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一生を1社、1仕事で終えるのがマイノリティになる時代

ITmedia NEWS のロゴ ITmedia NEWS 2014/05/21 11:00 ITMedia
一生を1社、1仕事で終えるのがマイノリティになる時代: 画像:ITmedia © ITMedia 提供 画像:ITmedia

 これまでプチスキルの実際の選び方や学び方などを紹介してきましたが、プチスキルをかけ算して強みをつくるにあたり、会社とどう付き合うかは重要な問題です。変化が激しい時代における「会社」との付き合い方を考えていきましょう。

●一生を1社・1仕事で終えるのがマイノリティになる時代

 今や、一流企業に一度就職すれば一生安泰とはいかない時代です。これには、大きく2つの理由があると考えられます。1つは、IT化やグローバル化による急激な競争環境の変化の中で、スマホのカメラにその地位を奪われたデジカメのように市場が突然なくなり、ひいては会社がなくなる可能性です。もう1つは、同じように環境変化に伴い、スキルが陳腐化するなどの理由で、自分の仕事がなくなりリストラされる可能性です。

 1つめの「会社がなくなってしまう」ケースを考えましょう。例えば、2003年、日本の家電メーカーがこれほどの苦境に陥るとは誰も想像できなかったのではないでしょうか。2012年3月期のパナソニック、ソニー、シャープ3社の赤字額の合計は1兆円を超えています。当時、もしも私がパナソニックから内定をいただき、ヤフーやグーグルからも内定をいただいていたら、私の両親はどちらをすすめたでしょうか? きっとヤフーやグーグルはすすめなかったでしょうし、私自身も当時なら日本の家電メーカーを選んだと思います。10年後の将来に何があるか、誰にも予測できない時代なのです。

 2つめの「自分の仕事がなくなってしまう」ケースですが、日本では、正社員については裁判所の判例に基づいて、簡単にはクビにできない「解雇規制」がとられています。解雇規制とは、「使用者が労働者を解雇するためには、客観的に合理的な理由があり、社会通念上相当と認められる場合でなければならず、これに反する解雇は無効である」というものです。

 しかし、安倍政権が発足させた有識者会議で「労働力の流動化」が大きなテーマとなっており、この中で解雇規制の見直しもテーマとして議論されています。正社員だからといって安心はできない時代がやってくる可能性は十分あります。そもそも、日本の外を見れば、雇用調整は当たり前です。多くの会社で当たり前に雇用調整が実施されるようになる日は、遅かれ早かれ多くの企業にやってくる可能性が高いのです。

 このように考えると、今後は、1つの会社で1つの仕事を10年やるということはリスクがかなり高いと考えられます。とはいえ、3日坊主で会社を辞めてしまっては、何もスキルが身につきません。

 10年は長いとすると、逆に、少なくともどれくらいの期間は1社にいる必要があるのでしょうか? 1つの仕事をそれなりにこなせるようになるには3年は必要です。ちょうど、かけ算でプチスキルを習得するのに必要な2年半(2500時間)と同じくらいの期間です。

 スキルを習得する前に転職するのはよくないので、1社最短でも3年在籍とすると最短で3年ごとの転職が可能です。22歳で大学卒業後、このペースで4回転職するとその時点で12年たち、34歳になります。この年齢は、自分に強みがないと転職が難しくなる年齢です。10年も1つの仕事を続けるというのはリスクがあります。一方で、かなり早く転職をくり返しても、30代前半までに4社で働くことが限界だと分かります。

 これからの時代は1社あたり3〜10年の期間の間で自分のスキルが最大限に磨けるよう、会社との付き合い方を自ら選択する必要があります。今までの時代は優良企業に選ばれることに集中すればよかったのですが、これからは自分の価値観の軸に基づき主体的に会社や仕事を選ばなければ、食いっぱぐれる可能性があります。

●1つの会社、仕事を長く続けたいなら、会社の「ブラックボックス」を狙え

 基本的には、1つの会社に一生勤めるというケースは今後確実に少なくなっていきます。だからといって絶対にないわけではありません。今後はかなりマイナーな働き方になると予測されますが、1つの会社にずっと勤めたいのであれば、会社の「ブラックボックス」になっている部署で働くことをおすすめします。なぜなら、この部署に所属していれば、会社としては辞められると困ってしまうので、その会社が潰れない限りはクビになるリスクは最小だからです。

 この「ブラックボックス」というのは、会社が社外に絶対出したくない技術やノウハウのことです。自動車なら昔は内燃機関(エンジン)がそうでした。最近ではハイブリッドや燃料電池にその中心が移りつつあります。家電などでは電池技術が同じように重要です。これらのブラックボックス関連の仕事に携わっていれば、もしも会社に何かあったとしても、部門だけは買収されたり他社から同じ仕事内容でオファーが来るはずです。例えば、電池であれば韓国メーカーなどが放っておかないでしょう。

 このような事情で、これらの部署で働いている人に他の会社に移られては困ってしまうので、クビのリスクは低いです。したがって同じ会社で勤め続けられる可能性が高くなるのです。また、出世に関してもこういう部署が有利です。理由は、これらの分野は成長分野であり、会社内でも注目されて目立ちやすいからです。

 ブラックボックスになっている部署を探すには、有価証券報告書を見て役員の経歴を確認するのが1つの手です。その会社でどの部門が力を持っているかも比較的分かりますので、興味がある企業への就職や転職を考えているときにはチェックすることをおすすめします。

 しかし、今の主流部署(技術)が今後は急速に衰退することもあるので、その点では今後も成長するのか、安泰かを見極める視点は重要です。いずれにしてもこれらの部署で働くことができるなら、無理にリスクを取って転職をする必要はないかもしれません。

●転職後の環境に適応するための「想像力」と「キャッチアップの技術」

 転職する場合に大事なスキルは2つあります。それは「想像力」と「キャッチアップの技術」です。ここで言う想像力とは、勤める会社に何が求められているかを想像する力で、キャッチアップの技術というのは、転職すれば多かれ少なかれ新しいことを学び習得しなければなりません。

 「想像力」は、相手が求めていることが分かる力です。例えば、なぜ経営コンサル会社の面接ではフェルミ推定(※)があるのか、ピンとくるということです。

※フェルミ推定(Fermi estimate)=実際に調査するのが難しいようなとらえどころのない量を、いくつかの手掛かりを元に論理的に推論し、短時間で概算することを指す。オーダーエスティメーションともいわれる。

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 では、なぜコンサル会社の面接でフェルミ推定があるのかというと、もちろん論理的思考力を試す目的もありますが、それ以上にお客さまの前で適当なことを言って相手から信頼を失うようなことになると、コンサルティング業務を遂行する上で大きな障害になってしまう可能性があるからです。

 コンサルタントはある業界のプロではありません。一方でコンサルティングサービスを受けるお客さんは当然ですが、業界のプロです。プロの前でとんちんかんな回答をしないためには、フェルミ推定で使う能力が役に立つのです。フェルミ推定は前提条件や制約条件をうまく設定し、誰もがなるほどと思える論理を積み上げるスキルです。だからこそ、業界のプロをもある程度納得させる回答ができる可能性が高く、大事なのです。

 「キャッチアップの技術」は、基本的には学ぶ力です。しかし、他にも大事なことがあります。転職の初期には他の人と同じように仕事ができるわけではないので、他のスキルでうまく穴埋めすることも大切です。

 私はGE時代、財務分野に転向した当初は財務のことが何も分からなかったため本当に苦労しました。このような状況では、周囲に迷惑をかけてばかりになってしまうのですが、何か教えてもらうにも、相手も仕事がありますのでボランティアでは教えてもらえません。そんなとき、財務の仕事にはとても詳しいベテランの人が英語は苦手だったとします。これは大チャンスで、その方が英語で困っているときに力になれれば貸しができるので、財務のことで困ったときにいろいろと教えてもらえるようになります。

 このようにキャッチアップをうまくするには、自分の持っているスキルで周囲に貢献できることを探し、それを効果的に使うことが学ぶ力と合わせて重要です。

●「会社へ投資する時間」「自分へ投資する時間」の配分を最初に決める

 会社も仕事もなくなりかねない時代において、会社のために使う時間と自分の成長のために使う「自分時間」をどのように配分するとよいのでしょうか? もしも、将来会社側の人間になれるチャンスがあるならば、迷うことなく会社のために時間を投じるというのも1つの考え方です。なぜなら、トップ20%の人材として認められていれば、社費でMBA派遣してもらえるなど、会社から投資をしてもらえる可能性が高いからです。会社が投資してくれるならば、それを利用しない手はありません。

 一方でこのようなチャンスを得られる人はごく一部です。30歳を過ぎたあたりから社内選抜が始まりますので、残念ながら会社側の人間に将来なれないことが分かった場合には、もしくは会社側の人間になる気がない場合には、会社のために使う時間と自分時間の配分を自分で決めなければいけません。

 くり返しになりますが、プチスキルのかけ算キャリアは必ずしも楽な道ではありません。1万時間のプロに勝てる可能性があるとすると、それと同等レベルの投資(2500時間×4つ)が基本的には必要です。加えて、かけ算ならスキルが陳腐化するリスクは低くなるメリットはあるものの、スジのよい組み合わせが求められるという点でプラスアルファのスキルが必要です。

 30代に入り同期との差がどんどん明確になっていくとき、会社人生しかなかった今までの時代は、差がつくと挽回するのはほぼ不可能でした。ドラマ「半沢直樹」で描かれた銀行の世界のように一度出向となったらおしまいだったのです。選抜から漏れた時点で、どれだけがんばっても無駄です。しかし、これからの時代は1つの会社のレースで負けたからといって、人生で必ずしも差がつくわけではなく、会社の外でチャンスをつくれます。これが、かけ算キャリアが生かせる今の時代のよいところです。

 ただし、前述のとおり、会社に投資してもらえる選抜組の同期に差をつけられないためには、同じ程度の努力は必要です。出世コースの同期は月の労働時間160+残業90時間=計250時間すべてを会社のために使うとしましょう。かけ算で負けない状態に持っていくためにはどうすればいいのでしょうか?

 さすがに残業ゼロとはいかないので、勤務時間が160時間+残業40時間=計200時間を会社時間とします。選抜組の同期はあと50時間がんばっているのですから、この差分の50時間を自分時間として確保します。これは選抜組が働く時間250時間のうち50時間ですので自分時間は20%となります。

 グーグルには、日々の仕事の20%は自分の好きなことをやってもよいという「20%ルール」があります。あなたも、自分時間をこのように決めてしまえばグーグルで働いているのと同じです。年間600時間を自分のスキルアップのために投資できます。このペースだと4年で1つのプチスキルを習得できます。

 これからの時代は年金の保証もまったくないので、65歳どころか70歳を過ぎても働き続ける可能性が高いのです。そんな時代だからこそ、20%の時間を仕事以外の自分時間に投資することは、長期的なキャリア形成を考えた場合も、決して損をしない時間の使い方のはずです。

(つづく)

[堀場英雄,Business Media 誠]

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