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スマートフォンから撤退したUbuntu――失敗の要因を関係者が分析

ザテレビジョン のロゴ ザテレビジョン 2017/06/28
スマートフォンから撤退したUbuntu――失敗の要因を関係者が分析 © KADOKAWA CORPORATION 提供 スマートフォンから撤退したUbuntu――失敗の要因を関係者が分析

 2013年に「Ubuntu Touch」で(iOS、Androidに続く)第3のモバイルOSに名乗りを上げたCanonical。今年のMWCの直前に方針変換を明らかにし、事実上スマートフォンから撤退した格好となる。撤退発表から2ヵ月が経過したところで関与してきた開発者が、プロジェクトを振り返り失敗を分析している。 2014年6月のイベントで展示されていたUbuntuスマホのデモ機 2014年6月のイベントで展示されていたUbuntuスマホのデモ機 Android対抗としてのスタート地点  Ubuntuはおそらく、社運をかけてスマートフォン、タブレット向けのUbuntu開発を進めてきたはずだ。デスクトップとサーバーにおける人気を利用した同社の“コンバージェンス”戦略は方向性として当を得ていたし、斬新なUIもAndroidの二番煎じ的ではなかった。  2015年、満を持してBQからUbuntuスマートフォン「Aquaris E4.5 Ubuntu Edition」が登場、その後に中国MeizuがUbuntuスマートフォンを投入した。  だが、2015年末に同じく第3のOSを目指す「Sailfish OS」の開発元であるフィンランドのJollaが経営難に陥り、2016年にMozillaがスマートフォン向けの「Firefox OS」を段階的に終了した(Jollaは今年のMWCで復活宣言をした)。Canonicalの今年のMWCのブースはIoTが中心で、スマートフォンエリアの展示はコミュニティーによる取り組みが中心だった。  そしてCanonicalは4月、次世代UIとして開発を進めてきた「Unity 8」の取り組みを打ち切ること、Ubuntu for Phoneの開発を終了することを公に発表した。  それから数日後、CanonicalはCEO交代を発表している。2013年当時に「Androidに対抗する」と宣戦布告したJane Silber氏に代わって、創業者のMark Shuttleworth氏が再びCEOとしてCanonicalを率いることになった。なお、Shuttleworth氏は数年前のMWCのブースで、Ubuntu for phoneが実現するコンバージェンス戦略を披露しながら、Unityをローンチした直後に批判があったことに触れ、「時期が早すぎだたが、いま時代が追いついている」と語っていた。 目標は1%のシェア、だがニッチに訴求できなかった  では内部から見ると何が課題だったのだろうか?  Simon Raffeiner氏は自身のブログで、ターゲット市場、ユーザー体験、端末の入手しやすさ、マーケッティングとコミュニケーション、アプリ開発者向けの取り組みなどの面で分析している。  このRaffeiner氏は、2013年から2014年末までNexus 7でUbuntu Touchを使い、Ubuntu Touchが採用するパッケージフォーマットのClickの開発にも関与し、”Sturmflut”というハンドル名で「Hacking Ubuntu Touch」というブログも作成した。Ubuntu Phone InsiderとしてMeizu MX4をCanonicalから受け取り、アプリ開発コンテストUbuContestの運営などにも関わったという。 2015年のMWCで展示されたMeizu MX4 2015年のMWCで展示されたMeizu MX4  Raffeiner氏によると、内部的なUbuntuの目標は“シェア1%獲得”だったという。台数にして1100万台。1台のデバイスあたり1ユーロ/ドルのソフトウェアとサービスの売り上げが得られれば、数百人規模の開発者にペイできるという計算だったようだ。  Jollaが(ある時点で)120人の開発者を抱え、マーケティングとサポートも行なわなければならないのに比べると、Ubuntu Phoneの場合、マーケティングとサポートを別に立ち上げる必要はない(デスクトップなどと共有できる)。それでも、年間1100万台のスマートフォンと数百万台のタブレットを販売することは“野心的”とRaffeiner氏は振り返っている。  Raffeiner氏の分析では、1%にいきつく道は2つ、主流になるか、お金を払うのを厭わないニッチ層に訴求するかだ。「WhatsApp」「Twitter」「Instagram」などの人気サービスがクローンですらUbuntu上で動かすことを認めていない中で(後述)、「主流」という前者のルートは不可能に見えたと語る。  一方で、後者のルートである「ニッチ」だが、Canonicalはコンバージェンスでニッチのひきつけを狙ったが、数から見て十分ではなかったという。一方で、1つのチャンスとしてプライバシー問題があった(NSAによる情報収集や監視が明らかになった)が、「BlackPhone」のようにプライバシー保護のために高額を払うのを厭わない人を集められなかったとしている。 アプリエコシステムで立ちはだかった課題  ニッチになれなかったさまざまな理由のうち、「ユーザー体験のまずさ」「デバイスの入手が難しい」はテクニカルな課題と分類できる。Ubuntuスマートフォンは「動作が遅く、定期的にリブートが必要だった」とRaffiner氏は記すが、遅さについては当時から指摘があった。  このほか、位置情報サービスが安定していない、着信しているのに電話が鳴らない、ボタンが表示されないために電話ができないなど、スマートフォンの基本的な機能にすら問題が残ったままだったとのことだ(開発者は対応ハードウェアの拡大に忙しかったようだ)。またUbuntu Phoneの特徴だったHTMLベースのコンテンツ「Scopes」については、「デスクトップ上でScopesをどのように使うのかユーザーがほとんど理解していないのにもかかわらず、Scopesの構想に長い時間固執しすぎた」とも記している。  デバイスの入手については、BQでは売り切れ状態が続いていたこと、Ubuntu Phone Insiderでない限りMeizuのUbuntuスマホの入手は難しかったとのことを公表した。そもそも開発者もUbuntuスマートフォンを手にしたくてもなかなか手に入らなかったとしている。  Raffiner氏が失敗の最大要因と見るのは、モバイルOSの成功を左右するアプリエコシステムだ。UbuntuスマートフォンはAndroid、Windows、X11、iOSのいずれのアプリとも互換性がない上、Ubuntu Desktopとも異なるものであり、開発したアプリをUbuntuデスクトップでテストすることすら不可能だったという。  サードパーティーにしてみれば、Ubuntu for Phone向けに別バージョンのアプリを構築しなければならいが、実績がないプラットフォームに対してその価値があるのかの値踏みができないという状況だった。  そこで既存のアプリをクローンしたり、ウェブアプリを構築する開発者がいたものの、人気アプリはそれを認めていないケースが多い。WhatsAppの場合はAPIアクセスに巨額を要求、InstagramはAPIをロックダウンしたためにInstagram Scopeを削除しなければならず、Googleに至っては多くのサービスでパブリックAPIを公開していないなどとつづっている。  なお、同じような”振り返り”は、Firefox OSでも内部者が記している。 筆者紹介──末岡洋子 フリーランスライター。アットマーク・アイティの記者を経てフリーに。欧州のICT事情に明るく、モバイルのほかオープンソースやデジタル規制動向などもウォッチしている

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