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ゴールデングローブ賞に大きな変化? 『ラ・ラ・ランド』主要部門を席捲、黒人ノミネーション増加

Real Sound のロゴ Real Sound 2017/01/03 株式会社サイゾー
© Real Sound 提供

 アカデミー賞の前哨戦と位置づけられる、第74回ゴールデングローブ賞のノミネートが、アメリカで2016年12月12日(現地時間)に発表された。アカデミー賞の受賞結果と重なることも多い同賞は毎年注目を浴びているが、果たして今回はどんな結果になるのだろうか? 1月8日(現地時間)にロサンゼルスで開催される授賞式を前に、例年の傾向とアメリカの社会情勢を踏まえた上で今年のノミネーションを分析してみると、受賞の可能性を感じさせる作品、そして選考における大きな変化が見えてきた。  ゴールデングローブ賞は、受賞枠がドラマ部門とミュージカル・コメディ部門に分かれている。作品賞のドラマ部門には『最後の追跡』『LION/ライオン ~25年目のただいま~』『マンチェスター・バイ・ザ・シー』『ムーンライト』『Hacksaw Ridge(原題)』がノミネート。作品に対する評価に大きな差異はないが、トランプ大統領の誕生に伴い、多様性の議論が非常に活発になっているという状況を考慮すれば、ゲイの黒人青年の姿を描く『ムーンライト』や、インディアンの青年の人生を描く『LION/ライオン ~25年目のただいま~』に強い可能性を感じる。ハリウッドきっての嫌われ者であるメル・ギブソンがメガホンを取った『Hacksaw Ridge(原題)』は厳しいだろう。  一方のミュージカル・コメディ部門では、『ラ・ラ・ランド』が筆頭という見方が強い。競合している『20th Century Women(原題)』『デッドプール』『マダム・フローレンス! 夢見るふたり』『シング・ストリート 未来へのうた』は好評を博しているものの、既に結果発表済みの賞レースの結果を見てみると、『ラ・ラ・ランド』の評価の高さは群を抜いている。女性の活躍が話題を集めていることからは『20th Century Women(原題)』も捨てがたいが、ここ3年ではコメディ作品が3タテ(第71回:『アメリカン・ハッスル』、第72回:『グランド・ブダペスト・ホテル』、第73回:『オデッセイ』)なので、周期的にミュージカルが受賞する可能性が高い。よって本命は『ラ・ラ・ランド』だろう。アメコミ作品の受賞歴はないため、可能性はきわめて低いが、『デッドプール』のノミネートからは、ゴールデングローブの選考基準が軟化したことが感じ取れる。  主演女優賞(ドラマ部門)は、『メッセージ』のエイミー・アダムス、『Miss Sloane(原題)』のジェシカ・チャステイン、『Elle(原題)』のイザベル・ユペール、『ラビング 愛という名前のふたり』のルース・ネッガ、『ジャッキー/ファーストレディ 最後の使命』のナタリー・ポートマンがノミネート。過去6年ではフィクション(第68回:ナタリー・ポートマン『ブラック・スワン』)→実話(第69回:メリル・ストリープ『マーガレット・サッチャー 鉄の女の涙』)→実話ベース(第70回:ジェシカ・チャステイン『ゼロ・ダーク・サーティ』)→フィクション(第71回:ケイト・ブランシェット『ブルージャスミン』 )→フィクション(第72回:ジュリアン・ムーア『アリスのままで』)→実話にヒントを得たフィクション(第73回:ブリー・ラーソン『ルーム』)と来ているので、そろそろ実話モノに戻りそうだ。今年はネッガとポートマンが実話モノに出演しているが、ポートマンは過去に『ブラック・スワン』で同賞を受賞している。また、『ラビング 愛という名前のふたり』は異人種間の結婚を描くことにより、女性と多様性という、ハリウッドで最もホットなトピックをふたつカバーしているので、今回はネッガに与えられると予想するのが妥当。レイプされた女性の復讐を描く『Elle(原題)』には、内容に対する批判的な声が多いため、ユペールの受賞はまずないだろう。  主演女優賞(ミュージカル・コメディ部門)には『20th Century Women(原題)』のアネット・ベニング、『Rules Don’t Apply(原題)』のリリー・コリンズ、『The Edge of Seventeen(原題)』のヘイリー・スタインフェルド、『ラ・ラ・ランド』のエマ・ストーン、『マダム・フローレンス! 夢見るふたり』のメリル・ストリープがノミネート。こちらはミュージカル作品の受賞がここ6年皆無であること、そして純粋なミュージカルであると同時に、ヴェネチア国際映画祭でも女優賞を受賞した実績があることを踏まえれば、『ラ・ラ・ランド』のストーンが受賞する可能性が高い。ストーンに関しては、後述するライアン・ゴズリングとともに、『ウォーク・ザ・ライン/君につづく道』以来となる、同一作品に出演している俳優と女優が主演賞に輝く「カップル受賞」にも期待したい。  主演男優賞(ドラマ部門)にノミネートされたのは、『マンチェスター・バイ・ザ・シー』のケイシー・アフレック、『ラビング 愛という名前のふたり』のジョエル・エドガートン、『Hacksaw Ridge(原題)』のアンドリュー・ガーフィールド、『はじまりへの旅』のヴィゴ・モーテンセン、『Fences(原題)』のデンゼル・ワシントンだ。傾向として、同賞は実在の人物を演じた俳優に与えられることが多い。過去6年を振り返ってみても、第69回のジョージ・クルーニー(『ファミリー・ツリー』)を除く5人は実在の人物を演じた(第68回:コリン・ファース『英国王のスピーチ』 、第70回:ダニエル・デイ=ルイス『リンカーン』、第71回:マシュー・マコノヒー『ダラス・バイヤーズクラブ』、第72回:エディ・レッドメイン『博士と彼女のセオリー』、第73回:レオナルド・ディカプリオ『レヴェナント: 蘇えりし者』)。よって、実話モノに出演したアンドリュー・ガーフィールドかジョエル・エドガートンのどちらかが受賞する可能性が高いだろう。  主演男優賞(ミュージカル・コメディ部門)にノミネートされたのは、『ロブスター』のコリン・ファレル、『ラ・ラ・ランド』のライアン・ゴズリング、『マダム・フローレンス! 夢見るふたり』のヒュー・グラント、『War Dogs(原題)』のジョナ・ヒル、『デッドプール』のライアン・レイノルズだ。2010年から振り返ると、コメディ(第ポール・ジアマッティ『バーニーズ・バージョン ローマと共に』)→ミュージカル×2(第69回:ジャン・デュジャルダン『アーティスト』、第70回:ヒュー・ジャックマン『レ・ミゼラブル』)→コメディ×3(第71回:レオナルド・ディカプリオ『ウルフ・オブ・ウォールストリート』、第72回:マイケル・キートン『バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)』 、第73回:マット・デイモン『オデッセイ』)という流れできているため、周期的にミュージカルへ移行すると思われる。しかも、純粋なミュージカルは『ラ・ラ・ランド』だけ。先述した通り同作は評価が非常に高いので、ゴズリングの受賞は固いだろう。作品賞とともに、こちらでも、『デッドプール』からレイノルズがノミネートされていることは注目に値する。『ロブスター』のファレルは悪くないが、いささか作品が前衛的すぎて、娯楽性を重んじるゴールデングローブの空気と合っていない。  文字数の関係で予想は行わないが、他の部門を見渡してみると、やはり多様性、それも黒人への門戸開放がかなり意識されていることが伺える。昨年は男優賞(ドラマ部門)にウィル・スミス、助演男優賞にイドリス・エルバがノミネートされただけ(結果的には両名とも落選)だったが、今年は助演女優賞候補に、『Fences(原題)』のヴィオラ・デイヴィス、 『ムーンライト』のナオミ・ハリス、『Hidden Figures(原題)』のオクタヴィア・スペンサーがノミネート。また、ファレル・ウィリアムスが『Hidden Figures(原題)』で作曲賞に、バリー・ジェンキンズが『ムーンライト 』で監督賞に、マハーシャラ・アリが『ムーンライト』で助演男優賞にノミネートされ、黒人に対するノミネーション数は8となった。この大幅なノミネーション増加の背景にあるものは、何なのか? これについては、昨年の結果はもちろん、第88回アカデミー賞に向けられた批判が関係しているように思える。  昨年2月に発表された同アカデミー賞では、黒人の監督や俳優が1人もノミネートされることがなかった。その結果、#oscarsowhiteという批判がツイッター上に溢れかえり、名作や名優が華やかに授賞式を彩ったにもかかわらず、アカデミー賞のイメージは大幅に悪化。同賞を最高権威とするハリウッドは、白人中心的であるというネガティブなイメージを、さらに色濃くしてしまった。これを払しょくするには、アカデミー賞の前哨戦という位置づけにあるゴールデングローブ賞で、ノミネーションを増やすのが手っ取り早い。今回のノミネーション増加の背景には、こういったからくりがある(言うまでもなく、選出されてるのは優れた作品ばかりだが)。  とは言え、ノミネーションはノミネーションに過ぎない。受賞者が白人ばかりなら、「ノミネーションを増やして誤魔化しただけか」という声を生むこととなり、これまで以上の批判を浴びることになってしまうはずだ。そういった意味で、今回のゴールデングローブ賞は、今後のハリウッドのパブリックイメージを左右しかねないのである。果たして、真の意味で多様性は拡大されるのだろうか…? その結果は神のみぞ知るところだが、一映画ファンとしては、映画界が良い意味で盛り上がることを祈るばかりだ。(岸豊)

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