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ジョブズのタッチPC批判、6年後の回答

ITmedia NEWS のロゴ ITmedia NEWS 2016/10/27
ジョブズのタッチPC批判、6年後の回答: Touch Barを使うとディスプレイには全画面表示したままブラウズできる © ITmedia ニュース 提供 Touch Barを使うとディスプレイには全画面表示したままブラウズできる

 10月26日、27日(米国時間)にMicrosoft、Appleの新製品発表がそれぞれ行われた。共通するのは「腕の重さ問題」への対応だ。

 MicrosoftはSurface Studioという、オールインワンタイプのPCを発表。2999ドルからと高価ながら、AppleがiMacにタッチディスプレイをつけるならばこうしたであろうと思わせるアプローチで、長年のMacユーザーからは「昔のAppleはこういう製品を出していたものだったんだが」とため息まじりの発言が聞かれた。

 一方のAppleは、MACお宝鑑定団の予想通り、OLEDのタッチディスプレイでファンクションキー代替するTouch Barを搭載したMacBook Proを披露。「メインフレーム端末の時代から45年続いたファンクションキーにレクイエムを捧げよう」とフィル・シラー上級副社長は宣言した。

 PCハードウェアではあっても製品カテゴリーが異なるこの2つの製品には、ある共通点がある。

 それは6年前、故スティーブ・ジョブズ氏が指摘していた「腕の重さ問題」への解決策だ。

●ジョブズが指摘した「腕の重さ問題」

 スティーブ・ジョブズは2010年10月20日の「Back To The Mac」発表会で、「タッチスクリーンは垂直の画面には適さない。タブレットのような水平の画面向け」であり「(ノートPCのタッチスクリーンは)少し使うと疲れてきて、長く使うと腕を上げていられなくなる」と指摘。Appleが長年ノート型Macにマルチタッチ対応トラックパッドを搭載して、タッチスクリーンを搭載しなかったのはそれが理由だと説明した。

 腕はけっこうな重さがある(50キロの人で両腕で6.5キロという)。腕を前方に上げたまま長時間作業することはできない。たまに使うくらいならいいが、そのためだけにタッチスクリーンをPCのディスプレイに仕込むのか。

 Appleはこれまで、マルチタッチ対応トラックパッドで改良を重ねてきて、12インチMacBookからは感圧に対応し、Taptic Engineによる触覚フィードバックで操作性を向上させている。今回の新しいMacBook Proではさらにトラックパッドの領域を従来の2倍にしている。

 しかし、それだけではタッチスクリーンをつけてくれというユーザーからの要求に対する有効な回答にならない。

 そこで投入したのが、OLEDのマルチタッチディスプレイでファンクションキーのあるキーボードの最上段を置き換えるTouch Bar。左端のEscapeキーから右端の電源キーまで、その間にあるファンクションキーごと代替する仕組みだ。

 MicrosoftはSurface Dialという大きめのダイヤルを画面に押し当てることで、カラーピッカーを出したりブラシの太さを変えたり様々な細かいコントロールを可能にする提案をその前日に行ったばかりだが、Touch Barは同様なことを、キーボードに手を置いたままでできる。ダイヤルの代わりに、コンテキストに応じて表示されるスライダーで行うのだ。Dialのようにわざわざつかんでディスプレイのところまで持ち上げる必要もない。

 Surface DialもTouch Barも、クリエイティブな作業に必要な微妙な操作に応えられるものだ。MicrosoftはSurface DialはSurface Penとの同時使用で真価を発揮すると言っており、Appleは面積が2倍になったトラックパッドとTouch Barをいっしょに使うと最高だと主張している。

 ジョブズが指摘した腕の重さ問題は、Surface Studioも対処している。スティーブ・ジョブズに酷似したプレゼンスタイルを持つ「Microsoftの父」パノス・パナイ副社長は、「我々は一人ひとりがクリエイターなのだ」といって、Surface Studioのディスプレイをドラフターのように少しだけ水平に近いところまで引き倒してみせた。

 この機構をそのままiMacに取り入れてくれないかなと思っているMacユーザーは多いのではないだろうか。

●MSとApple、1つの目的、2つのアプローチ

 Appleはあくまでも腕はキーボードから水平方向にしか動かさせない。腕を持ち上げるような動作は避けるという、ジョブズの教え(というより、Appleで長年行われてきたユーザーテストの結果)をTouch Barにより守った。Microsoftもそれが現実だということを理解したうえで別のアプローチを取った。クリエイティブにあったほうがよい、タッチスクリーンによる細かい操作を補助するツールとしてAppleはTouch Barのアプリケーション別対応を、MicrosoftはSurface Dialにより同様の対応を行なう。

 だが、いずれもキーとなるのはサードパーティの対応だ。プロダクティビティならMicrosoft Office、クリエイティビティならAdobe CC。このどちらが欠けても無意味だ。Appleはどちらも準備万端。MicrosoftはOfficeは自前だから当然として、Adobe CCへの対応は、少なくともSurface Dialについてはまだ発表されていない。対応表明されているアプリにメジャーなものはまだ少ない。

●続きはAdobe MAXで

 そのAdobeの年次カンファレンスAdobe MAXが10月31日から11月4日まで、カリフォルニア州サンディエゴで開催される。MicrosoftとAppleが発表したばかりの、クリエイターたちが歓喜しそうなデスクトップ、ノートPCのデモをここで行うためにこの日程にしたのではと想像したくなるタイミング。

 来週は現地に行った記者からの充実したレポートが期待できそうだ。

 このように、クリエイティブな人には朗報だった今回の発表だが、MacBook ProがTouch BarになるとハードウェアEscapeキーが失われてしまう。これで一部のソフトウェアエンジニアは阿鼻叫喚の様子だ。Emacs派は問題なしだが、EscapeキーがないとどうしようもないVimmerは反乱を起こしそうである(ターミナルモードではちゃんと左端に表示されるのだが)。

 こちらの行方も楽しみだ。

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