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トラックボールユーザーの福音となるか? ロジクール「MX ERGO」を試す

ITmedia PC USER のロゴ ITmedia PC USER 2017/09/26 09:00
トラックボールユーザーの福音となるか? ロジクール「MX ERGO」を試す: ロジクール「MX ERGO(MXTB1s)」。同社にとって7年ぶりの新製品となるトラックボールだ © ITmedia PC USER 提供 ロジクール「MX ERGO(MXTB1s)」。同社にとって7年ぶりの新製品となるトラックボールだ

 ロジクールから登場した「MX ERGO」は、同社にとって7年ぶりの新製品となるトラックボールだ。同社のハイエンドマウスと同じ「MX」の型番を冠した、トラックボールユーザーのこだわりを満たす待望の製品である。

 同社のマウスやキーボードは、スマホやタブレットなどのスマートデバイスの普及、また複数台のPCを所有するといったトレンドに合わせ、早いスピードで進化を続けている。キーボードであれば、WindowsとMac、AndroidとiOSを切り替えられるマルチデバイス化が顕著であるほか、今年に入ってからは、複数のデバイスを一組のマウス・キーボードで操作できる独自技術「Logicool FLOW テクノロジー」(以下FLOW)が話題になったのは記憶に新しい。

 こうした進化に伴って、新製品を早いスピードで投入する同社だが、トラックボールについてはここしばらく新製品が投入されない状況が続いていた。それだけに、このたび7年ぶりに投入された「MX ERGO」はここ数年で同社が培ってきたさまざまな新機能が盛り込まれた、意欲作に仕上がっている。

 今回は量産モデルを使用し、外観と機能をチェックしたのち、実際の使い勝手、さらに「FLOW」を使って同社マウスと併用した場合などの使い勝手をお届けしよう。

・ロジクールが7年ぶりにトラックボールを投入 究極の操作性を目指した「MX ERGO」

●独自方式/Bluetooth方式のハイブリッド。チルトホイールも搭載

 ではまず、基本的な仕様からチェックしていこう。PCとの接続は添付のUSBレシーバを使った独自方式か、Bluetoothかが選べるハイブリッド。一回のフル充電で最長4カ月利用できるほか、1分の充電で約8時間駆動する。

 バッテリー寿命が長い製品は、長期間使えるがゆえに逆に油断してしまい、気づいたらバッテリーが切れていた、というのはよくある話だが、その場合も1分充電すれば丸一日の業務には対応できる安心設計だ。充電は製品前方のmicroUSBで行う。

 一般的にトラックボールには、ボールを親指で操作するタイプと、人差し指(中指)で操作するタイプとがあるが、本製品は前者で、左右ボタンのクリックは一般的なマウスと同じく人差し指と中指とで行う。つまりマウスとの違いは、ポインタを動かすために本体そのものを動かすか、それとも親指でボールを回転させるかだけだ。一般的なマウスから乗り換えたり、あるいは併用するにあたって操作を覚え直さなくて済むのはメリットだろう。この点については本稿の最後にも触れる。

 ボタンは通常の左右ボタンに加え、人差し指の位置に戻る/進むに相当する2ボタンを備える。これは同社トラックボールの先代モデルに当たる「M570」と同じだ。またチルトホイールの搭載により左右スクロールにも対応するほか、ホイールクリックも行える。一方で、同社の一部マウスに搭載されている、ホイールの速度を切り替えるクルーズコントロールは非搭載となっている。

 さらに左手親指、ボールのすぐ横にもう1つボタンがあり、これは後述するスピードモードとプレシジョンモードの切替に使うためのボタンだが、ここに独自に機能を割り当てることもできる。

 デザインはつや消しのシックな表面処理が特徴だが、ボールの色がガンメタリックというのは、本製品のアイコンとなりうる特徴だろう。一般的にトラックボールと言えば、ボールが赤など派手な色であることが多く、同社のトラックボール「M570」までもそうしたカラーリングだった。本製品は本体色に近いトーンのガンメタリックを採用することで、落ちついた雰囲気を醸し出すとともに、高い質感の醸成に一役買っている。また指紋がつきにくいボディも特徴の1つだ。

 同社の独自技術「FLOW」に対応しており、最大2台のPCを本製品で操作できるほか、デバイス間のファイルコピーも行える。またこれとは別に、ペアリング先のデバイスを切り替えるためのボタンをホイール手前に備えている。同社の従来のマウスではこのボタンが裏面にあり、切り替えるためには本体をひっくり返す必要があったが、本製品は握ったまま切り替えられるので、「FLOW」がなくても2台のデバイスを容易に切り替えられる。本製品の隠れた利点といえるだろう。

●20度の傾きにより筋肉活動量を20%軽減

 トラックボールという製品は、他のPC周辺機器に比べて、仕様だけでは製品の性格や使い勝手が見えにくい。ここでは実際の使い勝手について、筆者が1週間ほど使った感想を踏まえつつ見ていく。

 本製品の大きな特徴として、本体の角度を2段階で変えられるギミックを有していることが挙げられる。具体的には、本体の下部が斜めに大きく削り取られており、土台である金属製のプレートを倒すことによって、トラックボール本体が外側に20度傾く形になる。これにより、どちらか使いやすい角度で操作を行えるというわけだ。ちなみに中間の角度というのはなく、ゼロか20度の二者択一となる。

 同社によると、人間の前腕部がもっともリラックスするのは、人が握手をする際の手首の角度なのだそうだ。実際、試しにデスク上で肘をついて腕を前方に伸ばしてみると、手のひらはデスク面と完全に平行にならず、わずかに外側を向くことが分かる。本製品を20度傾けると、そのポジションに近い手首の角度を維持できるため、結果として疲れにくくなるというわけだ。

 手首を立てて保持するマウスは古くから存在しているが、マウスではなくトラックボールで、かつ角度が固定ではなく切り替えられるのは珍しい。同社によるとマウス使用時に比べて筋肉活動量を20%軽減できるとのことだが、使ってみると確かに疲れにくく、なるほどと納得させられる。

 ちなみに角度変更のギミックは、トラックボール本体に手を載せた程度では倒れず、力を入れると初めてパタンと倒れるという、絶妙なバランスで成り立っている。筆者は利用が長時間に及んでデスクに触れている手が汗ばんだり、気分転換をしたい場合を除いて、ほぼ常時、傾けた状態のまま使い続けている。多くの人はこの角度、つまり20度傾けた状態で使い続けることになるのではないかと思う。

 また本製品には、ボール上のボタンを押すと一時的に解像度を上げて細かい操作を可能にするプレシジョンモードが用意されているので、ポインタが目的のボタンに近づいたらこのモードに切り替え、細かい操作を行うことができる。

 このモードであれば、例えばチェックボックスを順に1つずつクリックして外していくような、マウスでもかなり神経を使う細かい操作も難なくこなせる。この切替ボタンは左ボタンを押したままの状態でも反応するので、ウィンドウをドラッグしながらモードを切り替えるという芸当も可能だ。

 以上のように、全体的に無理なく使えて操作性は良好、疲労もたまりにくいという評価なのだが、唯一気になったのが、不意に右ボタンを押してしまう場合があることだ。トラックボールでは、マウスとは異なる握り方をすることから、思わぬ位置に力が加わることがある。この製品はやや右ボタンが押されやすいようで、しばらく注意して観察していたところ、どうやらホイールを手前に回転させる際などに中指に力が入り、その下にある右ボタンを押してしまうケースがあるようだ。

 筆者の中指の力が強いのかと思ったが、他製品でこの症状が起こったことはないので、どちらかというと本製品の設計に依存するか、あるいは左右ボタンのマイクロスイッチを比べた際に右がやや緩いといった部品側の原因ではないかと考えられる。

 ほかのユーザーで再現性があるかどうかは不明だが、筆者の場合は本体の角度を変えても起こるので、これについてはいまのところ「押さないよう気をつける」くらいしか対策がない。使い続けると馴染んでくる可能性もあるが、念のため書き留めておきたい。

 ちなみにボールについては、トラックボールとしてはそれほど径が大きいわけではないが、その割にはかなりコントロールしやすい部類だ。耐久性についてはいまのところ不明だが、急にあらぬところにポインタが飛んでいくなどの症状は皆無で、ストレスはない。なお、ボールの取り外しは、本体の裏面にある穴に棒を刺し、後ろから押し上げることで行える。

●同社マウスと共存でき、ポインタ速度も個別に変更が可能

 話がやや前後するがインストールの手順を見ていこう。本製品の利用にあたってはまずはPCにユーティリティ「Logicool Option」をインストールする。本製品にはCD-ROMの類は添付されていないため、同社サイトにアクセスしてダウンロードを行い、指示に従ってインストールを実行する。

 インストールが完了したら、Unifyingレシーバー利用か、もしくはBluetoothかを選んでデバイスの追加を行う。完了したら「Logicool Option」の画面に製品型番および画像が表示されるようになるので、そこでボタンなどの割り当てを行う。特に特殊なフローではないので、迷うことはないだろう。

 もし、すでに「Logicool Option」が導入済みで、登録されている別のマウスを今後も併用する場合は、画面右下の「デバイスの追加」から本製品を追加する作業を行う。手順は新規のペアリング作業そのものなので特に難しくはないのだが、今回試した際は、作業が完了しても本製品が「Logicool Option」上に表示されず、それ以前に導入済みだったマウス「MX Anywhere 2S」しか表示されない状態に陥った。このままでも基本操作は可能だが、本製品に合ったボタン割り当てなどが行えない。

 しばらく試行錯誤したのち、再度「Logicool Option」をダウンロードして上書きインストールしたところ、「Logicool Option」の設定画面の前に2つのマウスを選択する画面が正しく表示されるようになった。この画面で本製品を選択することで、本製品に合わせたボタン設定などが行えるようになる。評価機ゆえの症状かもしれないが、今回の筆者と同じ状態に陥った場合は、「Logicool Option」をアンインストールせずに上書きインストールしてみることをおすすめする。

 ところで、ここまでの流れでお分かりいただけると思うが、「Logicool Option」上で2台の製品を認識した場合、設定はそれぞれ個別に行う仕組みになっている。マウスやトラックボールによってボタン配置は違うことから、ボタンの割当は別々に行えて当然なのだが、個人的にはポインタの速度を個別に設定できるのがありがたい。

 というのも、トラックボールは一般的に少しのボールの回転でポインタをダイナミックに動かすため、マウスよりも移動量を大きくしておく必要があるからだ。もしこれを無理に共通化しようとすると、マウスは快適に使えるがトラックボールはどれだけボールを転がしてもなかなか長距離を移動できなかったり、逆にトラックボールは快適に使えるがマウスはほんの少し動かしただけでポインタが画面の端まですっ飛んでいくなどの症状が起こる。

 その点、この「Logicool Option」であれば、接続したマウスやトラックボールそれぞれについて設定が行えるため、ポインタの移動量も別々に設定できる。1つのPCにマウスとトラックボールを接続した場合、こうした個別設定ができないが故に片方の機器を徐々に使わなくなることが多いので、これは非常にありがたい。ただ、新しいデバイスを追加するたびにいちから設定するのは不便ではあるため、設定済みの内容をコピーできる機能があれば、さらに使いやすくなるのではと感じる。

●2台のデバイス間を移動できる「FLOW」も問題なく利用可能

 さて、本製品の売りの1つに、2台のPCを一組のマウス・キーボードで操作できる同社の独自技術「FLOW」への対応が挙げられる。読者諸氏の中にはすでに「FLOW」対応のマウスを使っている人もいるはずなので、今回は既存の「FLOW」環境に本製品を組み込む手順を紹介しよう。

 手順そのものはとくに特殊でもなく、難しいわけでもない。前述の手順で、2台目の入力デバイスとなる本製品を「Logicool Option」に追加で認識させたのち、「FLOW」タブから有効化するだけだ。すでに「FLOW」の設定が完了しているもう1つのデバイスが自動的に検出されるので、あとはウィンドウの配置を決定するだけで、ポインタが両方の画面をまたいで移動できるようになる。

 「FLOW」そのものの使い勝手についてはすでに過去の記事で触れられているので割愛するが、ポインタが画面の端まで到達した時点で、ペアリング先がもう一方のPCへと自動的に切り替えることにより、擬似的に画面をまたいでポインタが移動したように見せるというのが基本的な仕組みだ。

 ペアリング先が切り替わる際にほんのわずかなタイムラグがあり、このタイムラグはポインタを高速に動かしている時ほど感じやすいため、マルチディスプレイやWindowsのリモートデスクトップ接続のようなシームレスさはないが、WindowsとMacという異なるOS間でも移動が可能なほか、ファイルのコピーまで行えるのは、これらと比べた場合の大きな利点だろう。

 面白いのは、この「FLOW」の設定は、ボタンの割当やポインタ速度と同様、マウスやトラックボールごとに設定できることだ。例えば2台のPC(仮にA、Bとする)があった場合、マウスはAB間を相互に行き来できるが、本製品はAだけしか使用できない、といった設定ができる。またあまりニーズはないだろうが、画面の並び順を逆転させ、マウスはAB、トラックボールはBAの順にするというトリッキーな設定も可能だ。

●マウスを排してデスク上のスペースを節約したい人にも最適

 トラックボールはマウスに比べて合う合わないが激しい製品であり、合わない製品ともなると使い始めて1日も経たずにギブアップすることも少なくない。しかし今回の「ERGO」は、筆者は使い始めて1週間になるが、これまでのところ、そうした気配は一切ない。

 筆者はいまのところ、緻密な操作はマウスを、ブラウジングなどダイナミックな動きをする場合は本製品を使っているが、低品質のトラックボールによくみられる、クリックしたりボールから指を離した瞬間にポインタがあらぬ方向に動くなどの症状とは無縁だ。写真や動画の編集まで行くと難しいかもしれないが、ブラウジングや事務作業が中心であれば、マウスを完全にリプレースすることも十分に可能だと感じる。マウスを排してデスク上のスペースを節約したい人にも最適だろう。

 価格は税別1万2880円と、前モデルにあたるM570(6630円)の2倍近く、安い買い物とは言い難い。もとよりこの種の入力機器の価値を理解できるユーザー向けに作られた製品であることは明白で、価格に見合うだけの満足感は得られるというのが筆者の評価だ。

 評価は以上なのだが、今後のロジクール製入力デバイスに望むのは、これだと決めたら決めたでボタン配置を継続してほしいということ。筆者は3カ月ほど前に「MX Anywhere 2S」で久しぶりにロジクール製品に戻ってきたクチなのだが、しばらく離れていた理由は、同社の入力デバイスは新製品が出るたびにボタンの配置がガラリと変わってしまうからだ。

 同社のマウスは、モデルチェンジすると以前のモデルにあったボタンがなくなっていたり、以前の指では押せない位置に移動していたり、ということがよくある。ハイエンドなモデルほどそれは顕著で、せっかくの慣れが乗り換えによってリセットされてしまう。それならば他社に乗り換えても条件は同じということで、しばらく他社製品を試していたというわけだ。

 今回の「ERGO」のボタン配置は従来モデル「M570」とほぼ共通なので、理にかなっていると言えばそうなのだが、トラックボールの場合はもう少し事情が複雑だ。というのは、トラックボールはマウスと併用することが多いため、似たような握り心地でありながらマウスとのボタン配置が極端に違うと、操作ミスを起こしやすいからだ。

 例えば、筆者が使用中のマウス「MX Anywhere 2S」と今回の「ERGO」を比較した場合、「MX Anywhere 2S」はホイール手前に割当可能なボタンがあるのに対して本製品はボタンがなく(正確には接続先を切り替えるボタンはあるが、何らかの操作を割り当てることはできない)、それゆえ両製品を併用すると、「MX Anywhere 2S」でホイール手前ボタンに割り当てていた機能は、まったく別の位置にあるボタンに割り当てざるを得ない。

 このほか、戻る/進むに割り当てられているボタンが、前者では親指、後者では人差し指で操作するレイアウトだったりと、同じ操作性では使えない。たとえマウスとトラックボールという別の製品であっても、操作性はある程度は共通化し、モデルチェンジしてもそれを踏襲してほしいというのが筆者の願いだ。そうした意味で今回の「ERGO」は、単体で見た場合は非の打ち所がないものの、マウスと併用するか否か、併用する場合はどのマウスを使うのかといった外的要因で、評価が変わる余地はありそうだ。

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