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クラウド時代のあるべき情シスを訴える友岡さんが武闘派CIOになるまで

ザテレビジョン のロゴ ザテレビジョン 2017/07/27
クラウド時代のあるべき情シスを訴える友岡さんが武闘派CIOになるまで © KADOKAWA CORPORATION 提供 クラウド時代のあるべき情シスを訴える友岡さんが武闘派CIOになるまで

いかにも日本の製造業といったフジテックに身を置き、CIOとしてクラウド導入を進めてきた友岡賢二さん。JAWS DAYSなどのイベントでは「武闘派CIO」として日本の情シスの課題やあるべき姿を訴え続けてきた。友岡さんが武闘派CIOになるまでの半生を追った。 本連載は、日本のITを変えようとしているAWSのユーザーコミュニティ「JAWS-UG」のメンバーやAWS関係者に、自身の経験やクラウドビジネスへの目覚めを聞き、新しいエンジニア像を描いていきます。連載内では、AWSの普及に尽力した個人に送られる「AWS SAMURAI」という認定制度にちなみ、基本侍の衣装に身を包み、取材に望んでもらっています。過去の記事目次はこちらになります。 コードからビジネスプロセスを理解した松下時代  ヒップホップが大好きで、大学時代に1000枚近くのレコードに埋もれてDJ的生活を送っていた友岡さん。音楽業界に入ろうとレコード会社やタレント事務所で下働きしていたが、「性格がまじめすぎて業界に合わなかった(笑)」という理由で、商売道具だったテクニクスのターンテーブルを手がけていた松下電器産業に入社したのが1989年。もともと商学部だったため、マーケティングを指向して適性検査を受けたが、数学の得点がよすぎて、SEとして情シスに配属される。「当時はワープロもなかったので、卒論も400字詰め原稿用紙で手書き。キーボードに触ったこともなかったのに、いきなりCOBOLの練習プログラムを作らされることになった」という誤算と波乱の社会人スタートだった。 フジテック CIO 友岡賢二さん フジテック CIO 友岡賢二さん  「成績も100人中ビリで、詰んだなと思った」(友岡さん)といった経緯で人事部にかけあうものの、「とにかくがんばれ」とけんもほろろ。しかし、海外には行かせてもらうというアメをぶらさげられ、1500本ある財務会計のCOBOLのバッチが不具合を起こさないよう、4年間に渡って他人の書いたプログラムをひたすら読み続けた。しかし、不毛とも思えるこのときの経験が友岡さんの人生に大きな影響を与える。「財務会計のプログラムって、すべてのプロセスからデータが最後に集まってくるところ。しかも、パッケージではなく、手組みのシステムだったので、コードを読みながら、ビジネスプロセスの大きな流れを理解できた」(友岡さん)とのことで、プログラム自体も楽しくなったという。  その後、夢が叶い研修生としてハンブルグ(ドイツ)に出向し、現地法人の情シス担当としてシステム開発を手がけてきた。「当時はインターネットもなく、今のように世界がフラットじゃなかった時代。やりとりはFAXや電話で、日本からも隔絶されていた感じだった」(友岡さん)ということで、ドイツの生活にどっぷりはまった。日常会話でドイツ語を学び、ワークライフバランスの優れたドイツの働き方を体に叩き込ませた。「効率的に、システマチックに働くということをドイツで学べた」(友岡さん)。  最初の渡欧は研修生という立場だったが、2回目はマネージャの立場。ロンドン、ハンブルグを拠点に、7年間かけて欧州のSAP R3プロジェクトを率いる立場になる。現地ではHA構成のデータセンターの立ち上げをイチから行なったため、ITコストの高さや高可用性の難しさ、運営の大変さを肌感覚として理解できた。「日本では組織が多層化しているので、プロジェクト全部見るのは難しいけど、海外だと誰も頼る人がいないので、すべて自分でやるしかなかった。海外で情シスを全方位的に学べる経験はすごく大きかった」(友岡さん)。ここでの試行錯誤が後のクラウドのインパクトやCIOという役職へのフォーカスにつながってくることになる。 ERPブームの結果、情シスは要件を伝えるだけの手配士になりさがった  その後、パナソニックAVC社のグローバルIT担当になり、今度はOracle EBS(E-Busness Suite)の最適化プロジェクトを推進。結果として、ERPはSAPもOracleも経験したことになるが、「どっちもやったけど、結局どっちも好きじゃない(笑)。OracleやSAPにあわせてきれいに作るのは、日本企業にとっては難しいんです。会計や人事をイチから作るのはナンセンスだけど、業務系は自分たちで作った方が僕は好きですね」と振り返る。  このときの経験は、情シスがなぜ衰退したのかという議論に1つのヒントを与えてくれたという。パッケージが時代の潮流、手組みのシステムはレガシーという風潮の中、ビジネスプロセスを理解しないまま、ERPの構築を外部コンサルタントに依頼したことで、情シスの能力は大きくそがれてしまった。一方、情シスが上流プロセスへとシフトしたところで、いかに実装すべきかの深い理解がなければ、パッケージ導入はやっぱり成功しない。  「もともと自分たちですべてコーディングしていて、ビジネスとITをしっかり理解していたのに、結局ビジネスからも、ITからも遠くなってしまった。このあたりから情シスの“根腐れ”が起こり始めた。ERPブームの結果として、情シスは要件をベンダーに伝えるための手配師に成り下がってしまった」(友岡さん)。後に武闘派CIO仲間となる長谷川秀樹さんもコンサルティングの立場で同じ風景を見ていたに違いない。  そんな疑問を感じていた友岡さんがクラウドと出会ったのは、北米に勤務していた2006年頃にさかのぼる。きっかけはニコラス・G・カー氏が書いた「クラウド化する世界」。ITがユーティリティ化する未来を提示した同書の内容に腹落ちした友岡さんは、EC2とAmazon S3しかなかったAWSを実際に試し、大きな衝撃を受けたという。「本を買うためのアカウントでサーバーが作れることに驚いた。明らかに潮目が変わったことを実感した」と友岡さんはそのときのショックを振り返る。  友岡さんがクラウドに強く惹かれたのは、まさに自身がデータセンターの構築・運営で苦渋をなめ続けてきたからにほかならない。「北米リージョンのS3においた写真を、簡単にヨーロッパに移せるのも驚いたし、S3のアベイラビリティもすごいと思った。データをAWSに預けてしまえば、後ろ側の面倒なことをこんな値段で任せられるというのは、われわれにとってありがたかった」(友岡さん)。 初日でデータセンター計画を破棄し、クラウドに邁進するフジテック  プロジェクトを終えた友岡さんは、長年勤めたパナソニックからファーストリテイリングに転職し、業務情報システム部の部長として、M&Aで傘下に入った企業のシステム統合を推進する。ご存じの通り、同社では積極的にAWSを活用しており、クラウドが現実に使えることを身をもって体感した。その後、2014年に家族の暮らす関西に戻り、現職であるフジテックのCIOに就任する。  「セカエレ」をキーワードに、グローバルでエレベーターやエスカレーターを展開するフジテックだったが、当時情報システム部は経営陣からなにをやっているかよくわからない存在だったという。また、グローバルの売り上げが6割に達する同社で、海外でのオペレーション強化も必須だった。「情シスの部長はいたんですけど、経営レベルでITをリードするCIOという役職がなかったんです。でも、社長の強い思いでCIOを作ることになり、情シス全体を任せてもらうことになりました。まるごとというのはなかなかできないので、魅力的でしたね」(友岡さん)。  もう1つ、友岡さんがフジテックのCIO職に魅力を感じたのは、同社のシステムがすべて手組みだったという点がある。「会計系はパッケージでしたが、業務系はすべて自分たちで作っていた。エンジニアどころか、課長や部長レベルが自らコードを書いているので、外部への依存がゼロ。ERPのブームもまったく受けず、1980年代からフル内製化している。でも、僕からすれば原石ですよ」と友岡さん。レガシーだったテクノロジーをクラウドとモバイルでてこ入れすることで、周回遅れだった企業が一気に業界トップにのし上がれると感じたという。  フジテックでの友岡さんの武勇談は、契約直前だったデータセンター計画の破棄からスタートした。「外部のデータセンターと契約する予定で、あとは契約書にサインをするところまで済んでいた。でも、社長が僕が入社するまでサインに待ったをかけてくれたので、契約を無効にできた。そしてその日のうちにAWSにサインアップし、自由にサーバーを作れるようにした」(友岡さん)。  いきなりAWSが降ってきた形のフジテックの情シスだったが、もともと自らシステムを構築・運用していたこともあり、現場もそのメリットを瞬時に理解したという。導入した2014年以降インスタンスは増え続け、ファイルサーバー、Webサイト、ネットワーク系サービス、ワークスアプリケーションズの「Company」など、現在は190以上ものインスタンスがAWS上で稼働している。  グローバル展開している企業にとって、AWSは大きなメリットがあるという。「グローバルの現地拠点には潤沢に人がいないので、サーバーの管理も大変。でも、AWSがあれば、現地のリージョンにサーバーを立て、シェアードサービスとして展開できる」(友岡さん)とのことで、25の国・地域で販売・生産拠点を展開しているフジテックもその恩恵を受けているとのことだ。現状、ガバナンスという点はまだまだというレベルなので、今後はローカルで異なったシステムや運用を日本に巻き取って行く方針だ。 日本のクラウド利用はこれでいいのか? 武闘派CIO誕生の背景  そして、友岡さんがフジテックにジョインする2014年春、その後の自身の立ち位置に大きな影響を与える出来事があった。東急ハンズの長谷川秀樹さんとの出会いだ。「JAWS DAYSで長谷川さんが(ガートナーの)マジッククワドラントを出して、『なにごちょごちょ言うとんねん。クラウドの比較なんてせんで、一番右上でええやんけ』とか言ってたんです。『おっ仲間がいる!』と思った」と友岡さんは振り返る。実際に直接話すのはかなり後になるのだが、すぐに意気投合したという。「長谷川さんの登場は僕にとってインパクトでかかった。ある意味、相思相愛で二人は出会ったんです(笑)」(友岡さん)。 ■関連記事 IT業界のデストロイヤー長谷川秀樹さんとJAWS DAYSで語る  長谷川さんや日清食品ホールディングスの喜多羅滋夫さんなど、志を同じくする「武闘派CIO」として情報発信し始めたのも、日本のクラウドの利用状況に大きな違和感があったからだ。マネージドやら、ホステッドやらが頭に付くような「なんちゃってクラウド」が媒体を賑わせ、Oracle Exadataをホスティングしているだけで、フルクラウドと言い切るCIOがイベントに登壇する。こんな状況に友岡さんは我慢ならなかった。「ベンダーべったりのいけてない情シス部長が、過去の資産を背負ったまま、まがい物のクラウドを使っている。新しい時代に乗っているポーズをしながら、旧態依然としたシステムを温存しているのが、見ていて一番いやだった」と友岡さんの舌鋒は鋭い。  友岡さんが自ら情報発信を開始したのは、単に感情としていやだっただけではない。「米国はITを使うことで、この20年すごく生産性が上がっているけど、日本はそうじゃない。ITはどんどんカジュアルになっているのに、今までの重たい資産を持ち続けているのはもったいないと思いますよね」(友岡さん)。昨年はAWS Summitで厚切りジェイソンさんと日本の働き方について登壇し、講演を聞いた人から多くの賛同者を得たという。  こうした情報発信の増幅装置、そしてイノベーションのゆりかごとしてもJAWS-UGのようなコミュニティの存在は大きい。「従来、イノベーションを先導していたのは国家だったけど、これが企業に移り、今は個人に移っている。これからは個人が連帯し、世界を変えていく。これはJAWSに限らず、どこの業界にも起こりうる社会構造の変化だと思う」と友岡さんは語る。 JAWS DAYS 2017の武闘派CIOセッションで吠える友岡さん(撮影:中井勘介) JAWS DAYS 2017の武闘派CIOセッションで吠える友岡さん(撮影:中井勘介)  昔はベンダーの営業を呼びつけて、いろいろ聞いていたが、今はコミュニティで学び、コミュニティで教えるというのが大きな流れ。特にプラットフォームであるAWSの場合、うまく使っている人のノウハウや知識はきわめて価値が高い。「JAWS-UGはエンジニアの熱い想い、会社を超えてエンジニアが学び合うという文化がすごい好きですね。嗅覚の鋭い人たちと出会って、いろんなことがディスカッションできるのはJAWS-UGのイベントのよさです」とコメントする。 とことん現場主義!全天球カメラとVRを現場に持ち込んだら?  AWSとGoogle Cloudを中心にクラウド化を推進してきた友岡さんだが、最近ご執心なのがVRだ。  VR導入のきっかけは、現場写真をリコーの全天球カメラ「THETA」で撮るようになったことだという。もともとフジテックではエレベータの現場写真をコンパクトデジカメで撮っていたが、構造から考えて、6面の写真を抑える必要があった。しかし、写真だけ見ても右か、左かわからない。しかも、継ぎ目もわかりにくいので、結局何枚も撮影する必要で、面倒な作業だったという。  そんな現場に赴いた友岡さんはTHETAを提案した。「『全天球で撮れるカメラがあるんですけど、そんなのあったらうれしいですか?』って現場の人に聞いたら、『うれしいに決まってるだろう!早く持ってこい』という声が返ってきた(笑)。で、現場にTHETA持って行ったら、えっ!!と喜んでくれた」とのことですぐに導入した。今はエスカレーターの内部を撮るExilim(カシオ)とともに、フジテックでは標準的に用いられているという。「カメラは情シスが試して標準カメラを決めている。僕はIoTデバイスだと思っているので、それは絶対押さえたいなと」(友岡さん)。当然、THETAで撮影した写真をクラウドに格納するスマホアプリも作っているので、作業も圧倒的に楽になった。  とはいえ、せっかくの全天球画像なので、当然これはVRで見たいという話になった。しかし、「CADでアニメーション作るのはできなくはないけど、PoCだけで300万円くらいかかる(笑)。でも、現場としてはお客様にもっとカジュアルに見せたいし、どうしたもんかなと」(友岡さん)といった障壁があった。  ここにうまくはまったのが元AWSの小島英揮さんがアピールしていたInstaVRだ。Webベースで簡単にVRを作れるInstaVRを友岡さんはともかく買ってしまったという。「感覚的によさそうと思ったら、僕はとりあえず買ってしまう。そもそも製品も安いし、買ってしまえば、ベンダーも客として接してくれるので(笑)」というのが友岡流。InstaVRでコンテンツを作ったら、お客様にスマホで見せたり、研修のマテリアルとして活用していくという。 僕は基幹システムという言い方が好きじゃない  「武闘派CIO」としてJAWS-UGはじめ、さまざまなイベントに登壇する友岡さんだが、その背景には本来ポテンシャルを持っている日本の情シスをなんとかしたいという強い思いがある。  「僕は基幹システムという言い方が好きじゃない。基幹システムでやっている受発注って単なる伝票処理で、なんら付加価値を生んでないでしょ。どの社長も受発注が基幹業務ですなんて言わないですよ。基幹システムは情シスが勝手に作ったお名前で、それだけやっていればいいと考えているところが残念なところ」と友岡さんは指摘する。落としてはいけない「基幹システム」というワードで自らのフィールドを狭めているところに、今言われている「情シス不要論」の原因もありそうだ。「基幹システムって、大切なんですけど、重要ではないんです。大切なので動かなければいけないんですけど、本当は重要なものにもフォーカスすべき」(友岡さん)。 「基幹システムって大切なんですけど、重要ではないんです」(友岡さん) 「基幹システムって大切なんですけど、重要ではないんです」(友岡さん)  友岡さんが所属している製造業における生産管理システムも、実際に利用しているのは管理部門の数名が使っているだけで、工場で働いている何百名の工員にとっては、まったくもって縁遠い存在。「現場で価値を生んでいる工員やフィールドワーカーが喜ぶようなシステムを、情シスが意外とほったらかしにしているんです。守りと攻めという区分けではなく、価値を生んでいる人たちをちゃんと支えるシステムを作っていきたい」と友岡さんは語る。  CIOの肩書きにこだわるのも、現在の不幸な情シスの現場を変えていきたいというのが大きい。「経営がわからない」と揶揄されることも多い情シスだが、そもそも経営にタッチできないのが現状。当然ながら、経営会議でもITの話がまったく議題に上がらず、「ITはわからない」という経営者が増えることになる。これが日本のITの現場で起こっている不幸の連鎖構造だという。「今の最大の問題点は、経営戦略とITの施策が分離していること。米国でCIOがいない会社はないですが、日本では専任のCIOを置いている企業は10%くらいで、兼任でも5割。だから、経営としてITに関与するCIOを日本に根付かせたいと切に思っています。情シスの人たちはポテンシャル持っている人多いので、下駄履かせてでもいいから、執行役員にしてしまえと」(友岡さん)。  長らく日本企業の代表ともいえる製造業に身を置き、グローバルの空気を吸い込み、ITの現場の酸いも甘いも体感してきた友岡さん。取材を通して一番印象に残ったのは「現場が喜ぶこと、驚くようなことをやりたい」というサービス精神だ。クラウドが台頭し、テクノロジーを部品として使えるようになった今、友岡さんは今も武闘派CIOとして日本企業とITとのあるべき姿を訴え続けている。 ■関連サイト フジテック

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