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キムタク主演『無限の住人』カンヌで起きた2種類の反応とは?

エキサイト Bit のロゴ エキサイト Bit 2017/05/21 加藤亨延

© Excite Bit 提供

三池崇史監督がメガホンを取り木村拓哉が主演した映画『無限の住人』が、第70回カンヌ国際映画祭のアウト・オブ・コンペティション部門として上映された。同作をカンヌの観客はどう感じたのか? 5月18日午前に行われたプレス向け上映会、そして夜のメーン会場「グラン・テアトル・ルミエール」で開かれたガラ上映会の反応を比較して、カンヌの雰囲気を少しでも伝えてみようと思う。

※以下ネタバレが含まれます

上映会によって微妙に異なる観客の反応

同作の始まりは、血仙蟲(けっせんちゅう)という体内に宿す虫のおかげで不死身になった主人公・万次の、そこに至った過去シーンから始まる。まず相手を斬り倒した後に、妹・町が「兄さま、おはぎ」、万次が「それは馬ふん、だ」と掛け合うシーンで、プレス向け、ガラどちらの上映会ともに観客から笑いが起きた。出だしのつかみはオーケーだ。

その後、妹・町が司戸菱安に捕まり、助けに赴いた万次は大量の悪党を片っ端から斬り殺す。そして、今まで万次が斬ったすべての遺体が映る引いたカットに切り替わったところで、最初の大きな反応が出た。プレス向けは「こんなに斬ったのか」ということをコミカルに感じた笑い、ガラは「お見事」という雰囲気での拍手だった。

同映画祭は、映画関係者またはメディアのみに開かれたイベントで、一般解放されているイベントではない。また、プレス向け会場はガラ上映のように着飾って参加するわけではなく、通常の映画館のように気軽に鑑賞するスタイルだ。つまり前者は肩肘を張らず参加する環境といえ、後者は前者に比べると、よりフォーマルな雰囲気が増す。この辺りが反応の微妙な差につながったのかもしれない。

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次にモノクロでの過去描写が終わり画はカラーになり、シーンが現在の万次になる。ヒロインである凛は、親を殺した仇である天津影久を討つべく万次に用心棒を頼み、万次は1人目として黒井鯖人を討ち、2人目として凶戴斗(まがつたいと)に重傷を負わせる。ここまでは特に観客から目立った反応はない。ただし作品自体がつねに血が飛び散るシーンが連続するものであり、少しだけ退室者も確認できた。

もっとも観客の関心を集めたシーン

全体を通して観客の反応をもっとも頻繁に感じた場面が、閑馬永空(しずまえいくう)との絡みだ。茶屋で閑馬から一太刀受けた万次は、閑馬の刀に塗られた血仙殺によって、閉じていた過去の傷口が開き、もがき始める。凛は医者を呼びに行こうとするものの、そこを閑馬に捕らえられ小屋で束縛される。そこに満身創痍の万次が助けにくるのだが、そのボロボロになりながらも、閑馬と凛がいる小屋に突如登場するシーンで、再びプレス向け、ガラともに笑いが起きた。

さらにもう2シーン。月明かりの下で対する万次と閑馬。2人が戦っている間、凛は小刀で縛られた縄を解き、小屋から外へ出る。そこでカメラは凛の顔を映しながら少し時間的にためを置いて、万次とその上で、大量の刀が突き刺ささる閑馬が映るカットへ切り変わる。そこで再び両者で笑いが起きた。その後、勝負あって閑馬が体を木に張り付けられながら、腕や胴などが切断されていくシーンも同様である。

2時間という長さでは伝えられなかった部分も

『無限の住人』は長編漫画を原作とした作品だが、映画ではそれを約2時間という短さにまとめている。原作を読んでから映画のストーリーをなぞれば、より一層楽しめ、すんなりと頭に入るシーンは多いが、(私は事前に原作を頭に入れて見たため良かったものの)特にプレス向け上映会の観客については、展開が早過ぎて物語をうまく追うことができず、登場人物のセリフが深く観客に響いていないであろう雰囲気が、しばしばあった。それが影響したのだろうか、プレス向け上映では、終幕後の拍手は多くなかった。

なかでも乙橘槇絵のシーンが顕著だ。万次を追い詰めた槇絵は、とどめを刺そうとする寸前に「一瞬でも気を抜くと恐ろしくて」と、ふと我に返る。ここでプレス向けの観客には「散々斬りつけておいてなぜ?」という空気が漂った。

ただ、この急いだ感じを除けば、同作は三池崇史流エンターテインメントとして、カンヌで観客を楽しませていた。その後についても、凛の首に刀をあてた尸良(しら)の手首が万次の鎖鎌で飛んでいくシーンや、3人の逸刀流の剣士が万次を囲みそれを撃退した万次が「めんどくせえ」といいながら手首を元の場所に付ける場面、吐鉤群(はばきかぎむら)が握り飯を食べながら天津影久と大人数の手下との斬り合いを観戦する様子、吐が天津に胴体から下を切断されながら悶えて動く、といったところで、プレス向けもガラも観客は大いに喜んでいた。

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カンヌの反応とはどういうものか

2つの上映会を比較すると、メディア向け上映会は気軽に鑑賞できる分、感想がよりストレートであるように感じた。一方で、ガラは作品を監督や出演者と一緒に鑑賞し、招待された映画関係者または報道関係者が観客の多くを占めるため、どちらかというと社交の場という雰囲気が出る。たとえば、天津影久と凛が大人数の幕府の侍に囲まれた場面で、万事休すと思いきや、そこに万次が登場するシーン。カットが切り替わり、バンと万次が映った瞬間、ガラでは「待ってました!」という感じで主演・木村拓哉に盛大な拍手が送られる、といった具合だ。

このように上映会により差はあるものの、そもそも毎回作品が同じ観客、同じ条件で上映されるわけでもなく、この幅も含めてカンヌだろう。『無限の住人』という三池作品が、70回という記念すべき開催年の同映画祭で上映され、それをカンヌの観客が楽しんだことに変わりはない。

(加藤亨延)

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