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テクノロジーと温かさを融合 新生「AQUOS R」に込めた思い

ITmedia Mobile のロゴ ITmedia Mobile 2017/07/06
テクノロジーと温かさを融合 新生「AQUOS R」に込めた思い: シャープの「AQUOS R」。写真はドコモ向けモデル © ITmedia Mobile 提供 シャープの「AQUOS R」。写真はドコモ向けモデル

 シャープの新フラグシップスマートフォン「AQUOS R」が、NTTドコモ、KDDI、ソフトバンクから7月7日に発売される。同社のフラグシップスマートフォンは、これまではキャリアによって製品名が異なっており、デザインも文字通り三者三様となることが多かった。しかし2017年夏からはブランド名を「AQUOS R」に変更し、デザインや機能も統一。シャープのカラーを前面に打ち出す形となった。

 もちろん名前を変えただけではなく、中身もリニューアルし、AQUOS Rは全く新しいスマートフォンに生まれ変わったと言っても過言ではない。

 AQUOS Rはどのような狙いで開発されたモデルなのか。従来のスマートフォンAQUOSから何が変わったのか。シャープの開発陣にお話を聞いた。

●ブランドの統一が目的ではない

 まず気になるのが、ブランドを「R」に統一した意図だが、IoT通信事業本部 パーソナル通信事業部 商品企画部長の小林繁氏は「散らばったブランドを1つに統一することが目的ではありません」と話す。

 AQUOS Rの「R」は、「Reality(映像美)」「Response(操作感)」「Robotics(人工知能)」「Reliability(信頼性)」という4つの「R」から取っているが、これらはシャープがスマートフォンの開発で培ってきたものでもある。「ただ名前を変えればいいというわけではありません。私たちが大切にしてきた気持ちをフラグシップに込めました」(小林氏)

 そしてこれらのテクノロジーと、シャープが重視する「温かさ」を融合させた。「今のスマートフォンは世界的に見てもクールでかっこいい方向へ向かっていますが、それが本当に良い姿なのか? という思いはあります。スマホは毎日使うものなので、いかに人の生活になじんでいくかが重要です。人の気持ちや生活に配慮した物作りをしていかないといけない。シャープは“ウオーム&テクノロジー”をけん引します」(小林氏)

 ブランド名を変更するときは「だいたい大騒ぎになる」(小林氏)そうだが、AQUOS Rについては「奇妙なほど一発で決まった」という。それだけ、スマートフォンAQUOSのあるべき姿について、開発陣の思いが一致していたということだろう。シャープが公式に言っているわけではないが、「R」には「Renewal」「Revival」という思いもあるようだ。「われわれがシェアを下げている現状において、再び最前線に戻っていくのにふさわしい名前です」(同氏)

●テクノロジーと温かさを融合させたデザイン

 デザインでもウオーム&テクノロジーを体現した。IoT通信事業本部 デザインスタジオ 課長の水野理史氏は「スマートフォンは手に取るものなので、いかに手になじむかを徹底的に考えました。目を閉じて触っても、シャープの端末だと感覚的に分かるようにしました」と説明する。

 最近はiPhoneをはじめ、金属ボディーで丸みを帯びたスマホが増えているが、つるっと滑って落とすことがある。そこでシャープはスマホを「握っているとき」と「持ち上げたとき」の両方で落としにくくなるよう工夫した。それが「エモーショナルエッジ」と呼ばれる形状だ。AQUOS R側面のメタルフレームは、中央部をわずかに突起させて、斜めにカットしている。これによって指や手のひらにしっかりとフィットして落としにくくなる。さらに4隅の突起もなくしたので、握ったときの持ち心地も良好だ。

 ここまでは温かさの要素だが、テクノロジーの要素も忘れていない。「見た目の質感が、通常の塗装やアルミのブラスト加工ではなく、未来感や先進感を感じられるよう、『溶けた水銀』をイメージしました」と水野氏。シャープはこのイメージを「リキッドメタル」と呼んでいる。

 側面は金属で加工し、アルミを削った後に磨きを入れた。背面はガラスではなくプラスチックだが、透明フィルムの上に薄いガラスを何層にもコーティングする「多層膜コーティング」によって、ガラスのような質感を表現できた。反射率も向上したので鏡のようにも見える。実際に触れてみると、いわゆる安っぽいプラスチックとは異なり、「ガラスです」と言われても信じてしまうほどだ。

 それでもガラスの方がより高級感を出せそうだが、ガラスを採用しなかったのは「多色展開をするため」(水野氏)。最近はガラスのフチがカーブした2.5Dガラスを採用した機種が増えているが、2.5Dガラスだと加色フィルムを曲げられず、立体感をキレイに表現できないという。ちなみに前面には2.5Dガラスを採用して加色もしているが、これは「裏の平らな部分に加色フィルムを貼っているから」(水野氏)だという。

 実際に開発を担当した、IoT通信事業本部 パーソナル通信事業部 機構開発部の酒巻拓朗氏は、「特に光沢感を出すのが大変でした」と話す。また光沢が強いことから、行程の中で(機械が触れたりして)傷が付きやすいことにも悩まされたそうだ。「工程を改善して歩留まりを上げられるよう頑張りました」(同氏)

 AQUOS Rのカラーバリエーションは3色。そのうち、マーキュリーブラックとジルコニアホワイトは3キャリア共通だが、各キャリアの独自カラーとして、ドコモ向けにクリスタルラベンダー、au向けにライトゴールド、ソフトバンク向けにブレイズオレンジを用意した。3キャリアで色が分かれたのは「キャリアによってAQUOSの立ち位置が違う。お客さまの嗜好(しこう)性を考えて、有彩色を決めた」(小林氏)ことによる。

●倍速駆動だけでなく応答速度も重要

 シャープのスマートフォンといえば「IGZO液晶ディスプレイ」が特徴だ。AQUOS RのディスプレイももちろんIGZOだが、ディスプレイ開発を担当したIoT通信事業本部 パーソナル通信事業部 システム開発部 係長の佐藤雄一氏は、「AQUOS RにはIGZO史上最高のディスプレイモジュールを採用しました」と自信を見せる。

 まず解像度が、従来のフルHD(1080×1920ピクセル)からWQHD(1440×2560ピクセル)に向上して、より精細な表示が可能になった。サイズは5.3型。そして、通常の液晶の2倍となる、1秒間に最大120回の画像を更新する120Hz駆動の「ハイスピードIGZO」を採用している。

 ハイスピードIGZO自体は2016年夏のハイエンドAQUOSにも採用されていたが、佐藤氏は「倍速にしても、必ずしもレスポンスがいいわけではありません」と話す。もう1つ重要なのが「応答速度」で、AQUOS Rでは2016年夏モデルと比べて応答速度を1.5倍上げることに成功。指で操作をしてから、よりスピーディーに反応するようになった。

 シャープの検証によると、これまでの120Hz駆動だと、一度の描画にかける時間が約9〜12ms(0.009〜0.012秒)だったが、AQUOS Rでは約6ms(0.006秒)にまで向上したという。「応答が遅いと、液晶の素材がついていけず、残像が見えます。AQUOS Rではさらに残像感が少ない液晶になりました」(佐藤氏)

 応答速度の向上は、画素構造や液晶の材料など、ディスプレイパネルの設計を見直したことで実現した。これは「ディスプレイ部門を持っているシャープだからこそできることです」と佐藤氏は胸を張る。

 より広色域になる「リッチカラーテクノロジーモバイル」も採用。これは液晶テレビ「AQUOS」の技術をモバイル向けに最適化したものだ。「近く(スマホ)と遠く(テレビ)から見るのでは、若干味付けが変わります。(シャープの)テレビ画質のプロフェッショナルのチェックを通して調整をしています」(佐藤氏)

 HDR10規格に準拠した、4K HDR対応動画コンテンツの再生も可能になった。「Amazonプライムビデオ」が配信するHDR対応コンテンツにも対応させるべく、Amazonの認証も受けている。ただしシャープとAmazonで画質の基準が異なる部分があるため、「Amazon側といろいろやりとりをして、パラメーターを調整した」(佐藤氏)。「Amazonさんは、どちらかというとナチュラルな画質を好む傾向にありました。シアトルまで行って調整をして、折り合いを付けるのが大変でした」(同氏)

 自分で撮影した動画を疑似的にHDR画質に変換できる設定も用意した。「映像データから、どういった色と輝度の広げ方ができるかを判断して拡張しています」(佐藤氏)

●リアリティーを追求した広角カメラ

 カメラ設計も一新した。約2260万画素のアウトカメラには焦点距離が22mm相当、約1630万画素のインカメラには23mm相当(いずれも35mmフィルム換算)の広角レンズを採用した(2016年夏モデルはアウトカメラが26mm、インカメラが24mm)。デュアルカメラや背景ボカシなどがスマホカメラのトレンドになりつつある中、なぜ「広角カメラ」にこだわったのか。

 フィーチャーフォンの頃からシャープのカメラを開発してきたという、IoT通信事業本部 パーソナル通信事業部 システム開発部 係長の藤澤傑謙氏は、「リアリティーを追求するため」と話す。

 しかし開発当初、藤澤氏は「そもそもカメラのリアリティーとは何か?」の答えをなかなか出せず、かなり悩んだという。その悩みを解決するきっかけになったのが、厳島神社を観光していた外国人の家族が、スマホのカメラで写真を撮ろうとしていたシーン。鳥居を背景に撮影しようとしていたが、鳥居が大きすぎて、なかなか全体をカメラに収めることができない。最適な構図を探して動き回っていた様子が、たまたまそこに居合わせた藤澤氏の心に残った。

 「スマホのカメラは、ポケットから取り出して簡単に撮れるものですが、目で見た印象と、実際に撮った写真にギャップがあることが分かりました。スマホと人間が見ている画角が全然違うため、広角でいこうとなりました」と藤澤氏は振り返る。「広角レンズはその特性上、近くは大きく、周辺は小さく写すので、遠近感が強調され、リアリティーのある写真が撮れると考えました」(同氏)

 広角レンズを採用した一方で、F1.9という明るいレンズを搭載することに苦労した。「(レンズの開口部が)広くなるほど周囲の光が足りなくなってくるので、極端な話、中心部が明るくて周囲が暗い写真になりかねません。特に4隅が大変です」と小林氏は説明する。それでもレンズのパラメーターを見直すことで、周囲が暗くなるという部分は、「一般の方が気付かないレベル」(小林氏)にまで改善できたという。

※後編では発熱対策やOSバージョンアップ、ロボクルなどを聞きます。

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