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アングル:法人税率「20%台」の攻防、政府内でせめぎ合い

ロイター のロゴロイター 2014/05/09
5月9日、法人実効税率引き下げの時期や幅をめぐって、政府内でせめぎ合いが始まっている。写真は麻生財務相(右)と甘利経済再生相。昨年2月撮影(2014年 ロイター/Issei Kato) © ロイター 5月9日、法人実効税率引き下げの時期や幅をめぐって、政府内でせめぎ合いが始まっている。写真は麻生財務相(右)と甘利経済再生相。昨年2月撮影(2014年 ロイター/Issei Kato)

[東京 9日 ロイター] - 安倍晋三首相が強い意欲を示す法人実効税率引き下げの時期や幅をめぐって、政府内でせめぎ合いが始まっている。「来年度からの段階的な引き下げ」と、現行の35.64%から「20%台を目指す」との方向感は共有されつつあるが、9日の閣議後会見では、当面の着地点をめぐって、麻生太郎財務相と甘利明経済再生相との応酬が目を引いた。

一方で両氏とも、国際競争力強化のための法人実効税率引き下げと財政健全化の両立を強調。経済財政諮問会議の民間議員から出ていた「10%引き下げ」が必ずしもゴールではない、との姿勢が鮮明になりつつある。

ある政府筋は「2020年度の基礎的財政収支(PB)均衡目標を崩さない範囲で、財源を探しながら着地点を探る」と指摘する。

また、政府内では「2%ずつ3回で下げるべきだ」(関係筋)との考えも浮上している。ただ、諮問会議の民間議員案として一部で報じられた「3年間」とする考えか、PB均衡化年次である2020年度まで6年かけて段階的引き下げるとする考えか、その点は不透明だ。

この問題で口火を切ったのは、甘利経済再生相だった。大型連休中の欧州出張中に、実効税率引き下げの幅や時期・期間について踏み込んだ。アベノミクスの「第3の矢」である成長戦略の要で、海外の投資家が注目する法人税率の引き下げについて、実施に向けた決意をにじませた。6月にまとめる経済財政運営の指針「骨太の方針」への具体的表記への布石も狙う。

甘利氏は、9日の会見であらためて「5年を超えるプランだと、(市場への)インパクトがない」と述べ、5年程度を念頭に、現行の約35%の税率を30%を切る水準まで引き下げるべきとの考えを示した。国際公約であるPB均衡化達成に向け、歳出歳入改革が至上命題の財務省との「ギャップ」が垣間見える。

これに対して、麻生氏は引き下げ幅でけん制する。20%台への引き下げを5年程度で行うのが望ましいとの趣旨の甘利発言に「法人税を下げた分だけ、課税の対象範囲を広げないとバランスが取れない」と述べ、恒久減税には思い切った恒久財源の確保が必要との認識を示した。

そのうえで「20%台という話になってくると、今より5%下げるということになると、相当なことをやらなければならない」と語った。

法人実効税率は、現行の35.64%(東京都)から6%程度引き下げれば「20%台」に到達するが、下げ幅が5%なら甘利氏が念頭に置く30%を下回る水準には届かない。

期間や引き下げ幅をめぐるわずかな表現の差に「いつまでに何%に下げる」かをめぐるさや当てが透けて見える。

背景には、恒久減税の代替財源に対する考え方の違いがある。「恒久減税には恒久財源を確保する」ことを基本とする財務省に対して、10%引き下げを提案した諮問会議の民間議員は、税収の上振れ分は安倍構造改革の成果として活用するこを模索している。甘利氏は「成長力が税収増をもたらす視点から、税収の上振れ分は成長に資するよう使うべき」と柔軟だ。

代替財源候補として浮上しているのは、減価償却制度の見直しや、特定業界に恩恵ある政策減税の縮小・廃止、欠損金の繰越控除の見直しなど。だが、その規模は当面の財源をカバーする程度にとどまりそうだ。

そこで、事業規模に応じて都道府県に税金を払う「外形標準課税」の拡大など思い切った措置も検討課題となっている。

負担の公平性が高まる反面、赤字企業も税を負担する仕組みで、負担が増える中小企業は反発を強める。現在の外形標準課税は賃金課税が中心で、雇用するほど増税となることから、財界は、政労使一丸となった「賃金上昇に向けた取り組みに逆行する」と反発を強めている。来春には統一地方選が控え、政治的にも実現への道のりは険しい。

法人税改革の議論は緒についたばかり。具体的な制度設計は与党税制協議会が今年末に決めるが、骨太の方針でどこまで具体的な道筋を描けるか、そこが制度設計を占う重要な局面となりそうだ。

(吉川裕子 編集:田巻一彦)

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