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コレ1枚で分かる「人間の知性の発達とAI研究の発展」

ITmedia エンタープライズ のロゴ ITmedia エンタープライズ 2017/09/19
コレ1枚で分かる「人間の知性の発達とAI研究の発展」: 人間の知性の発達とAI研究の歴史 © ITmedia エンタープライズ 提供 人間の知性の発達とAI研究の歴史

 人間の知性の発達と人工知能(AI)研究の歴史を見ていくと、興味深いことに、その過程が入れ替わっているようです。

●人間の知性の発達

 人間は生を受けると、さまざまな刺激を外界から受けることになります。その刺激を観察し、感じることを繰り返し、自分がいま何をやっているか、いまはどんな状況なのかが自分で分かる心の働き「意識」を育てていきます。

 そんな意識は好奇心を生み出し、触ったり、見たり、しゃぶったりといった行動を促し、観察の方法や範囲を広げていきます。そういうことを積み重ねて、人間は心と身体の関係を無意識のうちに築いていくのでしょう。

 そういう心と身体の働きを繰り返し使っていくうちに、自分の周りにあるさまざまな事象を感覚的に捉えるようになります。ものごとには特徴や規則性があることが分かるようになり、それを認識、識別できるようになるということです。

 例えば、お母さんの顔、自分か好きなオモチャ、ミルクを飲むということに特徴や規則性を見いだし、理屈ではなく、感覚的に捉えるようになります。つまり、概念を獲得していくのです。

 このように感覚的に得られた概念に、次第に解釈や理由付けを与えられるようになります。論理的思考能力の発達です。この能力の発達は、言語能力の発達を促し、それはさらに論理的思考能力をも高めていきます。

 このように人間の知性は、心身的反応から感覚的思考へ、そして論理的思考へと発達していくのです。

●AIの発展

 AIの研究は人間の知性の発達とは逆の発展を遂げてきたようです。1950年代に入り、コンピュータが使えるようになると、「数を操作できる機械は記号も操作できるはず」との考えから、コンピュータを使った思考機械の研究が始まります。

 1960年代に入り、記号処理のためのルールや数式をプログラム化し、思考や推論などの人間が行う論理的な「知的活動」と同様のことを行わせようという研究が広がりをみせました。

 しかし、当時のコンピュータの能力の低さや、記号処理のルールを全て人間が記述しなければならないことから限界が見え始め、汎用的な知的処理の仕組みとしては実用に使える成果を上げることができないまま1970年代に入り、AI研究は冬の時代を迎えます。

 1980年代に入り、「エキスパートシステム」が登場します。これは、特定分野に絞り、その専門家の知識やノウハウをルール化し、コンピュータに処理させようというものでした。例えば、計測結果から化合物の種類を特定する、複雑なコンピュータのハードウェアやソフトウェアの構成を過不足なく組み合わせるなど、特定の領域に限れば、実用で成果を上げられるようになったのです。

 しかし、これもまた辞書やルールを人間が全て与えなくてはならず、限界に行き当たることになります。ものごとを論理的に記述し、知的処理を機械に行わせようという取り組みは再び下火になっていきます。

 2000年代に入り、さまざまな、そして膨大なデータがインターネット上に集まるようになりました。また、コンピュータの性能はかつてとは比べられないほどに性能を向上させていきました。そこで、特定の業務分野でのデータを解析し、その結果から分類や区別、判断や予測を行うための規則性やルールを見つけ出す手法「機械学習」が登場します。

 「機械学習」以前は、人間がルールを記述し、「論理的に思考」させようというアプローチが主流でした。しかし、「機械学習」は、データの相互の関係から規則性や関係性、すなわち「パターン」を見つけ出そうというもので、「感覚的に思考」させようというアプローチといえるでしょう。

 現在、最新の脳科学の研究成果を取り入れ、この感覚的思考の精度を高めようという機械学習のアプローチ「ディープラーニング(深層学習)」に注目が集まっています。この新たな取り組みは、これまでのAIの研究成果の限界をことごとく打ち破っています。そして、実用においても、これまでにない多くの成果を上げつつあります。

 このようにAIの研究は、論理的思考から感覚的思考へと発展してきたといえるでしょう。

 しかし、人間の心と身体の状態と、その間の関係、つまり非物質的である心というものが、どうして物質的な肉体に影響を与えることができるのか、そしてまたその逆もいかに可能なのかは解明されていません。また、意識や意欲、意志なども同様に、それ自体が解明できておらず、コンピュータに実装しようがないのです。

 このように見ていくと、AI研究の次のテーマは、「心身問題の解決」ということになるのでしょうか。事実、この問題に取り組む研究者たちもいますが、いまだ決定的な解決策は見出ていません。さて、これからどんな成果が出てくるのか、興味は尽きません。

●著者プロフィール:斎藤昌義

 日本IBMで営業として大手電気・電子製造業の顧客を担当。1995年に日本IBMを退職し、次代のITビジネス開発と人材育成を支援するネットコマースを設立。代表取締役に就任し、現在に至る。

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