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ヤマハと富士通がタッグで解説、「IoTビジネス」の作り方

ITmedia エンタープライズ のロゴ ITmedia エンタープライズ 2017/05/31
ヤマハと富士通がタッグで解説、「IoTビジネス」の作り方: 富士通が考える、デジタル改革を起こすためのアプローチ © ITmedia エンタープライズ 提供 富士通が考える、デジタル改革を起こすためのアプローチ

 「落ち込んでいるときにポジティブな音楽が流れる」「10年ぶりに訪れた観光地で、10年前に聞いていた音楽が鳴り、昔の記憶がよみがえる」

 利用者がおかれた状況を理解し、その状況に最適な音をフィードバックする“知性を持った音”が人に新たな感動を与えてくれる――これがIoTや人工知能を活用した新たなサービスとして、ヤマハが富士通と共同で生み出した次世代の製品コンセプト「Sound Intelligence」だ。イヤフォンやマイク、スピーカーなど、コンセプトを実現するためのプロダクトも提言している。

 技術の進歩が激しいIoT時代に、人々に受け入れられる新たなビジネスを作り出すにはどうすればいいのか。この数年、プロジェクトを通じてヤマハはこの問題に向き合ってきたという。2017年5月に行われた富士通フォーラムで、その道のりと方法論が語られた。

●楽器が“楽器以外”のモノとつながる世界

 教育現場向けボーカロイド、外国人向け自動翻訳アプリなど、さまざまな新規事業を展開しているヤマハ。今回、富士通と手を組んだのも、楽器や音響機器にITを組み合わせ、未来の「音」の可能性を探るという狙いが大きい。新規事業の可能性を探る「Future Sound & Music」プロジェクトでリーダーを務める多田幸生氏は、次のように話す。

 「MIDIの時代から、楽器や音楽がデータ化され、今では楽器がインターネットにつながるようになりました。私たちはそれだけではなく、楽器のWoT(Web of Things)、つまり楽器がWebというプロトコルを通じて、あらゆるモノとつながる可能性を検討しています」(多田氏)

 Future Sound & Musicプロジェクトでは、ドローンレースのイベントで、ドローンの動きを音に変換して会場に流したり、靴のインソールに埋め込んだセンサーを使って、人の動きを音に変換したりと、さまざまな“実験”を行ってきた。実験を重視するのは、時代とともに、新たなサービスを世に広めるアプローチが変わってきたためだ。

 「MIDIの例でいえば、これまでは規格が決まってからプラットフォーム(楽器)や事例などが生まれてきたわけですが、今はデジタル化によって、ソフトウェアアップデートで新たな規格へ対応できますし、ハードウェア開発のハードルも下がっています。これからは、いろいろな事例にチャレンジする中で、プラットフォームや規格が生まれてくると考えています」(多田氏)

●未来から逆算するアプローチ「バックキャスティング」

 カラオケや電子ピアノなど、音楽の楽しみ方やビジネスを大きく変えたイノベーションはこれまで数多くある。世の中にインパクトを与える動きを生み出すには、既存ユーザーの声を聞くだけではいけない。目指すべき未来、つまりはビジョンが必要になるという。

 「デジタル改革を進めるには、まずはビジョンを定め、PoC(Proof of Concept)を実施する中でそのコンセプトを磨いていき、事業化の検証を進めていくというアプローチが有効だと富士通では考えています。ビジョンから事業化まで、一貫してユーザー中心の発想で貫くことも重要です」(富士通デザイン ストラテジック・デザイングループ デザインディレクター 田中培仁氏)

 ビジョンを考えるために、ヤマハが採用したのは「バックキャスティング」という手法だ。未来のあるべき姿を定義し、そこから逆算して今やるべきことを考える。現時点でのヤマハの強みや成功体験を忘れ、未来の世の中を客観的に予測。その中で望ましい未来を定義し、そこで求められる技術や事業をイメージしていく。富士通デザインとヤマハのメンバーが協力してワークショップを行い、ビジョンを固めていった。

 「今までは社外の視点が足りなかったのだと思います。社内には将来的に価値を発揮する可能性がある技術がたくさん眠っている、ということに気付かされました。音を使った企業向けビジネスの可能性や、見えていないマーケットを知ることができたのは、共創ならではのメリットです」(多田氏)

●「Sound Intelligence」のこれから

 ワークショップを行った後、出てきたさまざまなアイデアを分類し、新サービスが実現する価値と機能をまとめた。その結果生まれたのが、「知性化した音」による新たなインタフェース「Sound Intelligence」というビジネステーマだ。

 そして、ビジネステーマを実現するハードウェアとして、各種センサーを搭載する無線イヤフォン「Sound Curator」、クラウド対応型の集音マイク「Broadcaster」、人の動きに合わせて音の演出を行うスピーカー「Sound Producer」というコンセプトを作り、動画も制作している。今は既存の技術を組み合わせ、最低限の機能体験ができるプロトタイプを作成し、イベントなどでユーザーに使ってもらっているところだという。

 「新しいことを始めようとするときは、既存ビジネスとの戦いになることもあります。しかし、その多くは新しいビジネスが目に見えないことが原因です。動画を作ることでユーザーがはっきりと分かるようになります。『あの女の子を笑顔にしたい』というレベルの方向付けができているだけで、モチベーションは大きく変わるのです」(多田氏)

 新しいテクノロジーをベースとしたビジネスを生み出すのは、もちろん簡単なことではない。しかし、ヤマハと富士通のさまざまな取り組みは、「IoTやAIでどんなビジネスが生まれるのか」という難題のヒントになるはずだ。

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