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下ネタ、大麻、スプラッター! 過激な“R指定”CGアニメ『ソーセージ・パーティー』が越えた壁

Real Sound のロゴ Real Sound 2016/11/13 株式会社サイゾー
© Real Sound 提供

 スーパーマーケットに陳列された食材たちが人間に反逆する姿を描く“R指定”CGアニメ『ソーセージ・パーティー』が好調だ。本国アメリカ公開時もディズニーアニメ『ピートとドラゴン』に週末興収で約10億円以の差をつけ、最終的に全世界で100億円以上を売り上げている。日本では公開館こそ限られているものの、初週末1館当りの興収では『君の名は。』を抜き、スクリーンあたりで1位の数字を記録している (興行通信社調べ)。物語の構造やキャラクター造形は『トイ・ストーリー』などのディズニーアニメをほぼ踏襲してはいるが、それにしてもなぜこれだけの支持を得るのか。その主な原因が、製作・脚本・声の出演を担当したセス・ローゲンの存在である。 参考:EXILE TRIBE『HiGH&LOW』のぶっとんだ世界 先鋭アクション × 荒唐無稽ドラマの凄み

■マリファナ大好き! 俳優・セス・ローゲンとマリファナコメディの世界

 セス・ローゲンは『40歳の童貞男』『スーパーバッド 童貞ウォーズ』など、ジャド・アパトー監督の過激なコメディ映画で知られるようになった俳優。そんなアパトーに学んだローゲン自身の製作・脚本・監督作も過激なものばかりだ。そもそも、『ソーセージ・パーティー』の主人公はソーセージで、その造形は男性器そのもの。ヒロインはホットドッグのバンズだが、形状は女性器のそれである。こういったキャラクターたちが、冒頭から「motherfucker!」などスラングを連発するし、ことあるごとに性行為を暗喩するたとえ話ばかりするのである。  また、大麻好きで知られるローゲンの作品は、キャラクターたちが麻薬を常習し、ドラッグが作品のキーとなって展開するのが特徴。脚本作『スモーキング・ハイ』は、麻薬中毒の二人が主人公のバディムービーだったが、実は『ソーセージ・パーティー』も同じ。それどころか、本作ではフロリダ州で中毒者が人間の顔を食べたことで一躍知られた脱法ドラッグ、“バスソルト”が主人公たちの最終兵器として登場するのである。また、アニメーションを使って、実写ではできなかった「キャラが真っ二つにされる」「皮をはがれる」といった、スプラッター表現を登場させるなどやりたい放題。ピクサー×ディズニーのような外面で、過激さを増したマリファナコメディが展開するのである。 ■人種から性別まで、すべてを笑いに変える巧みな演出  これだけ過激でお下劣にもかかわらず、本作が多くの観客に受け入れられているのは、もちろんCGアニメで不快さを軽減しているから。しかし、それ以上に近年の映画でたびたびテーマとなってきたダイバーシティ(人種や宗教、性差などの多様性)がきちんと描かれているからでもある。劇中では、ユダヤ系、南米系、中東系などの様々な人種のキャラクターを、それぞれの国の食物で表現している。  例えば、ユダヤ系キャラはベーグルで、パレスチナ人系キャラの薄いパン(名前がわからないことをネタとしていじられる)と衝突しあう。食物のように国を端的にあらわすものをキャラクターに据え、言葉のなまりと特徴的な目鼻をつけて動かす。とてつもなくクレバーな多様性の表現だ。LGBT(レズビアン、ゲイ、バイセクシュアル、トランスジェンダー)の描写も、性行為などの直接的なシーンまで登場させているし、宗教に関するとてもストレートな疑問がテーマになっているのも面白い。食物たちが人間を天国に連れて行ってくれる“神”とあがめていた序盤から、切り刻まれ消費される真実に気づき、最終的に神を殺そうとまでする展開は、盲目的な信仰とその結果を非常にストレートなかたちで語っている。  セス・ローゲンは製作・脚本・出演作で、こういった過激でお下劣な作風の裏に、常にある種のテーマや皮肉を織り交ぜてきた。『ディス・イズ・ジ・エンド 俺たちハリウッドスターの最凶最期の日』ではセレブの存在をパロディにし、最後の審判をモチーフに。『ザ・インタビュー』では金正恩暗殺をテーマにして物議を醸している。生真面目になりがちな問題を説教臭くせず、わかりやすい表現と笑える演出で見せるのがセス・ローゲンのやり方なのである。もともとスタンダップコメディアンからキャリアをスタートし、ジャド・アパトーに脚本を学んできたからこそ、この独特のスタイルに辿りついたのだろう。ディズニーの『ズートピア』や『アナと雪の女王』のように暗喩に満ちた多様性の見せ方もいいが、ストレートな表現で楽しく見せる方法もあるのだ。  随所に巧さが光る『ソーセージ・パーティー』だが、いかんせんセス・ローゲンは「脚本を大麻を吸いながら書く」と公言している人物なので、行き過ぎている部分が多々あるのも事実。前述した“性と人種のダイバーシティ”を表現した(?)と思われる終盤のあるシーンは、正直そこまで見せなくても……と思ってしまうほどエグイもの。「最後はハッパをキメながらみんなで楽しくやろうぜ!」と言わんばかりその展開は、観る者を確実に選ぶので要注意だ。(藤本 洋輔)

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