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トクホ飲料市場、なぜ再び競争過熱?拡大するドル箱市場で各社新商品続々、新たな懸念も

サイゾー のロゴ サイゾー 2014/04/19 Cyzo

「肥満が気になる」「血糖値を下げたい」などさまざまな健康管理上の意識から、栄養補給食品などの「健康食品」に頼る消費者が増えている。内閣府消費者委員会が2012年5月に発表した「健康食品の利用に関するアンケート調査」(調査期間:12年2月28日~3月5日、調査対象:20~79歳の男女1万人)では、約60%の消費者が健康食品を利用中であり、50歳以上の消費者は約30%が「ほぼ毎日」利用しているヘビーユーザーだという。

 そんな中、清涼飲料業界で今春から、トクホ飲料市場における食品メーカー各社の競争が再び激化する兆しを見せている。トクホ飲料とは、消費者庁が特定保健用食品(トクホ)として「体脂肪がつきにくい」など保健の効能表示を許可した清涼飲料のこと。1991年にトクホの普及を促す保健機能食品制度がスタートして以来、市場は急成長してきた。

 97年度から隔年でトクホの市場規模調査をしている日本健康・栄養食品協会によれば、97年度に1315億円規模だった市場は07年度に6798億円規模と、10年で5.2倍に成長した。しかし、09年9月に花王が販売していたトクホ食用油のエコナに発がん可能性成分が他の食用油より多く含まれているとして、消費者団体がトクホの許可取り消しを求め、花王はエコナを販売中止・自主回収する事態に発展。この問題をきっかけに消費者の「トクホ離れ」が起こり、09年度は市場規模が5494億円と約20%も一挙に縮小、11年度も5175億円(対9年度比5.8%減)と需要が低迷している。

 食品業界関係者によれば、この需要低迷にピリオドを打つ切り札として食品各社が熱いまなざしを向けているのが、トクホ飲料だという。

●12年から始まっていた前哨戦

 トクホ飲料戦争の口火を切ったのは、12年4月にキリンビバレッジ(以下、キリン)が発売した「キリン メッツコーラ」。トクホ初のコーラ系飲料で、キリンは「脂肪の吸収を抑制する効果がある」と謳っている。この宣伝が「健康を気にしてコーラを飲まなくなった成人男性の支持を受けてヒット」(キリン関係者)し、初年度販売目標の100万ケースを発売日からわずか2週間で達成。その後も人気が続き、結局発売初年度に700万ケースを販売したといわれている。  それを見たサントリー食品インターナショナル(以下、サントリー)が同年11月に「ペプシ スペシャル」を発売してトクホコーラ市場に参入。量販店で大々的なメッツコーラ追撃キャンペーンを展開したことから、トクホ飲料市場が一気に盛り上がった。

 トクホコーラがヒットしたのは「健康に悪いとされていたコーラ系が『健康に良い』トクホとして認可されたことで、それまで肥満が心配でコーラ系を我慢していた中高年層がワッと飛びついた」(飲料業界関係者)ためといわれている。

 13年秋にはトクホ茶ブームが沸き起こる。サントリーが同年10月1日に発売したトクホ飲料の「伊右衛門 特茶」も、発売日から2週間で初年度販売目標の100万ケースを達成、慌てた同社が10月15日に年間販売目標を200万ケースに上方修正する人気ぶりだった。また、14年の販売目標を当初計画の2.5倍の750万ケースに設定、飲料全体の約10%をトクホ飲料で稼ぐ構えだという。

 同社関係者は「茶は食事時以外も飲む機会が多い飲料。それがトクホの付加価値効果により消費者の支持を受けた」と分析している。

●最大手のコカ・コーラが参入

 そして今年に入ると、トクホコーラやトクホ茶のヒットは今春から激化するトクホ飲料戦争の前哨戦だったことが見えてくる。

 今年2月5日、アサヒ飲料がトクホ飲料の「食事と一緒に十六茶W」を4月15日に発売すると発表すると、同月26日には清涼飲料最大手の日本コカ・コーラが同社初のトクホ飲料「からだすこやか茶W」を4月7日に発売すると発表。飲料大手のほぼ全社がトクホ飲料市場に参入し、覇を競う構えを示している。すでに参入している伊藤園も「今年の夏までにトクホ飲料の新製品を投入の予定」(業界関係者)だという。

 こうしたトクホ飲料に最も力を入れているのが、サントリーといわれている。同社はトクホ飲料としてすでに「黒烏龍茶」「胡麻麦茶」「ペプシ スペシャル」「伊右衛門 特茶」「ボス グリーン」を販売しているが、中でも既存ヒット商品のペプシ(コーラ系飲料)、伊右衛門(茶系飲料)、ボス(コーヒー系飲料)のトクホ版飲料である「トクホ3個師団」を主力に、多面的な戦いを展開。業界内では、トクホ飲料市場のシェア(業界推定)を12年の約30%から15年中に50%へ一気に高める構えだとみられている。

●拡大するドル箱市場

 清涼飲料市場はもともと過当競争なのに加え、近年は大手流通のPB(プライベートブランド)系飲料に押され、NB(メーカー独自ブランド)系飲料は市場縮小傾向を強めている。このため、清涼飲料より単価が高く(平均40%高)、今後の成長が見込めるトクホ飲料は、飲料大手にとっては「新しいドル箱商品」(業界関係者)なのだ。

 ちなみに、日本健康・栄養食品協会の資料によれば、11年度のトクホ市場規模5175億円のうち、トクホ飲料分野は1247億円と全体の24.1%。業界関係者は「これが14年度は大手の競争効果で市場が活気づき、市場規模は対11年度比2.1倍増の2619億円に膨らむ見通し」と期待している。

 さらに、トクホ市場全体の成長に制度的な追い風が吹く気配もある。

 国は医療費抑制の観点からトクホを予防医療の一環に位置付け、15年春をめどに審査簡素化などの規制緩和の動きを進めているからだ。

 だが懸念もある。これについて業界関係者は「規制緩和により審査が甘くなると、当然トクホの名に値しない低品質品が出回り、消費者の信頼性を低下させる恐れがある。また、大手間の競争が激化すると、低価格競争が発生する恐れもある」と指摘している。

 いずれにしろ、さまざまな要因に後押しされるかたちで、トクホ市場の拡大はしばらく続きそうだ。(文=福井晋/フリーライター)

※画像は現在販売されているトクホ飲料

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