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エントリー向けNASキット4製品を徹底比較 クラウド連携・リモートアクセス編

ITmedia PC USER のロゴ ITmedia PC USER 2017/04/22
エントリー向けNASキット4製品を徹底比較 クラウド連携・リモートアクセス編: 画像:ITmedia © ITmedia PC USER 提供 画像:ITmedia

 前回まではNASのセットアップや基本機能まわりについて比較した。最終回は、昨今のトレンドとなりつつあるクラウドとの連携機能と、スマホやタブレットを連携した外出先からのリモートアクセス機能についてチェックする。

 文末では、これまでの全テストの結果をもとに2017年春の「エントリー向けNASキット」のベストバイを決定する。

●その6:クラウド連携

 最近のNASはクラウドとの連携機能を備えており、NASに保存したデータを自動的にクラウドにバックアップできる。バックアップ先が遠隔地となるため、USB HDDへのバックアップに比べて災害などに強いという利点がある。

 対応するクラウドサービスは各社さまざまだが、サポートするサービス数を比較しても意味がない。なぜなら台湾メーカー製のNASは中国などで多く使われているクラウドサービスも多くサポートしており、これらを日本国内で使う機会はまずないと考えられるからだ。むしろ著名なサービスにおいて、どれだけ分かりやすく、きめ細かな設定が行えるかが重要だ。

 今回は、個人向けサービスとしてメジャーであり、各社が共通してサポートしているオンラインストレージサービス「Dropbox」との同期方法について、各社の製品を比較していこう。同じメーカーでDropboxとの連携機能を持つアプリが複数ある場合は、最もメジャーであると思われる方法に絞って紹介する。

Synology「DS216j」のクラウド連携

 「パッケージセンター」から「Cloud Sync」を探してインストールを行う。起動するとクラウドサービスの選択画面が表示されるのでDropboxを指定。認証を行ったのち、ローカルとリモートのパス(フォルダ)および同期の方向を設定。必要に応じてフィルターのルールを追加して設定を完了すると、すぐに同期が開始される。

 NASとDropboxそれぞれで対象のフォルダを指定できるほか、同期の方向も設定できる。さらに再リンクした際にローカルで削除されていたファイルをどう扱うかなど、利用者目線での細かいオプションが用意されており、設定画面も分かりやすい。

 履歴画面を見ることで過去にアップロードもしくはダウンロードされたファイル名も見られるので、正しく転送されているかひと目で分かるほか、同時転送数も指定できるなど、きめ細かさは他社と比べても頭一つ抜けている。5点満点で5点。

QNAP「TS-231P」のクラウド連携

 「App Center」から「Cloud Drive Sync」を探してインストールを行う。手順は前述のSynologyとよく似ており、まずDropboxの認証を行ったのち、ウィザードに従って同期ジョブを作成する。設定する項目はローカルおよびリモートの場所のほか、ファイル名が競合したポリシー、フィルターや同時処理ファイル数など多岐にわたる。

 設定はかなりきめ細かく、他社にはない日付指定での同期やスケジュール設定の項目が用意されているのも特徴だ。必須設定ではない項目もウィザードに組み込まれており、画面遷移が多いことから設定時の手間はかなりかかる。

 ウィザードは主要項目のみ、オプションは必要に応じて設定するSynologyとは対照的な設計だ。またログについてはジョブの開始と終了のみで、個別のファイルの転送状況が見られないのはややマイナス。5点満点で4点。

ASUSTOR「AS3102T」のクラウド連携

 「App Central」から「DataSync for Dropbox」を探してインストールを行う。起動するとDropboxとの連携を求められるので認証を行ったのち、ローカルの同期フォルダおよびフィルターのルール、帯域制限、同期の方向を設定、完了すると同期が行われる。Synology、QNAPとほぼ同じフローだ。

 同期できるフォルダは「Home」フォルダの下であれば自由に指定でき、複数を同時に選択できる。同期の方向は双方向のほか、“DropboxからNAS”および“NASからDropbox”の3つから選べるので、NASのフォルダをDropboxでバックアップすることや、DropboxのフォルダをNASでバックアップすることもできる。

 ホーム画面ではファイルごとの同期の進捗(しんちょく)も見られるほか、Dropboxの残容量も見られるので全体的に分かりやすい。SynologyやQNAPほどの詳細な設定はできないが、エントリーNASとしては十分に及第点だ。5点満点で4点。

アイ・オー・データ機器「HDL2-AA0/E」のクラウド連携

 ホーム画面の「システム」→「パッケージ管理」→「追加」で「クラウドストレージ連携」を追加することで、共有フォルダのメニューに「Dropbox同期」が表示されるようになる。チェックを入れるとDropboxとの同期が可能になる。

 Dropbox上の個別のフォルダは指定できず、NAS上で指定した共有フォルダが丸ごとDropboxと同期される。また同期方向を自由に設定できる他社と違って、つねに双方向でしか同期できないほか、フィルタリングなどのルールも設定できない。ニーズに合わせたきめ細かな使い方には不向きだ。

 また、完全なリアルタイムではなく1分ごとの同期となるほか、メンテナンスなどのために同期を一時停止するためのボタンもないなど、他社に比べると不自由な印象が強い。5点満点で2点。

●クラウド連携の総評

 機能面ではSynologyとQNAP、インタフェースの分かりやすさでSynologyとASUSTORが優れており、トータルではSynologyが一歩リードといったところ。アイ・オーは双方向以外の同期ができず、また同期対象として指定できるフォルダも制限があるため、利用できるシチュエーションが大幅に限られる。同じ「Dropboxと同期できる機能」でありながら、他の3社とは全く別物という印象だ。

●その7:リモートアクセス

 スマホやタブレットの普及により脚光を浴びているのが、リモートアクセス機能だ。ルーターを超えて外出先からアクセスできれば、NAS上の写真や音楽、動画を外出先で閲覧したり、またスマホの写真を外出先から自宅のNASにアップロードすることが可能になる。

 外出先からNASのアクセスと言えば、かつてはサードパーティーのダイナミックDNSを用いてアクセスする製品が多く、ルーターのポートを開けるなどの設定が必要だった。最近ではNASメーカーが用意するクラウドサービスにNASを登録し、そのIDを使ってログインするというシンプルな仕組みが主流だ。

 これらは製品のユーザー登録を兼ねている場合もあり、メーカーがこのような形で管理するのは極めて合理的といえる。UPnP対応ルーターを使えば手動でポートを開けるなどの手間もかからない。

 今回はリモートアクセスの例として、スマホを使って外出先から自宅のNASにアクセスし、写真を参照するためにどのような設定を行えばよいかを見ていく。

Synology「DS216j」のリモートアクセス

 初回セットアップ時に手順をスキップしていなければNASに「Photo Station」がインストールされているので、スマホ側に専用アプリ「DS Photo」をインストールすることで写真の閲覧が可能になる。

 外出先からのアクセスにはリモート接続サービス「QuickConnect」を利用するが、これも初回セットアップ時に定められた手順をスキップしていなければIDの取得が完了し、機能自体も有効になっているはず。4製品の中でハードルはもっとも低い。5点満点で5点。

QNAP「TS-231P」のリモートアクセス

 初回セットアップでは必要なアプリがインストールされていないため、AppCenterから「Cloud Link」をインストールし、リモート接続サービス「myQNAPcloud」を有効化して外部からアクセス可能な状態にする。さらに「Photo Station」で共有写真を表示できることを確認したのち、スマホ側に専用アプリ「Qphoto」をインストールすることで閲覧が可能になる。

 前述のクラウド連携と同様に、機能そのものに大きな不足はない。しかし、「Cloud Link」のインストール、名前や誕生日も必須とされるmyQNAPcloudの登録、そしてスマホへのアプリのインストールと作業量が多く、途中でくじけてしまう初心者も多いだろう。5点満点で3点。

ASUSTOR「AS3102T」のリモートアクセス

 初回セットアップでは必要なアプリがインストールされていないため、App Centralから「Photo Gallery」をインストールしたのち、設定画面の「EZ-Router」で外部からのアクセスが可能になるよう設定する。次にスマホ側に専用アプリ「AIFoto」をインストールすることで閲覧が可能になる。

 ただし筆者が使用中のルーター(TP-Link「Archer C9」)はサポート対象外のようで、今回試した4製品の中で唯一自動設定が行えなかった。機能自体はそろっており、スマホアプリの使い勝手もよい。ルーター側の自動設定が可能であれば5点満点で4点に相当すると考えられるが、今回は未評価扱いとする。以下はLAN内で表示するための手順となる。

アイ・オー・データ機器「HDL2-AA0/E」のリモートアクセス

 通常のセットアップでは必要なモジュールが組み込まれないので、システム→パッケージ管理→追加で「Remote Link 3」を追加。その後、同社の会員情報サービスサイト「IOPortal」にログインしてNASのシリアル番号を登録したのち、表示されるPINコード(QRコード)を専用のスマホアプリ「Remote Link Files」で読み取ることで、アクセスが可能になる。

 初回アクセス時にプロファイルのインストールが必要になるほか、セットアップの全工程が見えづらく、次に何をすればよいのか分かりづらい。

 今回紹介する4社の中で唯一、アプリが写真専用ではなく汎用であるため、アプリ上で写真の一覧を表示する際に大判のサムネイルではなく小さなサムネイル+リストでの表示となるなど、セットアップの簡単さ、写真表示の使い勝手ともに課題は多い。5点満点で3点。

●まとめ:2017年春、最強の「エントリー向けNASキット」は?

 ここまで7つのテストの結果は以下の通り。本来であれば合計点や平均点を出すところだが、ユーザーによっては何より速度が優先だったり、一通りの機能がそろっていればあとは組み立てやすさが第一だったりと、項目ごとの重要度はユーザーによって異なる。ここでは合計点および平均点は掲載しない。1つの参考として見てほしい。

 「これらの中からベストバイを1製品選ぶならばどれか?」── といわれると、やはりSynologyの「DS216j」になるだろう。高度な設定が可能な一方で、初期設定時に煩わしさを全く感じさせないインタフェースが秀逸だ。

 メモリ搭載量は512MBと他製品に比べて多くはないが、(QNAP「TS-231P」は1GB、ASUSTOR「AS3102T」は2GB)、今回のように直接ベンチマークで比較をしない限り、まず分からないレベル。価格も多くのショップで2万円を切るなど、コストパフォーマンスも抜群だ。

 あえてネックを挙げるとすれば、上位モデル「DS216+II」との価格差が売価ベースで約2倍と開きすぎているところ。もう少し予算をかけてもいいのでハードウェアスペックが潤沢なモデルが欲しいという場合に、うまくハマる選択肢がないことだろう。

 DS216+IIとの中間にあたるグレードのモデルが投入されれば、なお選びやすくなりそうだが……。

 次点はQNAP「TS-231P」となる。機能的には遜色がないにもかかわらず、設定画面の分かりづらさでかなり損をしている印象だ。今回のクラウド連携およびリモートアクセスがそうであるように、Synologyであればオプション扱いの設定項目まで全てウィザードの中で見せていくフローになっている。

 機能の意味を理解しているパワーユーザーにとっては親切でも、エントリー向けとするには少々つらく、エントリー向けのベストバイには推しにくい。直訳調の日本語が多いのも初心者向けではなく、中上級者向けの製品という評価になるだろう。

 ASUSTOR「AS3102T」は設定画面は簡潔だが、これは単に設定項目がないためで、複雑になりようがないという事情によるもの。ある意味エントリー向けではあるのだが、使い込んでいくうちに不自由さを感じやすいのもまた事実。Synology、QNAPに次ぐ評価とならざるを得ない。

 アイ・オー「HDL2-AA0/E」は、性能よりもむしろセットアップのしやすさやインタフェースの使いやすさが課題で、あえて他の3社と比べなくとも、使っていてストレスを感じる要素が山積みだ。NASキットとしては第一世代ということで、今後の製品での進化に期待したい。価格が2万円を切るところまで下がっている点だけは評価できる。

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