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ビートきよしが語る、オフィス北野入りの真相と、相方・たけしとの不思議な“絆”

サイゾー のロゴ サイゾー 2014/06/05 Cyzo

 デビューから40年以上がたった今も数多くのレギュラー番組を持ち、世界的映画監督としても知られるビートたけし。そのたけしが相方のビートきよしと組む漫才コンビ、ツービートは、1972年、東京・浅草の劇場「浅草フランス座」の芸人だったビートきよしがビートたけしに声をかけ結成された。長く不遇の時代を過ごしたが、1980年代の漫才ブームで一世を風靡したのちは、次第にコンビでの活動が減り、それぞれ単独での活動がメインとなっていった。以来、ビートきよしは舞台などを中心に活動してきたという。

 そんなビートきよしが4月、ビートたけしが率いるオフィス北野に所属することが発表されると、大きな話題となるとともに、さまざまな臆測も報じられた。

 今回はそんなビートきよしに、『這い上がるヒント~諦めなかったお笑い芸人30組の生き様』(東邦出版)の著者でお笑いタレントへの豊富なインタビュー経験を持ち、お笑いライブの主催・プロデュースも手掛ける著述家・大川内麻里が、

「オフィス北野入りの真相」「相方・ビートたけしとの不思議な絆と、たけしへの思い」「今のテレビ業界の裏側と問題点」

などについて聞いた。

●「よしなさい!」たけしときよしを繋ぎ続けた絆とは?

--12年に『相方~ビートたけしとの幸福』(東邦出版)を上梓されて以来、ビートきよしさんとビートたけしさんの距離がまた縮まったようにお見受けしていました。たけしさんはテレビでもしょっちゅうきよしさんのことをネタにされていましたし、たけしさんもきよしさんがご自分のことを本にお書きになられたことがうれしかったのではないでしょうか?

ビートきよし(以下、きよし) 「こんな本を出そうと思うんだけど」って、企画書と原稿を持っていったら、ノリノリで「宣伝してやるからよ」って言ってくれてたもんなぁ。俺の楽屋に2回も来てだよ。そんなこと、普段ないのに。

 コンビで片方が売れると、相手への妬みでいっぱいになるヤツもいるんだけれどさ、俺にはそういうのはないからね。個性も違えば、時代による受け入れられ方も違う。自分はその役まわりを引き受けたのだから、商売として徹底していかないとしょうがないと思うんだよ。それで売れたんだから、成功だったってことだろう。

 なんでもそうだけれど、相手を認めるというのがないと。俺は相方のことをすごいなと思ってるから、妬みもなければ、ライバル意識を持って戦う気もないよ。到底かなわないんだから。誤解している人もいるみたいだけれど、ツービートは一度も解散していない。お互い解散しようと思わなかったからね。

--ツービートとほかのコンビは何が違うかというと、お互いへの敬意だと思うのですが。

きよし いやぁ、そうかねえ。まぁ自分をよくわかっているからね。自分のいいところはここだけれど、でもこれに関しては相手にはかなわない。そういうのがわかっているからこそ、相手への敬意が生まれるんだよ。相手をやっかんだり干渉したりしちゃうコンビは、なぜそうなるかというと、自分の身の程をわかっていないから。これはどんな人間関係にもいえることだよ。僕らは昔からお互いのことは、一切関知しないんだ。

--以前、たけしさんへ「これまできよしさんに面と向かって言ったことはなかったけれど、実は内心こう思ってたよ、といったことはありますか?」とお聞きしたら、「『おめえ、うめえなあ』って思ってたよ」とおっしゃっていました。

きよし いやぁ……。でも向こうが都会育ちで、俺は田舎育ちで、見るものもすべて違ったから、いろんなところで落差があるなって感じていたよ。自分が物知らずで、ネタを振られても返せなかったところもあったし、ずいぶんと足を引っ張ったと思うなぁ。

--そのたけしさんときよしさんのコントラストがウケたのではないでしょうか?

きよし 田舎をバカにされてね(笑)。見ている人もギャグだから、本当はそんなことないんだろう、現実離れしてるって思いながら笑ってくれたんだろうな。

--「また金に困りやがったな。こんな本出しやがって。あることないこと、好き勝手に書いてんじゃねえ(笑)」という、本書の帯へ寄せられていたたけしさんのコメントが、またおふたりの関係性をよく表しています。

きよし 「金が欲しいから」って、なあ(笑)。相方らしくていいんじゃないの? まともだと、らしくないしさ。これが俺たちのギャグなんだよ。

--オフィス北野入りは、きよしさんのことを気にかけられた、たけしさんからのお申し出だったそうですね。「おめえ、うちに来ねえか」と。

きよし 相方のやさしさ、心の広さだね。俺なんてオフィス北野にとっちゃあ、入れたって得になるわけでもない人間。でも自分の事務所で仕事とってやったほうがいいって思ってくれたんだろうな。だから、なかなかいい男よ(笑)。自分の相方が“世界の北野”になってくれたってのは、すごくうれしい。組んだ相手が間違っていなかったんだから。

●くだらない番組に出るくらいなら、スナックで営業してるよ

--移籍後、どんなお仕事をされているんですか?

きよし 事務所に来た仕事は、なんでもこなしてるよ。相方の番組に限らず、このあいだは連続テレビドラマ『極悪がんぼ』(フジテレビ系)にも出たしね。でも、くだらない仕事はいやだなぁ。ここで言う「くだらない」っていうのは、相方のつくる笑いみたいなくだらなさとは違う。素人がやってもよさそうな、ただわいわい騒いでいるだけのコンセプトのないバラエティがあるだろう。そんなのに出るくらいだったら、俺はスナックの営業で、ひとり漫談でもやっていたほうがいいや。日本ではテレビに出ていないと、アイツは落ち目だと言われるけれど、この年になって無理をしてくだらない番組に出てまでテレビにしがみつこうとは思わないよ。

--芸人として貫くべきところを曲げてまでテレビに出るなんていうのはいいや、と。

きよし こんなこと言うと、また「きよしがあんなこと言ってやがる」って問題になるからいやだけれど、ファミレスに行って食べものがどうこうだの、芸能人がやる番組じゃないよ。芸なんて何もないじゃない。昔は芸人は芸人、ちゃんと芸のある人間だった。相方みたいに芸の基本が身についている人間が崩していくならいいけれど、今はそんなの何もない人間が素人同然の騒ぎを見せているだけ。

 でも若手だって、舞台に出てちゃんとした芸を持っているのもいるよ。ただ売れているかと言ったら、幸か不幸か、そうとは限らないんだ。とはいえ、今の時代、制作費などの関係から、番組がそうならざるを得ないのはわかるんだよ。

●バラエティ黄金期を制した漫才師が語る、テレビ制作の裏側

--バラエティの黄金期だった80年代と今とでは、テレビ番組の制作予算も体制も違いますよね。

きよし 昔は局制作でね、お笑い番組担当、歌番組担当、ドキュメンタリー番組担当というように、それぞれ専門分野を持った担当スタッフがいたんだよ。でも不景気でスポンサーが金を出さなくなったから、番組の制作予算がない。だからいつしか、下請けの制作会社につくらせるようになったんだ。

 そして制作会社では、たとえお笑いに強いスタッフがいても、ドキュメンタリーの視聴率が上がったとなれば、そっちをつくらなきゃいけない。ひとりがいろんなジャンルの番組を担当しなくちゃいけないし、何人も専門性の高いスタッフを抱えることなんて不可能なんだよ。

--今は局制作から制作会社制作が主流になり、制作サイドもスペシャリストよりゼネラリストが求められるようになったと。

きよし 昔は局に制作部があって、プロデューサーに聞けば、この芸人はだれそれの弟子で、師匠が死んでこっちに預けられて……ってなことまでわかっていたんだ。だからくだらないヤツは使わなかったし、芸のしっかりしたヤツが這い上がれる環境にあったわけだよ。

--以前は番組内でも、ツービートの担当、B&Bの担当というように、各コンビに担当のスタッフがいらしたんですよね。そして、芸人さん同士はもちろんだけれど、担当スタッフの間でも熾烈な戦いが繰り広げられていたと聞きます。

きよし 『オレたちひょうきん族』(フジテレビ系)なんかそうだったよね。それぞれのチームが、相手チームに負けないいいものをと、頭をひねってつくっていっていた。戦いだったね。あれは局制作だからできたんだ。制作会社ではできない。

 あと制作会社へ委託する体制になっていった理由には、予算がないこともだけれど、局を定年退職していった人たちが制作会社を立ち上げだしたってこともあるよね。

--バラエティに限らず、歌にしろドラマにしろ、20~30年前のものと比較すると、日本のエンターテインメントの質の低下に危機感を覚えます。これはヤバいなと。

きよし そうだと思うよ。以前、韓国のある芸能事務所に行くと、ワンフロアが稽古場で、事務所内に8つくらいスタジオがあるの。そこで子どもの頃から毎日稽古させて、その中からユニットとしてデビューさせるメンバーを選ぶ。日本は、まず組ませてから稽古させるでしょう。韓国では、子どものうちからプロダクションが手をつけて稽古させて世に出すんだよ。韓国のエンターテインメントってすごく伸びているけれど、日本の昔のドラマを真似しているよね。喜怒哀楽があって、単純でわかりやすい。アメリカ映画より日本映画に倣っている。

 今の日本のエンターテインメントに本物がいなくなったのは、普通の人たちが出すぎたせいもあるよね。俺たちの時代は芸能人にもランクがあったんだよ。漫才師なんて最下層だった。

--その最下層から世界的映画監督にまで上り詰めたというのが、たけしさんのおもしろさなんですよね。

きよし 虐げられているヤツが這い上がって、なにかを成し遂げていくっていうのはいいよね。

--ありがとうございました。  (構成=大川内麻里/著述家)

※画像はビートきよし

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