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中村倫也が語る、役者としてのスタンスと福田組との共演「死ぬまで新しい何かに挑み続けたい」

Real Sound のロゴ Real Sound 2017/02/19 株式会社サイゾー
© Real Sound 提供

 現在放送中のドラマ『スーパーサラリーマン左江内氏』(日本テレビ系/毎週土曜よる9時)は、藤子・F・不二雄のSF漫画を原作に、『勇者ヨシヒコ』シリーズなどで知られる福田雄一が脚本・演出を手がけて実写化したコメディドラマだ。平凡で冴えないサラリーマンが、ある日突然スーパーヒーローを押し付けられ、世界平和と家庭問題の間で板挟みになる模様を描いた作品で、主演を務める堤真一のほか、“福田組”と呼ばれる佐藤二朗をはじめ、高橋克実ら個性的な役者が多数出演している。リアルサウンド映画部では、ムロツヨシ演じる小池郁男と行動をともにする警察官・刈野助造役の中村倫也にインタビュー。10数年に及ぶキャリアの末、その演技力が評価されて現在、さまざまな作品に出演している中村は、福田組との共演で何を感じたのか? そして、役者としてのターニングポイントは? じっくりと語ってもらった。 ■「自分を“イケメン”だと思ってないので(笑)」

ーー最初に脚本を読んだときの率直な感想は?

中村倫也(以下、中村):ぶっ飛んでるなと(笑)。ゴールデンタイムに放送するドラマとしてはかなり攻めの姿勢ですよね。そこがまた福田さんらしいですが。主人公の左江内英雄は、スーパーマンだけどそれ以前に普通のサラリーマンとして生きています。日常的に起こる細やかなことで、悩んだり、喜んだり、怒ったり、笑ったり、幸せを感じたりする。ヒーローが登場するドタバタ活劇でありながらも、原作の軸にある“人間くささ”や“人の温かさ”といったテーマがしっかりと描かれています。そこに福田さん特有のエッセンスが加わることで、笑えて心温まるようなドラマになるんだろうと思いました。あと、台本には書いてない“笑い”が本番でさらに付け足されていくんだろうなと予想していましたね。 ーー実際、台本になかったセリフが本番で付け足されたことは? 中村:福田さんに突然「こんな感じのことやってみて」と言われることは多いです。付け足された部分はリハーサルなしでいきなり本番っていうこともよくあります。多分、福田さんは何よりも、僕とムロさんの収拾がつかない悪ふざけみたいなシーンを楽しみにしているんじゃないかな、と。内容は変わらないのですが、元々の台本が膨らんでいくような感覚です。でも、福田さんの場合は普通のドラマとは膨らませ方が違います。本来のストーリーとは脱線したことが主に付け足されていくんですよ。不真面目なことを全力で真面目にやるのが福田さんなので、一見この部分は必要なのかと疑問に思うのですが、完成したものを見るとやっぱり面白い。物語の軸の部分をそのまま描けば感動的なストーリーになるのに、あえて笑いを飛び抜けさせると言いますか。その福田組ならではのアンバランスさが癖になるし、絶妙なんです。 ーー福田さんの世界観をゴールデンタイムに持ってくるのは挑戦的です。 中村:僕も初めは挑戦的だと思いましたが、主演の堤(真一)さんを中心にストーリーを展開することで、視聴者が見やすいように作られているんだなと感じました。僕を含め、ムロさんや(佐藤)二朗さん、(賀来)賢人など、笑いのパートを担当する役者は堤さんとは真逆のベクトルで汗をかいてます。真面目なサラリーマンを演じる堤さんと、不真面目な僕たちのユニゾンが“笑い”の鍵になると思うので。もっとも、福田さんのカラーが“笑い”なのでそこをフィーチャーされがちですが、原作の軸の部分もないがしろにせず丁寧に描いているので、そんなところが“福田雄一のゴールデン”って感じがします。きっと、深夜枠とゴールデンのバランス感覚が福田さんの中にあるのでは。 ーー中村さんは、今回ムロツヨシさんとコンビ漫才のような演技を披露しています。 中村:楽しんでやっていますが、難しい部分もあります。コンビだからといって、同じ種類の役柄になってしまってはいけないな、と。ムロさんは役者として存在感も個性も強いので、ムロさんのペースに引き込まれて真似しそうになるのですが、それだと“中村倫也”という役者の意味がなくなってしまいます。ムロさんと僕のキャラクターがそれぞれ立つように、演じる時の“距離感”を意識していますね。 ーームロツヨシさんとはこれまでに何度も共演されていますが、引っ張られないようにどんなことを意識していますか? 中村:福田さんは、ムロさんと二朗さんのことを福田組の風神雷神って呼んでいます。そのくらい絶対的な存在なので、ムロさんより目立ちたいという、福田組における負け戦に挑むような感情は初めから持ってないです。でも、ムロさんとは舞台やほかの作品でも共演しているので、コンビとしてのバランス感覚には自信があります。乗っかりすぎず、泳がせすぎず、かつ間を縫ってムロさんとは違うやり方で物語にアクセントをつけていく。ふたりが互いを活かし合うんだけど、混ざりきらない。普通のコンビだったら、ボケとツッコミといったわかりやすい違いがあると思いますが、今回はふたりとも違った種類のズレ方を見せていると思います。 ーー確かにおふたりともボケ倒してますよね(笑)。中村さんが演じる刈野助造は、警察官でありながら、警察官らしくないと言いますか。 中村:全登場人物の中で、警察官のふたりが最もバカなキャラクターですよね(笑)。僕の中で刈野という人物は6歳児くらいのイメージです。なので、服装にも遊び心を入れています。一般的なドラマでは、許してもらえないような警察官らしかぬ服装をしてやろうって。たとえば、帽子の被り方をいちいち変にしていますね。斜めにかぶってみたり、わざとあご紐を垂らしたり、前後ろ逆にしたり、実は毎回違うんですよ。演技以外の部分にも、キャラクターらしさを感じられる要素を出していけたらと思っています。 ーー巷では“イケメン俳優”と評される中村さんですが、そのイメージに捉われず『やるっきゃ騎士』などの作品で個性的な役柄に挑戦していますね。 中村:面白いことがとにかく好きなので、いろんな役柄に挑戦したいんです。それに、そもそも自分を“イケメン”だと思ってないので(笑)。だから尚更、役者としても、人間としても、死ぬまでずっと新しい何かに挑み続けて行きたいという気持ちが人より強いんだと思います。 ■「周りの予想を裏切ることをやりたくなる」

ーー中村さんは、2005年に公開された映画『七人の弔(しちにんのとむらい)』でデビューして以来、10年以上キャリアを積んでいます。役者としてのスタンスを決定付けたターニングポイントは?

中村:ターニングポイントになった作品は沢山あります。その中でも、舞台『真心一座 身も心も 流れ姉妹〜獣たちの夜〜』(2009年)は思い出深いです。それまでは、アカデミックな作品に出演させていただくことが多かったのですが、この舞台で初めて小劇場の方たちとやらせていただきました。当時22歳だったのですが、こんなにクレイジーで魅力的な世界があるのかと衝撃を受けましたね。同時に、この世界で生きる面白い先輩方といっぱい仕事がしたいと感じました。たとえば、15センチしかない段差を上がるという芝居で、求められてもいないのに1メートルくらいジャンプして飛び越えようとするんですよ。意味はないのですが、ただそこにある熱量だけは伝わってくるような……そんな芝居は今までに見たことがなかったのでカルチャーショックでした。演技に対する考え方や視野が広がりましたね。  あとは、『ロッキーホラーショー』(2011年)というミュージカル。コメディー調のストーリーなのですが、観に来てくださったお客さんたちが、ラストは感動して泣くんですよ。その光景を見た時、感動させようと思って作品を作らなくても、お客さんは感動するんだと気付きました。逆に、浅はかに感動させようとすることが愚かであり、お客さんの可能性を奪うんだな、と。それまでは、作品のイメージをきちんと固めた上で、キャラクターを構築していったのですが、そんなに肩肘張らなくてもちゃんとお客さんは観てくれるんですよね。こちらが一方的にこのシーンはこうだからと押し付けるのは、お客さん含め僕ら自身の選択肢や想像力も狭めてしまうんだなと勉強になりました。役者として新しい世界が広がりましたね。 ーー『スーパーサラリーマン左江内氏』でも、その教訓は活かされていると。 中村:そうですね。そもそも福田さんの作品は常識にとらわれない自由さがあるので、ほかの作品ではできないようなことも率先して試してます。やっぱり僕たち役者側が作品を楽しまないと、視聴者も楽しめないと思うので。“笑い”は反応が明確なので、演じることが楽しいか怖いかで言ったら、怖いという感情の方が強いし、使命感みたいなものがあります。でも、作品を提供するからには、精一杯楽しもうと自分に喝を入れてますね。でも、コメディーよりも真面目な作品ほど、アドリブを入れたくなります。真面目でシリアスな作品は、ちょっとハズすだけでもすぐに笑いになるんですよ。もちろん、そういうことができる作品は限られていますが、シリアスな作品であればあるほど、予想に反した演技に挑戦したくなります。天邪鬼なんです、僕。周りの予想を裏切ることをやりたくなると言うか、台本を読むときも物語の裏側を捉えようとする性質があります。『左江内氏』でも、これからの作品でも良い意味で視聴者のことを裏切っていきたいですね。 (取材・文=戸塚安友奈 写真=泉夏音)

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