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セブン&アイ、過去最高益の死角?オムニ戦略と進むコンビニ依存の弊害、裏戦略とは

サイゾー のロゴ サイゾー 2014/05/02 Cyzo

 4月3日、セブン&アイ・ホールディングス(以下、セブン)が発表した2014年2月期連結決算は、売上高に当たる営業収益が前期比12.8%増の5兆6318億円、営業利益が同14.9%増の3397億円、最終利益が同27.3%増の1757億円の増収増益だった。中でも営業利益と最終利益は共に過去最高益を更新し、さらに営業利益は3期連続の増益に加え、国内流通業で初の3000億円台に乗せた。

 対照的な内容となったのが、流通業界最大手イオンが4月10日に発表した連結決算だ。同社は営業収益こそ前期比12.5%増の6兆3951億円となり、業界初の6兆円台に乗せたものの、営業利益は同10.1%減の1714億円、最終利益は同38.8%減の456億円と冴えない内容となった。

 セブンは営業収益こそトップの座をイオンに譲ったものの、営業利益はイオンの約1.98倍、最終利益は3.85倍と、収益力ではイオンを圧倒した

●過度のコンビニ事業依存

 これだけの好業績だったにもかかわらず、証券アナリストたちの反応は「サプライズなし」「想定内の決算」など、冷めた評価が大半だった。加えて、「これでは2、3年先の業績がどう転ぶかわからない」と心配する声も上がっていた。アナリストの一人はその理由を「好業績の中身が異常だから」と、次のように説明する。

 3397億円という国内流通業初の金字塔を打ち立てた営業利益を事業分野別に見ると、コンビニエンスストア事業(以下、コンビニ事業)が2575億円で全体の75.8%を占めている。次に比率が高いのが金融関連事業の449億円で、全体の13.2%。同事業の営業利益は、セブン銀行が主にセブン-イレブン店内に設置しているATM、セブン・カードサービス発行の「セブンカード」(2月末会員数約350万件)、セブンCSカードサービス発行の「クラブ・オン/ミレニアムカード セゾン」(同約328万件)などからの稼ぎ。いずれも利用者の大半はセブン-イレブンの来店客で、「コンビニ事業の付帯事業のようなもの」(前出アナリスト)といえる。したがって、セブンの営業利益の89.0%をコンビニ関連事業が稼ぎ出しているともいえる。

 そして、総合スーパーのイトーヨーカ堂、食品スーパーのヨークベニマル、ベビー用品専門店の赤ちゃん本舗などのスーパーストア事業が稼いだ営業利益は297億円で全体の8.7%、百貨店のそごう・西武、生活雑貨専門店のロフトなど百貨店事業が稼いだ営業利益は66億円で、全体の1.9%にしかすぎない。  セブンの本業である流通業は、まさに「コンビニにおんぶにだっこ」状態。「セブンの収益構造は、どう見ても歪んでいる。何かのショックでコンビニ事業が失速すれば、セブン全体が失速する。2、3年先の業績を読めないのが不安」(同)という状況なのだ。

●非コンビニ事業の成長を図る

 だが、流通業界関係者は「セブンの事業モデルの脆さは、セブン自身が早くから認識している」とも分析し、同社が推進中の「オムニチャネル戦略」(以下、オムニ戦略)の意外な目的を指摘する。オムニ戦略は昨年秋頃から同社が打ち出している成長戦略で、昨年12月2日に発表したカタログ通販大手ニッセンホールディングス買収を機にメディアの注目を浴びて以降、業界内で話題になっている戦略だ。同関係者は、「オムニ戦略の本当の目的は、『成長をてこにした事業モデル改革』だ」との見方を示す。

 同社がいかにオムニ戦略に今後の成長を託しているかは、鈴木敏文会長の次男、康弘氏が、「オムニ戦略推進の司令塔」に位置付けられたセブン&アイ・ネットメディアの社長に3月1日付で就任した人事からもうかがえる。

 その康弘氏はオムニ戦略の具体像について、4月23日付東洋経済ONLINEのインタビュー記事で次のように語っている。

「グループ内にコンビニ、スーパー、百貨店、専門店と多様な業態を持ち、店舗数は約1.7万店と世界一。こうした特徴を最大限生かしたい。具体的には百貨店で扱う銘菓が近くのコンビニでいつでも受け取れる世界を実現する」

「これまでのセブン&アイは、店にある物しか売ってこなかった。(中略)そごう・西武は24店しかないが、グループ1.7万店で百貨店の商品も扱えるということは、百貨店数が1.7万店になることとも言える」

 つまり、オムニ戦略により流通事業各社に相乗効果を起こし、これまで停滞していたコンビニ以外の流通事業の成長を促すことで、コンビニ事業依存度を下げるシナリオを描いているわけだ。

 これに関して、前出とは別の流通業界関係者は「そう簡単にシナリオ通りにはいかないだろう。消費者がネットでイトーヨーカ堂、そごう・西武などの商品を検索してセブン-イレブンで商品を受け取るというサービス自体が、結果として『セブン-イレブン客の囲い込み』にほかならず、コンビニ事業と他の流通事業との相乗効果が生まれる可能性は低いのではないか。それどころか、このサービスがセブン-イレブン客に定着すれば、コンビニ以外の店頭がショールーミングの場と化し、コンビニ以外の流通事業がますます衰退する恐れがある」と疑問視する。

●“裏の”オムニ戦略

 業界内では、同社のオムニ戦略には「表の戦略」と「裏の戦略」があるといわれている。つまり、セブン-イレブン、イトーヨーカ堂、そごう・西武など流通事業各社の商品や在庫情報をオムニシステムで統合、ネット上でワンストップサービスを実現することで、グループ内の流通事業各社の売り上げ拡大を図るというのが表の戦略。

 裏の戦略は、ニッセン買収に代表されるM&Aだ。グループ外の流通事業取り込みによりネット通販の商品アイテムを拡充し、オムニサービスの背骨を支えようとの意図だが、こちらも難航が予想されている。

 この戦略について外資系証券アナリストは、「例えばニッセン買収は、情報・物流技術や人材の活用を狙ったものだが、業績低迷が長く続いているため、ネット通販に活用できる技術はアマゾン、楽天などのネット通販大手に比べ相対的に陳腐化しているし、優秀な人材もすでに多くが流出している。よって、そんな買収によるセブンとの相乗効果は疑わしい」と指摘する。

 高級衣料品店運営のバーニーズジャパン、雑貨専門店のフランフランを運営するバルスの買収も同様だ。いずれも業績不振などで仲介会社を通じて身売りしていた会社。セブンが中核に据えるオムニ戦略の買収先としては頼りない。

 一連の買収を決めたセブンの村田紀敏社長も、「何でも買っているわけではない。相乗効果を発揮できる案件に絞っている」「今ある姿の延長ではなく、グループの化学反応を起こすのが買収の狙い」(2月20日付日本経済新聞記事より)と語っているが、業界関係者は「仮にオムニ戦略が成功したとしても、あくまでコンビニ事業周辺に限定される『セブン-イレブン経済圏』という狭い領域にとどまる可能性が高い」と指摘する。

 果たしてセブンは、オムニ戦略により過度なコンビニ事業依存から脱却できるのか。その壮大な改革の行方に、業界内の注目が集まっている。(文=福井晋/フリーライター)

※画像はセブン-イレブンの店舗

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