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ドイツ発の“AI人事”は何が違う? 企業成長にAIが役立つ理由

ITmedia NEWS のロゴ ITmedia NEWS 2017/08/06
ドイツ発の“AI人事”は何が違う? 企業成長にAIが役立つ理由: ドイツ・ベルリン発のスタートアップ「Bunch」 © ITmedia NEWS 提供 ドイツ・ベルリン発のスタートアップ「Bunch」

 AI(人工知能)は、サービス案内から株式市場分析まで、社会のさまざまなシーンで活躍が期待されているが、企業の人材採用でもその可能性に注目が集まっている。

 米IBMが世界の企業幹部を対象にした調査では、最高経営責任者と人事部門責任者の過半数以上が、コグニティブ・コンピューティングが人事部門に大きな影響を与えると考えていることが明らかになった。コグニティブ・コンピューティングとは、「IBM Watson」のように、会話や分析などができるシステムのこと。

 人材採用においてAIを使う強みは、膨大な学習データから通常は定量化が難しい「性格」や「思考のクセ」などを見える化すること。採用候補者の中から、ポジション・チームに最適な人材を探し出せるようになるだろう。

 ドイツ・ベルリン発のスタートアップ「Bunch」は、まさにこのAIの強みを生かしたサービスをローンチし注目を集めている。Bunchが提供するのは、企業が生き残っていくために必要なチームを構成するための最適化サービスだ。

 機械学習を活用し、経営層、既存社員の特性を分析し、組織・チームが現在どのようなカルチャーを持っているのかを明らかにする。もしそのカルチャーがイノベーションを起こすのに好ましいものではないと判断された場合、チーム編成を変更したり、新たなメンバーを補充したりして最適化しようとするもの。

 具体的にどのようなプロセスで最適化するのか。

 まず、組織の現状のカルチャーを分析するために、組織・チームメンバーそれぞれが10分程度の「カルチャーアセスメント」を受ける。このカルチャーアセスメントは、対象者の価値観や好みのワークスタイルに関する短い質問で構成されており、その人のカルチャーを評価することを目的としている。

 アセスメント後、各メンバーが持つカルチャーが6つの軸で評価される。これら6つの軸は、結果志向、几帳面(きちょうめん)、協力的、顧客志向、適応的、原則志向だ。各メンバーの分析結果からチーム全体としてどのようなカルチャーなのかを明らかにする。

 チーム全体として原則志向が強い場合、バランスを取るために適応的な人を入れたり、几帳面さが弱いなら几帳面な人を採用したりと、最適化が可能となる。

●なぜ組織・チームの最適化が必要なのか

 Bunchが組織・チーム最適化の基盤としているのが、スタンフォード経営大学院・組織行動論の権威、チャールズ・オライリー教授の研究だ。

 オライリー教授は、成長を続ける企業には相応のカルチャーが根付いていると主張する。特に、適応性の高いカルチャーがある企業は長期の成長を実現できるという。

 カルチャーとは「特定の行動を促進する社会的制御システム」のこと。適応性の高いカルチャーがある組織は、リスク許容度が大きく、新しいことへの挑戦を促し、イノベーションを実現できる可能性が高い。また、個人がイニシアチブを取り、意思決定と実行が速く、ユニークなビジネス機会を探し出す能力が高い。

 このような組織は結果として、そうでない組織に比べ、収益性、時価総額、社員満足度などで好ましい結果につながっているという。

 適応性の高いカルチャーの最たる例が、さまざまなビジネス領域に事業を拡大している米Amazonだ。オライリー教授によると、Amazonのカルチャーは非中央集権的な意思決定が可能で、コアビジネス以外にも果敢に挑戦するリスク許容度の高さが特徴という。

 変化の速い現在のビジネス環境で生き残るには、適応性の高いカルチャーを醸成することが重要なのだ。一方で、これは多くの企業が実現できていない課題でもある。

 特に大企業の場合、既存ビジネスの拡大に執着してしまい、結果主義のカルチャーが強くなりがちだ。結果主義が強くなると、既存ビジネスをいかに効率良く拡大していくのかにフォーカスしてしまう。そうなると、リスク許容度が下がり、イノベーションが起こりにくい事態に陥ってしまうのだという。

 適切なカルチャーが醸成されているか否かは、企業が長期的に成長できるかどうかを左右することになる。カルチャーと業績には強い結び付きがあるのだ。

 企業の経営幹部たちはこのことに気付いているのだろうか。オライリー教授は、経営幹部の大半はビジネスの成功にカルチャーが重要な役割を果たすと気付いているが、誰がそのカルチャーをマネジメントするのかが明確になっておらず、それがカルチャー醸成を妨げている要因だと指摘する。

 カルチャーマネジメントとは、ビジネスを成功に導くのにふさわしいカルチャーを醸成し、それを維持していくこと。また、ビジネス環境が変わったとき、変化に応じてカルチャーを最適化していくことと考えることができる。

 しかし、カルチャーという目に見えないものを扱うのは簡単なことではない。誰がマネジメントするのかという問題のほかに、どのようにマネジメントするのかも非常に重要な問題だ。それが分かれば、そこにどのような人材を充てるのかがイメージしやすくなる。

 Bunchは、さまざまな特性を持つメンバーがチームとしてどのようなカルチャーを生み出しているのかを可視化できる。カルチャーマネジメントにどのように取り組んでいけばいいのか、足掛かりとなる示唆を与えてくれるかもしれない。

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