古いバージョンのブラウザーを使用しています。MSN を最適にご利用いただくために、サポートされているバージョンをご使用ください。

クラウド会計で常識を変える freeeが打つ次の一手

ITmedia NEWS のロゴ ITmedia NEWS 2014/05/12 ITMedia

日本のIT産業の“未来”が見える! 「田中克己の『ニッポンのIT企業』」 バックナンバー一覧

 中小企業向けクラウド事業で急成長する新興のIT企業が現れた。その1社がクラウド型会計ソフトを展開するfreeeだ。サービス開始からわずか1年で、ユーザー数は7万事業所を超えた。理由は、中小企業や個人事業主が求めるものを提供したことに尽きる。低料金と使いやすさを武器に、全国約600万事業所への普及を図る。

●簿記の知識がなくても使える会計ソフト

 freeeがターゲットにしているのは、個人事業主や従業員10人以下の中小企業。多くの会計ソフト会社は、こんな小規模な事業所を相手にしない。かたや中小企業にとって、多くの会計ソフトは高額過ぎるので、なかなか手が出ない。freeeは、そんな未開拓市場に向けた会計ソフトをクラウド上に作り上げたのだ。

 同社のクラウド型会計ソフトには、3つの特徴がある。1つは、クラウドサービスなので、ソフトウェアをインストールする必要がないこと。もちろんサーバもいらない。2つ目は、分かりやすくしたこと。具体的には、簿記など会計の専門用語を知らなくても使えるようにした。そして、3つ目が、クレジットカードや銀行口座のデータを取り込み、会計帳簿を自動作成すること。結果、経理の処理は数段速くなるという。

 料金も安価に設定する。青色申告に対応する決算書を作成する個人事業主向けが月額980円、会社法に対応した決算書を作成する法人向けが月額1980円で、それぞれ3ユーザーまで利用できる。つまり、会計士らと情報を共有できるというわけだ。簡易な無料版も用意する。

 中小企業の経営者にとって、バックオフィスの効率化は優先的に実現したいことの1つである。「簿記などの知識がなくても使えるようにした」(佐々木大輔代表取締役CEO)のは、そのためだ。従来、請求書や領収書などの書類整理から始めて、それらの数字を会計ソフトやエクセルなどに手入力する。入力するには専門知識が必要になるし、入力間違いが発生することもある。

 そこで、freeeは手入力をなくし、帳簿作成や決算書作成、請求書作成などを自動化した。簡単に言えば、銀行やクレジットカードのWeb口座情報と同期させて、最新の入出金明細をfreeeに取り込める仕組みである。日付や金額などを確認したら、会計帳簿に変換し、決算書など各種レポートを作成する。クレジット会社と提携し、利用者に手入力を少なくするためにクレジットカードの利用も勧めている。

 クラウド型会計ソフトは2013年3月にリリースしたばかりだが、ユーザー数は13年末に2万超、14年3月に一気に7万事業所を超えた。佐々木CEOは「予想以上のペースで利用者が増えている」と驚く。当初、Twitterなどソーシャルメディアに、「すごく便利なものが出た」といった口コミで広がっていった。加えて、Web広告などマーケティング活動を展開する中で、Windows XPのサポート切れと消費税率アップが重なり、14年に入ってから利用者が急速に増えたとみている。

●業種別対応など機能拡充を進める

 佐々木CEOはfreeeの創業前、Googleでアジア地域の中小企業向けマーケティングを担当していた。「各国の中小企業を分析していると、日本に新しいビジネスが育っていないし、新しいテクノロジーの活用も進んでいないことが分かってきた。そうなると、日本を重要視しなくなり、投資もしなくなる。『なんとかしなければ』との思いが強くなった」。そんな問題意識が創業につながったという。

 会計ソフトを選んだのは、Googleに転職する前に在籍したあるベンチャー企業にある。財務担当役員も務めていた佐々木CEOは、バックオフィス業務にあまりにも多くの時間をとられており、開発に手が回らない。「会計ソフトはあるが、請求書管理や資金管理などがバラバラで、非効率に思えた」。Google時代、そのことを思い出し、「もっといい方法がある」と考えて、辿りついたのがクラウド型会計ソフト。簿記の知識がなくても、簡単に利用できる工夫を凝らせば、中小企業が求める会計ソフトになる。

 もう1つある。IT商品の高額さだ。「母が美容院を経営しているが、レジを購入するのに100万円もした」(佐々木CEO)。同じような機能を持つソフトをクラウド上で安価に提供できれば、経理に困っている起業家を助けられる。それが、日本の中小企業のチャンレジにつながる。

 freeeは、毎日といっていいほど会計ソフトの機能強化を続けて、アップデートを繰り返し行っている。「製品の出来はまだ20%。まだまだやることがたくさんある」と、佐々木CEOは引き続き機能拡充を推し進めるという。

 APIを公開し、協業するのもその1つ。例えば、リクルートライフスタイルが開発したタブレット向けの無料POSレジアプリと連携し、入力した日々の売り上げをクラウド型会計ソフトに自動的に取り込む機能や、紙のレシートをスマートフォンで読み込む機能などだ。ソフト開発会社らに美容院やクリニックなど業種向け機能をクラウド上に開発してもらいもする。日々進化する会計ソフトに仕立てるのだ。

一期一会

 この4月に、米国・シリコンバレーのベンチャーキャピタル(VC)から資金調達し、総額8億円の増資を実施した。freeeが見据える先は何があるのだろうか。

 33歳になった佐々木CEOが今、力を入れているのが、組織作りと人材採用だ。3人で始めたfreeeの社員は30人弱(2014年4月)に増えた。中心となる28歳から31歳の技術者が顧客の要望を聞いて、サービスを磨き上げている。

 伝統的な会計ソフト会社とは異なる体質も見える。長椅子に靴を脱いで座り込んで開発する社員がいれば、卓球やダーツをしている社員もいる。常に機能を進化させる。それもスピード感を持って実行するには、こんなスタイルも必要なのだろう。同時に、将来に向けた組織作りが欠かせなくなっている。

 目指すゴールは、会計ソフトを中小企業のビジネス・プラットフォームにすること。そもそも会計ソフトは、お金の出し入れを記録するもの。「つまり、ビジネスと顧客、ビジネスと社員の関係で、顧客とは請求などのやり取り、社員とは給与や経費精算などのやり取りになる」。これらを管理するプラットフォームとして認知されれば、利用者はさらに増えていくだろう。

「田中克己の『ニッポンのIT企業』」 連載の過去記事はこちらをチェック!

ITmedia NEWSの関連記事

image beaconimage beaconimage beacon