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シン・ゴジラのスクリプターが語るiPad Pro&Apple Pencil仕事術

ITmedia PC USER のロゴ ITmedia PC USER 2017/03/30
シン・ゴジラのスクリプターが語るiPad Pro&Apple Pencil仕事術: 田口さんがスクリプターとして携わった作品の1つ「デスノート Light up the NEW world」の絵コンテ © ITmedia PC USER 提供 田口さんがスクリプターとして携わった作品の1つ「デスノート Light up the NEW world」の絵コンテ

 映画はカットをかけて撮影し、編集でつなげて1本の作品に仕上げます。そこで重要な役割を果たすのが、記録係の「スクリプター」。前後のシーン、衣装、俳優のアドリブなど、シーンにおけるあらゆる情報を記録・整理し監督をサポートします。

 「今までは紙とペンを使っていましたが、iPad ProとApple Pencilに変えてからは断然作業が楽になりました」と話すのは、日本を代表するスクリプターのひとり、田口良子さん。

 彼女いわく、ペーパーレス化によってスクリプターのワークフローが大きく変わったのだとか。手書き資料が多く、なかなかペーパーレス化が進まないビジネスマンは参考にしてみてはいかがでしょうか。

●スクリプターは「監督の秘書」

――(聞き手:らいら) そもそもスクリプターとはどんな仕事なのでしょうか。

田口良子さん(以下、田口) 一言で表現すると「監督の秘書」です。映画は始まりから順番に撮影するわけではなく、カットごとにバラバラに撮っていきます。そのため、キャストの髪型や衣裳、物をどちらの手で持っているかなど、前後のカットのつながりを記録し、覚えておくのが仕事です。

―― 前後がつながっていないシーンを当てるクイズ番組をたまにテレビで見ますが、それはスクリプターのミスということですか?

田口 そうです。まさに私の参加した作品がクイズにされたことがあります(笑)。観客が何の違和感もなく映画を見終えることができたら、スクリプターの仕事は成功。できて当たり前、ミスが目立ってしまう仕事ですね。

 あとは現場と編集をつなぐパイプラインでもあります。現場の思いを言葉にし、「こういう風に編集してほしい」と編集に伝える役割です。撮影した映像は日々、現像場でデータが圧縮され編集室に行くので、バラバラに撮ったカットのリストと、正しい順番に並べたリストを2つ渡し、編集室に編集順を伝えます。監督の指示をもとに、カットごとに「ここからここまで使ってほしい」と細かく伝達するので、頭が混乱しないように情報を整理する必要があります。

―― 業務が多岐に渡るようですが、仕事ではどんな資料を取り扱っているのでしょうか。

田口 まず台本は自分用と、清書して編集部に渡す用の2冊があります。クリップデータリストには、撮影素材にどのカットが入っているか、撮影した順番が書いてあります。助監督が作る衣裳香盤は、シーンごとの衣裳の写真や装飾をリスト化したものです。紙ものが多いのですが、私はiPad Proですべて管理しています。

●Apple Pencilがアナログと同じ書き心地だった

―― iPad ProとApple Pencilを導入したきっかけを教えてください。

田口 もともとガジェットが好きでiPad miniを持っていましたが、コンテンツを見ることが主な用途だったので、書き込む作業の多い私には、iPadはあまり使いみちがないと思っていました。そんなときにApple Pencilが発売され俄然興味が湧いて、iPad Proを2台持っていた佐藤信介監督(監督作:「GANTZ」「図書館戦争」シリーズ、「アイアムアヒーロー」など)にお願いして、1台借りることにしたのです。

―― その借りたiPad ProとApple Pencilを仕事で使い始めたのはいつごろからですか。

田口 「シン・ゴジラ」撮影後の2015年9月にiPad Proが発売され、仕上げチームはさっそく導入していました。私はすでに「デスノート Light up the NEW world」の製作に入っていたので、使い始めたのはデスノートからですね。

 以前スタイラスペンを試したことがありますが、頭でイメージしたとおりに上手に文字が書けずにやめてしまいました。だからApple Pencilを佐藤監督に初めて触らせてもらったとき、紙とペンの感覚のままで書けて感動ですよ。iPad ProとApple Pencilは、アナログとデジタルの感覚が混ざっているのがいいところだと思います。

―― 書き味にはこだわるほうですか? ペーパーレス化の観点でいえば、ノートパソコンもしくはiPadのキーボードでタイピングする方法もありそうですが……。

田口 スクリプターはカットがかかったら素早くメモする必要があるので、キーボードに打ち込む作業では間に合いません。台本を片手に持った状態で、両手でタイピングするのも難しいです。

 またパソコンの場合はソフトに慣れるまでが大変そうですし、自宅に持ち帰って清書となると、逆に手間と時間が増えそうです。パソコンでやるスクリプターもいますが、私は不真面目なので(笑)、現場でなるべく清書まで終わらせたいと思っています。現場に持ち込んでそのまま作業できるのは大きいですね。

●持ち運ぶ荷物が減り、作業も大幅に効率化

―― 紙とペンを使っていた頃と比べ、仕事にはどんな変化がありましたか。

田口 仕事の時間が短縮しました! 台本に指示書きするときは一度清書するのですが、同じ指示を違うカットごとに何度も書くこともあり手間がかかります。台本の限られたスペースに情報をたくさん書き込んで、文字のバランスが悪くなると書き直す必要もありました。

 そこで現場向けデジタルノートアプリ「GEMBA Note」を使うことで、よく使うマークはアイテム登録してコピー&ペーストすればよいですし、書き込むスペースが足りなくなったら文字を縮小して寄せればいい。メモ機能の柔軟性が高いので、作業がスムーズになり仕事が早く終わるようになりました。

 また、佐藤信介組の場合、資料はDropboxなどのクラウドにPDFデータで共有されます。今までは絵コンテを紙に出力して持ち歩く必要がありましたが、今はiPad Proに全部入れておけるので、とにかく荷物が減りました。PDFデータはiPhoneの小さな画面で見ていたので、視認性も上がりましたね。

●「寝る時間が増えました」

―― 「仕事の時間が短縮した」とは、具体的にどのくらい作業量が減ったのでしょうか。

田口 体感では半分近くに減ったと思います。これまでは帰宅後も残業していましたが、今では極力現場で終わらせて、帰るときにクラウドにアップするようにしています。おかげで寝る時間が増えました(笑)。

―― 今回はスクリプターならではのiPad活用術を聞きましたが、一般的な職業でも役立つ使い方はありますか。

田口 普段ノートに書き留めていることは、メモ感覚でiPadに書けばいいと思います。書いたものを他にペーストしたり、スペースが足りなくなったら文字を縮小したりと、アナログにはない便利さがあります。よく「慣れるまでに時間がかかりそう」と言われますが、使い始めればすぐ慣れますよ。

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