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ミツメが獲得した「引き」の技法ーー『A Long Tour』ファイナル公演レポート

Real Sound のロゴ Real Sound 2016/11/04 株式会社サイゾー
© Real Sound 提供

 10月2日、渋谷WWW Xにて、ミツメのワンマンツアー『A Long Tour』ファイナル公演が行なわれた。  同ツアーは、ミツメが今年6月に発表した4thアルバム『A Long Day』を携えて各地を回っていたもの。「4人で演奏することにこだわった」という同作品では、これまでの彼らの作品と比較してもかなり音数が抑えられており、一音でも欠ければ楽曲が成り立たなくなってしまうような、ミニマムなアレンジが試みられている。多重録音による厚みのあるアンサンブルで録音芸術を志向した前作『ささやき』とは対照的な仕上がりとなっており、ライブでの楽曲再現性への意識の高まりを感じさせる。  ソールドアウトとなったこの日の公演は、今作に収録されている「天気予報」で幕を開けると、前作の収録曲「ささやき」を間に置き、再び今作から「忘れる」。音数の少ない生演奏はごまかしが効かないリスクを内包するが、彼らはそれを難なくこなす。  WWW Xは低音がクリアに聴こえる音響で、続く「オブジェ」でのnakayaan(Ba.)の跳ねるベースラインは際立って心地よく聞こえた。これまではあらかじめ作り込んだデモ音源に沿ってレコーディングしていたというミツメだが、今作はあえてデモを軽いものに留め、スタジオでのセッションを通してアレンジを決めていったという(参考:ミツメオフィシャルサイト「A Long Interview」大竹雅生)。その結果としてメンバーそれぞれのプレイヤーとしての個性が浮かび上がるようになっており、nakayaanのファンク風フレーズもその一例だ。  その後は「船の上」「漂う船」「キッズ」と、アルバム後半の3曲を収録順に披露。「船の上」と「漂う船」はアルバム内でもBPMを合わせて繋げられており、次第にサイケデリック色を強めていく組曲的な構成となっている。インタビューでも度々語られている通り、今作は『A Long Day(=長い一日)』のようなスムーズな流れを意識して、曲順や曲の繋ぎ方が練られている。リスナーがアルバム全体のトーンが統一されているような印象を受けるのは、音色や曲調だけではなくこのような意識に沿った処理によるところも大きいだろう。この曲順や曲間の繋ぎ方に対する意識はライブにおいても持ち込まれており、その象徴的なシーンがこの部分だった。  相変わらずMCでの口数は少なかったが、彼らの演奏する姿にはどこか余裕があり、余計な力が完全に抜けているように見られた。この日川辺素(Gt./Vo.)も言及していたが、ミツメは3月にアメリカ、4月には上海でライブを敢行(上海では「キャー」という歓声が上がり、「俺たちまだまだ行けるんだな」と思ったと川辺は笑いながら語っていた)、慣れない環境において言葉の通じない観客を前にパフォーマンスするという武者修行のような経験を積んだ。それが今のミツメの自然な立ち振る舞いに繋がっているのだろう。  そして、アルバムに先駆けて公開されたリードトラック「あこがれ」では、会場も盛り上がりを見せる。そんな景色を見て、「あこがれ」が公開された時には、そのミツメらしからぬサウンドに驚きの声が多く上がっていたことを思い出した。音を削ぎ落としていく中でより重要さを増すのが音色で、今作はその部分においても新たな試みがなされている。そんな中、これまでと変わらず彼らの楽曲に見られるのが静と動のスイッチで、新作においては少ない音数でこれまで以上に躍動感のある動のパートを生み出すことに成功している。  続いて披露された「真夜中」で強く感じたことだが、この日のライブでは川辺の言葉がストレートに耳に入ってきた。楽器の音数が少ない分ボーカルが目立つこともあって、そのメロディと詞も、これまで以上に練られたものになっている。  アンコールを受けて再びステージに登場した川辺は、「今のミツメはこういう感じだよっていうライブができたと思います」と話すと、「タイムマシン」「ミツメのテーマ」「クラゲ」と初期の人気曲を続けて披露。当時のギターポップも、現在のミツメの手にかかれば更に鮮やかに響く。最後にあえて初期の楽曲を演奏するのはファンサービスでもあり、彼ら自身がバンドの現在地を改めて確認しているようにも思えた。  そしてこの日、12月25日にリキッドルームにて『WWMM(ワクワクミツメまつり)』を、昨年に引き続き開催することを発表。川辺は「出演者も全員集合という感じなので、皆さんも全員集合でお願いします」と自信を見せた。出演者は12月3日に一斉発表される。  『A Long Day』レコーディングを経て、新たなアンサンブルを獲得したミツメ。これまで以上に「ライブを観たい」と思わせるバンドになったと言えるだろう。着実に進化を続ける彼らが今後どこに向かうのか、楽しみにさせられるライブだった。(渡邊魁)

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