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ハリウッド、最新映画の配信サービスに賛否 ノーラン監督「劇場での上映形態にしか興味がない」

Real Sound のロゴ Real Sound 2017/04/04 株式会社サイゾー
© Real Sound 提供

 観客が公開からわずかの最新映画を劇場に行かずして観ることができたらーー。数年前からフィルムメーカーや劇場主、スタジオの間でこんな話題が尽きない。過去10年間、劇場へ足を運ぶ観客数はほとんど変わっていないという。ここ数年でNetflixやHulu、Amazonなどのストリーミング配信やVOD配信サービスが台頭し、スマホやタブレットでいつでもどこでも観られる手軽な鑑賞スタイルが定着してきた。こういった時代の流れの中で、どうしたら映画を観てもらえるのか。全米の劇場所有者が所属する協会、ザ・ナショナル・アソシエーション・オブ・シアターが年に1回ラスベガスで開催するイベント、シネマコンでも、毎年議題にあがる問題だ。  昨年のシネマコンでは、Facebookの初代CEOで実業家のショーン・パーカーが“スクリーニング・ルーム”と名付けた最新映画の配信サービスを提案。スクリーニング・ルームの利用者はまず初期費用150ドルにて専用装置を購入する。この専用装置によって、劇場公開と同時に最新映画が1本50ドルでレンタルできる。視聴期間は48時間のみの期限付きで、劇場鑑賞券2枚が無料で付いてくる。劇場の利益はチケットだけでなく、ポップコーンやドリンクなどの売店の売り上げも多くを占めるため、レンタル利用者に映画館にも足を運んでもらうためだ。『Variety』誌によれば、この50ドルから劇場主には最大で20ドル、スタジオには20パーセント(10ドル)、スクリーニング・ルームには10パーセント(5ドル)が支払われるそうだ。  このアイデアに対する著名な監督たちの意見は、真っ二つに分かれた。賛成派は「映画業界にバランスよく利益をもたらしてくれる唯一の解決法」と称するロン・ハワードを含む、スティーヴン・スピルバーグ、マーティン・スコセッシ、J・J・エイブラムス、ピーター・ジャクソンら。一方、「我々が心血を注いで作り上げたものを、観客に最高の形で観てもらいたいのに、なぜわざわざ業界がそれを止めさせようと仕向けるのか?」とフィルムメーカーとしての信念を貫くジェームズ・キャメロン、ローランド・エメリッヒ、M・ナイト・シャマラン、クリストファー・ノーランらが反対。ストリーミング配信サービスを第一線でリードしてきたAmazonさえも、劇場主と劇場ならではの映画体験を支持。事実、Amazonは劇場でリリースするための良質な映画製作に乗り出し、今年はケイシー・アフレック主演の『マンチェスター・バイ・ザ・シー』が賞レースで大健闘したのも記憶に新しい。  それから1年、スクリーニング・ルームが商品化することはなかったが、やはり今年3月27日から30日に開催されたシネマコンでも、最新映画の配信サービスについての話題が持ち上がった。昨年、スクリーニング・ルームに対し、「映画業界人ではない第3者(パーカー)を劇場主と配給の間に介入させてはならない」と否定的なコメントを発表したワーナー・ブラザースのトップ、ケヴィン・ツジハラに代わり、世界配給とマーケティングを担当する重役のスー・クロールが、“PVOD(プレミアム・ビデオ・オン・デマンド)配信”を掲げたのだ。「私たちは、チャレンジとも素晴らしい機会とも言える現実に直面している。観客の(映画の観方の)テイストは変化しており、私たちのビジネスもそれに合わせて変化していくべきた」と時代の変化への柔軟な対応を訴えるクロール。現行、原則として映画公開から90日が経過しないとVOD配信できない期間を17日と大幅に早め、50ドルでレンタルできるサービスPVOD配信をAMCなどのメジャーな劇場チェーンと交渉中であることを明らかにした。期間や価格に多少違いはあるが、FOXやユニバーサルも同様のサービスを検討中とのこと。  これに対し、スクリーニング・ルームにも反対していたノーラン監督は、「私は劇場での上映形態にしか興味がない」と即日真っ向から否定。同イベントでは彼の最新作で第2次世界大戦中の「ダンケルクの戦い」を描いた『ダンケルク』の予告編が公開された。作品に対する劇場主たちの評価は非常に高く、ノーラン自身も「観客に、大きなスクリーンで映画の舞台に入り込んだかのような体験をしてもらいたい」と語り、強い自信とこだわりを見せた。デジタル上映が当たり前になった今では珍しい、35mmフィルム、70mmフィルムでの上映も行うと宣言している。  果たして観客は日本円にして約5500円(50ドル)を払い、自分の都合や環境に合わせて最新映画を観たいものなのだろうか。個人的にはその金額を払うならば劇場で3本観たいと思ってしまう。スクリーニング・ルームやPVOD配信には賛否両論があるものの、劇場で観ることを前提として作られた映画の“劇場体験”で得られる感動に代わるものはない。しかし、利益の向上や確保も映画製作に欠かすことのできない要素のひとつ。とは言え、万が一これらのサービスが普及した場合、劇場主に利益が配当されてもやはり「大打撃は必至」との声が上がっており、劇場経営の危機にも関わると見られる。来年のシネマコンまでにこれらのサービスが具体化するのか。今後どんなアップデートが聞けるのかを見守りたい。(賀来比呂美)

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