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エドウイン再建、なぜ迷走?支援始動する伊藤忠の狙いと、岐路迎えるジーンズ業界の行方

サイゾー のロゴ サイゾー 2014/04/24 Cyzo

 国内ジーンズ最大手でブランド「エドウイン」で知られるエドウイン・グループの再建問題が、やっと決着した。伊藤忠商事がエドウイン・ホールディングス(HD)とスポンサー契約を結んだ。伊藤忠はエドウインの国内外のグループ34社を1社に統合した上で、第三者割当増資などで100%株式を取得し、5月末をメドに完全子会社にする。エドウインの常見修二社長は経営責任を取り退任し、新社長は伊藤忠から派遣される。伊藤忠はすでに社長の人選を終わっており、銀行団の了承を得て正式に決定する運びとなる。

 エドウインは、為替デリバティブ(金融派生商品)取引の失敗で500億円規模の損失を出した。損失のうち300億円を伊藤忠が負担し、200億円は三菱東京UFJ銀行などの銀行団が債権放棄する。エドウインは昨年11月、私的整理である事業再生ADR(裁判以外の紛争解決)の手続きを事業再生実務家協会に申請。銀行団に200億円の債権放棄を求めていたが、銀行団がこれを受け入れ、今年1月からスポンサーの選定が始まり、2月に伊藤忠が優先交渉権を得ていた。

 エドウインをめぐっては伊藤忠、豊田通商、アパレル大手のワールドが経営支援に名乗りを上げ、当初、スポンサーの最有力候補はトヨタ自動車グループの豊田通商とみられていた。豊田通商はエドウインが中国進出の際に共同で現地法人を設立したメイン取引先だったためだ。

 伊藤忠は従来からエドウインとの取引実績が大きかったことから、岡藤正広社長がトップダウンで支援を決断したといわれている。

 エドウインの経営危機が表面化したのは2012年8月。1年半以上たち、ようやくスポンサーが決まった格好となったが、なぜ危機の表面化から異常なまでに時間がかかったのか。今回、あらためて経緯や問題点を整理してみよう。

●粉飾決算と債務超過

 経営危機が表面化するきっかけとなったのは、エドウインの経理担当者が12年8月7日、埼玉県内の路上に止めてあった自動車の中で亡くなっているのを発見された事件だった。その担当者が持っていたパソコンに証券投資に関するデータが残っていたことから、不正が明るみに出た。

 不適切な会計処理が行われていたとして、エドウインは弁護士らによる第三者委員会を12年11月下旬に設置し、報告書をまとめた。報告書の内容は公表されていないが、一部報道によると、為替デリバティブ(金融派生商品)取引の失敗により直近5年間で500億円強の損失を出していたという。その損失を隠すために粉飾決算を行い、同社は300億円弱の債務超過に陥った。

 損失は08年のリーマン・ショックを機に発生していた。エドウインのようなジーンズメーカーは中国などから繊維を輸入するため、決済用にドルを調達する必要があり、為替デリバティブ取引を行っていた。金融機関の勧めで為替デリバティブの契約を結んだが、急激な円高で損失が膨らんだ。

 エドウインが為替デリバティブの契約を結んでいたのは、三菱UFJフィナンシャル・グループと米モルガン・スタンレーの合弁会社、モルガン・スタンレーMUFG証券。メインバンクの三菱東京UFJ銀行はエドウインがデリバティブで損失を出したことも、それを隠すために粉飾決算を続けていたことも、すべて知っていたのではないのかとの疑惑が金融業界内では持ち上がった。そのため、三菱東京UFJ銀行主導で進めるエドウインの私的整理案に、他行が不信を募らせた。十数回にわたりバンクミーティング(金融債権者説明会)が開かれたが、他行は「銀行に協力を求めるためには、長年の粉飾決算で銀行を欺いてきた常見社長の退任が前提になる」と主張し、足並みが乱れた。13年11月、ようやく常見社長が退任することを条件に銀行団は債権放棄に応じ、これを受けてエドウインは事業再生ADRを申請した。

●ジーンズ業界は淘汰の時代

 1990年代半ばまで、エドウインに加えて「リーバイス」「ビッグジョン」「ボブソン」「ラングラー」がジーンズの5大ブランドだったが、2000年代以降、ユニクロをはじめとする低価格ジーンズが台頭し、国内のジーンズメーカーは淘汰されていった。

 ラングラーは00年に解散し、ボブソンも12年6月に倒産。ビッグジョンは13年4月に官民ファンドのもとで再建を目指すことになり、エドウインは伊藤忠の子会社になる。5大ジーンズブランドのうち4社の経営が事実上、破綻したことになる。無傷なのは、「リーバイス」を展開しているジャスダック上場のリーバイ・ストラウス・ジャパンのみだが、同社も大幅に規模を縮小した。

●スポンサーへ名乗り上げる企業、なぜ続々?

 それにしても、なぜエドウインに多数の企業がスポンサーとして名乗りを上げたのか。低価格ジーンズが席巻する中、エドウインのブランド力が衰えていなかったことが原因だ。エドウインは未上場企業のため、ジーンズマニア以外にはあまり知られていないが、国内では最大手であり、エドウインHDを持ち株会社とし国内29社、海外5社を傘下に持ち、東北地方に13社の自社工場を保有している。これほど多くの自前の縫製工場を持つジーンズメーカーはほかにはない。エドウインは「エドウイン」や女性用の「サムシング」といった自社ブランドのほか、70年代に日本に上陸した「リー」などのライセンス販売を展開。13年5月期には500億円の売り上げをあげている。

 エドウインが経営危機に陥ったのは為替デリバティブの失敗によるもので、商品の売れ行きが不振になったわけではない。デリバティブの損失を補填できれば競争力に問題ないと、スポンサーに名乗りを上げた総合商社や大手アパレルは判断した。

 伊藤忠はジーンズ以外の商品ラインアップの拡充を図るといい、ジーンズ専業というエドウインのビジネスモデルは変わる。世界一の繊維商社である伊藤忠は、ジーンズをカジュアル衣料のアイテムの一つとして育てていくことになる。(文=編集部)

※画像は「エドウイン HP」より

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