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ドコモの訪日外国人向け「Japan Welcome SIM」は何が新しい? 使ってみて気付いたこと

ITmedia Mobile のロゴ ITmedia Mobile 2017/07/16
ドコモの訪日外国人向け「Japan Welcome SIM」は何が新しい? 使ってみて気付いたこと: ドコモが自ら始めた訪日外国人向けのプリペイドサービス「Japan Welcome SIM」 © ITmedia Mobile 提供 ドコモが自ら始めた訪日外国人向けのプリペイドサービス「Japan Welcome SIM」

 東京オリンピック、パラリンピックが開催される2020年には、年間4000万人もの訪日外国人観光客を迎え入れる目標を立てている日本。毎年のように、訪日外国人は増え続けており、インバウンドビジネスも活性化している。通信もその1つで、MVNOを中心にプリペイドSIMカードの販売が活性化してきた。今では空港やホテル、コンビニエンスストア、家電量販店など、さまざまな販路で訪日外国人向けのプリペイドSIMカードを購入できる。

 急拡大する訪日外国人向けプリペイドSIM市場だが、ここに満を持して参入したのが、ほかでもないMNOのNTTドコモだ。同社は7月に「Japan Welcome SIM」の販売を開始。現在は羽田空港、成田空港、関西空港などで、事前に申し込んだSIMカードを受け取ることができる。最大の特徴は、広告閲覧によって使えるデータ量が増えること。料金プランは高速通信がつかない1000円(税別、以下同)の「プラン1000」と、500MB分の高速通信がつく1700円の「プラン1700」の2つだが、広告閲覧によってSIMカードそのものが無料になる「プラン0」も10月にスタートする予定だ。

 このJapan Welcome SIM、「訪日外国人観光客向け」とうたっているが、実は日本在住の人でも申し込むことができる。受け取り場所が主に空港に限られているため、気軽に契約するわけにはいかないが、急にタブレットでデータ通信したくなったときなどに使うことは可能だ。また、ビジネスモデルや技術的にも、注目しておきたいポイントが多いサービスといえる。そこで、筆者もJapan Welcome SIMを入手し、実際に使ってみた。筆者は海外取材の際に、現地のプリペイドSIMを購入することも多いため、その観点での比較も交えながら使い勝手を見ていきたい。

●申し込みやSIMの受取はスムーズに完了、ただし要dアカウント

 Japan Welcome SIMは、訪日外国人観光客が訪日前に申し込み、空港をはじめとする“日本の玄関口”で受け取る利用スタイルを想定している。そのため、申し込みはネットで行う必要がある。基本的にはプランを選び、支払いのためのクレジットカード情報を入力するだけで、手続き自体はそこまで複雑ではない。

 ただし、利用のためには、dアカウントを取得する必要がある。試しに筆者の持つdアカウントでログインしようとしてみたが、既に契約しているドコモ回線とひも付いていたため、申し込みができなかった。そのため、新たにメールアドレスでdアカウントを取得している。

 dアカウントの取得プロセスは、特に難しいわけではないが、外国人がわざわざこのために、普段使わないアカウントを作るというのは少々ハードルが高く、煩雑だと感じた。もっとも、プリペイドSIMカードの場合、オンラインチャージしようとすると、海外でも何らかのアカウントを作らなければいけない場合が多い。ただ、欲を言えば、FacebookやGoogleアカウントなどで代替できれば、もっと便利になるだろう。“おもてなし”を考えると、何らかの対応はしてほしいところだ。

●動画1本見ると10MBがもらえる、広告の量は今後の課題か

 Japan Welcome SIMの専用ページにアクセスすると、ドコモ側が用意した広告を見ることができる。現時点では、日本の飲食店などを紹介する動画しか用意されていないが、広告ページのカテゴリーを見ると、アンケートやアプリのインストールなども対象になるようだ。

 動画は、短いものだと1本15秒程度。最初に閲覧してみた「ENJOY JAPANESE FOOD at PARCO!」は、あっというまに動画が終わり、高速データ通信量が10MB増えていた。これなら、サクサクとデータ容量が稼げそうだ……と思ったが、動画の長さはものによって異なる。もう少しデータ量をもらうと思って開いた別のコンテンツは、1分を超えていた。

 もらえるデータ量は、どの動画を見ても1本10MB。現状では、20本の動画が用意されているため、合計で200MBぶん、無料でもらえることになる。ただ、1分を超える動画と15秒で済む動画が等価なのは、すんなりと納得できないポイント。使う時間が多いぶん、せめて1分以上の動画を見たときだけでも、20MBもらえるといったプラスアルファの要素が欲しかった。

 スタートしたばかりのサービスなので、まだ試行錯誤の段階なのかもしれないが、今後の工夫に期待したいところだ。また、合計で200MBというのは、やや物足りない印象を受ける。200MBあれば1日、2日使うには十分かもしれないが、観光でマップを使ったり、SNSに写真を投稿していたりすれば、すぐになくなってしまう。将来的には、広告ラインアップの拡充も必要になるかもしれない。

 これで足りないというときは、料金を払う形で、データチャージすることが可能だ。金額は、100MBで200円、500MBで700円。500MBをまとめて購入する方が、100MBよりも単価は安くなる。金額の妥当性は判断が難しいところだが、ドコモの通常の料金プランでは、1000円で1GBのデータをチャージできる。プリペイドプラン用のSIMカードを同額にするのは難しいのかもしれないが、もう少し安いと魅力も上がりそうだ。500MBの1つ上に、1GBの料金設定をしてあってもよかったような印象を受ける。

 高速通信がつかないプラン1000だと、1000円かかった上に、チャージするとさらにそのぶんの料金が発生する。ドコモとしては、10月に予定されているプラン0が本命なのかもしれないが、500MBで1700円というのは、やや高い印象だ。空港を見渡すと、競合になりそうなMVNOが自動販売機やコンビニなどでSIMカードを販売している。

 例えば、U-NEXTの訪日外国人向けプリペイドSIMカードは、1日に使えるデータ容量が200MBで、7日、15日、30日というように、期間を選択できる。料金は販路によってまちまちだが、7日で2000円前後。毎日フルに使い切ったとすると、1.4GBのデータ量になり、ドコモより割安に見える。ただしプラン0が登場すれば、仮に500MBを3回チャージして1.5GBぶん買ったとしても、料金は2100円で済み、MVNOよりも安価になるケースが増えてくる。広告閲覧で無料のデータ容量ももらえるため、お得感が出そうだ。

●受取から設定までは非常にスムーズ、APN自動設定も便利

 申し込みが終わると、SIMカードを引き換えるためのQRコードが発行される。これを持ち、あらかじめ申し込んだ場所に行けば、SIMカードを受け取れる。申し込みの時点でクレジットカード情報を入力しているため、現地では特に支払いなどをする必要はない。筆者は開始直後の7月6日に羽田空港でSIMカードを受け取ったが、QRコードを見せただけで、すぐに受け取ることができた。

 SIMカードは、標準(ミニ)、micro、nanoの3サイズに切り取れる、いわゆるマルチSIM。ドコモとしては、初のマルチSIMで、このタイプのSIMカードはMVNOにも提供されていない。プリペイドのSIMカードの場合、どの端末に挿されるか予見が難しいため、1つで3サイズに対応できた方が、効率がよくなる。こうした事情で、ドコモもマルチSIMを採用したようだ。

 SIMカードを端末に入れると、電波をつかみ、通信が可能になる。ただし、この状態ではアクティベーション用のページにしかつながらない。まずは、説明書に書かれたURLにアクセスし、アクティベートする必要がある。ここでは、申し込み時に作成した、dアカウントのIDとパスワードを使用。ログインしたあと、SIMカードの台紙もしくは端末で確認できる電話番号を入力すると、SMSが届く。ここに記載されているワンタイムパスワードを入れれば、アクティベーションは完了。すぐに通信ができるようになった。

 勘のいい方はもうお気付きかもしれないが、通信するまでにAPN設定は一切行っていない。アクティベーションはAndroidの「HUAWEI Mate 9」で行ったが、iPhone 7にSIMカードを差し替えても、同様に設定不要で通信することができた。ちなみに、APN設定を手動で変更できるMate 9で、あえてMVNOのAPNに設定を変更してみたが、そのまま通信できてしまった。Japan Welcome SIMは、「APN設定が不要なこと」を売りにしているのだ。

 技術的な詳細は非開示とのことだったが、端末の挙動や割り振られてspモードのIPアドレスを見る限り、おそらく、ネットワーク側で強制的にAPNを指定している可能性が高い。SIMカードの識別番号であるIMSIを見て、Japan Welcome SIMだと判定したときに、端末から送られてくるAPN情報を無視して強制的にspモードにつなぎにいくようにすれば、このようなことができるはずだ。iPhoneの場合、ドコモのSIMカードを挿すとAPN設定の項目が隠れてしまうが、これならAPN構成プロファイルをインストールする必要がなく、便利だ。Androidの場合も、手動でAPNを入力するひと手間が減った格好になる。

 通信速度は、さすがMNOのドコモといったところで、高速でかつ安定している。試しに渋谷の事務所で平日の13時38分に速度を測ってみたが、下りで80Mbpsほどの速度が出ていた。MNOから借りている帯域幅が限られており、利用が集中すると速度が出にくくなるMVNOと比べ、快適といえる。どの国から日本に来たかにもよるが、ここまで快適でしかもエリアが広いのは、訪日外国人観光客にとって驚きかもしれない。まさに、高速な通信というおもてなしといえるだろう。

●日本人向けサービスへのフィードバックにも期待

 訪日外国人観光客向けという位置付けのJapan Welcome SIMだが、実際に使ってみると、日本のユーザーにとっても便利だと感じるポイントがいくつかあった。例えば、動画を見てデータ量が増えるという仕組みは、月末に近いタイミングで速度制限されてしまったユーザーが使えれば、うれしいサービスになるかもしれない。

 マルチSIMやAPN自動設定機能については、MVNO側からドコモに対応の要望があがる可能性がある。現状では、SIMカードが3サイズに分かれているため、MVNOは需要を予測しながら、在庫をストックしておかなければならない。しかもプリペイドSIMの場合、販路を考えるといわゆる「SIM焼き」は終えておかなければならないので、在庫を持つだけで、1枚あたり月額97円がMVNOに請求される。

 この辺りの詳しい事情は、IIJの堂前清隆氏が執筆された記事を参照してほしいが、1枚のSIMカードで3サイズに対応できれば、標準サイズだけ余ってしまったというような不良在庫を抱えるリスクを減らせるはずだ。

 APN自動設定機能も、MVNOに機能開放されれば、サポートコストを減らすことにつながるだろう。また、ドコモのSIMカードを挿すとAPN設定ができなくなってしまうiPhoneをMVNOのSIMカードで利用する際には、ユーザーがわざわざAPN構成プロファイルをインストールする手間もなくなる。

 APN構成プロファイルのインストールは、あまり一般的な作業ではないため、初心者がMVNOでiPhoneを利用する際のハードルになりがちだ。海外でも一般的に行う設定ではないため、訪日外国人観光客がプリペイドSIMの設定をするときの難易度を上げてしまっているおそれがある。せっかく実現した機能を、プリペイドSIM限定にしてしまうのはもったいない。ドコモには、訪日外国人観光客向けにとどめず、幅広い応用例を検討してほしい。

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