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マツダ、業績低迷から一転、過去最高益を招いた「モノ造り革新」 利益率でホンダ凌駕

サイゾー のロゴ サイゾー 2014/05/01 01:10 Cyzo

 製造業は為替の変動に一喜一憂して恒常的な構造改革を怠っていると必ずあとでしっぺ返しを食らう。今の円安に安住すべきではない――。こうした主張を筆者はしてきたが、4月25日に発表された本田技研工業(ホンダ)とマツダの決算を取材していてその感をますます強めた。

 まず、ホンダの2014年3月期決算(13年4月~14年3月)の売上高は前期比19.9%増加の11兆8424億円、本業の儲けを示す営業利益は37.7%増の7502億円。営業利益率は5.5%から6.3%に上昇した。営業損益段階の増益要因として最も大きいのが「為替影響」で2887億円、続いて販売増による効果が533億円だった。

 マツダの同期決算は売上高が22%増加の2兆6922億円、営業利益は過去最高となる3.4倍の1821億円。営業利益率は2.4%から6.8%に大幅に改善し、ホンダを上回る。同じく増益要因の最も大きいものが「為替影響」で1127億円、続いて販売増による効果が550億円だった。

 両社の決算を見る限り、円安効果がいかに大きいかがわかる。ただし、円安効果は外貨の売上高を円に換算する場合に発生する差益であり、それ自体は企業の自助努力とはほとんど関係ない。むしろ注目すべきは、販売増による効果である。なぜなら、販売増による増益効果とは主に、

(1)台数の伸び(2)無理な値引きをしない(3)設計・製造プロセスの改革などによって1台当たりのコストを下げて、利益率の高い車を売る

ことで生じるものであり、ここに企業の自助努力の部分、たとえばブランド戦略やコスト構造改革などの戦略的な要素が多分に含まれるからである。

●販売増効果はマツダがホンダを上回る

 そうした視点でホンダとマツダの決算を比較すると興味深い。ホンダよりも圧倒的に規模が小さいマツダのほうが販売増による効果の額が大きい。売上高では、マツダはホンダの4分の1にも満たない。グローバル販売台数もホンダの432万台に対しマツダは133万台と3分の1以下である。しかし、販売増による効果は、ホンダの533億円に対してマツダは550億円もある。これは、マツダがいかに、利益率の高い車を値引きせずに販売を増やしているかを物語っており、マツダの自助努力の成果である。

 これはホンダの自助努力が足りないというわけではない。15年3月期決算では、ホンダの販売増効果は1257億円、マツダのそれは600億円の見通しであり、両社ともに前期を上回ると同時にホンダがマツダを抜く。ただ、マツダは引き続き高水準の販売増効果を維持することで、15年3月期も過去最高益を更新する見通し。円安による増益効果は両社ともに一服し、ホンダの為替影響はマイナスに転じて670億円の減益要因となり、マツダも同様に30億円の減益要因となる。だからこそ、企業が安定した収益を出し続けるためには、自助努力によって達成できる販売増効果を追い求めていかなければならないのである。

 特にマツダの自助努力には、国内製造業がその取り組みから教訓を得る部分も多いのではないかと思われるほど、目を見張るものがある。ホンダは常に安定した業績を残しているが、マツダは09年3月期から12年3月期までは4年連続で当期純損失を計上、資金繰りにも窮してその間に2回の公募増資を行い、株価も一時は100円を切るなど業績は低迷した。リーマンショック、東日本大震災、タイの大洪水、円高が業績低迷の大きな要因で、一時期は、中国企業に買収されるのではないかとの臆測報道も出たほどだ。

 つい最近まで業績低迷に喘いできたマツダが一気に過去最高益を計上するまでに回復し、円安効果が一段落した15年3月期も過去最高益を更新する見通しであることから考えても、マツダ復活の秘密は、円安効果だけにあらずということがわかる。

●マツダの「モノ造り革新」

 マツダは企業の生き残りをかけて06年頃から全社を挙げて「モノ造り革新」と呼ばれる構造改革に取り組んできた。それは、車の開発・生産プロセスを大きく変えて、デザインとコスト構造を一新する戦略であり、マツダにとっては大きな「仕事革命」だった。この「仕事革命」によって誕生した第一弾が「スカイアクティブエンジン」であり、新車としては12年に発売された「CX-5」、13年の「アテンザ」「アクセラ」と続いた。1ドル=77円で輸出しても利益が出るように、車の設計から生産までのプロセスをすべて見直したことで、利益率が旧型車に比べて3.5倍になった車種もある。同時に躍動感ある「鼓動デザイン」というコンセプトも導入し、値引きしなくても消費者がマツダのファンになってくれる車づくりを目指した。

 例えば、生産や開発現場での取り組みには次のようなものがある。

 現在、エンジンのシリンダーブロックなどを機械加工するラインでは、一工程当たり14台の汎用マシニングセンター(MC)が並ぶ。「モノ造り革新」以前までは専用機の「トランスファーマシン」で加工していた工程を、汎用機による「フレキシブル生産」に切り替えた。これは、専用機はひとつの部品を素早く製造する「大量生産」には適しているが、「変種変量」への対応は弱いと判断したためだ。

 その効果としては、専用機では刃具や治具を交換して再プログラムする段取り替えに時間を要するが、汎用機だとその必要がなくなったことが挙げられる。また、汎用機を並列に配列した工程の場合は、1台が止まっても残りの13台が動いているのでそこで対応できる。要は、工場の正味稼働率が飛躍的に向上し、機械が遊んでいる時間が減ったということでもある。同時に小型の汎用機は動かしやすいため、工場間移動の場合でも素早く対応でき、非常にスピーディーで柔軟性が高い生産手法に変わった。

 このフレキシブル生産を採り入れた結果、機械を止めることなく、1ラインで多様な部品を製造できるようにもなった。ガソリン・ディーゼルを問わず、スカイアクティブやV6エンジンなど13種類のエンジン部品を1つのラインで流している。しかも従来の専用機ラインだと45工程あったものを4工程にまで減らすことができた。こうした取り組みの結果、製造リードタイムは大幅に削減され、設備投資額は従来比で70%減少した。

 マツダ復活の背景には、以上みてきたような、製造現場の単なる「カイゼン」を越えた究極の「コンカレントエンジアリング」(設計から製造にいたる全業務を同時並行的に処理することで、量産までの開発プロセスを短期化する手法)への取り組みがあったのだ。(文=井上久男/ジャーナリスト)

※画像はマツダ本社(「Wikipedia」より/Taisyo)

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