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代金回収率92% ダブリン空港で導入された無人販売所が好評

エキサイト Bit のロゴ エキサイト Bit 2017/06/05 08:00 加藤亨延
© Excite Bit 提供

幼い頃、家族でよく温泉へ出かけた。その帰り道、山中を続く道沿いに地元の農家の人が設けた無人販売所があり、地域で取れた野菜などが売られていた。車の中からそれを見つけた母は、「安いわね」といいながら父に車を止めさせると、その並んだ野菜を吟味しつつ1袋を取り上げて、お金を野菜の横に置かれた集金箱にちゃりんと入れた。

人がおらず盗まれても不思議ではないのに、それでも善意で成り立っている無人販売所というシステムを幼心に忘れられず、田舎で無人販売所を見つけたときは、ついつい引き寄せられてしまう。その販売所をアイルランドのダブリン空港で見つけた。

都会で機能する無人販売所

アイルランドの首都ダブリンの北に位置する同空港は、年間約2800万人の旅客数を誇る同国の玄関口だ。その空港内、保安検査を抜けた後の場所に、500mlのミネラルウォーターを1本1ユーロという価格で売る無人販売所(Honesty Station)が、いくつか置かれている。大量のペットボトルが陳列された棚の前には誰も監視の人はおらず、中央にある集金箱(Honesty Box)にお金を払う仕組みだ。

不意に無人販売所に出くわした乗客たちは、この大量のペットボトルが置かれた棚を見て一瞬戸惑うが、ペットボトルを手に取り確かに水だと確かめると、英文で書かれた趣旨を理解しお金を集金箱に入れ、水を片手に各搭乗ゲートへ向かっていく。この光景にとても心を動かされた。

ヨーロッパに住みだしてからというもの、住んでいるのが都会のパリということも輪をかけて、以前と比べて人を信用しなくなった。落し物や忘れ物をすれば、それは諦めを意味し、見つかっても金目のものが戻ってくることは、まずない。どんなときも、お金が絡むときは必ず証拠を取り、ダブルチェックする。もちろん口だけでのやり取りはしない。相手に善意があるように見えても、裏切られることがしばしばあるからだ。

そんな日本以上に、まず他人を見たら疑ってかかるような生活をしていたため、ダブリン空港で無人販売所を見つけたときは、我が目を疑った。ヨーロッパでも田舎では無人販売所を見かけたことはあったが、それが大量の人が行き交う空港で、しばらく立ち止まり観察している限りでは、うまく機能しているのである。

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無人であるにもかかわらず高い料金回収率

実際、この無人販売所では、どれくらいの人がきちんと料金を支払っているのか? ダブリン空港によれば「正直者」の割合は92%になるという。同空港担当者は「お金を払わなくても罰則はありません。私たちはお客様を信じています。無断で持ち去ることも可能ですが、そのお客さまは、他のお客様から非難の目を向けられるでしょう」と答える。

無人販売所は、いかに空港の使い勝手をよくするかという、同空港の考え方から生まれた。その結果導入されたこの仕組みは、空港利用客からも好評を得ている。

国際線を利用する際、搭乗口へ向かう途中の保安検査では100mlを超える液体物を持ち込めない。そのため検査場を通る前、持っていた飲み物を素早く喉へ流し込み、残りは仕方なくゴミ箱に捨てるということが、しばしばある。つまり保安検査場を超えた後は、飲み物が手元にないため、これからのフライトに備えて何か飲み物を買っておきたいという人は多い。そこにミネラルウォーターを無人販売所という形態で売ることで、搭乗前の限られた時間内に売店などのレジに並ばず、乗客は素早く水を買えるのだ。

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同販売所は2014年から始められたダブリン空港独自のシステムだ。現在ではアイルランド第2の都市コークにあるコーク空港でも行われている。また同アイディアを英スタンステッド空港、ベルギー・ブリュッセル空港も取り入れた。

お互いをいぶかるのではなく、こういう性善な出来事が増えれば……。空港の無人販売所を眺めながら、そう願わずにはいられなかった。

(加藤亨延)

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