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コスパ抜群のセパレート型ハイブリッドPC――「HP ENVY x2」でWindows 8を堪能する

2014/09/19

日本HPからClover Trail搭載ハイブリッドPCが登場

 Windows 8の発売以降、PCメーカー各社はタッチ操作のタブレットスタイルと、キーボード入力のノートPCスタイルを1台で両立できる「ハイブリッドPC」の開発に注力している。タッチパネルに配慮して操作画面を大改造したWindows 8に合わせて、PCの形態が久しぶりに大きく変わろうとしているのは興味深い。

 日本ヒューレット・パッカード(以下、日本HP)の「HP ENVY x2 11-g005TU」も、そんなハイブリッドPCのトレンドに乗って登場した新モデルだ。一見、11.6型ワイド液晶ディスプレイを搭載したクラムシェル型のモバイルノートPCだが、ディスプレイ部だけをキーボード部から取り外して、単体のタブレットとして手軽に使うこともできる。
 

日本HPの「HP ENVY x2 11-g005TU」は11.6型ワイドディスプレイを搭載するハイブリッドPC(写真=左)。ディスプレイ部分を取り外し、タブレットとして使用できる(写真=右)

 

 コンパクトなタブレットながら、基本システムにIntelのAtom Z2760(開発コード名:Clover Trail)を搭載することで、機能に制限があるWindows RTではなく、32ビット版Windows 8の機能がフルに使えるのは見逃せない。

 本製品は「分離してタブレットにもなるノートPC」とも「キーボードドック付きのタブレット」ともいえるが、タブレット単体では販売されず、日本HPのWebページで「ノートPC」カテゴリに分類していることから、このレビューではノートPCスタイルを基本として、性能や操作感をチェックする。


輝くシルバーのコンパクトボディ
 

天板(タブレットの背面)は粗めのヘアライン加工を施し、光を強く反射する

 ボディ素材はアルミニウムだ。天板や底面には粗めのヘアライン加工が施されており、光を強く反射し、華やかなイメージを演出している。一方、キーボードベゼルやパームレストは落ち着いたイメージのマットな塗装、クリックパッド部分にスピン加工を施し、すべてシルバーながら表面処理で変化を付けている。曲線を多用しつつ、すっきりとしたくさび型のフォルムにまとめており、タブレットを取り付けるヒンジ部の出っ張りもデザインとして自然で、11.6型ノートPCとして外観に違和感はない。

 ボディのサイズは、303(幅)×206(奥行き)×17~19(厚さ)ミリ、重量は約1.41キロだ。実測値は1395グラムで、公称値よりわずかに軽かった。11.6型のノートPCとして考えると少し重めの部類だが、タブレットとしても単体で使えるディスプレイ側にバッテリーを含むシステム一式を収めていることに加え、キーボード側にもバッテリーを内蔵しているため、若干重くなるのは仕方がないところだ。

 ヒンジ部中央のロックを外すと、タブレットとして使える。着脱/ロック機構はシンプルだが、マグネットアシスト機能があるため、ガチャッと磁石の力で自然にくっつき、ガタつくこともなくしっかり固定できる。ヒンジ部全体の剛性も確保されており、強度に関する不安は感じない。

 タブレット側の端子類は、電源ボタンと音量調整ボタン、ヘッドフォン/マイク兼用端子、microSDカードスロットという内容だ。充電用のDC入力端子は、キーボードドックの接続端子を兼ねる。Webカメラは約200万画素のインカメラと、約800万画素のアウトカメラを装備する。
 

タブレット部分の下面。厚さは最厚部で8.6ミリと薄く、ヘッドフォン/マイク兼用端子とmicroSDカードスロットを備える(写真=左)。キーボードドックのヒンジ部分。矢印で示した場所に磁石が埋め込んである(写真=右)

 

 キーボードドックと合体させると、ドック接続用端子とともにヘッドフォン/マイク兼用端子が隠れるが、いずれもドック側に同種の端子が用意されている。ドック側はHDMI出力と2基のUSB 2.0ポート、標準サイズのSDメモリーカードスロット(SDXC対応)を装備している。
 

キーボードドックを装着した状態の前面(写真=左)と背面(写真=右)。タブレット側にはmicroSDカードスロットがある


 

キーボードドックの左側面には、ヘッドフォン/マイク兼用端子とHDMI出力とUSB 2.0ポート×1(写真=左)、右側面にはUSB 2.0×1とSDメモリーカードスロット、そしてACアダプタ接続用のDC入力を装備する(写真=右)

  


iPad 2よりも薄いスリムなタブレットに

タブレット単体の重量は699グラム。8.6ミリという薄型ボディが特徴だ

 タブレット単体でのサイズは303(幅)×193(奥行き)×8.6(厚さ)ミリで、重量は約710グラムだ。実測では699グラムと公称値よりわずかに軽かった。10型クラスのWindowsタブレットでは「ARROWS Tab Wi-Fi WQ1/J」のような500グラム台の製品があるだけに、それらと比べると少し重いが、11.6型とやや液晶ディスプレイが大きいことを考えれば健闘している。

 画面が大きいぶん、iPad 2(最厚部8.9ミリ)よりも薄い8.6ミリの薄型ボディがより際立つ。キーボードドックとの接続部分がある下辺の厚さは8.6ミリだが、それ以外の3辺は先端を絞りこんでいるため、薄さがさらに強調される。

 本製品は、ピュアタブレットと違い、キーボードドックと合体して「ノートPC」として使うことを前提に設計されている。そのため、裏面のフォルムが天地対称ではないが、デザイン的にうまくまとまっている。

 もっとも、重心は厚みのある下辺側に寄るので、縦位置でも横位置でも厚みのある側を持つと自然に楽に持てる。バッテリー容量は公開されていないが、CPUID Hardware Monitorの表示を見ると、画面側(タブレット)が約26ワットアワー、キーボードドック側は約22ワットアワーのようだ。バッテリー動作時間の公称値は、タブレット単体で約10時間45分、キーボードドック装着時で約19時間となっており、かなりの長時間動作が可能だ。

 付属のACアダプタは、サイズが37(幅)×93(奥行き)×27(厚さ)ミリ(突起部を除く)、重量はACケーブル込みで267グラム、ACケーブルなしで155グラム(すべて実測値)だった。ノートPCのACアダプタとして考えればコンパクトだが、タブレットのACアダプタとしてはケーブルが太いこともあり、かさばるのが残念だ。いずれにしてもバッテリー動作時間が長いため、ACアダプタを常時携帯する必要性はあまりないと思われる。
 

天地対称ではなく、重心は厚みのある下辺側(横位置で)に寄るので、縦位置にした場合はWindowsキーのある右側が持ちやすいが、誤ってWindowsキーに触れないように注意したい(写真=左)。付属のACアダプタはケーブルが太いこともあり、タブレットのACアダプタとすれば、かなりかさばる(写真=右)

タブレット単体でのCPUID Hardware Monitorの表示(写真=左)。キーボードドック接続時のCPUID Hardware Monitorの表示。Value/Minの値が単体と変化しており、これがドック側のバッテリー容量を示していると想定される(写真=中央)。ドッキング状態では、キーボードドック側のバッテリーから使用する仕組み。キーボード側バッテリーの残量があるうちは、本体側バッテリーの容量は減らない(写真=右)

 

32ビットのWindows 8がそのまま動く

 基本システムには、開発コード名「Clover Trail」ことIntel Z2760を採用する。インテルがタブレット向けに開発したSoC(System On Chip)で、2つのCPUコアとGPUコア(Power VR SGX 545)、そしてチップセットの機能をワンチップに集積し、省スペースおよび省電力化を図ったものだ。チップセット部分では消費電力が増える一因となるPCI ExpressやSerial ATAを省く一方で、ストレージ接続用にeMMCインタフェースを用意するなど、タブレットデバイスに最適化されたSoCとなっている。

 このIntel Z2760は、x86ベースのプロセッサでありながらARMベースのプロセッサ(AndroidタブレットやWindows RTタブレットが搭載するプロセッサ)に匹敵する電力効率を実現している点に注目したい。つまり、iPadやAndroidタブレット並に薄型軽量、かつ長時間のバッテリー動作ができるWindows 8(32ビット版)搭載のタブレットが作れるのだ。

 CPUコア部分の動作クロックは1.5GHz(最大1.8GHz)で、デュアルコアだがHyper-Threading Technologyにより4スレッドの同時実行が可能だ。メモリはPC2-8500 LPDDR2 SDRAMを2Gバイト、ストレージは64GバイトのeMMC(embedded MultiMediaCard)を内蔵する。通信機能は、IEEE802.11a/b/g/n対応無線LAN、Bluetooth 4.0、NFCを利用可能だ。
 

「Clover Trail」の開発コード名で知られるインテルのSoC「Atom Z2760」を搭載している。2つのCPUコアとGPUコア(Power VR SGX 545)、そしてチップセットの機能をワンチップに集積している(写真=左)。Atom Z2760のデータシートに記載されているプラットフォーム構成図。Atom Z2760は、14×14ミリの小さなパッケージにCPUコア、GPUコア、チップセットの機能を統合しているほか、メモリをSoCの上に重ねて実装できるPoP(Package On Package)に対応しており、ボディを小型化しやすい(写真=右)


ディスプレイ、サウンド品質も良好

1366×768ドット表示の11.6型ワイド液晶ディスプレイはIPS方式で視野角が広い。表面はグレアタイプだ

 ENVY x2は11.6型ワイドサイズの液晶ディスプレイを搭載する。広視野角のIPS方式液晶パネルを採用し、表示解像度は1366×768ドット、画素密度は約135ppiだ。平凡なスペックではあるが、輝度は明るく、色も鮮やかで、見た目の印象は悪くない。色味は目視ではほぼ標準的な6500K近くに見える。表面は光沢仕上げのため、非光沢に比べれば映り込みはしやすい。

 ディスプレイに5点マルチタッチ対応のタッチセンサーを搭載しており、指で画面に直接触れて操作できる。指のすべり具合や感度、精度が特別よいわけではないが、必要十分な水準を満たしており、滑らかで快適な操作感だ。11.6型ワイドサイズとタブレットとしては少し大きいため、1366×768ドットの表示解像度でも、デスクトップ上での右クリックメニューの操作などが無理なく行える。
 

ディスプレイは最大115度まで倒せる。キーボードドックの奧側が持ち上がり、キーボードにゆるい傾斜がつく

 キーボードドックのヒンジは、ディスプレイ部を倒すとドックの奥側が持ち上がるタイプで、最大で9度ほどキーボードに傾斜がつく。水平から見た画面の角度は最大115度とあまり奥までは倒れないが、視野角が広いIPS液晶を搭載しているため、多少上からのぞき込むような姿勢で使ったとしても、色味があまり変わらず、しっかりと画面全体を視認できる。

 ステレオスピーカーは、タブレットを横位置で見て画面の下側に内蔵されている。同社製PCでおなじみの高音質化技術「Beats Audio」に対応し、音質もタブレットとしては低音が効いており、かなり良好だ。動画や音楽などのエンターテインメントコンテンツもよい音質で楽しめる。
 

日本HPのPCではおなじみの高音質化技術「Beats Audio」に対応。タブレットとしてはしっかりした音質でエンターテイメントコンテンツが楽しめる


ピッチにゆとりのあるしっかりしたキーボード

キーボードドックには日本語84キーのアイソレーション型キーボードとタッチパッドが備わっている

 キーボードはキートップのみを露出させたアイソレーションタイプで、6段配列を採用している。キーピッチは公称で18.9(横)×18.9(縦)ミリと、11.6型ワイド液晶ディスプレイを搭載したノートPCとしてはゆとりがある。薄型のアイソレーションタイプながら、キーストロークは1.5ミリと十分確保されており、スイッチの感触も適度でとても打ちやすい。デザイン上、四隅のキーの1角がカットされているが、カーソルの上下キーが小さい(実測で14×7.5ミリ)ことが気になる程度で、他に打ちにくいキーはない。

 最上段のキーは輝度調整やボリューム調整、通信機能のオン/オフなどの機能(アクションキー)とファンクションキーを共有している。標準ではアクションキーが優先され、Fnキーとの同時押しでファンクションキーという設定となっているが、UEFIセットアップで「Action Key Mode」を「Disable」にすればこの関係を逆にできる。強めにタイプすると中央部を中心にややたわむが、普段使いでは気にならないだろう。

 キーボードの手前には、タッチパッドとクリックボタンを一体化したクリックパッドを装備する。シナプティクスの多機能ドライバが導入されており、2本指でのスクロールやつまみズーム、回転といった機能のほか、パッドの端から内側に指をすべらすことでチャームの表示やWindowsストアアプリの切り替えなどが行える「エッジスワイプ」機能も利用可能だ。
 

シナプティクスのドライバが導入されており、2本指でのスクロールやつまみズームといった機能のほか、チャームの表示やWindowsストアアプリの切り替えなどWindows 8に最適化された「エッジスワイプ」機能も利用できる

 

デバイスマネージャでENVY x2の構成を確認する

Clover Trail搭載機として標準的な性能

 それでは、ベンチマークテストの結果を見ていこう。性能面のテストに関しては、以前にレビューした富士通の「ARROWS Tab Wi-Fi WQ1/J」とほぼ同様の結果となった。細かく見ると違いがある項目もあるが、誤差の範囲内と考えられる。

 両者ともAtom Z2760を搭載しているだけに、性能面で違いが出るとすればストレージの差くらいだが、そのストレージ性能もCrystalDiskMarkのスコアを見る限りは、ほとんど同じである。放熱設計の違いから、動作クロックに影響する(高負荷時にもクロックが上がりにくいなど)可能性もあったが、スコアを見る限りそれもなさそうだ。
 

Windowsエクスペリエンスインデックスのスコア(画面=左)。CrystalDiskMark 3.0.2のスコア(画面=右)

 

 体感的な印象も似ている。最新のCore i7と高速SSDを搭載したUltrabookなどと比べてしまえば見劣りする印象だが、実用十分といえる操作感だ。数年前に流行したAtom搭載のNetbookよりははるかに快適といってよいだろう。Webブラウズの際に、写真の多いページや動画があるページでは読み込みに少し時間がかかるが、慣れればあまり気にならなくなる程度だ。
 

PCMark 7のスコア(グラフ=左)と、3DMark06のスコア(グラフ=右)。ARROWS Tab Wi-Fi WQ1/Jと比較したが、スコアはほぼ同等だ

 

 タブレットとして十分なバッテリー、発熱も問題なし

 バッテリー動作時間は、BBench 1.01(海人氏・作)を利用し、タブレット単体で測定した。BBenchの設定は「60秒間隔でのWeb巡回(10サイト)」「10秒間隔でのキーストローク」、WebブラウザはInternet Explorer 10(64ビット)を指定し、タブブラウズはオフに設定、本体は無線LAN常時接続、Bluetoothオフ、NFCオフ、画面輝度の自動調整をオフ、電源プランは「バランス」で、バッテリー駆動時のディスプレイの輝度は40%に設定した。

 この条件で、バッテリー満充電の状態から残量2%で休止状態に移行するまで7時間8分だった。公称値の10時間45分には及ばないものの、十分な動作時間を達成しているといえる。キーボードドックを接続すれば、バッテリー容量は約1.8倍に増えるため、少なく見積もっても12時間以上は動作するだろう。

 発熱の処理も優秀だ。しばらく使っていても熱くなるという感覚があまりない。天板(タブレット裏面)のロゴの上あたりが少し温かくなるが、それでも室温22度の環境で33度前後といったところ。天板のほかの部分は30度前後で、金属製のボディを広く使い、うまく分散して放熱できているようだ。

 前述したように、タブレットとして使う場合は、厚みのあるキーボードドック接続面のほうが楽に持てるが、発熱もそちら側のほうが低い。プロセッサを内蔵しないキーボード側はほとんど発熱せず、パームレストは25~26度前後とひんやりした感触だ。


高いコストパフォーマンスも魅力のセパレート型Windows 8マシン

ENVY x2は、使いやすいキーボードドックが付属し、コストパフォーマンスの高いマシンに仕上がっている

 直販価格は6万9930円(税込み)だ。標準でキーボードドックが付属することを考えれば、コストパフォーマンスはかなり高いと言える。Atom Z2760搭載タブレットの魅力は、AndroidタブレットやiPadに劣らない小型軽量フォームファクタのタブレットでありながら、PCと同じWindows 8(32ビット)が動き、使い慣れたx86アプリケーション(デスクトップアプリケーション)がそのまま使えることにある。

 本製品はタブレットとしては少し大きめの11.6型のディスプレイを搭載するため、iPadより少し重いものの、タブレットならではの機動力の高さを十分に感じられる軽さである。デスクトップでの操作をタッチで行うには、このくらいのサイズが使いやすく、Windows 8との相性はよい。

 また、Windows 8を使ううえでは、キーボードドックが付属する点は大きなアドバンテージだ。キーボードはキーピッチにゆとりがあって打ちやすく、インタフェースも十分、デザイン、着脱のしやすさなど、キーボードドックは文句なしの完成度だ。

 コストパフォーマンスの高さも含め、Windows 8タブレットとして実に魅力的な製品で、「手軽に使えるタブレットと文字を入力しやすいノートPC、どちらも捨てがたい……」と考えるユーザーにおすすめしたい。
 

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