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シャープさん、8K時代はぶっちゃけどうなりますか? 評論家2名が聞いてみた

ザテレビジョン のロゴ ザテレビジョン 2017/07/18
シャープさん、8K時代はぶっちゃけどうなりますか? 評論家2名が聞いてみた © KADOKAWA CORPORATION 提供 シャープさん、8K時代はぶっちゃけどうなりますか? 評論家2名が聞いてみた

 「8K時代はすぐそこに迫っている」。そう書いてピンとくる読者はどのぐらいいるだろうか? 市場に目を向けると、個人で入手できる8K表示に対応したテレビは世の中にほぼなく、チューナーを内蔵しないモニターでも、シャープが6月末に販売を開始したばかりの「LV-70002」(70V型)など、ごく一部に限られているからだ。受信にはまだ高価なディスプレーに加えて、いまのところは巨大なチューナーも外付けしなければならない。「現実味がない」と感じる人がいてもおかしくはない。  ただしこんな状況も、来年末になれば過去のものとなる。状況は「劇的」に変わっていくだろう。家庭でも導入できる製品が登場し、家庭でも8K/4Kを当たり前のように見られる時代がやってくる。  2018年12月の実用放送に向けて、8K/4Kの試験放送もすでに2016年から始まっている。NHKおよびA-PAB(放送サービス高度化推進協会)が提供するもので、BS17チャンネルを使う。パブリックビューイングの形で、全国のNHK放送局で視聴も可能だ。  LV-70002は業務用をメインに限られたユーザーをターゲットにした製品だ。「受注生産で実売約800万円」という非常に高価な機種でもある。しかし、この分野で先行しているシャープは、10年近く前から8K/4Kのスーパーハイビジョン時代を見据え、着実に技術を培かってきた。  そしてシャープは、LV-70002にも「家庭用テレビ」に求められる「いくつかの条件」をすでに盛り込んでいる。ようやく4K中心に動き始めたテレビ業界の中で、シャープはその先に来る「8K時代への第一歩」を踏み出しているのだ。 シャープによる8K技術の解説  現在放送されているハイビジョン番組の16倍もの情報量を持つ8K。そんな8Kのもたらす新しい世界を「技術」「可能性」「放送」という3つの物語から紹介するサイトで、開発者インタビューも公開。8Kに関心のある人はこの記事と合わせて参考にしてほしい。 ■関連サイト 8K beyond the reality 人間の目と同じ、感動がそこにある。8K 究極のリアリズム テレビよりコンテンツが先行する8Kの世界  ここで8Kテレビの現状についてまとめてみよう。4Kテレビは2011年ごろから製品化され、5~6年経ったここ数年で、ようやく普及し始めた。  ただし「立ち上げから普及までの期間」で比較した場合、4Kと8Kでは対照的な要素がいくつかある。  もっとも大きな違いは、ハードに先行してコンテンツ提供のめどが立っている点だろう。現在8K放送の受信が可能なテレビは市場に存在しないと書いたが、コンテンツ(8K実用放送)のスタート時期は明確にアナウンスされている。4K時代はテレビが先行し、コンテンツはごくごく限られていた。追って4Kによるライブ放送が開始され、ULTRA HDブルーレイなどのパッケージが登場した。ただし初期はネイティブと言えるコンテンツは限定的で、基本的には既存のハイビジョンコンテンツをアップコンバートして観るものだった。  一方、8K時代はテレビと最も相性がよくニーズも高い「放送」という形で、一気にコンテンツ種類と数が増えていく。NHKも2018年12月に、8Kの実用放送(NHK SHV 8K)を開始する計画だ。  そしてもうひとつ注目したいのは、そこに到達する時間が、約1年半しかないということだ。改めて書くと思いのほか短く感じるが、8Kテレビに対する成果を具体的に示しているメーカーは思いのほか少ないのだ。  コンテンツを再生できるハードをいつ準備するのか。それはどのような形になるのか。ここがなかなか見えてこない現状がある。 民放4K放送も含め、放送の高画質化時代が始まる  2018年は「スーパーハイビジョン普及」の元年となりそうだ。8K放送だけでなく民放各局による4K実用放送の開始が予定されている点も見逃せない。  スーパーハイビジョンの利点は大きく3つある。それぞれ「高解像度」「HDR対応」「サラウンド音声」だ。8K放送は既存のフルハイビジョン放送の実に16倍の情報量(約3318万画素、最大7680×4320画素)を持つ「緻密な映像」が放送され、明所と暗所の表現の幅を広げ、肉眼に近い表現が可能になる「HDRの技術」が活用され、最大22.2chの「サラウンド音声」の提供も可能となる。  8K/4K実用放送のユーザーにとってのメリットは分かりやすい。一言で言えば質と体験の向上だ。その一方でこれを実現するメーカーには、越えなければならないハードルがいくつもある。順に見ていこう。  まず2018年から始まる「8K/4K実用放送」では、既存のBS放送と同じ電波を使った4K放送(「右旋」と呼ばれ、民放各局が使用する)とは別に、新電波を使ったBSデジタル/110度CS放送も提供される(「左旋」と呼ばれる)。NHKの8K実用放送やCS局の多くは、この「左旋の新電波」を利用する。  この新電波の利用に加え、4K/8K表示ができるパネル、そして22.2chの音声への対応はもちろんだが、それだけではない。チューナー自体の広帯域化、変復調の多値化(16APSK)、新しい多重化方式への対応(MPEG-2 TSからTLV/MMT)、コーデックの変更(映像:HEVC、音声:MPEG-4 AAC)、色域・ガンマ値の変更(BT.709/SDRからBT.2020/HDR対応へ)、見逃し視聴・マルチ視点視聴・Widget表示などデータ放送の進化、双方向リモコンやスマホ・タブレットとの連携など……非常に多岐にわたる変化に対応しなければならないのだ。  ユーザーの目には見えにくい部分だが、技術的な面ではこれまでにないブレークスルーが必要であり、残された期間で早期に取り組む必要がある。となるとやはり8K表示や8K放送にかねてからとりくんできたメーカーが有利になるのは間違いがない。例えばシャープは、これまでも以下の様な形で8Kテレビの開発に取り組んできた。 2011年5月 8Kディスプレーを開発2014年10月 試作品をCEATECで参考展示2015年9月 IBC2015でNHKと共同開発した8Kモニターを出展2015年10月 85V型業務用8Kモニター発売(LV-85001)2016年5月 NHK技研公開で、高度広帯域デジタル放送受信機を出展2016年8月 NHKが全国の放送局でパブリックビューイング開始2017年6月 70型業務用8Kモニターを発売(LV-70002)  特に全国54ヵ所のNHK放送局に85型モニターと受信機を納入したという実績はアドバンテージだ(一部フルハイビジョンを4×4=16面敷き詰めて8Kを実現している場所もある)。 シャープが8Kテレビに取り組む意味  それではなぜシャープが8Kに取り組むのか。これは4つのキーワードを軸に考えると分かりやすい。  第1に「臨場感」。解像度が高まることによって、より近い距離で映像を見ることが可能になり、広い画角の迫力ある映像を得られることになる。  第2に「実物感」。つまり解像度の向上によって、実物と映像の差がほぼ認識できないほど高い実物感が得られるという点だ。NHK放送技術研究所の実験による「実物の蝶の標本」と「ディスプレー上の蝶」の比較(実物に見えるかを「1」か「0」で答える一対比較法、スコアが1.0になると実物と区別できない)によると、2K解像度(30cpd程度)では0.3~0.4程度、4K(60cpd程度)でも0.8~0.9程度のスコアだったのに対して、8K解像度(100cpd以上)では限りなく1.0に近い結果が出た。つまりほとんどの人間の目は8K以上の解像度を区別できないのだ。  これは8Kの映像のきめ細かさを示すだけではなく、テレビ放送において8K映像が最終的なゴール、つまり8K以上の解像度を追い求めても実物感という点ではごく限られた違いしか出ないということになる。  第3に「立体感」だ。テレビ画面の最適視聴距離は、フルハイビジョンパネルでは3H(画面の高さの3倍)、4Kパネルでは1.5H(同1.5倍)が目安とされてきた。これは人間がドットを識別できる限界値に基づいたもので、これ以上の距離まで離れると細かすぎて人間の目ではドットの有無が判別できないことになる。この計算式に基づくと、8Kでは0.75H(同0.75倍)となり、70型ディスプレーの場合、70㎝以上離れると4Kディスプレーとの差がなくなるハズである。  しかし、実際には解像度の差によって、より細かな階調差が得られるため、映像の奥行き感や立体感に差が感じられるという。  最後が「見えなかったものが見える」ことだ。これまでの映像では気付かなかったもの見えなかったものを映し出すことで発見や感動が得られる。  これはいくつかの8Kコンテンツを実際に見せながらの解説となったが、絵画の映像では60×70㎝四方の絵に描かれた絵の遠景の中にある橋のさらにその上に、ゴマ粒のように小さく人が描かれていたことや、葛飾北斎が描いた竜の顔の荒々しい筆のタッチが分かる。  また解像度の高さを8Kの内視鏡カメラに生かし、目に見えないほど細い糸を使った手術をするといった応用も考えられるという。細い糸を使えば、手術を受ける患者さんの負担を減らすことができる。 8Kの高画質を液晶パネルで実現する理由  ハイエンドテレビの表示デバイスとしては、液晶に加えて、有機ELの存在感が増しているが、シャープは液晶での8Kテレビ実現にこだわっている。これはシンプルに現状、8Kの液晶パネルはあるが、8Kの有機ELパネルはないためだ。 色域の違い 色域の違い  加えて8K時代の高画質に貢献する、色域の広さ(LV-70002はBT.2020比で79%程度で市販の有機ELより広い)、ピーク輝度、階調性といった部分で有利であるためだ。一方で暗部階調やコントラスト比、動画応答性などは自発光型のデバイスである有機ELには譲る。ただし消費電力の面では有利で、発売した70型モデルで470W、有機ELテレビは65型で500W前後の機種が多い。  8K時代を見据えた「高解像度」「大画面」を「家庭で」と考えた場合、液晶パネルに利があるという考え方のようだ。同時にインフラとして8K放送が始まるのであれば、その開始タイミングに合わせたい、そのためには形のない有機ELではなく液晶にしたいということになるようだ。  シャープが最初の8K対応モニターを発売したのは2015年10月で、サイズは85型だった。これと比べて重量と奥行きは約半分の9.2mm/42.5㎏、消費電力は1/3の470Wとなりほぼ市販4Kテレビ同等になった。並行して、周辺回路のシュリンク(縮小)にも取り組んだ。85型では、畳一畳の大きさに様々な基板を収納し、それでも入りきらず2階建て構造になっていた。難点は熱がこもることで、ファンを大量につける必要があった。  一方70型では85型の開発を活かして基板が大幅に縮小し、枚数も1/3以下に減った。結果ファンレス化も実現した。筺体内の空きスペースができたことで、8K放送が受信できるチューナーを内蔵するめどもできた。 写真の端子4つをつかって8K映像を伝送する 写真の端子4つをつかって8K映像を伝送する  現状では8K映像を伝送するための規格がなく、HDMI入力のうち入力1~4までは2Kまたは4Kの伝送(SDR)のみ。8Kは入力7にHDMI×4本で8K映像を伝送する仕組みとなっている。ちなみにこの4つの端子はHDR(HLG/PQ)に対応している。放送局やポスプロ向けなので、極力絵作りなどを排除したマスモニ的なチューニングとのことだが、8Kモニターとしての利用だけでなく、4K入力も可能なため、マスモニ的な4K映像の評価にも使えるという点はメリットになっているそうだ。  2018年までの道筋としては、2017年中は「放送業務機器」「共同開発」「放送要素」を事前に開発し、残りの1年で来年の発売に向けた開発を(4Kテレビやチューナーも含めて)進めていきたいとする。  もちろん強みである一貫生産にも磨きをかける。「液晶パネル」「設計・製造」「テレビの製造設計」「製造」「サービス」といった要素で構成されるが、従来外販だった、8K放送に向けた高画質LSIも内製化していく考えだ。これが実現すると、液晶パネルの設計から製造まで、自社で一貫して手掛けられる唯一の日本メーカーということになる。 評論家による対談  それでは8K映像の現在地点と、シャープの液晶モニターの品質はどうか。デモ映像や試験放送の番組を視聴しながら、シャープの開発者およびAVライター2名の座談会という形式で、取材を兼ねた意見交換を実施した。  参加者はシャープからディスプレイデバイスカンパニー デジタル情報家電事業本部 国内事業部 8K推進部長の高吉秀一氏、同じくデジタル情報家電事業本部 栃木開発センター 第2開発部 係長の下田裕紀氏、AVライターの折原一也氏、鳥居一豊氏だ。 折原 「8Kディスプレーではシャープの内製率が高くなっていくとのことです。8Kパネルの生産はどちらで実施されているのでしょうか?」 デジタル情報家電事業本部 8K推進部長の高吉秀一氏 デジタル情報家電事業本部 8K推進部長の高吉秀一氏 高吉 「85型は亀山工場での生産でしたが、70型は堺工場での生産です」 折原 「バックライトは直下型ですね」 下田 「はい。直下型のバックライトを使い、エリア制御しています。数は非公開ですが、民生用に比べてエリア数も増やしました。同時に色域を拡大するために、バックライトとカラーフィルターを変更しています。『リッチカラーテクノロジー』と銘打っていますが、従来とは少し異なるアプローチですね。結果BT.2020比で79%の広色域を実現できました。  色域を広げる技術には、蛍光体を変えたり、フィルターを変えたりと、まだまだやれることがあります。これを100%に近づけたい。解像度としては8Kというゴールがあり、これは達成できています。次の軸は色域やHDRといった、人間の目により近い再現性を得るための技術となります」 折原一也氏 折原一也氏 折原 「今年のNHK技研公開の表現に『フルスペック8K』というものがありました。その対応度は?」 高吉 「フルスペック8Kの基準で、できていないのはBT.2020のカバー率が100%ではない点と、120Hz入力への対応です。最終的にクリアしなければならない課題とは考えています。ただし85型の入力は60Hzですが、パネル自体は120Hzで駆動していました。来年の実用放送開始に合わせてまず60Hzに対応し、その先の目標として120Hzに取り組んでいきたいと考えています」 折原 「シャープにはクアトロンプロの技術があります。8Kテレビと従来技術の関係についてはどうですか?」 高吉 「2Kから4Kへと進む、その間にクアトロンがあったのと同様に、4K NEXTは4Kとその先にあるステップの8Kをつなぐ存在として開発しています」 鳥居一豊氏 鳥居一豊氏 鳥居 「4原色技術は、BT.2020の色域100%に近づかせるためにも有効ですか?」 高吉 「現状では色域の改善のために4原色技術を使ってはいません。まずはカラーフィルターとバックライトの改善かなと思っています」 鳥居 「8Kの解像度は、モバイル向けでは10インチ台でも実現できるとのことですが、具体的にはどのぐらいのサイズまで8Kテレビとして販売されるのでしょうか?」 高吉 「ニーズ次第ですね。市場ではいまのところ40型以上が4Kになっています。そう考えれば、55型や60型は8Kの市場になる可能性があると思っています。現状あるのは70型の8Kモニターまでですが、この前後のサイズは、製品ラインアップとして持つ必要があると考えています。これより小さい画面は、スタジオや外に持ち出して映像をチェックする必要がある、プロ用モニターになると思います」 鳥居 「60型クラスのサイズは現在でも各メーカーがハイエンドの機種としてラインアップしています。4Kとの差別化やラインアップ展開という意味でもスムーズに感じますね」 高吉 「シャープとしても4Kの次に8Kがあるというイメージで、可能性があると考えています」 スーパーハイビジョンの試験放送用チューナー スーパーハイビジョンの試験放送用チューナー 折原 「スーパーハイビジョンの試験放送用チューナーはすごく大きいですが、なぜでしょう。また、小型化することは可能なのでしょうか?」 高吉 「一つは端子の数です。背面を見ていただくと、HDMI出力が7系統あります。現在の規格では1本のHDMIケーブルで8Kの映像を伝送できないため、映像用だけで4本のケーブルが必要です、さらに最大22.2chの出力に対応するため、音声用に3本使っています。これも規格がなくて、受信側からは、信号をストレートに8chごと出す仕組みになっています。逆に言えば、既存のAVアンプを3台用意して、各チャンネルのスピーカーに割り振るだけで22.2chが実現できる仕組みです。  あとは電源ですね。映像処理と8K放送のデコードが機能の中心ですが、そのための回路がまだ小型化できていません。基板としては複数枚あり、サイズも大きい。ここを来年に向けてシュリンクしていくことになります。デコーダーをどこまで小さくできるかがカギでしょう。ただし、テレビの筐体にはスペースを空けてあるので、70型クラスのテレビであれば、十分内蔵できる見込みです。チューナーの消費電力は130Wあり、テレビの消費電力は470Wあるため、単純計算で8Kのシステムを動かすために600W必要となります。  べらぼうに高いというわけではないですが、家庭用の機器と考えると500W以下に抑えたいと考えています。省電力設計を詰める必要がありますが、実現のめどは立ってきています」 デジタル情報家電事業本部 栃木開発センター 第2開発部 係長の下田裕紀氏 デジタル情報家電事業本部 栃木開発センター 第2開発部 係長の下田裕紀氏 下田 「85型のモニターは1500Wとこれと比べて非常に高い消費電力でした。これを比較すれば数年で、省電力性がかなり高まったという手ごたえもあります」 鳥居 「UIに関しては、民生用テレビの技術を採用しているようです。チューナーさえ入れば、すぐにでも展開できそうですね」 下田 「70型のモニターは、今後出すコンシューマー向けモデルへの展開を意識しており、バックライトの構造も民生の4Kテレビから展開しているものと同等です。薄さ軽さなども現行の4Kモデルと大差ないものになっています」 鳥居 「形だけみればそのままリビングにおいても違和感なさそうです」 本体の奥行きがかなり減った 本体の奥行きがかなり減った 高吉 「実機を見て70型で一番評価されているポイントがそこです。このサイズや薄さなら『家に置けるな』『使ってみたいな』と思えるサイズのようですね」 折原 「民生用の大型は日本でも65型までは普通だから、70型なら大差ないと言えるかもしれません」 高吉 「実感のわくサイズという評価をもらいます」 折原 「シャープの8Kモニターを実際に導入しているのは、やはりスーパーハイビジョン向けのコンテンツを制作もしくは検討しているスタジオになるのでしょうか?」 高吉 「そうですね……。いま一番大きなお客様と言えばNHK。パブリックビューイング用として全国に入れてくれました」 下田 「まずはそこですね」 高吉 「あとは8Kに関する研究機関ですね。今回の70型であれば試験放送の検討用とパブリックビューイングの2つを兼ねることができます。普段は放送局に設置しておいて、イベントがあれば外に持ち出すことができますから、コンスタントな導入をしてもらえると考えています」 折原 「70型をつくった理由はなんでしょう」 高吉 「1枚のガラス基板から、何枚のパネルを取れるかという効率のよさもありますが、大画面で8K映像を表示したいというとき、フルハイビジョンモニターを16面利用したり、プロジェクターで8Kを実現するといった手段がとれます。一方で85型でも大きすぎて、編集室に入らないとか、エレベーターに載せられないといった意見をいただきました。イベントで設置する際、100kgの本体では4人じゃないと厳しいといった問題もあります。我々がPR用途で搬入する際にも、それは感じていました。70型であれば、家庭での利用イメージも付きやすいと考え、70型を製品化しました」 折原 「スーパーハイビジョン中継車などにも導入予定ですか?」 高吉 「現状では、もう少し小さな50インチ程度のサイズで、他社の特注品だと聞いています。撮影現場では、逆に27型ぐらい小型のサイズが欲しいと言われています。8K映像ではピントやボケがよりシビアになりますが、現場でそれを確認できる機材がないと、持ち帰った際に映像がボケていて使えないといった声もあるようです。20インチクラスで足りるのかどうかは分かりませんが、ある程度コンパクトなサイズを持ち運んで使いたいという声も、特定の用途ではありますね」 折原 「8Kコンテンツは、今後NHK以外も作ることになると思いますか?」 高吉 「ここは各社のロードマップ次第ですね、民放は4K放送から始めます。ただ左旋の電波にはまだ空いているチャンネルがあるそうなので、やろうと思えばできるでしょう。8K映像の伝送には、100Mbpsの帯域が必要になりますが、5Gの時代が来れば、8K映像をYouTubeで再生することも可能になるかもしれません。NTTドコモやKDDIが、ほぼ同じタイミングで5Gの回線を使い、8K映像の配信をテストしたと発表しました。通信データを途切れず配信することができる5G活用テーマとして8K配信を考えているのでしょう。日本のインターネットの速度は、アメリカや海外よりも速いですが、5Gの時代がくれば、ネットから8K映像を楽しむという流れがいきなり出てくるかもしれません。 折原 「過去の取材では時期尚早と答えていましたが、Netflixのような資金力のあるコンテンツ配信サービスも有望かもしれませんね」 鳥居 「映像処理に関して、アップコンバート処理は必須だと思いますが、4K映像へのコンバートとはまた違う考え方が必要なのでしょうか?」 下田 「より解像度を上げる必要があるので、処理は難しくなります。ただし我々は4K NEXTで疑似8Kのアップコンバートをやっているのでそのノウハウを生かせると考えています」 高吉 「4K NEXTでは、一度8Kにアップコンバートして、4Kに落とす2段構えの処理でしたから、応用がしやすいはずです」 下田 「2018年に新規開発するチップでも、バージョンアップした形で入れていきます」 折原 「来年には放送が始まります。実際のところ、ネイティブ8Kのコンテンツはどのぐらい出てくるのでしょうか?」 高吉 「NHKは4K/8K両方の番組制作に手を挙げています。ライブラリーも増やしているし、日本ではNHK以外にもすでに数社が8K用の編集室を持っていますので、すでに編集環境は整ってきています」 どんなコンテンツをどのように増やすか ──放送の開始によってコンテンツも増えると思いますが、特に期待したいのはどんな番組ですか? 折原 「定時ニュースなどで決まったタイミングでこつこつと8K映像が増えていけば、それだけで喜ぶユーザーもいるかもしれません」 高吉 「ライブ放送ではすでに大相撲が8KHDR放送になっています。センバツの大阪予選も準決勝か決勝は8Kで配信されていました。スポーツ放送のためのノウハウもたまっているはずで、今後増えていくことが期待できます」 折原 「日本のユーザーとして外せないのは、アニメの8K化でしょうか」 高吉 「実はCGではすでに8Kが採用されています。試験放送が始まる10時と終了する18時のタイミングで、こだわりのあるエンディングロールが作られていますね」 折原 「つまり3D系のアニメなら可能性があるということですね」 高吉 「制作者によると、レンダリング時間が問題だと言っていました。NHKでは教育系の番組で宇宙や恐竜のシーンを8KのCGで作っています。その延長線としてアニメーションに行く可能性もありそうですね。昨年当社は3DCGアーティストTELYUKA(テルユカ)さんと一緒に女子高生『Saya』の8Kコンテンツを作りましたが、1分程度の尺でデータを作るのでも、レンダリング時間がかかり、そこがネックに感じました。しかしハードもありますから、ディープラーニングなどに使う高精度なパソコンが増えている現状を考えれば、8Kデータをレンダリングするのも難しくないはずだと、考えている企業もあるようです」 8Kで観るライブは、まさに異次元の映像体験(折原一也氏)  NHKスーパーハイビジョン試験放送の番組『チック・コリア & ハービー・ハンコック ライブ・イン・ニューヨーク』を観た。8Kの臨場感まさしく”ライブ”だ。チック・コリア、ハービー・ハンコックの巨匠のセッションはまるで一眼レフ写真のような解像感で、撮影したブルーノート・ニューヨークに集う観客達の姿も克明に描き出される。8K、そしてシャープの70型8KモニターLV-70002のみが到達できる、まさに異次元の映像体験だった。 鳥居 「8K放送の録画に関してはいかがでしょうか? 禁止になるのか制限付きになるのか、答えは来年のタイミングで回答が出るんですよね?」 高吉 「私の理解では、放送局側が設定した条件で配信できることになったようです。コンテンツを提供する放送局の考え方次第でしょう」 鳥居 「いままでのようなタイムシフト視聴ができなくなってしまうことは『ない』という理解でいいでしょうか」 高吉 「機能としてなくならないと思いますし、われわれもそういう機能が必要だと思っています。一部、映画などを配信する際には権利者側も神経質になると思いますが、ネットを通じてどんどん高画質なコンテンツが配信されているのに、放送だけに制限がかかるというのは少し理解が得られにくいように思います」 鳥居 「少し安心しました。テレビでは見られるけれど、録画ができないのであれば、ショックですから」 高吉 「ここは機器メーカーではなく、コンテンツメーカーの判断となるので、われわれも受け身の立場ではありますが」 鳥居 「私の捉え方としては、8K受像機は「テレビ」というより「ニューメディア」に合わせた機器です。果たして8Kのパッケージが出るかは分からないですが、業界の足並みを揃えてもらい、放送の品質がグレードアップする点に期待したいですね」 折原 「そこは期待したいところですよね」 鳥居 「CMや権利者の都合優先で、高品質放送にブレーキがかからないことを願います」 鳥居 「少し気になる点として、受信機は、8K/4K両対応の仕様が標準になるのでしょうか? 特に8K放送を4Kにダウンコンバートする機能の有無が気になるところです。スカパー!の4Kチューナーは、2Kにダウンコンバートできない仕様ですよね」 高吉 「技術的には8K→4Kダウンコンバートはできるという回答になります。ただし8Kのデコードは非常に難しく、機器も高価になります。一方、4K放送に絞って受信する受信機なら、今すぐにでも商品化ができる目途が立っています。戦略上の話になりますが、すべての受信機に8Kのデコード機能を搭載するかは決まっていません。少し悩ましいところで、両方の機能が本当にいるのかは考えている最中です。8Kを見たい人はこちらの製品、4Kだけでいい人はより安価なこちらの製品にしてくださいと割り切る可能性はあります」 鳥居 「つまり、新4K放送だけが映るテレビが出てくるということですね?」 高吉 「おそらくは、それがメインになるのではないでしょうか」 鳥居 「8Kの受信はできるけれど、パネルは4Kで、ダウンコンバート表示になるテレビというのも考えられますか?」 高吉 「そこが議論すべきところです。逆に期待したいのは、地上波では2Kで放送する番組の一部を、BSでは4Kで放送するといった形にしてもらえないかということです。より高画質であるなら同じ番組でも、BSの視聴環境を用意して4Kで観たいと思ってもらえるのでは」 折原 「ドラマなどは、4K収録する場合も多いと聞いています。同じ内容なら高画質な方を選ぶと思うのが普通でしょう」 高吉 「そういう展開になれば、BSも今以上に広がるし、4Kを見る楽しみが増えると期待しています。地上波でも4Kカメラで撮って、2Kで放送するものが増えているそうです。2本分の制作を請け負う編集スタジオは大変かもしれませんが……」 モデルの産毛も見えるほどの解像感を持つ8K映像 モデルの産毛も見えるほどの解像感を持つ8K映像 折原 「シャープが8K対応の製品を試作したのは2011年ということでしたが、スーパーハイビジョンへの取り組みはいつごろから始められたのでしょうか? 私は2007年の愛・地球博で、スーパーハイビジョンの取材をした記憶があり、それが一般向けの初披露だったと思います」 高吉 「実はそのころから、スーパーハイビジョンに取り組んでいます。ご指摘の通り、天理にあるシャープの研究開発本部が、開発を始めたのはその前後、2006~7年ごろになります。基礎研究となると1990年代にさかのぼりますが。共同開発が始まったのがそのタイミングですね。製品の形で開発を発表したのは2011年ですが、研究を始めた歴史としては、10年ぐらい前にさかのぼることになります。われわれが先行しているのは基礎研究と、放送への対応、です。試験放送の段階から開発に入っているのは当社だけなので、製品をいち早く出すのはミッションです。  実用放送が始まると言っても、2018年は、放送の起爆剤になるイベントがすこし乏しいタイミングですから、焦る必要はないという空気があるのかもしれませんが」 鳥居 「そうはいっても、誰よりも早く観たいという人は確実にいるはずです。ぜひ放送に合わせて実機を発表してほしいし、シャープには期待したいですね」 高吉 「はい。ぜひ2018年の紅白は、シャープの8Kテレビで見てほしいと思っています」 折原 「それ以降の普及率はどのように推移すると想定しますか?」 高吉 「総務省の資料の中に『4Kテレビの2020年の世帯普及率予想が52.4%』というのがあります。8Kの普及率はもっと低いはずですが、できるだけは近づきたいと我々は考えています。もう少し早く普及しそうな感覚もあります。4Kテレビを購入する人はすでに増えていて、その人たちにはチューナーを提供します。あとはそのために『アンテナやボックスを買うか』という問題があるのですが……、潜在的な市場としてはあると考えています」 折原 「がんばって8Kテレビを買ってほしいですね」 鳥居 「答えにくいとは思いますが、8Kテレビはいくらぐらいで商品化されるのでしょう。僕としては、いまの80型、70型クラスの4Kテレビと同等の価格ならうれしいのですが……。やはり高価になるのでしょうか?」 高吉 「ここでお約束できない部分ですが、4Kのハイエンド機(例えば有機ELテレビ)の価格に、8Kの価値を載せた価格でやりたいと考えています。しかしユーザーニーズとかけ離れた価格にはしたくないですね。ここはメーカーごとに戦略があり、変わってくる部分だと思いますが、現在のラインアップではハイエンドに4Kがあって、その下に2K機があります。8Kはハイエンドの上に入るラインと考えてます」 下田 「このあたり、鳥居さんの意見もぜひ聞きたいですね」 鳥居 「責任重大ですね。無理しても『これなら買える』と思えるテレビであってほしいですね。例えば200万円を超える価格では8Kプロジェクターが視野に入りますから、100万円台。できればその前半でお願いします!」 高吉 「……がんばります。8Kテレビはやはりみんなに買って、観てもらうことがメーカーの大前提です。がんばらせてもらいます!」 いま8Kを実現できる唯一のメーカー、その実力を知る(鳥居一豊氏)  4Kでも十分高解像度なのに、本当に8K映像になるとさらに凄い映像になるだろうか? そう思う人は少なくないだろう。私もその一人だった。だが、実際に8K映像を見てみると、やはりその差は圧倒的だった。しかも、100インチを超えるような特大画面ではなく、比較的身近な70V型でさえ、明らかに映像の力強さに差を感じた。肉眼で見るのと変わらないような自然で緻密な情報量と、豊かな立体感は驚異的で、こんな映像でさまざまなコンテンツが見られると思うと、胸が高鳴る。今8Kテレビを実現できる位置に居るのはシャープだけ。今後の展開を期待し、積極的に応援したい。 ■関連サイト ニュースリリース 人間の目と同じ、感動がそこにある。8K究極のリアリズム (提供:シャープ)

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