドイツ・ペイメントやアゴラを利用しているか特定できなかった。

7つのダミーサイトを所有する英国の会社は、2015年にマネー・ロンダリングを含む国際不正取引に関与して閉鎖された会社を運営していたサイモン・ダウソン氏が設立。同氏の妻は2017年1月の一時期、オンラインストアを運営するサーフォンの経営者として登録さてれいた。

(Alasdair Pal記者、翻訳:山口香子、編集:下郡美紀)

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