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ベトナムの道徳はドリル式? 日本と違って採点もある

エキサイト Bit のロゴ エキサイト Bit 2016/11/09 ネルソン水嶋

© Excite Bit 提供

道徳!小学校でこの授業を習わない人はいないだろう。

今さら説明不要だが、道徳は幼い頃から善悪の判断ができるように教わるもの。国教のある国では宗教がその代わりに当たるため、わざわざ「道徳」という教科がある日本は珍しいそうだ。しかし、筆者が住むベトナムにも同じく道徳が存在する。今回、その教科書を手に入れたのだが、それがあまりにユニークな内容だったのでご覧に入れたい。

ベトナムの道徳は「答えありき」

日本の道徳といえば、エピソードを読んで意見を述べるという形式がほとんどだ。国語に近いところがあると言っても良いかもしれない。教師にとって望ましい意見はあっても、教科の中で数少ない「解答のない」教科であり、エピソードを受けて生徒が何を考えるかに重点が置かれる。

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しかし、ベトナムの場合は違う。教科書を開くとそこには空欄やチェックボックスがあり、なんとドリル式。つまりは道徳ながらも答えはありき、もっと言えば採点までされるのだ。

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たとえば上の写真の問題は「正解」の選択肢にマークを入れる。翻訳するとー、

問題:友達に良いことがありました、どうしますか?

回答:祝う/無視する/嫉妬する

問題:友達に悲しいことがありました、どうしますか?

回答:無視する/バカにする/慰める

この通り。それにしても、謎の「無視」推し。

言いたいことは分かるけど、答えありきという姿勢が我々日本人からすると意外だ。善い方向へ導いて歩かせるというよりは、最初から「ここが善い場所!」と手を引っ張って連れて行くスタイル。それが良いかどうかの判断もまた道徳に基づいた考えなので、外国人である私からは何も言えないが、10点満点のテストで4点以下だとたとえ小学生であっても留年するらしい。

ホー・チ・ミンのエピソードは一般常識

ベトナムでは「建国の父」と呼ばれるホー・チ・ミン。70年弱に渡ってベトナムを統治していたフランス政府に対する独立運動や、その後のベトナム戦争に至るまでベトナム独立の実現に生涯を全うした人物で、親しみを込めて「ホーおじさん」と呼ばれている。もともとはサイゴンという名前だった現在のホーチミン市は、1975年のベトナム統一時に彼の名前にちなみ改名された。

現在のベトナムで彼を超える偉人はいないと断言してよく、個人について記された伝記のタイトルが「ベトナムで最も美しい(静ひつ)な人、ホー・チ・ミン」であることからもお分かりだろう。したがって、道徳の授業でも彼のエピソードは必須であり、まるまる一章分を使って教えられる。

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言葉遣いが過激

繰り返しになるが、道徳といえば善悪の判断ができるように教える教科であり、登場人物の言葉遣いはもちろん子どもに見せられるものでなければいけない。しかし、ベトナムでの道徳はちょっと過激で…。

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上の写真は店員と少女のやりとりだが、内容はこの通り。

少女「仕立てを頼んでおいた服はできましたか?」

店員「ごめんなさい、病み上がりで、明日の午後まで待ってくれない?」

少女「てめーどんな仕事してんだ?」

翻訳だからどうせ口悪く書いたんだろうと思うことなかれ、丁寧に直訳しても「あなたはどんな仕事をされていますか?」で、どう考えても少女はキレッキレ。そのあとの展開としては、友人が「明日まで待ってあげればいいじゃない」と仲介に入り、すぐさま少女は「ごめんなさい、私ひどいこと言っちゃった」と謝っているが、その態度の急変ぶりについては、この文章を翻訳してくれたベトナム人の友人ですら困惑していた。

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この写真に至っては、職業を選びなさいというもので、趣旨は分かるとしても不正解のラインナップがおかしい。「泥棒」「麻薬売買」「人身売買」という字面が踊るが、そもそも果たして小学生に見せるものなのか。それを選ぶ生徒って、もはや親のなりわいがそうなんだとしか思えない。まさかのあぶり出しか。

そのほか、ガラスの上を歩いたり、笑顔で植物に話したり!?

それからほかの教科書では、「勇気を高めるためにガラスの上を歩きましょう」という内容もあれば、笑顔をテーマに「励ますときは親指を立てて『ハッハハー』と笑おう」「注意するときは指を差して『ハッハハー』と笑おう」という内容もあり、後者は「麻薬中毒者のような行動を子どもに教えるなんて」と、さすがにベトナム国内でも炎上したそうだ。

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さすがにこれを真面目に支持する人は自国にもほぼいないが、何しろ子どもが読む教科書なので、学校から帰宅するやいなや突然ガラスを並べはじめると間もなく大惨事だ。おもしろい冗談だと、笑って過ごせる問題ではないだろう。

ベトナムの「親日ぶり」は、道徳の反動なのかもしれない。

実はベトナム、アジア諸国の中でも親日度はナンバーワン。ただし、ほかの国の上位の理由が「日本食がおいしい」「かわいいものが多い」という観光・文化面での内容であることに対し、ベトナムだけが「勤勉な国民性」「道徳が高い」という内容。一方で、筆者もベトナム人の友人から「ベトナムの教育は何十年も変わっていない」と嘆く声を聞いたことがある。

だからといって日本の教育が良いとは言わないが(そもそも日本の教育しか受けていないので比べられないが)、ベトナムの道徳が我々にとってユニークであることは事実だろう。

(ネルソン水嶋)

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