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レナード・コーエン、ニック・ケイヴ、あがた森魚……強烈な個性発するベテラン勢の新作5選

Real Sound のロゴ Real Sound 2016/11/06 株式会社サイゾー
© Real Sound 提供

 ボブ・ディランのノーベル賞受賞が話題を呼ぶなか、今月は強烈な個性を発しながら、独自の世界を生み出してきたベテラン・ミュージシャン達のディープな新作を紹介していこう。 (参考:トクマルシューゴ、デヴェンドラ・バンハート…芸術の秋に聴きたい、アートの香り高い新作5選)  まずは詩人/作家としての顔も持つカナダのシンガー・ソングライター、レナード・コーエン。ディランより7つ歳上、現在82歳にして現役だ。新作『ユー・ウォント・イット・ダーカー』は、背中や腰を痛めて一時はレコーディングを中断しながらも、コーエンは医療用のイスに座って歌を吹き込んだ。ストリングスやコーラスに彩られた繊細なメロディーがノワールな雰囲気を醸し出すなか、官能的な歌声は低くしわがれて歌うというより呻くようだ。アルバムからは、今なお苦悩しながら愛を求めて彷徨う男の心象風景が浮かび上がってくる。この宗教的ともいえる深遠な歌の世界は唯一無二だ。  そんなコーエンの精神性を受け継ぐように、心の闇に向き合ってきたのがニック・ケイヴ。ポスト・パンク・シーンから登場したニックは、時に暴力的なまでに感情を爆発させながら歌ってきた。ニックが率いるニック・ケイヴ&ザ・バッド・シーズの新作『スケルトン・ツリー』は、レコーディング中に息子が事故死するという痛ましい出来事があったことが影響しているのか、全編に渡って静けさが漂っていて内省的。バンドの演奏は抑制されていて、美しいメロディーとニックの深い歌声に引き込まれていく。まるで鎮魂歌のようなアルバムで、本作を作り上げることがニックにとって悲しみと向き合うことだったのかもしれない。痛ましいほどにソウルフルな歌声が胸を打つ。  4畳半フォークなんて言われていた60年代にデビューしたあがた森魚は、テクノ、タンゴ、ライなど様々な音楽を独自に昇華しながら、時空を超えた“あがた節”を聴かせてきた。新作『近代ロック』では、ワールドスタンダードの鈴木惣一朗がサウンド・プロデュースを担当して15年ぶりに共演。ワールドスタンダードの力強いバンド・サウンドに乗って、あがたのエモーショナルな歌声が力強く飛び出してくる。宮沢賢治へのオマージュがちりばめられた、詩情溢れる歌詞もあがたらしさが全開。鈴木のジェントルで繊細なサウンドとあがたのイノセントな少年性が融合して、ノスタルジックでありながらも、みずみずしい歌を生み出している。  80年代にネオアコ/ギター・ポップから登場した吟遊詩人、モーマスも今やベテラン。日本好きが高じて日本に移り住み、大阪を拠点に活動する彼の新作『Scobberlotchers』は、日本の小唄や民謡を大胆にサンプリングしたエキゾチックなアルバムだ。三味線や鼓とエレクトロニックなビートが入り乱れるなか、モーマスの囁くような歌声が忍び足で徘徊する。いかにもなオリエンタリズムではなく、日本の花柳界の“粋”を料理するあたりにモーマスの嗅覚の確かさを感じさせて、日本在住はダテじゃない。以前、志村けんのバカ殿を歌詞に織り込んでいたことをあったが、祇園あたりで舞妓を従えて歌うモーマスのライブが見たくなった。  60年代にはザ・ビートルズとタメを張るほど人気があったウォーカー・ブラザーズのスコット・ウォーカー。アイドルからスタートしながらも、次第に発揮し始めた実験的な音楽性はブライアン・イーノやデヴィッド・ボウイ、トム・ヨークなど様々なアーティストに影響を与えた。最近ではドローン・メタル・バンド、サンO)))との共演作を発表して驚かせたスコットの新作は、映画『シークレット・オブ・モンスター』のサントラ。彼のトレードマークともいえる艶やかなバリトン・ボイスを聴くことはできないが、重厚なストリングス・サウンドが牙を剥いて襲ってくる強烈なオーケストラ・サウンドを展開。悲鳴をあげるホーン、暴力的なパーカッションなど、異様な緊張感に貫かれた暗黒音響が響き渡っている。歌はなくても、スコット・ウォーカーの音楽はディープな魅力を放っている。 (村尾泰郎)

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