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三代目JSBやFlower手がける作詞家・小竹正人が明かす、LDHアーティストとの“絆”

Real Sound のロゴ Real Sound 2017/04/19 株式会社サイゾー
© Real Sound 提供

 作詞家として小泉今日子や中山美穂などを手がけ、ここ数年は三代目 J Soul Brothers from EXILE TRIBEやFlowerなど、LDH関連のアーティストへ歌詞提供を行なっている小竹正人氏。彼が3月29日に初のエッセイ集『あの日、あの曲、あの人は』を上梓した。同著は、彼がこれまで手がけてきた作品から厳選した全61曲の歌詞を掲載し、すべての曲にまつわる創作の思い出を書き下ろしエッセイとして収録。小竹氏の代名詞ともいえる「切ない世界観の歌詞」はどのようにして生まれているのかを理解するにはうってつけの一冊となっている。リアルサウンドでは過去、小竹氏へ同著の内容ともリンクしたキャリアにまつわるロング・インタビューを行なっており(http://realsound.jp/2015/04/post-3094.html)、今回はそこからさらに一歩踏み込み、初出の話やエッセイ集出版のきっかけ、彼とLDHアーティストの絆について、じっくりと掘り下げた。(編集部)

(関連:Flower・鷲尾伶菜と作詞家・小竹正人が語るグループの成長「『花時計』以降、声質が変わってきた」)

■「自分の中で100%納得のいった歌詞を書けたことがない」

ーー『あの日、あの曲、あの人は』は、61曲の歌詞とそれに付随するエッセイを書き添えた作品です。このコンセプトが生まれたきっかけは?

小竹:最初は歌詞集とそれに付随するコメントを少し添えたものにしようと思っていたのですが、書いているうちに文章がどんどん増えてきたので、「だったら歌詞&エッセイ集として出そう」という決断に至りました。

ーー同著では小竹さんの作詞家生活25年を振り返っているわけですが、改めてご自身の過去作と向き合ってみてどうでしたか。

小竹:まず、こんなにたくさんの歌詞を書いていることに驚きでした。価値観やテーマが共通している楽曲もここまであるのかとビックリしましたし、よっぽど良い恋愛をしてこなかったんだなと客観視する機会にもなりましたね(笑)。あと、『あの日、あの曲、あの人は』は、ちょうど1日に1曲のペースで歌詞を読みなおしてエッセイを書いていたので、自分のなかでは61日間の日記のような作品になりました。

ーーご自身で客観視してみて、作詞家としての小竹さんはどういう人物だと思いますか?

小竹:なんでこんな長く、こんなペースで書き続けられたんだろうと考えたときに「自分は国民的大ヒット曲を持ってない作家なんだ」と思って。

ーー「花火」(三代目 J Soul Brothers)も「白雪姫」(Flower)もヒット曲ですよ。

小竹:でも、「およげ!たいやきくん」(子門真人)みたいな、老若男女に愛される、誰でも歌える曲ではないんですよ。実はいままで、私自身が自分の中で100%納得のいった歌詞を書けたことがなくて。もしかしたら、それは死ぬまで出てこないのかもしれません。その悔しさが原動力になっているからこそ、作詞家としてますますハイペースに作品を生み出し続けられているのだと思います。以前までは「25周年を区切りに少しペースを落とそう」なんて考えていたのですが、まだまだ勢いを衰えさせてはダメな気がします(笑)。

ーー直近でお話を伺った際(http://realsound.jp/2015/12/post-5624.html)も、「これまでのキャリアにおいて一番ハイペースかもしれない」と言っていましたもんね。

小竹:今年の前半はそれを上回るハイペースぶりですね(笑)。いろいろなプロジェクトにも携わらせていただいているので、楽しみにしていてください。

ーー「冬物語」(三代目 J Soul Brothers)と「熱帯魚の涙」(Flower)の章では、これまでファンがなんとなく感じていた「冬が好き」「夏が嫌い」という小竹さんの歌詞に感じる部分が明文化されていて面白かったです。

小竹:冬が好きですし、おそらく相性も良いんですよね。キャリアの一時期は冬の歌詞ばかり依頼がくることもあったりしました(笑)。人のことを書いているつもりが、自分自身がすごく出ているなと改めて感じた出来事ですね。

ーーその「自分自身」というのは、小竹さんの普段思っていることや考えていること、ということでしょうか。

小竹:いえ、「隠したい自分」が出ていると思います。「Nobody can,but you」(小泉今日子)の章にも書いたのですが、「一番の親友が『孤独』で、二番目の親友が今日子」なんですよ。そんな風にして近しい人にも見せないようにしている部分が、歌詞になるとはっきり出ていたり。

ーー「空に住む〜Living in your sky〜」(三代目 J Soul Brothers)の章でも「泣くときは絶対に一人で泣く」とありましたね。

小竹:そうなんです。人前で涙は見せないようにしていて……それはある種、本当の自分を見せないためのバリアなのかもしれないですね。人前で泣くことって私にとってはものすごく恥ずかしい自分をさらけ出すことなんで。

ーー以前のインタビューで「『自分は生涯作詞家です』と胸を張って言えるようになったのは、LDHに所属させてもらってから」と話していましたが、改めて小竹さんの目に、LDHという組織は当初どのように映っていて、今はどう見えるのでしょうか。

小竹:所属する前は、それこそEXILEがモンスターグループとして名を轟かせたあとだったので、地味な世界で生きている自分とは違う次元の出来事のように映っていました。所属させてもらってからは、逆に近すぎてその規模感がわかりづらい、というのが正直なところかもしれません。

ーー著書内では、若手のLDH所属アーティストについて、直接その歌詞を歌っているアーティストではないものの、楽曲を通じて彼らにまつわるエピソードが描かれているのも面白い部分でした。

小竹:まだ何にも持っていない、出会ったころは「普通」の若い子が、一つ一つ手に入れたり捨てたりしながら上に昇っていく、スターになっていく姿を見るのが好きなんです。だから若いメンバーとも積極的に交流しますし、それが作詞のヒントになることも多いです。初めて同じ空気の中で同じ時間を過ごしたときに、その人の人となりや可能性がなんとなく分かるし、自分にできることはやってあげたいと思うんですよ。あと、とにかく今回のこの本を出すにあたって、「私の作詞曲で何が好きか?」と仲のいいメンバーたちに聞きまくったので、それがすごくエッセイの中に反映されているんです。

ーー現在活躍しているメンバーやHIROさんにも、同じことを感じたのでしょうか。

小竹:そうですね。後輩のメンバーだと、今市隆二なんかは出会った当初の「素朴さ」や良い意味での「野蛮さ」が無くなっていなくて、でもいつの間にか頼り甲斐のある相談相手みたいになっていて。登坂広臣も気がつけば頼もしくなっているし、私を喜ばせてくれるようなことを多々やってくれるし。「こういう後輩たちに出会えたことってLDHに入ってできた私の財産だ」と本気で思います。

 HIROさんに関しては、最初に出会ったときは全く心が読めない人だなと思いましたが、次第に「こんな男に人生で会ったことない」という感覚に変わってきました。私自身、子供の頃から自立しすぎて「成績は優秀ですが子供らしくありません」と書かれるくらいの人間で(笑)、なんでも自分で自分のことをやってきたようなところがあるので、誰かにここまでよくしてもらったり、頼ったり、感謝したことがないというくらい、HIROさんのことは尊敬しています。

■「どちらかというと、世界のことよりも机の引き出しの中に興味があるタイプ」

ーー『あの日、あの曲、あの人は』では、前半と後半にLDH系のアーティストを、中盤とラストにはその他のアーティストの楽曲を収録しています。この構成はどのようにして考えられたのでしょうか。

小竹:まずは代表作と言われている「花火」(三代目 J Soul Brothers)や「白雪姫」(Flower)、「Heavenly White」(EXILE)を書くところから始めて、残りのLDHアーティストの章については、時系列に沿って進めました。そのなかでも私の小説とも関連した楽曲であり、特に思い入れの強い「空に住む〜Living in your sky〜」を終盤に持ってきています。一番最後の「Unfair world」(三代目 J Soul Brothers)の章のエッセイについては、過去に書くタイミングがあったのですが発表しないまま終わってしまったこともあり、スタッフとも相談しながら、今回のタイミングで収録しようということになりました。

ーー著書のなかでは、かねてからお話されていた小泉今日子さんのほかにも、屋敷豪太さんや藤井フミヤさん、YOUさんとのエピソードなど、小竹さんの交友録も垣間見える部分があり、ますます小竹さんが何者なのかわからなくなってきました。

小竹:それはこの本を読んだHIROさんにも言われましたね(笑)。

ーー小竹さんの歌詞は、提供アーティストとの距離が近いほど良いという趣旨のコメントをHIROさんも著書内でしていますが、やはりご自身でもそう思われますか。

小竹:自分のなかでは、公私混同にしたほうが書きやすいと感じる部分はすごくあります。

ーーその流れで伺うと、「Anniversary!!」(E-girls)の章で「一時期LDHでE-girlsの教育係的な役割を担っていた」とありました。これはエッセイで初めて語られるエピソードですよね。

小竹:Dreamと私が同じ時期にLDHへ入ったこともあり、彼女たちとすごく仲が良かったし、Dreamのメンバーは私のことを親しみを持って「おだちゃん」と呼んでくれる存在なんです。E-girlsが結成されたとき、Dreamが年上メンバーとして教育係になるのが必然の流れだったのですが、彼女たちへの負担を減らす意味合いもあり、私が教育係を手伝うことになりました。Dreamに関しては、お客さんがまったくいない時期のライブから見ていることもあって、私はどこか彼女たちの「応援団長」的な役割だと自負していました。

ーーE-girlsだと、特に小竹さんの提供した「好きですか?」は、ライブにおいても重要な場面で歌われることが多く、ファンにとっても特別な曲という思いが強い楽曲です。

小竹:E-girlsは、メンバーみんなの素の部分をかなり知っているし、誰かの主観に寄せようとすると難しくなってしまうので、彼女たちに詞を書く際は、景色や街といった要素を強めるようにしています。でも、著書のなかにも書いているように、「好きですか?」に関しては、以前から歌詞があったのですが、紆余曲折の末E-girlsの楽曲になったんです。それをShizukaと鷲尾伶菜が本当に歌詞と真摯に向き合ってくれて、込められた意味の一つ一つを上手く表現してくれていて。ライブだと毎回見入ってしまう楽曲です。E-girlsだと、Amiはかなりプロっぽいというか、色んな顔を演じ分けられる歌い手なので、仲のいい作詞家としてではなく、また違った感覚ーー職業作詞家として真剣に対峙するという気持ちがあるんですよ。

ーー最近ではGENERATIONS from EXILE TRIBEへの作詞も積極的に行なうようになっていますよね。彼らやEXILEについても訊きたいです。

小竹:GENERATIONSは、歌詞を書く際に「この曲はこのメンバーを主人公に」と当てて書いているんです。公私ともに昔から知っているので、その人から訊いた話を膨らませてその人を主人公のように書いて、というFlowerと同じようなプロセスを使っていますね。EXILEに関しては、歌詞を提供させていただく以前から世界観が出来上がっていたので、私はそこに少しだけ私特有のエッセンスのようなものを加えさせていただくという感じです。私は、どちらかというと、広い世界のことよりも小さな机の引き出しの中の世界に興味があるタイプなので、あまり大きな規模の歌詞は書かないようにしている部分もあります。そこはE-girlsにも通ずる部分ですね。

ーーだからこそ、パーソナルな表現が最大限に出るラブソングが得意ということなんですね。

小竹:得意というか、書きやすいですね。執筆時間もラブソング、特に悲恋がテーマの場合はより短い傾向にあります。それだけ辛い恋愛経験が多いという証明なのかもですが(笑)。

ーーなるほど(笑)。一方で、「Flower Garden」(Flower)の章では「明るい歌詞を書いてみたい」という言葉があります。

小竹:これまでに暗い、辛い曲が多かったからこそ、この先のキャリアではそういう歌詞もどんどん書いていきたいですね。著書の中で「Anniversary!!」や「Mr.Snowman」「自由の女神 ~ユーヴライア~」の作詞家である花空木の正体は私だと初めて明かしたんですが、名前を変えたのも自分の中で明るい曲を書くためのスイッチを用意したようなものなので。でも、書いてみた結果として、そこまで小竹正人名義の詞と本質は変わらないなと思ったので、これからは自分の名義で明るい曲も書いていきたいです。

ーー作詞の方法に関して、ここ1〜2年で変化したことはありますか?

小竹:方法というよりは状況の変化に近いですが、最近のFlower作品では、表題曲についてHIROさんからもらったキーワードを元に執筆するのですが、カップリングについてはメンバーの選んだデモ曲を元に、わりと自由に書かせていただけることも多くなりました。最新作『MOON JELLYFISH』のカップリング「とても深いグリーン」も、私がたまたま事務所に居た佐藤晴美に「カップリング、どんなタイトルがいい? すぐ答えよ!」と訊いて、焦った晴美が「グ、グ、グリーン!」と言ったことから、生まれた楽曲なんです。「グリーン」だとしっくりこないけれど、「とても深いグリーン」ならFlowerっぽいよな、と。良い意味で遊びのある作り方をすることも増えましたね。世界観には口を出してほしくないけれど(笑)、タイトルなんかはわりと人任せにすることもあります、特にFlowerの曲に関しては。

ーー作詞家はタイトルにこだわっている方が多いというイメージだったので、驚きです。

小竹:タイトルをつけるのが苦手なんですよ。歌詞はスムーズに書けても、タイトルで悩むことが多いです。逆にテーマと仮タイトルがあらかじめ決まっていると、ものすごく出しやすいんですよ。

ーー最近では、小竹さんの書いた歌詞をショートフィルムにするプロジェクト『CINEMA FIGHTERS』がスタートし、第一弾として「Unfair World」の世界観を河瀬直美さんが表現しています。ますます作詞家として特異な立ち位置になってきましたね。

小竹:河瀬さんが自分の歌詞をものすごく深くものすごく素晴らしく表現してくださって、初めて映像を見たとき、「私ももっともっと頑張らなければな」と改めて思わされました。小泉今日子さんの存在などもそうですが、こうやって良い刺激を与えてくれる存在がいるからこそ、さらに頑張っていかなければと思いますし、自分が歌詞で表現できるものもまだまだあるはずと奮い立たされますね。

(中村拓海)

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