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カンファレンスの興奮を切り取るカメラマンの知見と矜持を見た

ザテレビジョン のロゴ ザテレビジョン 2017/08/24
カンファレンスの興奮を切り取るカメラマンの知見と矜持を見た © KADOKAWA CORPORATION 提供 カンファレンスの興奮を切り取るカメラマンの知見と矜持を見た

8月21日、イベント撮影を中心に活動するカメラマンたちが自身の知見を披露する「カンファレンスカメラマンカンファレンス」が開催された。10人のLT(Lightning Talk)はどれも学びが満載で、写真に対する情熱が伝わる素晴らしい内容だったので、2時間半に渡ったイベントの模様を完全レポートする。 テンションを上げるべく、アイドル担当の撮影からスタート  初開催となるカンファレンスカメラマンカンファレンスに参加したのはITエンジニアを中心としたカメラファン。10人の登壇者から、イベント撮影で心がけていることやイベントカメラマンとしてのこだわりなどが10分のLT形式で披露された。  会場は緑に囲まれたDMM.comのイベントスペース。主催者の加我貴志さんのはからいにより、参加したカメラマンのテンションを上げるために、冒頭はDMM.comのアイドル担当を招いた撮影からスタート(笑)。カメラマンたちのテンションを上がったところで、LTから披露された。 大規模カンファレンスの撮影で心がけること(山下さん)  「大規模カンファレンスで、エンジニアが公式写真係をやったときの話」というタイトルで登壇したのは、IoTプラットフォームを手がけるソラコムの山下智晃さん。使用機材はCanon EOS2台、OLYMPUS OM-D/PEN、RICOR GR、THETA Sなど、ストロボは計8本保有しているという。趣味で撮影しているのは、人物やスポーツ、星空、ミントチョコ、ワイヤレス機能を活用した孤独な自撮りなどだが、今回は前職のAWSで担当した大規模イベントでの撮影の知見について語った。 大規模カンファレンスでの撮影の知見を惜しげなく共有した山下智晃さん 大規模カンファレンスでの撮影の知見を惜しげなく共有した山下智晃さん  山下さんが公式カメラマンとして手がけたのは、前職の「AWS Summit」など1万人規模のイベントやソラコムのカンファレンス、勉強会など。社員がカメラマンをやるメリットとして、山下氏は社員と密にコミュニケーションがとれ、コンテキストにあった撮影ができる点を挙げる。また、社内外の関係がわかるので、お得意様やキーパーソンを知った上で撮影でき、イベントでがんばる同僚を撮ってあげられるという。その他、「プロカメラマンの納品はけっこう時間がかかるけど、社員であればすぐに社内に共有できるので、営業がお客様にお礼として送りたいときにもすぐに対応できます」ということで、メリットだらけだという。一方、撮影はエンジニアのサブ仕事なので「本業をおろそかにしてはいけません(笑)」というのも重要。とはいえ、一度成功すると次年度以降、周りが協力してくれるという。  イベントの準備としては、広報やマーケティング、営業と密に連携し、来年のために撮っておきたい写真や押さておきたいショットをきちんと確認。また、プレス腕章をきちんと確保し、プロカメラマンのアサインやイベント場所、協賛企業の動向もきちんと押さえておくべきだという。関係者とコミュニケーションを密にとるというのがポイントのようだ。  イベントの機材は、やはり一眼二台体制が望ましい。二台はそれぞれ標準ズーム(24-70mm)と望遠ズーム(70-200mm)で、予備として広角ズームレンズも用意。バッテリやメモリカードは当然予備を持っておくという。ストラップはカメラを2台ぶら下げられるモノがおすすめ。その他、「レンズフードにロゴとかを貼っておくと、社員の撮影であることがアピールできてよい」「カンファレンス会場はだいたい暖色系の照明なので、ストロボにはオレンジのフィルターをかましておく」「プロカメラマンにきちんと挨拶し、尊重できる関係を作る」などの知見も披露し、聴衆をうならせていた。  おさえるとよい写真は、会社やイベントのロゴを入れた写真、基調講演の会場を後ろや斜めからおさえたショット、お客様が映らないようにしたブースの模様、基調講演後の登壇者全員での記念撮影、キーパーソンの登壇の模様、協賛ブースの様子など多岐に渡る。最後、「低ISOにこだわって失敗するより、画質が下がっても高ISOで撮る」「集合写真は端がゆがむので、なるべく35mm以上で写すか、Lightroomで補正する」など、またもや有用なTIPSを披露したところで、タイムオーバー。なかなか知ることのできないカンファレンスカメラマンの頭の中をのぞいているような濃厚なLTだった。 「使う人にとってよい写真がよいイベント写真」(小山さん)  続いて登壇したのは、日本UNIXユーザー会やPHPやPostgreSQLのユーザー会に所属するフリーランスエンジニアの小山哲志さんは、メインに手がけているコミュニティイベントの撮影について語った。 OSS関連のイベントでおなじみの小山さんはソニー派 OSS関連のイベントでおなじみの小山さんはソニー派  小山さんはソニー派で、最初に買ったデジタル一眼は「α350」。現在はα77をメインに使っており、APC-C一筋だという。「シグマやタムロンがAマウントを出してくれないので、そろそろEマウントに行かないとなあと考える昨今です」(小山さん)。  小山さんが最初に撮影したのは2007年のPostgreSQLカンファレンスで、以降OSS系のカンファレンスを中心に撮影を担当してきたという。撮影で気をつけているのが、とにかく観客の邪魔にならないこと。そして講演者のさまざまな表情を、さまざまなアングルで撮ること。「ずっと下を向いて話している人とかいて辛いんですけど(笑)、斜め下からなんとか表情をとれるようにしています」(小山さん)。  現像は基本行なわず、JPEG撮って出しが基本。現像作業は時間がかかるので、現像を前提とするとアップが遅れてしまうというのがその理由だ。「イベントの写真って、自分の判断で善し悪しを決められない部分がある。だったら、すぐにあげてしまって、参加した感が残っているときに見てもらった方がいい。あくまで使う人にとってよい写真がよいイベント写真」というのが小山氏の意見だ。今まで撮った5万枚くらいの写真は、すべてFlickerにアップロード。アルバムごとに専用のURLが用意されるため、ゲストに公開するのに便利だという。  イベントでの登壇は登壇者にとっては晴れ舞台。きれいに撮ってあげたいというのが「イベントカメラマンの心意気」。こうしてきれいに撮れた写真がプロフィール等に使われると、やはりうれしい。とはいえ、カメラマンとして撮影すると、登壇者と親しくなったと錯覚してしまい、本人に「写真使っていただいてますよね!」と話しても、ぽかーんとされることもあるという。  さて、小山さんが個人的におすすめなのは、カメラの取り出しが容易な「とれるカメラバッグ」。カメラ2つ持つほどではないけど、中望遠と広角をなるべく切り替えて使いたいという場合などに便利。「望遠レンズをずっと持っていて、上腕部が痛くなったといったことは、僕はあまりない」(小山さん)という。  最近凝っているのはコスプレの撮影。「コスプレの写真はアクセスが数万になってしまう(笑)」ということで、今後も勉強会と違うところでもお目にかかれそう。写真を使う人の気持ちを考えつつ、自身の作画の楽しみを満たすためにどんなことをやっているか理解できる発表だった。 「写真は写っている人へのプレゼント」(中井さん)  3番手は「コミュニティで写真を撮るときの心得」というお題で、JAWS-UGをはじめ、さまざまなコミュニティイベントで撮影係を担当している中井勘介さんがLTを披露した。  中井さんのカメラ歴は7年で、撮影枚数は2万5000枚くらいになるという。このうちプロフィールに採用されているのは50名近くにのぼる。「小山さんもお話ししていましたが、プロフィールに使ってもらうのはめちゃくちゃうれしい。このために撮影しているといっても過言ではない(笑)」(中井さん)。大きなイベントの後は可能な限り速やかに写真をアップするのが、プロフィール写真に採用されるコツとのこと。最近は、メディアに写真を提供することも増えており、アスキーや翔泳社、TechCrunch、MBS(毎日放送)などでも採用されている。使用機材はCanon EOS 6DやPanaconic LUMIX GX7。レンズはシグマのモノを次々と購入しており、今後も増やしていきたいという。  中井さんが語ったのは、これからカメラうまくなりたいと考えている人に向けてのアドバイス。一番強調したのは、基本が重要という点。中井さんは、「いいカメラ買ったからといっていい写真が撮れるわけではない。露出、ISO、SS(シャッタースピード)、ホワイトバランス、構図などの基本をおさえないと、本当に恥ずかしい写真にしかならない。これは自分の経験」と強調する。  その上で、個人的な意見として「なるべく明るいレンズを使う」「フラッシュをたかない」「連写をしない」「気づかれないように撮る」などのポリシーを披露。「連写するとなんだか愛着が沸かない。できれば狙って撮りたい」といったあたりがこだわりだ。また、最低限のレタッチはやり、変顔や目半開き、ブレている写真は除去すべきだという。「あくまで登壇している人がうれしいと思う写真を撮るのが、カメラマンとして必要なんじゃないか」(中井さん)。  イベント撮影のメンタル・スタンス面としては、あくまで脇役であることを意識し、参加者や登壇者の邪魔になることを避けるのが重要。また、友達ばかり撮って、嫌いな人の写真が少なくならないよう、まんべんなく撮るのもポイントだという。上達するためには、やはり上手な人に意見を聞いたり、仲間同志で作品を講評しあうのが重要。中井さんは「写真はあくまで作品で、写っている人へのプレゼント。自己満足ではいけないと思う」と語り、LTを締めた。コミュニティの中の人としてカメラマンとはどうあるべきか、誤解を恐れず、自身のポリシーを強く打ち出していたのが印象的だった。 「僕たちのイベントはプロフィール撮影から始まる」(高山さん)  「イベントフォトグラファーの日常」を語ったのは、冒頭の山下さんとともにAWSのイベント撮影を切り盛りしてきた高山博史さん。AWSのPrincipal Photographerを名乗る高山さんは元同僚の山下さんとのネタかぶりを気にしつつ、イベントでの撮影ノウハウを披露した。 AWSのPrincipal Photographerを名乗る高山さんはプロフィールやイベント撮影の舞台裏を披露 AWSのPrincipal Photographerを名乗る高山さんはプロフィールやイベント撮影の舞台裏を披露  高山さんのデジカメ歴はスマートメディアだった富士フイルムの「DS-7」からスタート。デジタル一眼は初代EOS Kiss Digitalからということで、すでに老がい感が漂っているという。日常的にスポーツイベントや子供、ライブなど、普段からさまざまな撮影をしているが、ウェディングフォトグラファーとしても活躍しているという。機材としてはOLYMPUSとPeakdesingが好きだが、イベント機材は望遠と広角の用途になるE-M1 Mark IIとE-M5 Mark IIの2台持ち。「イベントの時にレンズを取り替えている奴はダメだと、山下さんが言ってました(笑)」のコメントで会場が沸く。  さて、高山さんが撮影を担当したのが、AWS SummitやAWS CTO Nightなどのイベント。とはいえ、カンファレンスカメラマンとしての仕事はプロフィールの撮影から始まるという。「AWS Summitは6月にありますが、プロフィール撮影は3月から撮っている」(高山さん)とのことで、メンバーの撮影を続けてきたが、場当たり的に始めたのでホワイトバランスがバラバラという反省があったという。また、「昼休み、ランチ食べているAmazon.co.jpの女子社員にどいてもらって、椅子に立ってもらって撮影した。クオリティはよかったけど、気持ち的には辛かった」といった苦労もあった。こうした苦労もあり、「世界中のAWSのイベントの中でプロフィール写真が一番いい!」とドヤれるレベルになり、AWS CTO Nightでも高山さんの撮影会が開催されるようになったという。  イベント本編のノウハウ説明は、冒頭の山下さんとのネタかぶりのため、さらっと説明する。おさえるショットとしてはまず会場の広さ。登壇中は登壇者の動きのあるショットのほか、バックステージからの写真、オーディエンスなどをおさえておく。これらはすべて「でかい会場で登壇した」「聴衆が熱心に聞いている」など登壇者の満足感を高める意図があるという。さまざまなブログや広報メディアで共有されるため、手が抜けないようだ。その他、高山さんは「パネルディスカッションはとにかく逆サイドまで走る」「イベント主催者なら移動で裏口などを活用する」「マイクロフォーサイスなら後ろのロゴもぼけにくい」などの知見を披露した。  イベント後、写真はすぐアップするため、JPEGで撮るのが基本スタンス。会場のWiFiは混雑するため、あえてサイズを小さめしてもアップを優先する。とにかく大量に撮って、失敗をどんどん間引き、Google Photoで共有。そして、帰ったらカメラへの感謝を忘れず、きちんとメンテナンスするのが高山流だ。納得のいく写真をどのように撮っていくかの試行錯誤と上達への鍛錬に感心させられた。 LTを忘れて会場にアンケートしたら?(石川さん)  5番手は「にわかカンファレンスカメラマンの流儀」というタイトルで登壇した石川将行さん。とはいえ、当日LTすることをすっかり忘れていたため、自己紹介はEvernoteのメモ書きでしのぎ、後半はアンケートに充てるという斬新なLTタイムになった。 LTを忘れた愉快な石川さんは前半をEvernoteでのプレゼン、後半を参加者へのアンケートにあてた LTを忘れた愉快な石川さんは前半をEvernoteでのプレゼン、後半を参加者へのアンケートにあてた  普段はグリーのWebエンジニアとして働いている石川さんだが、イベント好きが高じてカメラマンのボランティアをやっているという。今まで担当したIT系のイベントとしては、YAPCやPHP Conference、HTML5 Conferenceなど。イベント撮影は一眼二台体制で挑み、ソニーやキヤノンなどのカメラを併用しているという。  後半のアンケートではRAWの利用、Lightroom等のツール、カメラのブランド、目線のもらいかたやTHETAでの画像の共有方法、オートプレビューの可否、絞り優先やプログラム、マニュアルなど使ってるモードなど幅広く会場に問いかけた。また、「SDカードを空にしておらず、共有したときにプライベートの写真を見られちゃった事件」や「Twitterでのログアウトを忘れて、プライベートにイベント写真が載ってしまった事件」なども披露し、ちょうど10分で終了した。LTの準備を忘れたのは本人にとっても不本意だったかもしれないが、会場とのインタラクティブなやりとりが楽しめた。 「みなさん老眼対策どうしてますかね(笑)」(風穴さん)  6番手となった風穴江さんは、元アスキーの編集者。現在はフリーランスとしてサイボウズのWebメディアの編集やこどもプログラミングやLinuxエンジニア向けの書籍執筆も手がけている。 元編集者だった風穴さんは使うことから逆算した撮影の知見と迷いを披露 元編集者だった風穴さんは使うことから逆算した撮影の知見と迷いを披露  風穴さんの撮影する写真は、われわれと同じ報道写真。写したいモノを明確にする一方、写したくないモノは目立たなく。なぜその写真なのかの意図を明確にするというのをポリシーに撮影しているという。「もともと編集なので、使うことから逆算して撮る」というコメントは、まさにオオタニもうなづきたい部分だった。  続いて風穴さんは撮影において普段気になるところを披露。編集時代は被写体の首の背景に横線が入る「首切り」や頭の背後の事物が縦方向に伸びる「エントツ」などは先輩から怒られたという。一方、最近気になるのはカンファレンス会場のホワイトバランスで、「自社であればともかく、他社の会場だとどこが白いところかわからなくなる」という。  また、以前から画面と登壇者を同時に撮りたいという願望があったが、これはカメラの買い換えで解決策を見いだした。風穴さんは、「昔は画面を撮った上で、シャドウを持ち上げるみたいなことをやっていたけど、上げるにも限界があるし、上げすぎると不自然。でも、結局新しいカメラで解決した」と話す。技術の進歩はまったく素晴らしい。  もう1つ気になる点は風穴さんも言いあぐねていたし、ここでも書くのははばかられる内容。「雑誌時代からずっと気になっていて、これが原因で何度もボツになった」という勉強会での注意点は、直接本人に聞くしかないようだ。  いろいろ迷いの多い風穴さんは、「みなさん練習ってどこでやってるんでしょうか」「SNSでシェアされるカバー写真のネタどうしてます?」「連写されない方も多いですが、タイミングが難しいので、やっぱり連写したいますよね」など、悩める胸の内を吐露。最後、「みなさん、老眼対策どうしてますかね? 僕、プレビューオンにしているけど、実は見えないんです(笑)」という話で会場も沸かせ、壇を降りた。カメラマンでありながら、編集者ならではという視点に納得感の高いLTだった。 カメラマンも撮りながらカンファレンスで楽しんでいる(本多さん)  7番手はいよいよ本職である本多俊一さんが登場。フォトグラファー、写真教室講師、映像制作、グラフィックデザイン、Webデザインまで手がけるあまりガチぶりに一瞬会場も引きかけたが、「HTMLとCSSが読み書きできます。WordPressのテンプレートくらいならカスタマイズできます」のコメントで、エンジニアの多い会場から喝采を浴び、一気に同胞感も高まった。ちなみに9月から吉祥寺で写真教室を始めると言うことで、興味ある人はぜひ申し込んでみてほしい。 個人では「石」を撮影しているというプロカメラマンの本多さんは、自身が参加したイベント体験を共有 個人では「石」を撮影しているというプロカメラマンの本多さんは、自身が参加したイベント体験を共有  本多さんがメインフィールドにしているのは、人物よりも空間やモノ、建築物、店舗など。もちろん、カンファレンスやライブも撮っているという。「カンファレンスの撮影では、空席があっても席が埋まっているように見える角度で撮るように気をつけています」とさりげなくTIPSも披露してくれた。  そして、「カンファレンス撮影は自分の知らないことを知ることができるのが楽しい」というイントロで、本多さんが共有したのはとあるカンファレンスの撮影体験だ。年始に本多さんが撮影を担当したのは、NSCAジャパンが開催した「第5回 NSCA International Conference」というイベント。NSCAはNational Strength and Conditioning Associationの略で、NSCAジャパンは米国にあるNSCAの日本支部にあたる。イベントでは肉体強化やトレーニング、ストレッチなどが実践され、1月開催でありながら汗まみれだった。スキンヘッドの教官が軍隊のブートキャンプさながらのトレーニングを行なっている内容で、参加者も本多さんの作例を食い入るように見ていた。  もちろんセッションも充実しており、本多さんが撮影を手がけたNCSAジャパンの理事長が語る「筋肉は偉大な臓器だ」という研究発表は特にインパクトがあったという。「認知症のリスクは歩幅から推測できるとか、トレーニングはアルツハイマーやうつ病に効果がある可能性があるといった内容を撮りながら学べて、いい機会でした」とまとめた本多さん。カメラマンが撮りながらカンファレンスを楽しんでいるとは思わなかったので、テクニックとは異なる角度で興味深い話だった。 数もすごいが、こだわりもすごい!(Yahoo! JAPAN公式カメラ隊)  ここまでも十分充実したLTだったが、もっとも盛り上がったのは、8番手のYahoo! JAPANの隼田正洋さんのセッションであろう。冒頭、両国国技館で開催されたYahoo! JAPAN 20周年の集合写真のスケールとクオリティで聴衆の度肝を抜いた隼田さんは、組織として写真に真摯に向き合う「Yahoo! JAPAN公式カメラ隊」の活動を紹介した。 Yahoo! JAPAN公式カメラ隊の隊長としてLTを披露した隼田さん Yahoo! JAPAN公式カメラ隊の隊長としてLTを披露した隼田さん  Yahoo! JAPAN公式カメラ隊は、イベントや社内報のインタビュー、プロフィールの撮影、ブツ撮りなどYahoo! JAPANグループの写真撮影のニーズを幅広く支えるボランティア集団。ヤフー パーソナルサービスカンパニー ゲーム&マッチング本部に所属する隼田さんは、このYahoo! JAPAN公式カメラ隊の隊長も務めている。  圧巻なのは101名というスケールの大きさ。会場は「えええええ!」「嘘でしょ」「業者?」といった声があふれ、騒然となる。2012年に依頼フローを整えたことで、需要は急増し、イベントの撮影だけでも月に約15件に達しているとのこと。「戦いは数だよ兄貴」という名言を思い出すような組織戦と言える。  数だけではなく、質にもこだわるYahoo! JAPAN公式カメラ隊。続いて披露されたのは、カンファレンス撮影のTIPSだ。たとえば、プロジェクタの投影画面で色かぶりが起こるという問題に対しては、シャッタースピードを1/60くらいにしておけばだいたい問題ないという。「手ぶれを恐れて、1/300とか、1/500とかにしがちですが、こうすると色かぶりが起こってしまう」(隼田さん)。また、プロジェクタの明るさで登壇者の顔が暗くなるという問題に関しては、RAW現像でシャドウを持ち上げるか、人に明るさを合わせて、後ろのハイライトを落としているという。  こだわっているのがノウハウの集合体とも言える集合写真。東京国際フォーラムでのハイクオリティな社員大会の写真を見せた隼田さんは、「主題を決めること」「きれいに並ばせる」の2つをポイントとして挙げる。「主題を決めないと、人がいっぱいいるというだけで、どんなイベントか伝わらない。たとえば中心人物を主役として思い切り手前に置いたり、全員主役の場合は狭い範囲で一人一人の顔が写るように列をいっぱい作る」(隼田さん)。また、会場にバミったりすることで並び方も最適化。事前のリハーサルも怠らないのが、成功する全体写真のコツだという。  最後、隼田さんは「今回こういうイベントを開催してくれて、ありがとうございます。次回はぜひうちの会場でやらせていただきたい。いっしょにやりましょう」とアピールし、会場も盛り上がった。規模やこだわりはもちろん、写真を重視し、社内カメラマンの組織化を会社として推進している点も素晴らしいと感じた。 いろいろ気になるこだわりカメラマンがとった行動は?(大和さん)  9番目の大和一洋さんは、ミラクル・リナックスに勤務。普段はLinuxカーネルをデバッグしたり、デジタルサイネージやWebアプリを開発しているが、趣味で家族や風景をメインに撮っているという。「自慢なんですけど、港区の観光フォトコンテストで入選しました!」(大和さん)ということで、かなりの腕前のようだ。 いろいろこだわってしまう大和さんは入社式での撮影の苦労とまわりの理解のなさを語った いろいろこだわってしまう大和さんは入社式での撮影の苦労とまわりの理解のなさを語った  カメラ好きということもあり、入社式や社員紹介、社員旅行の撮影を頼まれるという。このうちは社員紹介は若者がドヤ顔でパソコンを広げていればOKで、社員旅行も風景がきれいで、社員も楽しそうなので問題ない。しかし、入社式のような室内の集合写真は難しいという。たくさんの人が列を作ると被写体深度を深くする必要があり、背景にすぐ壁があるため、ボケが使いにくいのが1つの理由。集合写真の撮り方をテーマにした書籍や記事も少なく、こだわり過ぎるとウザがられることも多いという。「事前のロケハンしっかりしようというと、かえって迷惑がられるので、やりにくいこともある」(大和さん)。  大和さんは天バンによるフラッシュ撮りを行なった入社式の写真を元に、「自然発色が難しい」「黒のスーツが多いので、つぶれやすい」「順光のてかり」「壁や床の模様が単調」など改善ポイントを列挙。大和さんは「ここにいる人はけっこううなずいてくれるけど、会社の人からは『なんでそんなこと気にしているの?』と言われる(笑)。エントツとかもわからないんですよね」と悩みを吐露する。  入社式では、外に出て桜の前でも撮影したが、桜が少なく、背景のコンビニの看板がすごく気になった。困ったすえ、「フォトショで桜を盛った」「道路も切り抜きした」には会場も大爆笑。でも、大和さんも「こういうアプローチは僕が目指すのと違う方向(笑)」と思い直し、今回イベントで集合写真のノウハウを得たいと考えたという。  最後、大和さんは愛機の「Nikon D800」ほか、レンズや使用機材について説明。「カメラマンとして、勉強会・イベントに誘ってください!」とアピールして、LTを終えた。こだわりカメラマンの孤独を感じたエモいセッションだった。 オープンデータの研究者がカメラを手にしたら?(加藤さん)  トリは「とある研究者の写真生活」というタイトルでLTを行なった加藤文彦(ふみひろ)さん。タイトルの通り、加藤さんは国立情報研究所の研究者で、オープンデータのNPOにも関わっている。カメラを始めたのは3年前で、NPOのイベントを撮影しようと思ったのと、子供が産まれたことがきっかけだという。 Wikipediaなどで能動的にカメラを楽しんでいる加藤さん Wikipediaなどで能動的にカメラを楽しんでいる加藤さん  研究者としてカメラに関わってよかったのは、やはりプレゼンのネタが増えたこと。「研究者ってとにかくプレゼンが多いので、写真が増えて助かっている。ストックフォトを買うことが減った」(加藤さん)。1年で20回近くイベント撮影していたが、一番大変だったのが神戸で行なわれた「ISWC 2016」というカンファレンス。「大変だったのは『Poster & Demo Minutes Madness』という発表で、一人45秒で102人が登壇した。ピアニカ吹き出したり、チャンバラ始めたり、とにかく大変だった」(加藤さん)。  また、オープンデータの研究者ということもあり、Wikipedia Townへの取り組みも披露された。Wikipedia Townはランドマークに対して市民がWikipediaの記事を作り、現物にQRコードを張って読めるようにした実験的な街のこと。こうした取り組みで重要なのは写真で、加藤さんも地元の神社で写真を撮って、記事を書いて、Wikipedia Commonに登録するといった作業を行なっているという。「イベントのための撮影じゃなく、撮影のためのイベント」というフレーズが写真を主体的に楽しんでいる人の意見として印象的だった。 写真への愛にあふれ、初回から最高だったイベント  10本のLT終了後は、もちろん全体写真! カメラマンがとっかえひっかえ自慢のカメラを構え、それぞれの作品を取り終え、イベント本編も無事終了。会場を出る直前まで、カメラ談義に花が咲き、充実した2時間半はあっという間に終了した。  写真に興味を持つ記者として参加した筆者も、当初はテクニックや機材の濃い話で会場の笑いについて行けなかったらどうしようと不安を持って参加したが、まったくの杞憂。とにかく一人一人のLTに写真への愛がにじみ出ていて、素人も十分楽しめるイベントだったと思う。  なにより主催者が「対立をあおるような発言は禁止」と明言したこともあり、登壇者も参加者も、お互いをリスペクトしあい、素直にノウハウを学びあおうという空気感が「これぞコミュニティ」という感じでとても心地よかった。次回もあったらぜひ参加したいが、一方で「伝説の神回」として今回で終わりにしてもよいのではないかとも思わせる魅惑なイベントだった。  なお、カンファレンスの資料の一部は、以下のイベントサイトからダウンロードできる。 ■関連サイト カンファレンスカメラマンカンファレンス(Connpass)

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