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リベリアの白い血 【今週末見るべき映画】

エキサイトイズム のロゴ エキサイトイズム 2017/08/03

雑誌「暮しの手帖」の元副編集長で、映画ジャーナリストの二井康雄さんが、多くの映画の中から「今週末見るべき映画」をレビューします

 リベリアは、奴隷制度から解放されたアメリカの黒人たちが建国した国。アフリカでは、エチオピアに次いで古い独立国だ。リベリアは、「自由」を意味する。

© Provided by Excite.ism

 映画「リベリアの白い血」(ニコニコフィルム配給)は、現代のリベリアとニューヨークが舞台となる。「白い血」とは、ゴムの樹の白い樹液からのタイトルと思われる。人の血は、肌の色と関係なく、赤い。人は、赤い血で、その命が支えられている。リベリアのゴム農園で働く人たちは、ゴムの樹の白い樹液をとることで、生計をたてている。ゴムの樹液を、人の血にたとえた、まことにうまいタイトルだ。

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 リベリアは、2度の大きな内戦を経験している。一握りの権力者たちが富を得ているようで、貧富の差が激しく、多くの貧しい人たちが存在する。ゴム農園で働くシスコもそのひとり。朝早くから、ゴムの樹から樹液を集める。いくら働いても、賃金は安い。妻と幼いふたりの子どもをかかえ、なんとか生きているのがやっと。ニューヨークにいる従兄弟が、一時帰国する。シスコは、貧困から抜け出そうと、ニューヨーク行きを決意する。

 ゴム農園を舞台に、その貧困ぶりが、鮮やかなタッチで描かれる。シスコたちは、ストライキを決行するが、スト破りがいたりして、うまくいかない。ニューヨークで、アメリカン・ドリームを果たそうとしたシスコは、せいぜい、タクシーの運転手でしかない。そして、リベリアの人たちのコミュニティーで、かつて内戦時にともに戦っていた男と再会する。シスコの脳裏に、内戦時のおぞましい記憶がよみがえってくる。

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 西アフリカ、リベリアの現実と、アメリカ、ニューヨークにおけるリベリアからの移民の現実が、くっきり。個を描いてはいるが、個から全体が俯瞰できる。もともと、いろんな国からの移民たちによって発展した国なのに、トランプ政権は、外国からの移民に厳しい態度をとり続けている。映画の描く虚構は、ほんの一部とはいえ、いまある世界の現実でもある。

 もともと、アメリカの奴隷だった人たちが建国した国である。リベリアからアメリカに向かうことを移民というのは、どこか、おかしい。正確には、里帰り、というべきかもしれない。長い歴史があるのだろう、ニューヨークでのリベリアの人たちのコミュニティーのありようがきちんと描かれる。

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 全編、リベリアの人たちの苦渋にみちた表情が、あざやかに捉えられている。さきごろ、アカデミー賞の最優秀作品賞を受けた「ムーンライト」もそうだったが、肌の黒い人たちの、哀切きわまりない表情、美しい肌の色に、引きつけられる。

 主人公のシスコに扮したビショッブ・ブレイの表情が、際だっている。少ないセリフなのに、表情が雄弁。国際的な映画には初出演だが、じっさいに、リベリア内戦を経験し、ゴム農園での労働に従事していたというから、適役そのもの。本作をきっかけに、アメリカに移住、俳優業というアメリカン・ドリームに挑戦中だ。

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 リベリア語、英語で語られるアメリカ映画であるが、共同で脚本を書き、監督したのは日本の福永岳志である。ニューヨークを拠点にしている映画監督で、これが初の長編劇映画になる。リベリアでのドキュメンタリー・タッチの撮影監督は、日本の村上涼。2013年、本作を撮影中に、重度のマラリアに感染、わずか33歳で亡くなっている。ニューヨークでのシーンは、村上涼を引き継いだオーウェン・ドノヴァン。

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 日本人があちこちで映画を撮る。別に日本でなくてもいっこうに構わない。映画というメディアが、虚構で世界の現実を描く。福永岳志は、ニューヨークで、さらに世界の現実にアプローチし続けてほしい。

●Story(あらすじ)

 リベリアのゴム農園で働いているシスコ(ビショップ・ブレイ)は、今日もゴムの木から樹液を採取している。木の表面を刃物で切り、白い樹液を受ける。たくさんのゴムの木があり、作業は過酷である。

 シスコは、妻のジョイ(ゼノビア・テイラー)と、まだ幼いふたりの子どもと暮らしているが、なんとか食べていくのがやっと。シスコと仲間たちは、労働改善を訴えてストライキをするが、スト破りもいたりして、状況はまったく変わらない。

 ある日、シスコの従兄弟マーヴィン(ロドニー・ロジャーズ・ベックレー)が、ニューヨークからリベリアに一時帰国する。シスコは、マーヴィンから、ニューヨークでのさまざまな話を聞くことになる。シスコは、いまの生活をなんとかするために、アメリカ行きを考え始める。

 ジョイの反対を押し切り、シスコはニューヨーク行きを決める。シスコは、正式な労働ビザなどは取得せず、観光目的でニューヨークに降り立つ。シスコは、マーヴィンの世話で、ニューヨークの狭い部屋に住むことになる。

 シスコは、不法労働を承知で、タクシーの運転手として、働き始める。ニューヨークは人種のるつぼ、タクシーに乗る人たちもさまざまである。シスコは、誠実にドライバーを続けている。

 ニューヨークには、リベリアから来た人たちがお互いに助け合うコミュニティーがある。バーベキューのパーティが開かれる。そこで、シスコは、思いもかけない人物から声をかけられる。「シスコ、だろう? ともに内戦を戦ったジェイコブだ」。

 ジェイコブと出会ったことで、シスコの脳裏に、内戦時のおぞましい体験がよみがえってくる。シスコの封印した悪夢とは、いったい何だったのか。

 やがて、シスコは、ジェイコブの知り合いの女性マリア(シェリー・モラド)とも親しい仲になる。そこでシスコは、ジェイコブのニューヨークでの素性を知ることになる。そして、シスコは、ある事件に巻き込まれていく。(文・二井康雄)

<作品情報>

「リベリアの白い血」

2017年8月5日(土)、アップリンク渋谷ほか全国ロードショー

公式サイト

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